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【ライヴレポート】 『DOLL$ FESTA』 2018年7月29日 at 川崎 CLUB CITTA'

2018年07月29日@川崎 CLUB CITTA'

撮影:藤木裕之/取材:土内 昇

2018.08.01

ヴォーカリストのFuki(Vo)とGacharic Spinの楽器隊、はな(Vo&Dr)、F チョッパー KOGA(Ba)、TOMO-ZO(Gu)、オレオレオナ(Vo&Key)の5人からなるDOLL$BOXXが7月29日、前代未聞のフェス『DOLL$ FESTA』を川崎 CLUB CITTA'にて開催した。出演バンドのうちFukiはFuki CommuneとUnlucky Morpheusのヴォーカリストであり、Gacharic Spin楽器隊は本体はもちろん、ヴォーカルにSHOW-YAの寺田恵子(Vo)を据えた寺田リックスピンでも参戦。出演者が重なりまくる、Fuki曰く“5バンドなのに出演者が異様に少ない”フェスとなった。ある意味、無謀で自虐的だが、5バンドそれぞれが“自分たちが一番カッコ良い”という心持ちで全力のステージを繰り広げた、そのハイパフォーマンスはさすが。もちろん、それを最後まで迎え撃ったオーディエンスもカッコ良い!

■ Fuki Commune ■

幕開けを飾ったのはFukiのソロプロジェクトであるFuki Commune。1曲目からスピードナンバー「Strength」を投下すると、長谷川淳(Ba)と下田武男(Dr)によるHM/HR界屈指のリズム隊がサウンドの土台を築き、そこに乗るISAO(Gu)とMao(Key)が抜群のコンビネーションで聴かせ、魅せ、オーディエンスのメタル魂に火を付ける。そして、Fukiのハイトーン、さらにシャウトが炸裂! のっけから壮絶な光景が広がったことは想像に容易いだろう。2曲目はTVアニメ『怪盗ジョーカー』シーズン3&4 エンディングテーマの「輝く夜へようこそ!」。超絶テクでサウンドは構成されているが、Fukiの歌声はキュートで、メロディーはキャッチーなアニソンである。この振り幅がFuki Communeの持ち味なのだ。その後も激しくもポップで、エキサイティングかつピースフルなステージを展開し、メタルチューン「I'll never let you down!」や新曲「Bloody Rain」でフロアーを幾度も爆発させ、アッパーな「Start Dash」や「月が満ちる前に」では伸びやかで表情豊かなヴォーカルで観客を魅了。トップバッターとして会場を十分すぎるほどに温め、次の寺田リックスピンへとバトンを渡した。

Fuki Commune

フキ・コミューン:2014年12月に無期限活動休止となったLIGHT BRINGERの紅一点ヴォーカリスト、Fukiのソロプロジェクト。“Fukiとその仲間たちがひとつの共同体を形成するイメージ”がプロジェクト名の由来。日本の若手ヘヴィメタル界でも群を抜いた声量と、突き抜けるハイトーンヴォイスには定評がある。また、天外冬黄(テンゲフユキ)名義でUnlucky Morpheusにも所属し、コミックマーケット等でのファンとの交流を08年より続けている。

■ 寺田リックスピン ■

今年3月に名古屋Electric Lady Landで開催されたGacharic Spin主催イベント『JUICY GIRLS vol.8』で結成され、7月には名古屋と大阪でワンマン公演を行なった寺田リックスピン。東京初見参となるライヴは寺田の“川崎ー! 寺田リックスピンだー!”の一声でスタートすると、容赦なくバンドは総攻撃モードに。Gacharic Spinの「Lock On!!」、SHOW-YAの「私は嵐」というキラーチューンの連続で沸き返るフロワー。はながツーバスを響かせ、KOGAがスラップで攻め立て、TOMO-ZOはテクニカルにギターを操り、オレオがキーボードでサウンドに彩りを与え、寺田が圧巻のヴォーカリゼーションを魅せつける。そして、SHOW-YAでもライヴで演ったことがないというバラード「地下水道の月」では、深淵かつスケール感のある音像が観客を包み込み、シンガロングを誘った。

また、Gacharic SpinではTOMO-ZOがアイドルチックに歌う「年齢不詳の魔女になりたい」を寺田バージョンで披露し、途中に“お前も蝋人形にしてやろうか”と聖飢魔IIの「蝋人形の館」のフレーズを盛り込んだフックのある展開で、会場を大いに沸かせたのもハイライトのひとつ。その後、2日前に誕生日を迎えた、文字通り“年齢不詳の魔女”こと寺田へのサプライズもあり、AC/DCのカバー「Whole Lotta Rosie」からは終盤戦。Gacharic Spinの「ダンガンビート」でタオル&手拭いを旋回させ、最後はSHOW-YAの代表曲「限界LOVERS」でもって大熱狂の中、大団円を迎えた。寺田リックスピンにとってラストステージでもあった本公演だが、東京ワンマンを実現させてほしいと願うのは筆者だけでないはず。

寺田リックスピン

2018年3月に名古屋Electric Lady Landで開催されたGacharic Spin主催イベント『JUICY GIRLS vol.8』にて結成された、「寺田恵子」と「Gacharic Spin」の楽器メンバーが合体したユニット。7月には名古屋と大阪でワンマン公演も行なった。

■ Unlucky Morpheus ■

三番手はFukiが“天外冬黄”としてヴォーカルを務めるUnlucky Morpheus。コミケのシーンを中心に活動を行なってきた10年選手のバンドであり、プレイヤー陣は実力派揃いで、メンバーにバイオリニストがいるのが最大の特徴だ。そして、そのポテンシャルは1曲目から発揮される。メロディックスピードメタルのど直球とも言える「Get Revenge On The Tyrant」で口火を切ると、Galneryus でも活躍するFUMIYAのハイパードラムと小川洋行の地面を這うようなベースが会場の床を揺らし、紫煉と仁耶のテクニカルなツインリードとJillの華麗なバイオリンが激しくも憂いを伴ったスケープを描き、冬黄がビブラートを効かせたハイトーンを轟かせる。続く「虚妄の恋人」では紫煉もマイクを握り、グロウルスタイルでツインヴォーカルに。Fuki Communeが昼間とすれば、Unlucky Morpheusの退廃的かつドラマチックなサウンドは深夜。どこか哀調を帯びた音世界が観る者を飲み込む。そして、“今日は美しきメロディックメタルの渦にあなたたちを招待します。歴史を塗り替える新曲!”と「CADAVER」と「REVADAC」を連続投下。ネオクラシカルなメタルチューンがフロアーを焚き付けるが、そのタイトルも含め、「CADAVER」の譜面を逆から演奏すると「REVADAC」になるという驚きの仕掛けがそこにはあった。

その後、9月にニューアルバムを、さらに同作を引っさげて初のワンマンツアーも開催することを発表し、「imagimak」をアコースティックバージョンでしっとり聴かせると、ツインヴォーカルによるファストナンバー「Black Pentagram」が再びメタラーたちを熱狂させる。ラストは「殺戮のミセリア」でヘドバンの嵐を巻き起こし、冬黄の咆哮のようなシャウトでジ・エンド。Unlucky Morpheusを初めて観る者も多かったと思うが、この圧倒的なテクと様式美サウンドに度肝を抜かれたことだろう。

Unlucky Morpheus

メタルとアニメとゲームと漫画と海の幸をこよなく愛する紫煉&天外冬黄とそれを支える重度のメタラーたちによって成り立っている音楽プロジェクト。

■ Gacharic Spin ■

白を基調とした衣装で登場したのはGacharic Spin(ハンバーガーもいるが)。1曲目「Never say never」からハイテンションなサウンドで観客の高揚感をぶち上げると、そこからはもう彼女たちの独せん場。ガチャダンJrのはづきも加わって、まい(Performer 1号)とのさまざまなフォーメーションで楽曲を盛り立て、「赤裸ライアー」ではふたりで紅白の毛振りを披露し、最後にまいがお馴染みのけん玉をキメてフィニュッシュ。このファニーなところも彼女たちの持ち味だ。また、「夢喰いザメ」では勇ましいシンガロングで会場の壁を震わせ、TOMO-ZOが歌う「ファイナルなファンタジー」ではサイリュウムがフロアーをTOMO—ZOのカラーでもあるピンクに染めあげる。

演者だけでなく、観客も巻き込んで場内の熱量をぐんぐんと高めていくのがGacharic Spinのライヴの醍醐味。もちろん、ガチャではワンバスで痛快なグルーブを生むはな、バキバキのベースで観客のテンションを引き上げるKOGA、屈託のない笑顔で壮絶なソロを弾くTOMO-ZO、精細かつ大胆な音色を奏でるオレオと、楽器陣のテクニカルのプレイも見逃せない。とにかく常に見せ場があるのだ。その後、“ライヴが好きな人=ライバー”をタイトルに掲げる「ゴー!ライバー」で会場は熱の塊となって、そのままラストの「BROKEN LOVER」でバースト。フロアー中の観客同士が肩を組んで一斉にヘドバンをする光景は爽快だった。

Gacharic Spin

ガチャリックスピン:2009年結成。ガチャガチャな個性炸裂のガチャピンサウンドに、はなの芯のある力強いヴォーカルと、オレオレオナの哀愁漂うヴォーカルが絶妙に絡み合い鮮烈なカラーを生み出し、観る者全てに衝撃を与えるほどの圧巻の演奏力、さらに躍動的かつ笑劇的なステージングで、誰もが楽しめるエンターテインメント性の高いライヴを展開。ギター、ベース、ドラムの3人はそれぞれ教則DVDをリリースするなど、メンバー個々でも精力的に活動している。14年10月にインディーズベストアルバム『ガチャっとBEST<2010-2014>』でメジャーデビュー。

■ DOLL$BOXX ■

トリを務めるのはDOLL$BOXX。“いくぞー”とのFukiの声からハードチューン「Loud Twin Stars」が叩き付けられ、それをオーディエンスがオイコールで迎え撃つ。続く破壊力抜群の「Sub-liminal」で早くもフロアーは興奮の坩堝に。そして、“4バンド、いろんなものを観たでしょう。ですが、私たちDOLL$BOXXが今日の出演者の中でもっともクールであることを証明しましょう!”とFukiのMCから披露された、右手を胸から斜め上45度にあげる振りの「ロールプレイング・ライフ」では、はなの高速ツーバス、Fukiの伸びやかなヴォーカル、オレオの多彩なキーボードの音色が重厚で勇壮な音空間を産み落とす。

昨年の活動再開後、ミニアルバム『high $pec』のリリースし、さらに全国ツアーも行なったDOLL$BOXXだが、本公演をもってひと区切りとなることが伝えられた中盤のMCをはさみ、“2012年、MVが物議を醸し出した曲”と紹介された「Take My Chance」からラストスパート。Fukiの超ハイトーン&はなのデスヴォィス&オレオのコーラスというトリプルヴォーカル、KOGAの攻めの5弦ベース、TOMO-ZOのライトハンドなど聴きどころ満載の同曲で観客のテンションをグッと引き上げる。1stアルバム『DOLLS APARTMENT』の楽曲も現在の彼女たちがプレイすることによって、重心が低くなり、激しさを増しているのも特筆すべきところだろう。ラストは「Shout Down」「KARAKURI TOWN」とスリリングなナンバーによる怒涛のラッシュからの「世界はきっと愛を知ってるんだ」。攻撃的でありつつも爽快さや広がりもある、復活後のDOLL$BOXXだからこそのナンバーが最後のステージを締め括った。

“DOLL$BOXX!”と会場に響き渡るアンコールを求める声に応えて再びメンバーが登場するが、はなとTOMO-ZOは疲れて帰ってしまったという...。そこでたまたま北欧のほうより遊びに来ていたMETALLIC SPINのノーズ(Dr ※“ノーズ”は日本語にすると“はな”だと本人談)とカワイ・トモーゾ(Gu)がヘルプに! さらに本日の出演者もステージに呼び込まれ、ISAO(Fuki Commune)と仁耶(Unlucky Morpheus)はギターを手にする。そんな豪華な面々で届けられたのはMichael Schenker Groupの「Armed And Ready」。Fuki&寺田恵子というパワフルなツインヴォーカル、間奏をISAO→仁耶→トモーゾというソロ回しで魅せたトリプルギターという最高&最強のエンディングで、約5時間におよんだ『DOLL$ FESTA』は盛大に幕を閉じたのだった。

DOLL$BOXX

ドールズボックス:2012年3月全国ツアー中のGacharic Spinとツアーサポートヴォーカルとして起用されたFukiとの出会いによって誕生。同年12月、お互いの魅力と武器がふんだんに味わえるアルバム『DOLLS APARTMENT』を発表。その後、それぞれの活動に戻っていたが、5年の歳月を経て再始動! 17年11月にミニアルバム『high $pec』をリリースした。

撮影:藤木裕之/取材:土内 昇

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    1.Strength

  2. 2

    2.輝く夜へようこそ!

  3. 5

    5.Bloody Rain

  4. 6

    6.Start Dash