愛と呼ぶにはまだあどけないから、会えないと恋は溶けちゃうの。

いつでも君とあたし 手をつないで
どこまで遠いところでも 歩いてこうよ
「大切な君へ」/井上苑子

未来のことなんてさ まだ分からないけど
やっぱ考えちゃうな ずっと一緒がいいな
「だいすき。」/井上苑子

 2015年のメジャーデビュー以降、様々な胸キュンラブソングを生み出してきた井上苑子。そんな彼女が、2017年7月26日にニューシングル「なみだ」をリリース!表題曲のプロデュースを担当したのは、SUPER BEAVERの柳沢亮太です。先日、歌詞の先行公開がスタートし、早速、注目度ランキング首位に君臨!デイリーランキングでも3位を記録しました。実はこの新曲、これまでのドキドキワクワクなラブソングとは一転。メジャーデビュー以降のシングルとしては初の失恋バラードなんです。

最高気温が何度だとか
今年は海にも行けないなだとか
話があると言ったあなたは
まだ目も合わせない

あなたが夢にまっすぐなことも
今はそれが一番だってことも
あたしはとっくに気づいてるよ
ねえ ねえ
「なみだ」/井上苑子

 今は自分の夢で精一杯な彼が、これから彼女に伝えようとしている“話”とは、お別れの話。もしかしたら、夢を追うためにこの街を離れるのかもしれません。ただ彼は、優しさと心苦しさから、なかなか本題を切り出せずにいる模様。しかし、いつも頑張る“あなた”の姿を一番近くで見てきた“あたし”は、もうとっくに全てに気づいているのです。<ねえ ねえ>、彼の横顔に、心の中で呼びかけるこの声には「話して大丈夫だよ」という思いの他に、どれほどいろんな感情が含まれていることでしょう…。

愛と呼ぶにはまだあどけないから
会えないと恋は溶けちゃうの
どちらが悪いわけじゃない
でも あなたは「ごめん」と言うでしょう?
「なみだ」/井上苑子

 冒頭でご紹介した「大切な君へ」や「だいすき。」の女の子は、どこまで遠いところでも歩いてゆこう、未来のことなんてわからないけどずっと一緒にいたい、と歌っていました。もちろんその気持ちだって本物。でも、いざ<未来だなんて いつまでも 未来のままだと思ってた>ことが“今”となったとき、はじめて<愛と呼ぶにはまだ あどけないから 会えないと恋は溶けちゃう>二人の現実を知ることもあるのです。好きだけじゃどうにもならないこともあるということ…。だからこそ、彼女が選んだ道は“遠距離恋愛”でも“夢と恋の両立”でもありませんでした。

好きだけど 好きだから 好きなまま いて欲しい
「あのさ」と言った 口元が
何を堪えてるかわかるよ
大丈夫 あたしなら大丈夫って 笑うんだ
精一杯の背伸びをすれば あなたが
今すぐ走り出せるなら
この夏に閉じ込める
あたしの本当の気持ちを

大好きだったよ
大丈夫なんかじゃないよ
あなたについた最初で最後の嘘
夏の忘れもの
「なみだ」/井上苑子

 それは<あなたが今すぐ走り出せる>ように、あなたに「ごめん」なんて言わせないように、明るくサヨナラをすること。大好きだったよ、大丈夫なんかじゃないよ、そんな<本当の気持ち>に彼女は<あたしなら大丈夫>という笑顔でフタをするのです。そして歌詞の中にさえ一度も登場することのなかった「なみだ」と一緒に<この夏に閉じ込める>のです。また、余談ですが「なみだ」を聴いていたら、あるアーティストの歌が思い浮かびました。

スキダケドスキナノニスキダカラスキナンダ
スキヤケドスキヤノニスキヤカラスキヤンカ

覚悟はもうしてるって
大阪のおばちゃんと呼ばれたいんよ
家族と離れてたって
あなたとここで生きていきたいんよ
「大阪LOVER」/DREAMS COME TRUE

 ドリカムの「大阪LOVER」で遠距離恋愛をしていた女の子もまた<好きだけど 好きだから>…そんな思いのなかでグルグルと悩んでおりました。きっと“会えなくて恋が溶けちゃいそう”になったことだって何度もあるでしょう。しかし、彼女の場合は<大阪のおばちゃんと呼ばれたい>、<あなたとここで生きていきたい>という覚悟へと繋がったのです。

 一方で、「なみだ」のように遠距離を選べる二人にはなれないこともあります。未来予想図は必ずしも、思ったとおりにかなえられてくとは限らないんですよね…。ただ「大阪LOVER」とは形が異なりますが、「なみだ」の女の子もまた、愛ゆえの覚悟をしたことは確かです。彼女は<愛と呼ぶにはまだあどけない>と歌っていますが、彼の幸せのために自分の<本当の気持ち>を言わないのは“離れるという形の愛”でしょう。誰でもできる選択ではありません。では、みなさんが“あたし”だったら、どのような道を選ぶと思いますか…?

◆NEW SINGLE 『なみだ』
2017年7月26日発売
初回限定盤(CD+DVD) ¥2,000(tax in.)
通常盤(CD) ¥1,200(tax in.)