しかし、それなりに恋愛を重ねてきたはずの誰でもいつでも【初恋】を経験することはあるんです。ちなみにドラマ“花晴れ”でも、ヒロイン・音(杉崎花)には小さい頃から婚約者(中川大志)がいて、高校生になった今も恋人としてお付き合いをしております。彼といるといつも心が穏やかで、ずっと笑っていられる。ずっと幸せ。これこそが恋なのだと信じて疑わなかったことでしょう。本来ならその婚約者が【初恋】の人ですよね。
うるさいほどに高鳴る胸が
柄にもなく竦む足が今
静かに頬を伝う涙が
私に知らせる これが初恋と
「初恋」/宇多田ヒカル
それなのに、出会ってしまった、もう一人の男性(平野紫耀)。第一印象は最悪で、結ばれるなんてありえないはずだった人。そいつといると、心がかき乱されて、自分が自分じゃなくなるみたいで、だけど…今まで知らなかった<うるさいほどに高鳴る胸>や<柄にもなく竦む足>や<静かに頬を伝う涙>を感じる。婚約者の彼を好きな気持ちはたしかなのに、この感覚は何…? 彼女は今、そんな想いの狭間で戸惑い揺れているのです。
人間なら誰しも
当たり前に恋をするものだと
ずっと思っていた だけど
もしもあなたに出会わずにいたら
誰かにいつかこんな気持ちに
させられたとは思えない
「初恋」/宇多田ヒカル
もしかすると【初恋】とは【人生最初の恋】という意味だけではなく【自分の初めてを引き出してくれた恋】を表す言葉でもあるのかもしれません。たとえば、何が恋かなんてよくわからないけれど<人間なら誰しも 当たり前に恋をするものだと>思い、普通に誰かを好きになって、恋人になって、恋愛をしてきたとします。とはいえ、人の本質はそう簡単に変わるものではありません。
どうしようもないことを
人のせいにしては
受け入れてるフリをしていたんだ
ずっと
もしもあなたに出会わずにいたら
私はただ生きていたかもしれない
生まれてきた意味も知らずに
「初恋」/宇多田ヒカル
いくつ恋をしたって<どうしようもないことを 人のせいにしては 受け入れてるフリ>してしまうような、良くないところは変われないし、それが原因で失恋を繰り返してきた可能性もあるでしょう。でも<私>は、あるとき、その弱さに気付くことができたのです。何故なら<あなた>に出会えたから。つまり【自分の初めてを引き出してくれた恋】=【初恋】をしたから。
それは今までしてきた、どの恋とも違います。だから何度も<もしもあなたに出会わずにいたら>…そんなことを深く考えて、生まれて初めて<生まれてきた意味>を全身全心で知ろうと“生きている”のではないでしょうか。そして、胸で、足で、頬で、初めての感情を<あなた>に感じながら【初恋】という言葉の本当の意味を知ったのではないでしょうか。
狂おしく高鳴る胸が
優しく肩を打つ雨が今
こらえても溢れる涙が
私に知らせる これが初恋と
I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you
「初恋」/宇多田ヒカル
歌のサビでは、まるで<狂おしく高鳴る胸>のように<優しく肩を打つ雨>のように<こらえても溢れる涙>のように、何度も<I need you>という言葉が繰り返されます。自分の初めてに出会って、いろんな気持ちが巡って、たどり着くのは、心に満ちてゆくのは、ただただ“あなたが必要”という一点の曇りもない想い。そんな純度の高さも、宇多田ヒカルの歌声からまっすぐに伝わってくるのです。
人を愛するということの美しさ、狂おしさ、原点を教えてくれる、宇多田ヒカルの「初恋」。是非、歌詞をじっくり味わいながら聴いてみてください。また“花晴れ”の登場人物の心情を重ねながら聴くと、その恋の切なさがより一層、わたしたちの胸にも広がります…!