OH! Gメンミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | じゃあ お母さん 住所教えて あとご主人の連絡先と… あ、ご主人いないの? そっか亡くなったのね それは失礼 じゃあ お母さん 誰でもいいわ 迎えに来れる人いないかな? そっか じゃあ警察の人に来てもらわないとね 当たり前じゃん だってこれ 立派な犯罪だよ 泣いても駄目よ 何?ご主人いるの? どうして嘘つくの!! 犯人は54歳の主婦 豆腐とティーバッグと白髪染めと キャットフードを万引きして店を出たところ Gメンに捕らえられた Oh! Gメン Oh! Gメン じゃあ お嬢さん 住所教えて あと生徒手帳持ってたりする? 持ってるの 偉いね 一応学校のほうにも 連絡しなきゃ じゃあ お嬢さん お家の誰か 迎えに来れる人いないかな? そっかじゃあ お母さんに来てもらいましょうね それにしても さっきからあなた落ち着いてるわ 普通だったら そんなに涼しい顔でいられないものだけど 犯人は16歳の娘 これで28回目の犯行 コスメグッズを万引きして店を出たところ Gメンに捕らえられた Oh! Gメン Oh! Gメン 犯人は心の深い闇を 晴らすべく今日もGメンは行く たとえどんなに熟練された巧妙な手口も Gメンは見逃さない Oh! Gメン Oh! Gメン |
母さんミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 母さん あなたは僕を今でも本当に愛してくれていますか 母さん あなたを僕は苦しめ悩ませたくさん泣かせたんだろう 母さん とうとう来週の水曜日だよ 母さん とうとう法律に僕消される 母さん あの日はとても頭が痛くて仕方が無かったんだよ だから 母さん あの日の事は何にも覚えてないんだ ほんとに本当 母さん 親戚のみんなは何て言ってるの 母さん 近所の人にいじめられてないかい 母さん こうして手紙を書くのって初めてだよね 最初で最後の手紙になっちゃったけど 母さん あの日に僕がやった事は僕の意思じゃない 誰かが僕の脳ミソいじくったんだ 母さん あなたは僕を産んだ事 後悔してませんか 後悔してないのなら嬉しいです 母さん あなたの息子に生まれて僕は幸せでした この僕を産んでくれて本当にありがとう 母さん さよなら お元気で 向こうでいつも見てるから 母さん 母さん 母さん |
恍惚の人ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | そろそろ朝刊が来たかな? ポストの中に手を伸ばした いつもと同じ 気分が暗くなる ニュースばかりだ そろそろ朝餉の時間だな ヨウコさんがやっと起きてきた マサシも寝ぼけ顔 ネクタイを締めてる 早く座りなさい 腹が減った ばあさんは まだ寝てるのですか ヨウコさん ヨウコさん まあいいか お先にいただきましょう ほら ケンちゃん ジジと一緒に食べよう そろそろ朝刊が来たかな? ポストの中に手を伸ばした ポストの中は何故かしら空っぽ 今日は休刊日か そろそろ朝餉の時間だな ヨウコさん腹が減りましたよ 「さっき食べたでしょ お腹を壊すわよ」とヨウコさん知らん振り 腹が減った ばあさんは まだ起きないですか ヨウコさん ヨウコさん この仏壇の写真の人は誰ですか ばあさんですか そうですか やめなさい 離しなさい 会社に遅刻するじゃないか 馬鹿なことを言うな 私の息子はまだ6歳なんだぞ お寺の鐘が鳴ってる 黒い猫が走って逃げた 私の手を引く この人は誰だろう 泣いているみたいだ 腹が減った お上がりなさい お客さんだよ ヨウコさん ヨウコさん なんだ2人は知り合いですか まさしさん? ウチの息子もまさしです さっきからここに座ってる この子は一体どこの子だろう ヨウコさん ちょっと この子は誰ですか? ケンちゃんですか はじめまして |
リンゴガールミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 頑母堂 | 隣に住んでるガールは大学に通っていて 朝は9時頃家を出て 帰ってくるのは6時くらい どうやらバイトはしてないみたいだ 毎週土日は大概 彼氏が泊まりに来る 時々聞こえる笑い声 夜になればロマンポルノ 男の声がいつも余計なんだよ 最近僕も連載を持つようになってきたけど 大学生と同じアパートに住んでいるのです いつもの調子で仕事を片づけていたら 誰かがチャイムを押してる あらま お隣のガールだ どうしたんだろうか なんか怖いな 実家からたくさんリンゴが送られてきたので お裾分けにきたんだと 全く可愛い娘じゃないの もう少し僕も若かったらな 「上がってきなよ」なんてひとこと言えるんだろうな あーなんてこった こうしてみると最高に可愛いじゃないか それから半年が過ぎ めでたく僕も引っ越しすることになりましたよ 「お別れですね」半笑いの僕はガールに言った 「えー、寂しいな」本気で寂しそうな顔のガール 電話番号をお互い自然に教え合ったあと ガールは僕の引っ越しの手伝いをしてくれたんだ 「辛いことがあったら電話しなさい」 なんてね |
夢なんてゆるめるモ! | ゆるめるモ! | 緑川伸一 | 緑川伸一 | ハシダカズマ(箱庭の室内楽) | 夢なんてひとつもないよ 何が悪いの? 今がすべてだもん なんとなく 毎日が過ぎ とはいえそれなりに必死でさ 朝っぱら 電車に乗って 学校に行くだけでも 一大事 ヘットヘトよ なんて世界だろ ヘットへトよ 今を乗り切るので精一杯だ 夢なんてひとつもないよ 強いて言うなら お金持ちの奥さん ゴロゴロして なーんにもしない 家政婦さんが全部やるんだもん なんでだろ なんで生きてる? そんな事考えても 時間の無駄 楽しいとか 美味しいとかを 集めましょ 辛いこと 全部無視 とはいえ ヘットヘトだ なんて世界だろ ヘットへトだ 大人になれば楽になるかな 夢なんてひとつもないよ 強いて言うなら お金持ちの奥さん お父さんとお母さんに 立派なお家 建ててあげるんだもん こんなに私まだ若いのに 頭がこんがらかりたくないよ 人生とかなんとか 語ってんじゃねー お寒いよ お寒いってば 夢なんてひとつもないよ 何が悪いの? 何が? 何が? 夢 夢 夢 うるせーなもう 恋はしてるもん それでもう充分じゃん さあやりましょ 目の前の事 まずはお昼寝 今がすべてだもん |
メシ喰えよ!ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | あなた またあの子がダイエットをすると 言っているのよ 困ったわ ちっとも太ってないのに むしろ痩せてるほうよね? 好きな子でもいるのかしら? 夕食も少ししか食べてくれなかったの 成長期の大事な時期なのに だから私言ったの 「ちゃんと食べないと オッパイ小さくなるわよ」って あの子は鼻で笑って部屋に入ったきり あんな事 繰り返し 繰り返し 繰り返ししてたら そのうちに 取り返しのつかない事になっちゃう そんな事 やめなさい やめなさいと あなたも言ってよ 私じゃもう駄目みたい 心の病なら お医者さんに診てもらわないと いけないわよね 私 明日本屋に行って 専門書探して買ってくるわ ちょっとあなた 聞いてるの? 真面目に聞いてよ だいたいね いつもそう いつもそう いつもそうあなたは 家族の事なんかどうだっていいんでしょう あなたの その冷徹な 冷酷な 冷血な態度のせいで あの子があんな風になったのよ あんな事 繰り返し 繰り返し 繰り返ししてたら そのうちに 取り返しのつかない事になっちゃう そんな事 やめなさい やめなさいと あなたも言ってよ 私じゃもう駄目みたい |
顔2005ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 山下隆通 | 変わりたい どうして私は こんな顔なんだろう ママに全然 似てないんだもん 悲しい 好きな人は 私のことなんか 見向きもしないし 友達には みんな彼氏がいる 悲しい アイドルみたいに チヤホヤされたい 鏡を見てると 涙が いつも溢れ出る 明日こそは ママに打ち明けよう 私 整形手術がしたいの 私もう こんな顔 嫌なの 恋がしたい 恋がしたい 恋がしたいの ママが言うことだって 私も理解しているわ だけど ママは綺麗だから 絶対わからないわ 女になりたい 男を感じたい もう耐えられない 助けて ねぇ お願いママ パパには まだ 言わないでおいてね 明日 私が自分で言うから そんなに悲しい顔しないで ママって泣き顔も綺麗だよね それに比べて 私の顔は… いや もう言わない もう言わないわ 私もママに負けない程の 恋がしたい 恋がしたい 恋をしてやる パパには まだ 言わないでおいてね 明日 私が自分で言うから そんなに悲しい顔しないで ママって泣き顔も綺麗だよね それに比べて 私の顔は… いや もう言わない もう言わないわ 私もママに負けない程の 恋がしたい 恋がしたい 恋をしてやる |
心ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 私が整形手術をしたのは5年前の夏 それからというもの私の人生は 大きく変わった 現金な男たちは急に私の元へやって来て 見え透いた愛の言葉を恥ずかしげもなく 囁いた 誰一人 私に愛の意味を教えてくれなかった だらしのないあいつらを 私はボロボロにして捨ててやった 幸せとは何でございましょう 私にはもうわからないの この美貌を手に入れても 私の心は昔より寒いわ 幸せとは何でございましょう 私にはもうわからないの どなたかどうか教えてくださいませんか お願い 昔の友達にはあの夏以来ずっと会ってない 会いたいけどどうしても会いに行けない みんな元気かしら? 両親の 私を見る目は未だになんかよそよそしい 「ごめんなさい」 と言いたいけど 何かが邪魔して 言えないの 何故でしょう 全てがうまく行くと思っていたのに こんな事になるなら 前の顔のままでいたほうが良かった 幸せとは何でございましょう 私にはもうわからないの この美貌が邪魔をして 私の心を誰も見てくれない 幸せとは何でございましょう 私にはもうわからないの どなたかどうか助けてくださいませんか お願い 幸せとは何でございましょう 私にはもうわからないの この美貌を手に入れても 私の心は昔より寒いわ 幸せとは何でございましょう 私にはもうわからないの どなたかどうか教えてくださいませんか お願い 幸せとは何でございましょう 私にはもうわからないの どなたかどうか助けてくださいませんか (お願い) |
許さない忘れないミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | これはさすがにやばい 殺されると思い 私は逃げて来た あの人が出かけた隙に ふるさとへ向かう 新幹線に乗っている 顔中 痣だらけだから サングラスと帽子を 深く 深く かぶって もうあの人には二度と会う事は無いだろうけど 私は一生 許さない 許さない 忘れない 忘れない 若気の至りで すぐ結婚しちゃったけど やっぱり駄目だった 当然の結果だな 外では温厚で 優しい人ってことに なってるみたいだけど 最悪の腐れ外道だった まだ震えが止まらない もうあの人には二度と会う事は無いだろうけど 私は一生 許さない 許さない 忘れない 忘れない もうあの人には二度と会う事は無いだろうけど 私は一生 許さない 許さない 忘れない 忘れない もし万が一 どっかで会ったなら どうにかして どうにかして 殺してやりたい |
君は僕のものだったミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 小倉しんこう | | 髪を短く切ったばかりの 君が笑う 天ぷらそばを啜りながら 眼鏡が曇って真っ白け 強い日差しの下で水着の 君が笑う 子供のような体つきが 海へ走って行く いくつもの君を閉じ込めた このビデオカメラ 死ぬまで僕は 君を撮り続けるつもりだったのに 真っ暗な部屋 膝を抱えて テレビの中の君を観てる 梅酒のグラス 君が持ち上げ 缶ビールで僕も乾杯する 井の頭公園 池の畔 君が笑う ボートには乗らなかったのに 何でだよ神様 いくつもの君を閉じ込めた つもりでいたけど 本物の君は 僕を捨てて消えてしまったんだなあ 真っ暗な部屋 膝を抱えて テレビの中の君を観てる 結婚式の 真似事をした このシーンで僕は毎回泣く いくつもの君を閉じ込めた このビデオカメラ 死ぬまで僕は 君を撮り続けるつもりだったのに 真っ暗な部屋 膝を抱えて テレビの中の君を観てる 裸の君が恥ずかしそうに 僕を見上げて 舌を出した 君が揺れてる 揺さぶられてる 僕は今夜もズボン下ろす 君が叫んだ 僕の名前を 確かに君は僕のものだったんだ |
保健室の先生ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 山下隆通 | アタシは保健室の先生 休み時間は 仮病の生徒とおしゃべりする 絶対 男子しか来ない 何かを期待してる アタシとの何か かわいい顔の生徒には 電話番号を教えてあげる 放課後 必ずその子は 電話してくる 妙に低い声で アタシは保健室の先生 若い男の体に 触れるのが生き甲斐 アタシは保健室の先生 通勤には毎日 すしづめ 井の頭線 痴漢は いつでもアタシの この体に群がる だいたいサラリーマン かわいい顔の男には 好きにさせてる 抵抗しない 汚い顔の男には 安全ピンを メッタ刺し してやる アタシは保健室の先生 彼氏は今 二人だけ アイドルと弁護士 アタシは保健室の先生 学校中の女に ボロクソ嫌われてる アタシは吉祥寺の女 駅から徒歩七分の マンションに住んでる 今夜は二年の生徒が 泊まりに来る |
エッチばっかミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 会ったらエッチばっかりするの 遠距離恋愛ってこんなものなのかしら だってさ だってだってだってだって 離ればなれなんだもん しょーがないじゃない 私本来は こんなにお盛んな女じゃない 彼のせいだわ 彼がどスケベだからなの といってもカラダ目当てでは無いはず だって初めての時 彼できなかったもの 私 チョー落ち込んだもの 会ったらエッチばかりするの 猿じゃあるまいしって我ながら呆れてる まったく 若くないんだからさ 腰がもたんわよ えへへのへ 一緒になっても こんなにかまってくれるかしら まあ大丈夫よ 彼はどスケベ野郎だもの といってもカラダ目当てでは無いはず だって初めての時 彼できなかったもの 私 チョー落ち込んだもの 死ぬまで言ってやる 勃たなかったもの ふざけんな お前 勃たなかっただろ |
I am a motherミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | この頃 酸っぱい果物 やたら食べる 気づけば食べている オレンジ グレープフルーツ 喫茶店では もちろんレモンスカッシュ もしかして これってアレじゃないのかな そういえば心当たりはあるぞ 近所の産婦人科のドアを勇んで 私は開けて保険証を出し ベンチで文庫本開いた 名前を呼ばれて中に入り 私は予想通りの言葉を聞いた そうか そうか ついに I am a mother 帰りにデパートへ寄って おもちゃ売り場 子供服売り場を ぼんやり眺めて歩いた 何もかもがキラキラ輝いてた あの人は喜んでくれるかしら どうだろう 仕事人間だから 夕食の支度を終わらせて 一息つこうとソファーに横になって 時計見たらもう7時だ あの人今日も残業かしら この頃残業続きだから心配 体壊さないといいけど あの人が帰って来た いつものように疲れた顔で 私は何気ない風を装って 背広を脱がせてあげながら言った 「へぇ そうなんだ 良かったじゃんか」 あの人は私のお腹に手を当てて 照れ臭そうに笑った 私もつられて 笑いながら 嬉しくて ありがたくて 涙が出たの 頑張らなきゃ そうよ I am a mother |
それぞれに真実がある(Single Version)ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | パパはママと別れることになった もう二人の間に愛はない パパには好きな人が居るし お前だって知ってるだろう この前紹介した人だよ あの時は友達って言ったけど ママとは正反対の大人しい内気な人なんだ 今まで嘘ついてきてゴメンな ママがパパのこと 何て言ってるか知らないけど パパはママと 離れていたほうが お前と仲良くなれると思うんだ 何を言ったって無駄かもしれないけど お前には俺の血が流れてんだ ママと別れたって俺たちは親子だから 一生俺はお前のパパだからな ママの言っている事は全部嘘じゃないけど パパはおまえのことが本当に大好きなんだよ 笑っちゃうかい?だけどね これがパパの真実だから 何で泣くんだよ? 初めてお前に手をあげた時でも泣かなかったじゃん パパみたいのと付き合っちゃダメだよ お前は綺麗だから心配だなぁ 何を言ったって無駄かもしれないけど お前には俺の血が流れてんだ ママと別れたって俺たちは親子だから 一生俺はお前のパパだからな |
遺言ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 愛する人よ 僕はあなたを愛していたんです あなたは今どこにいますか? それともいませんか? あぁ こんな事になるなら 言っておけば良かった この想いは この国と共に消えるのか 終わりは何かの始まり 消えてたまるもんか でっかい夢が僕にはあった いや今でもあるさ あなたは鼻で笑うでしょう でも本当です あぁ こんな事になるなら やっておけば良かった この願いは この国と共に消えるのか 終わりは何かの始まり 消えてたまるもんか もしも僕のこの魂が どんな形であれ残っているなら 愛する人の魂のそばで ずっと一緒にいたいものだ もしも神様がいるのなら 僕のでっかい夢の一部始終を 全部覚えていて下さい 忘れないでいて下さい この想いは この国と共に消えるのか 終わりは何かの始まり 消えてたまるもんか 終わりが何かの始まり 絶対消さねえぞ |
魔法にかけて!ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 松本素生 | | 先輩と今日は久しぶりに街で遊んだ 私は終始ソワソワして落ち着かなかった 先輩は何か前よりもずっと綺麗になってた 大学という場所にはそんな魔法があるのか 迷っていたけど 悩んでいたけど 私は決めた 動機不純かもね いや不純じゃないよ だって 私 一応目標あるもの 私も先輩と同じ大学に行く 理由はただひとつだけ 愛しい先輩のそばで 魔法にかかって綺麗になるんだもん パパとママがうるさいから 机に向かう ノートいっぱいに吐き出された 私のストレス どうせ受かるもの 私賢いもの 将来の夢 ボンヤリしてるから 少し怖いけど やるよ! 私 今日も せっせとお勉強 私も先輩と一緒に合コンに出て イケメンGETしちゃうぜ 愛しい先輩のそばで 夢と魔法の 嗚呼キャンパスライフ 私も先輩と同じ大学に行く 不安は山積みだけど 愛しい先輩のそばで 魔法にかかって綺麗になるんだもん |
恋に生きる人ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 恋に生きる人にはなれない 子供の僕は恋に生きていた 恋が僕の全てだった 今思えばそんな気がする 恋に生きる人にはなれない なりたくもないんだね不思議と 今はそれどころじゃねぇのよ 女の子は大好きだけどね 恋に生きる人を知ってる その人は高校生 背の小さい女の子 とっても可愛い女の子 金髪が似合う十七歳 恋に生きる人にはなれない そもそも男なんてものは 恋に生きる資格なんかない 資格というか権利がないんだ この高校生と話すとなんだか知らないけど いい気分になれるのは僕がこの子を好きだからか? 狂わない程度に好きだからか? 恋に生きる人にはなれない 子供の僕は恋に生きていた 恋が僕の全てだった 今思えばそんな気がする 恋に生きる人は綺麗だ なんせ恋にしか生きてないんだから 恋に生きる人にはなれない 恋に生きる人にはなれない |
雄と雌の日々ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 伊藤ミキオ | 目の前の白い壁を ずっと見ていた 忙しそうに小走りで 行き交う看護婦さん 俺が長椅子に座り 待ってるあいだに 命を消す手術を あいつは受けてた 若すぎる俺たちには まだ 親になる勇気がなかった もしも俺たちが ガキじゃなくて 自立していたなら 幻じゃなくて 今 俺のそばに子供がいたのかな その日の何日か前 あいつの親父と 話をした 少しだけ あいつの家で 無口な男二人は お互い俯いて 親父さんは一言 「まぁ しょうがねぇな」 俺に似た人だと思った もの凄く怒ってたんだろうな 何故か あの頃の俺たちには 罪の意識なんか全く無く それからも懲りもせずに 雄と雌の日々は続いた 若さって 今思うと もの凄く残酷なんだよな あいつとは別れたけど ひでぇ女だった 七人とやってた 俺の子供じゃ なかったかもなぁ 俺 騙されてたのかも しんないなぁ 俺の子供じゃ なかったかもなぁ 俺 騙されてたのかも しんないなぁ Oh oh oh Ah ah Ah ah ah... |
彼は昔の彼ならずミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 頑母堂 | 夕べはちょいと飲みすぎた 目を覚ますともう夕暮れ時 仕事場があるマンションへ 俺はのろのろ出かけるぜ ドアを開けるとアシスタントの 小僧どもがカリカリやっている 俺は自分のデスクに座り とりあえずまずは一服だ 灰皿の横に手紙が一通 送り主を見ると見覚えある名前 どっかのホステスだろうか 首をかしげて封を切る -手紙- ミドリカワさんお久しぶりです。 いやもう先生と呼ぶべきですね。 お姿いつもテレビや雑誌で拝見させていただいてます。 私のこと覚えてますか? 昔となりに住んでたガールです。 住所が変わったようなので、こちらにお手紙書いてます。 あの頃はまさか先生がこんな偉い漫画家さんに なってしまうなんて… しゃらくせえ なんなんだこの女は 俺を誰だと思ってんだ 「諸君あとは頼んだ 俺は出かけるぞ しっかり働けよ サボると承知しねえぞ」 アシスタント達に俺は叫んで 夜の街へと繰り出した |
片想われミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | アーケードの入り口 いつもの通学路 今朝も彼女は立っていた 恥ずかしそうに立っていた 目が合うとぶるっと震えてた ひとつ年下で バレー部の彼女 いったい帰宅部の俺のどこに惚れたというのだろう すれ違う時なんか言ってたが 聞こえないフリをした やりたいときに好きなだけ やれる関係でいいなら 考えたっていいけど 付き合ってもいいけど やりたいときに好きなだけ やれる関係がいいけど… そんな都合のいい話 ある訳ないよな わかってる 手紙もメールも ずっと全部無視 かれこれもう一年だな よくもまあ懲りないもんで 修行かな さてはドMかな 乳は結構あると思われる 平凡なルックスだけど なんか可愛く見えてくる それでもやはり 俺はどうしても 好きにはなれないのだよ やりたいときに好きなだけ やれる関係でいいなら 考えたっていいけど 付き合ってもいいけど やりたいときに好きなだけ やれる関係がいいけど… そんな都合のいい話 ある訳ないよな わかってる もうすぐ卒業だから こいつらともおさらばだ 昼休みの喧騒 抜け出して廊下に出ると 彼女が立ってたんだ 思い詰めた表情 図書室に連れて行かれて 面と向かって言われた 彼女の告白に俺は 慌ててつい口が滑った 「やりたいときに、好きなだけやれる関係でいいなら、 考えたっていいけど、付き合ってもいいけど」 「それでも私構いません。先輩のそばにいたいです」 彼女はそう答えたのだ なんて最低なんだろ俺 彼女がホッとしたように 微笑んだ とりあえず放課後うちに来てもらう約束をした |
続・それぞれに真実があるミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 最近のママはなんだか 少し若返ったようだ パートに出るようになって 友達も増えたみたいだ パパが居なくなって もうすぐ一年になる 私はこの一年で 随分汚れたなあ 友達に連れられ 夜の街に出ては 低脳な男達に 抱かれまくった こんな私見たら パパはどう思うだろう? 関係無いわ あの人のせいだもん たまにあの人から メールが来る事がある 私は完全無視で 読んだらすぐに消す 名字が変わってから 何もかも狂った 前の名字の方が かっこ良かった なんで私ばかり こんな目に遭うんだろ? 復讐のために 私は今日も 友達と一緒に 夜の街に出るの 低脳な男達に 抱かれまくるの こんな私見たら パパはどう思うだろう? 関係無いわ 関係無いもん 全部が全部 あの人のせいだもん |
I am not a motherミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 心当たりは確かにあって できても当然な暮らしな訳で 育てていく自信は無いけど おろすなんてありえない 彼はどうせ逃げるだろうし どうしよう どうしよう こない こない アレがこない 誰かに相談できる訳ない 私一人で抱え込むしかない 気付けばお腹 擦ってる自分 検査薬は買ったけど 怖くて まだ開けてもいない どうしよう どうしよう こない こない アレがこない 説明書を何度も読み返す 私はどうやらmotherじゃないらしい 安堵のため息が漏れ同時にどうしようもない寂しさが私を襲った ほんの少し幸せだったから いつもと同じ朝 揺れるバスの中 無理に軽い調子で彼に打ち明けた 「何だよ早く言えば良かったのに」そう彼は笑うけど 絶対ウソ 絶対逃げるくせに 女って孤独だ 校門の前で彼と 手を振って別れる 遠ざかる彼の背中 いなかったね二人のbaby 一時限目は英語だな |
ドライブミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 腰の曲がったおばあちゃんを さっき僕らは轢き逃げした 「どうしよう」「捕まりたくないな」「捕まる訳無いじゃないの」 「逃げよう」 あの娘はそう言った 僕は小さく頷いた それからひたすら走った 僕らは何処へ行くのだろう? 小さな旅館で一泊することにした なんだかとっても素敵な夜だった 何が正しくて何が悪いなんて 誰もそんな事教えてくれなかった 誰も悪くない 解っていたんだ 生まれた時から僕は悪魔だった 次の日 三人の男が僕らの前に現れた あの娘は車に乗せられた 眼鏡男が何か言ってる これからずっと あの娘に会えないのかな? 離れていても 好きでいてくれるかな? 独りでいるのも結構落ち着く 割とみなさん、いい人たちだよ こんな息子でごめんなさいママ 心配しないで僕は元気だから 何が正しくて何が悪いなんて 誰もそんな事教えてくれなかった 誰も悪くない 解っていたんだ 生まれた時から僕は悪魔だった |
だまって俺がついて行くミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 山下隆通 | 働かずに生きて行きたい そう願いながら俺は生きてきた この歳になってやっと出会えた 働き者の美人なあなたと 朝は早く起きて あなたを送り出して 一服してお次は洗濯だぜ バスタオル畳んで 大きな窓を開けて 今日は図書館にでも行こうかな 七時頃あなたが帰ってくる その前に買い物に行かなくちゃ ディナーは何にしたらいいかしら あらやべぇ お風呂掃除やってなかった しかしまぁ俺って幸せモンだぜ 今日も元気だ タバコがうまいね テーブルを挟んで 二人は肉を食べる おいしいおいしいってあなたは笑う ソファーで美人な人が新聞を読んでいる 俺は皿を洗うあなたの為に 俺はついて行くぜ だまって笑って あなただけに |
真っ赤な太陽ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 山下隆通 | さあ これから僕は自慢話をするよ そう あの娘と僕は海に出かけたんだよ 車は走る 僕は助手席 夢にまで見た裸のヴィーナス… 真っ赤な太陽 プニプニの身体 サラサラの砂の上で僕らは カラダを重ねた 誰もいないから ダラダラ流れる汗が気持ち良い な 静かな波だ なんて鳥だろ?肩にもたれるエロエロヴィーナス 真っ赤な太陽 プニプニの身体 サラサラの砂の上で僕らは カラダを重ねた またまた重ねた ギュッて抱きしめた 生きてて良かった 真っ赤な太陽 プニプニの身体 サラサラの砂の上で僕らは カラダを重ねた またまたまた重ねた ギュッて抱きしめた 生きてて良かった …なぁどうだい? これが僕らの夏の思い出 そう 確かに僕ら海に出かけたんだよ |
ユミコミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 山下隆通 | 手を挙げたのはまずかった ユミコは隅っこで涙 けど悪いのはユミコなんだ 僕を裏切った 僕は失望した そのまま家を飛び出して 雨の中を独り歩いた ユミコはノコノコ付いてきた 僕の眼を見た 僕の手を握った 許せない何もかも 馬鹿らしいこんなにも 思ってんのに届かない わからないもう嫌だ 嫌がる僕にしがみついて ユミコは何回も謝った 「ゴメン、もうしないから。許してよ、お願い」 振り向いて家に引き返した 雨に馬鹿にされてる気がした 家についてもまだユミコは泣きやまなかった 許さない絶対に同じことしてやろう 信じてた 心から 信じてた馬鹿野郎 ベッドの中で長い間 ユミコに背を向けて考えた これからどうしようか 他の女って言ったってなぁ 急にユミコが僕の身体 乱暴なくらい抱きしめた 負けずにパジャマを脱がした乱暴に ユミコは僕の腕の中で 何もなかったように眠ってる 仕方ない僕はこの 馬鹿な女が好きなんだ |
チューをしようミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 山下隆通 | チューで全てが解決するんじゃないか 何もかも何もかもだよ いがみ合うことなんか無い 血を流し合ってる暇があったら 暇があったら テレビを見ててそう思ったのさ 夫婦が口喧嘩してたんだ いい年をしてみっともないな 僕たちも気を付けたいもんだね 気をつけようね チューをしよう 相手なんか 誰でもいいじゃないか チューをしよう それだけで 案外何とかなるもんだ チューで全ては解決できる! 言ったもん勝ちさ 知ったこっちゃねぇよ 文句を言うな ノータリン まず子供を大事にするのが先だろう ほら泣いてるよ チューをしよう 相手なんか すぐそばにいるじゃないか チューをしよう その後も 優しい男でいなさいね 喋りが過ぎる 女の口も 熱いチューで塞いでやろうぜ チューをしよう こっちを向け 全くいつまで怒ってるんだ チュチュチュチュしてるだけで どうでも良いやって思えるのよ チューで全てが解決するんじゃないか 何もかも 何もかもだよ いがみ合うことなんか無い 血を流し合ってる暇があったら チューをしよう チューをしよう チューをしよう チューをしよう |
上京十年目 神にすがるミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | どうして俺は ここにいるんだろう 一日中 電話の前 雑居ビルの3階 田舎の家族 元気でいるかな 今の俺の姿を 見たら泣くだろうな 知らない人達に 電話をかけまくる 「もしもし母さん? 俺だよ俺 実はさぁ…」 罪悪感 胸の奥 押し潰して 嘘八百並べ立てるのさ こんなことするためにわざわざ 東京に出てきたわけじゃないのに どうして俺は まだ生きてるんだろう 神様は俺のこと 怒ってないのかな 俺みたいな奴は 生きてても仕方ない 周りの人達を 悲しませるだけだもの 残酷なお方です あなたは 早く俺を殺してください 駄目ですか そんな暇ないですか 神様 あなただけは 俺のこと 見捨てないで 見捨てないで 罪悪感 胸の奥 押し潰して 嘘八百並べ立てるのさ こんなことするためにわざわざ 東京に出てきたわけじゃないのに 残酷なお方です あなたは 早く俺を殺してください 駄目ですか そんな暇ないですか 神様 あなただけは 俺のこと 見捨てないで 見捨てないで |
馬鹿兄弟ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | 伊藤ミキオ | 甘ったれたクソガキがだらしなく 戯言を紙にタラタラ書いた それから冬の夜の闇へと 逃げるようにクソガキは消えた ガキにはあちこちに借金があった それは恐ろしい額になってた 取り立てのチンピラに脅されてた 命の危険を感じ始めた クソガキのアパートにやって来た母親 ゴミ屋敷のような部屋の中 小汚い文字でタラタラ書かれた 醜い遺書があった 母親はすぐ捜索願を出した 警察の人は割と親切だった その頃ガキは死ぬ勇気なんかなく 友達の家を転々と彷徨っていた ニヤニヤしながら 廻りにあるのは 偽物の友情だけだった ごまかしだけだった クソガキの兄貴は東京にいて 金にならない歌を歌ってた 弟が失踪したと聞いて ただ情けなくて腹が立った 弟よりむしろ母親のことが 心配で心配で仕方なく 電話から漏れる母親の声は 悲しく震えてた 三年後の秋 兄貴の所に 招待状が来た ガキの結婚式の 東京のヤツは チョコチョコ売れてきた時期で 招待状の中に “一曲唄ってよ”って 昔と同じ懐かしい汚い文字が 死んじまえ 卑怯者 みんなに心配かけやがって いい気なもんだ みんな忙しいんだ お前なんかに構ってられるか 死んじまえ 卑怯者 死んだ方が よっぽどましだ あのとき そこまで 考えた兄貴は 招待状を嫁に黙って渡して 手帳を開いて日付に丸をした 自分の歌を歌うのは 恥ずかしいので カラオケで いつも歌う ハマショーの歌を 唄うことにした 結果が 「もうひとつの土曜日」 兄貴はニヤニヤ 仕事に出かけた クソガキの嫁は すこぶる美人だ |
豆電球の灯りの中でミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 豆電球がそこいら中を 橙色に染めている 僕はおしっこがしたくなって 目を覚ましてしまった でも一人で行くのは怖いなぁ どうしようかなぁ しょうがない お父さんについて来てもらおう 寝てるお父さんを起こすのは可哀想だけど あれ? お父さん何やってるんだろ? 裸んぼだ お母さんの上に乗っかってるぞ お母さんも裸だなぁ 何か二人とも苦しそうな顔に見えるな いやそれよりも僕はおしっこがしたいんだ もれそうだ 「お父さん」と声をかけると 二人の動きが止まった お父さんはパンツ一丁で 僕をトイレまで 連れて行ってくれた 戻って来ると お母さんは 布団を首までかけて 目をつぶっていたんだ 僕も布団に入って 無理矢理目をつぶった お父さんに何やってたの?って聞きたかったけど 何だか怖くて聞けなかった |