こんなに“当たり前”を大事だと思いたいのに。

 2022年3月9日に“井上苑子”がEP『24歳 / 東京』をリリースしました。前作より約1年ぶりとなる本作。2021年12月に配信リリースされた楽曲「24歳」に加え、ノスタルジックな音色が随所に散りばめられながらも新たな幕開けを感じさせる楽曲「東京」の2曲を表題に据えた、全5曲入りのEPとなっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“井上苑子”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、今作「24歳」と「東京」についての想いです。彼女が大切にしてきた“当たり前”が、大切にしたい“当たり前”が、突然奪われたコロナ禍だからこそ、届いてほしいこの作品。是非、歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



2022年3月9日(水)に新しい曲たち「24歳 / 東京」をリリースします。まずはこの時期にリリースできることに感謝しています。この時期だからこそ、届いてほしい作品です。
 
これまでの井上苑子の作品はラブソングをメインにたくさん書いてきました。私自身、昔からラブソングが好きで、いつも支えられたり癒されたりしてきたので、自分でも書くようになったのですが、約2年前から、コロナ禍で突然“当たり前”の生活が出来なくなって。その中で生きる自分と向き合い、今回の曲を書きました。
 
私はラブソングでも“当たり前”という言葉をよく使うのですが、歌詞を書く上でも、常々、生活の中の“当たり前”を大事にしたいと心掛けてきました。
 
朝が来る幸せ。
ご飯が食べられる幸せ。
ぼーっとできる幸せ。
悩める幸せ。
笑える幸せ。
“大切”がある幸せ。
 
今、この時代を生きていて、“当たり前”だったことたちが、一層尊く感じて。こうやって自分の幸せを並べると些細なことも手放したくなくて。もっと増やしたいと思ってしまっている自分がいることに気付きました。
 
そういうことに気付かされるような世の中になっていることは、少し有難い気もするぐらいですが、そういう世の中になってしまっている事実に胸が痛みます。
 
24歳」という曲は、そんな今を生きる私を残しておきたくて、自然と手が進み、書いていた曲です。リリースの為に書いたというより、とにかく自分がひたすらに書いて、なんとなくマネージャーさんに聞いてもらったら、リリースできることになりました。自分だけの曲にならなくて、嬉しく思います。
 
逆に、「東京」はずっとリリースしたかった曲です。今の私が生きる、東京という大切な街を私以外の人に届けたかった。大切な街だからこそ慎重になりすぎていて、聞いてもらうのが怖かったんです。でも、大事なのは今の私が描く「東京」だと思い、リリースすることになりました。
 
こんなに“当たり前”を大事だと思いたいのに、ある日は、そんなことを思えず、心が狭くなって泣きじゃくることもあると思います。泣いたあと、目が腫れて、“誰これ、ブスすぎる!”って、いつもみたいに笑えていたら、きっとそれが私の当たり前で、幸せなんだと思います。そんな日を大事にしていたいです。

<井上苑子>



◆紹介曲「24歳
作詞:井上苑子
作曲:井上苑子

◆紹介曲「東京
作詞:井上苑子・YUZURU KUSUGO・柴山慧
作曲:井上苑子・YUZURU KUSUGO・柴山慧

◆EP『24歳 / 東京』
2022年3月9日発売
初回限定盤 TRAK-0174~175 ¥2,600(税込)
 
<収録曲>
1.ことば
2.東京
3.透明人間
4.別れ話をされました
5.24歳