悲しい話はもうたくさん、飯食って笑って寝よう。

キゲンよくやってる?
ニンゲンらしくやってる?

 そんなセリフが登場するのは“宇多田ヒカル”が出演している【サントリー 南アルプススパークリング】の新テレビCM『SWITCH&SPARKLING!』篇。YouTubeでは、60秒ver.が公開されており、ラストは「スマイルにスイッチだ!」というひと言で締めくくられます。そして、そのCMソングとして起用されているのが、2018年4月25日に彼女が配信リリースした新曲「Play A Love Song」です!

 歌詞には、まさにわたしたちがキゲンよく、ニンゲンらしく、スマイルにスイッチするためのメッセージが込められています。また、タイトルからは<僕>と<君>は“恋人同士”や“夫婦”であるイメージが浮かびますが、愛にもいろんな種類がありますよね。たとえば、大切な友を思い浮かべながら聴くこともできる。宇多田ヒカルがリスナーへ届けたい気持ちだと想像しながら聴くこともできる。そのように「Play A Love Song」は、聴く側が様々な想いを重ねられる楽曲なんです。

傷ついた時僕は
一人静かに内省す
深読みをしてしまう君は
不安と戦う

Hold me tight and don't let go
Why we fight I don't know

他の人がどうなのか
僕は知らないけど
僕の言葉の裏に他意などないよ
「Play A Love Song」/宇多田ヒカル

 傷ついたとき、みなさんにも様々な自己対処法があるでしょう。思いっきり泣いてみたり、激しく怒ってみたり。この歌の<僕>の場合は<静かに内省>して、自分の考えや行動を深く省みてみるという生き方をしてきた模様。誰かや何かに吐き出すわけではなく、一人じっくりと気持ちに折り合いをつけてゆくのです。それは、マイナスなことをわざわざ“言わない”という意志であるようにも感じられます。

 一方で<君>は<深読みをしてしまう>人。傷つけば「自分が何か悪いことをしたのか」「嫌われてしまったのか」と考え、そういった<不安>と戦うのでしょう。すると、言わない<僕>と深読みする<君>がぶつかってしまったときは大変です。きっと<君>の心では事実以上に問題が膨らみ、不安に満たされ、お互いすれ違ってしまうはず…。だからこそ<僕>は<僕の言葉の裏に他意などない>と、言葉で<君>を強く抱きしめ、安心させたいのではないでしょうか。

長い冬が終わる瞬間
笑顔で迎えたいから
意地張っても寒いだけさ
悲しい話はもうたくさん
好きだって言わせてくれよ
Can we play a love song?
「Play A Love Song」/宇多田ヒカル

 こちらはサビフレーズ。尚、この曲について宇多田ヒカルは「(CM)撮影現場が極寒の地だったからこそ、その先にある、長い冬が終わる瞬間に思いを馳せられました」とコメントしておりました。もしかしたら<僕>も<君>も、それぞれ<長い冬>のような人生を送ってきたのかもしれません。ゆえに<悲しい話はもうたくさん>であり、極寒が<終わる瞬間>を待ち焦がれているのです。しかし、今の二人には“愛”という希望があります。やっと人生をスマイルにスイッチするためのメッセージ。それが<好きだって言わせてくれよ Can we play a love song?>なのだと思います。

友達の心配や
生い立ちのトラウマは
まだ続く僕たちの歴史の
ほんの注釈

Hold me tight and don't let go
Why we fight I don't know

僕の親がいつからああなのか
知らないけど
(大丈夫、大丈夫)
君と僕はこれからも成長するよ
(大丈夫、大丈夫)
「Play A Love Song」/宇多田ヒカル

 続く歌詞には<長い冬>や<悲しい話>に通ずるフレーズが綴られております。友達から「大丈夫?」と心配されるような出来事。生い立ちや環境、家族に関係するトラウマ。それらが<僕たちの歴史>には刻まれているのです。だけど<僕>が伝えたいのは、そんなものは単なる過去の補足説明であり、大切なのは“今とこれから”なんだよ、ということ。さらに(大丈夫、大丈夫)と、2回繰り返される言葉は、一つは<君>に、一つは<僕>に唱えるおまじないのようにも感じられますね。全てを肯定する魔法の<大丈夫>です。

落ち着いてみようよ一旦
どうだってよくはないけど
考え過ぎているかも
悲しい話はもうたくさん
飯食って笑って寝よう
Can we play a love song?
「Play A Love Song」/宇多田ヒカル

長い冬が終わる瞬間
笑顔で迎えたいから
意地張っても寒いだけさ
悲しい話はもうたくさん
好きだって聞かせてくれよ
Can we play a love song?
「Play A Love Song」/宇多田ヒカル

 そして、歌の終盤。<飯食って笑って寝よう>なんてフレーズは本当に、キゲンよく、ニンゲンらしく、スマイルにスイッチするため大切なものですよね。また、歌の中で<僕>はわりと冷静に穏やかに<君>に寄り添ってきたように思えます。だけど、冒頭のサビでは<好きだって言わせてくれよ>と歌っていたフレーズが、ラストでは<好きだって聞かせてくれよ>に変わっているところから、本当は<僕>だって不安で<君>からの“愛”に救われていることが伝わってくるんです。
 
 照らし照らされながら、飯食って笑って寝て、ただ愛のある暮らしを繰り返していけば、いつのまにか長い冬は終わる。その瞬間を二人で笑顔で迎えられる。宇多田ヒカルの「Play A Love Song」にはそんなあたたかい希望も描かれております。今、外は春の陽気に満ちていますが、心は長い冬が終わっていないというあなたへ。この歌が届きますように…!