過去があって、今がある。

 2023年3月31日に“井上苑子”がEP『23.3.31』をリリースしました。2022年2月に単発ドラマとして放送された前作の見逃し配信では異例の200万回超えの再生数を記録した作品。「ABEMA」・「ABCテレビ」連動スペシャルドラマ『今夜、わたしはカラダで恋をする。』そのSeason2の第1話と第3話の主題歌の書き下ろしを担当し、2023年2月25日に先行配信したシングル「かさぶた」を含めた全4曲が収録されたEPとなっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“井上苑子”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、今作『23.3.31』にたどり着くまでの心の軌跡のお話です。自分の長所にも短所にも向き合って、もっと自分を知って。そうやって出来上がった今の井上苑子の言葉を、歌詞と併せて受け取ってください。



生活の一部を切り取った歌が好きで
誰もが想像できる歌詞が好き。
頭を捻って難しい言葉を並べても
私らしくなくて嘘になる。
そんな“らしさ”に
すぐに評価をつける世の中には見向きもせず
今は自分の道をただまっすぐ歩いている途中。
 
私にはいくつかのトラウマがあって
まだ青臭いニキビ面のころ言われた言葉がいちばん大きいものになった。
今思えばあの頃はとてつもなく敏感だったから、とにかく全部に反論をして“天邪鬼だね”って言われた(今も変わっていないところもあるけど)。
反論するときの言葉は多分、支離滅裂で説得力に欠ける言葉だったが、その行動だけで自分を守っていた。
私が放ったガタガタで切るにも切れないような刃は、磨きがかかって洗練された強烈な刃に変わって自分に返ってきて、それが今でも跡に残っている。
ブーメランってやつ。
自分の行いの結果である。
 
そもそもの性格的にはとてもポジティブなタイプなのにネガティブになってしまっていた思春期だったが、
その頃は根拠のない自信もあって、
自分なら大丈夫だと自己暗示したり、
人に頼ったりもして、なんとかやっていたし
楽しかったことも沢山あった。
 
だから、そのときのことを悔やんでいないし、
私がああでなければ、今がないから。
今周りにいる大切な人に出会えてないと思うと
そのときの私を否定しないし、なんなら愛おしくさえ思う。
 
酷かったなぁと思う自分の細々とした性格に気づいた先で、どんな言葉や行動をとってみるか。
それが大事だと思った。
 
自分の長所ってなんだろう。
どうしたらそこを強みにして戦えるのか。
弱点ももちろん考えた。自分と向き合った。自分を知った。
そんなことを日々気にしていたら
ポジティブな今の私が出来上がった。
 
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「23.3.31」は今の私を詰め込んでいます。
恋の曲ばかりですが、
考え方が変わると、もちろん書く曲も変わっていくと思います。
昔の自分を掘り起こして書いた箇所も、
今の自分と向き合って出てきた言葉もあります。
今は今の私。
過去があって、今がある。
きっとこの先、また新たに目標ができて、
“なりたい自分”に向かって変わっていくと思うので
「23.3.31」で
今の井上苑子を感じていただきたいです。

<井上苑子>



◆EP『23.3.31』
2023年3月31日発売

<収録曲>
1 かさぶた
2 陽だまり
3 シアワセ
4 となりあい