さよならをぼくらはどこか信じていない。

 2024年3月18日に“井上苑子”が新曲「一縷 feat. 長谷川怜央」を配信リリースしました。同曲は3月29日公開の映画、私の卒業プロジェクト第5期、『こころのふた~雪ふるまちで~』主題歌。卒業はゴールではなく希望に満ちた新たな始まりと捉える強いメッセージが込められた1曲となっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“井上苑子”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「一縷 feat. 長谷川怜央」にまつわるお話です。自身の卒業時、抱いたものが異なっていたという井上苑子と長谷川怜央。それぞれの見ていたものの違いとは…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください!



この楽曲は、オーディションで私のデュエット相手が決まってから楽曲を作るという、今までにやったことがない作り方で制作が始まりました。
男性とのデュエットソングを自分で作ったことがなかったので、どんなメロにしたらいいのかわからず最初は頭を抱えましたが、少しずつAメロから物語のイメージを膨らませていくような形で作っていきました。
 
オーディションで選ばれた長谷川怜央さんと
私のマネージャーさんと3人で、
カフェでこの曲の方向性などの打ち合わせをしました。
私の卒業プロジェクト第5弾の映画
『こころのふた~星ふるまちで~』の主題歌ということが決まっており、
テーマは“卒業”というのも決まった状態での制作でした。
 
長谷川さんとお話をしているときに、長谷川さんの卒業時の心境が
私が感じたものと真逆であると伺い、そこの違いも曲で描きたいと思いました。
 
長谷川さんは卒業時、
未来への希望に溢れていて、ワクワクしていたとおっしゃっていましたが、
私は不安と寂しさでいっぱいでした。
 
大人に“おめでとう”と言われると
友達と、此処と、離れなければいけないんだということを余計に認識させられた気がして悲しかった。
明日からは学校に来られず、友達にも会えず、1人なのかな、どうやって生きていこうかなと不安になってしまった。
音楽はやっていたけど、やっぱり学校生活で出会った友達との日々が好きすぎたんですよね。
 
今までの自作曲は、私だけの感覚で書き始めてしまいますが、
長谷川さんのお話を聞いてから書くのは、
今まで書いてきた感覚とは違い、新鮮で面白かったです。
 
卒業時の私と長谷川さんは目を向ける方向が違ったんだと思いました。
 
私は、毎日当たり前に会えていた友達に会えなくなる現実。
長谷川さんはこれからの計画をしていて、それを実行にやっと移せるぞ、という未来。
当時の私に会えるなら、あまり悲しまなくていいよって言ってあげたくなります。
仲のいい友達とは今でも会えてるし。笑
 
現実を見て悲しくなる人と、
未来に期待してワクワクする人、
その二つの感情がのった曲を書こうと思い
 
サビは
<さよならをするみたい>
<さよならをぼくらはどこか信じていない>
という曖昧なものにしました。
 
ただ、悲しい、切ないだけではなく、
大人になった今、
17、18歳の頃に抱いた未来への期待というのは、すごく特別だったな、と思うので
その特別キラキラしたものが伝わるサウンド感に仕上げていただいています!
 
今回の卒業ソングも、大人になった今、
少しずつ振り返りながら、そして新しい感情を長谷川さんからいただきながら、新鮮に書くことができて嬉しかったです。
 
「一縷feat.長谷川怜央」
とても気に入っています。
いろんな世代の方に愛される楽曲になったら私は嬉しいです。
 
<井上苑子>



◆紹介曲「一縷 feat. 長谷川怜央
作詞:井上苑子
作曲:井上苑子