いつか君が口にしてた願い事は、どこかで誰かとちゃんと叶えたかな。

 2018年10月31日に、男性シンガーソングライターデュオ“吉田山田”がニューアルバム『欲望』をリリースしました。今日のうたコラムでは収録曲から、これからの時期にピッタリな新曲「冬の星座」をご紹介。歌は、疾走感あるキラキラ明るいイントロで幕を開けます。でも歌詞に描かれているのは、もうそばにいない<君>との切ない記憶です…。

「来年の冬もまたここに来ようね」
「ずっとそばにいれたらいいね」
曖昧な約束ばかりだったな
ぼーっとして信号が青に変わる

冷えた風に胸が軋んだ 忘れようとしたくせに
君と出逢った季節になって思い出す
「冬の星座」/吉田山田

 <忘れようとしたくせに>、信号待ちのちょっとした時間、ふと思い出すのは<君>のこと。あの頃を振り返ると、二人が口にしていたのは<曖昧な約束ばかりだったな>と、後悔に似た感情がぼんやり広がります。残念ながら今は「来年の冬もまたここに来ようね」も「ずっとそばにいれたらいいね」も、叶わぬ約束になってしまったようです。

 きっと<ぼーっとして信号が青に変わる>のは人生も同じなのでしょう。前に進んでゆくための<青>のタイミングがあるのです。だけど、かつての<僕>は<ぼーっと>して、二人の信号が変わっていることに気づかなかったのではないでしょうか。本当は<君>が一緒に渡りたいと思っていたとしても。そんな背景は続く歌詞からも想像できます。

単純な言葉で話し合えたら
もっと答えは違ってたかな

空気みたいな二人になって 今は遠い街にいても
きっと君もあの星空を覚えてる

いつか君が口にしてた願い事は
どこかで誰かとちゃんと叶えたかな
深く息を吸い込めばぎゅっと痛む
白い息が音もなく空に消えた 君に会いたくなる
「冬の星座」/吉田山田

 「来年の冬もまたここに来ようね」「ずっとそばにいれたらいいね」…あの<曖昧な約束>を叶えるための<単純な言葉>はちゃんとあったはず。<いつか君が口にしてた願い事>を叶えるのは<僕>だったはず。それなのに<僕>は一人だけ“赤信号”のままで、二人は一緒に先へ進めなくて、やがて<空気みたいな二人になって>しまったのです。
 
 結果、月日が経っても、<今は遠い街にいても>、まだ<僕>は心が“赤信号”のままなのかもしれません。忘れられないし、<君もあの星空を覚えてる>と思いたい。それに<どこかで誰かとちゃんと叶えたかな>と、吹っ切るように<深く息を>吸い込んでみても、その<誰か>と<君>を想像するだけで胸は<ぎゅっと痛む>のだと思います。

 そして、吐き出した<白い息>には、切なさ、後悔、哀しみ、恋しさ、空しさ、言葉にし尽くせない様々な感情が入り混じっていることでしょう。ただ、それは恋と同じように<音もなく空に消え>てしまうんですよね…。それでも想いは消えることはありません。むしろよりいっそう強さは増して<君に会いたくなる>のでしょう。

冬の星座 君が指で探している
どれだろう?あれかな?なんて笑うから
君のせいだ 眩しくてぎゅっと痛む
何度でも何度でも何度でも
いつまでもいつまでもいつまでも また輝き出す
「冬の星座」/吉田山田

 サビで描かれるのは、眩しくて幸せであたたかな回想シーン。その二度と取り戻せない日々の輝きの分だけ<眩しくてぎゅっと痛む>切なさが伝わってきます。冬になるたび<君>を<何度でも何度でも何度でも>思い出してしまう<僕>は、いつか前に進める日がくるのでしょうか。だけど<いつまでもいつまでもいつまでも また輝き出す>そんな素敵な恋をした<僕>のことが羨ましくもなりますね…。
 
 是非、みなさんも冬の夜空を見上げながら、吉田山田「冬の星座」を聴いて「あのひと、今は何をしているかな?」「あのひとにもう一度、会いたいな」と、ちょっと切ない気持ちを重ねてみてください。

◆紹介曲「冬の星座」
作詞:吉田山田
作曲:山田義孝

◆6th ALBUM「欲望」
2018年10月31日発売

<収録曲>
M1.欲望
M2.Color
M3.拝啓
M4.冬の星座
M5.虹の砂
M6.エーデルワイス
M7.もやし
M8.貧乏
M9.もし
M10.赤い首輪
M11.つながる

※ボーナストラック盤のみ収録
M12.泣き笑い