実は物凄く恥ずかしい事を曝け出し合っていると気がつく。

 2021年12月1日に“吉田山田”ニューアルバム『愛された記憶』をリリースしました。吉田山田初の試みとして兼ねてから親交のあるアーティスト、wacci、チャラン・ポ・ランタン、→Pia-no-jaC←、ワタナベタカシ、木田健太郎(リアクション ザ ブッタ)とのコラボ曲が収録。全11曲入りのアルバムとなっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“吉田山田”の吉田結威と山田義孝による歌詞エッセイを3日連続でお届け。今回は第1弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「それでも」のお話です。wacciとの共作によるこのラブソングは、一体どのように生まれたのでしょうか。是非、歌詞と併せてエッセイをお楽しみください…!



今回のアルバムで、様々なアーティストとコラボさせてもらって気付けたことは本当にたくさんあって、その中でも特に収穫だったのが、「コミュニケーションをとることの楽しさ」でした。
 
コミュニケーションをとることは、誰もが多かれ少なかれ日常生活の中でやっていることなのですが、それが「後世に残る作品になる」というハードルをひとつ設けることによって、より密度の濃いコミュニケーションが必要になります。しかもお互いに音楽を生業にしている者同士ですから。その作業はとても繊細で、実は難しく、刺激的で楽しい作業なんだと、改めて再確認することができました。
 
これまで長い時間をかけて挑戦と失敗と成功を重ねて、丁寧に答え合わせをしてきた山田とは、実は物凄い速さでコミュニケーションがとれるようになっていたことにも改めて気付くことができました。
 
まだ慣れていない人と、お互いに人生をぶつけあってモノを作っている時の、独特の緊張感を久しぶりに感じることができました。この感覚は今後また「吉田山田」で曲を作る時にいい刺激になると思います。
 
その中でも、この「それでも」という曲は、ライバルでもあり、友でもあり、ファンでもあるwacciと作った一曲です。それはそれは刺激的な時間でした。
 
曲が完成してから、幾度か歌っていくうちに気が付いたのは、この曲は「正しさ」とはなにかを歌っているんだなということ。
 
「正しさ」と「感情」の間でずっと揺れている主人公。こんなの、男が3人顔つき合わせて作るには一番向いてないテーマです。後になって気が付きました。そりゃ三者三様全く違った価値観があるはずです。人間の最も「個性」が現れる部分といっても過言ではないでしょう。よく3人共が納得出来る置き所を見つけられたなと、今になって感心してしまいました。でもそれも、同じ時代をそれぞれの場所で闘ってきたミュージシャン同士の信頼があったからこそできたことなのかもしれません。
 
<吉田結威>
 

気がつけばデビューしてからの12年間でリリースした楽曲は100曲を越えている。その半分以上が2人で歌詞を紡いだものだ。慎重に、そして互いのアイデアを尊重しながらもお互いの歌詞を書き足し、書き換えながらのキャッチボールで1曲を作っていく。当たり前に続けている作業中、ふと我に返り、実は物凄く恥ずかしい事を曝け出し合っていると気がつく。
 
恋愛の曲であれば特に。
 
心のチンチンを隠していては人の心に刺さる良い曲は作れないからだ。背伸びした歌詞、自分を良く見せようと選んだ言葉、本音を隠した上辺だけの歌詞はお互い分かってしまう。改めて2人で歌詞を紡ぐ事の異常性と大変さを確かめた。そして良い化学変化が起きた時の感動は何倍にもなる事も僕等は知っている。
 
今回のアルバム『愛された記憶』は、これまで殆どして来なかった挑戦が詰まっている。「コラボ」とは違う、1から一緒に作っていく「曲の共作」がその1つ。心許せる盟友と呼べるアーティストとでなければ絶対に成功し得ない挑戦だ。そんなオファーを快く引き受けてくれたアーティストの1人が、wacciの橋口君だ。共作するにあたって、彼が最初に僕らのデモの音源から選んだ曲の方向性は「恋愛ソング」。心のチンチンを見せ合う姿勢だった。
 
暫くして第一稿が橋口君から送られてきた。第一稿にも関わらずサビだけ、とか1番だけ、とかでは無く既にフル尺が出来上がっていた。フルチン状態で届いたのだ。飾らず、そしてありのままの自分を隠さず曝け出した本当に男らしいものだった。その素晴らしい歌詞とメロディに感化され溢れた僕等のアイデアと感性も重ねて「それでも」の歌詞とメロディが出来上がった。アレンジはwacciの小野君、そして曲の演奏はwacciメンバー全員で作り上げてくれた。僕等2人だけでも、そしてwacciだけでもきっと生み出せなかった素晴らしい曲が完成した。
 
心から好きだと思える曲がまた1曲増えた。
wacciメンバー全員に感謝します。
 
是非ここに書いた文章を全て忘れて、まっさらな気持ちで1曲聴いてください!
 
<山田義孝>



◆紹介曲「それでも
作詞:吉田山田・橋口洋平(wacci)
作曲:吉田山田・橋口洋平(wacci)

◆8th ALBUM『愛された記憶』
2021年12月1日発売
通常盤(ボーナストラック入り) PCCA-06086 ¥2,970(税込)
 
<収録曲>
M1. 世界が変わる
M2. ひとつぶ 
M3. こんがらがって
M4. 才能開花前夜  
M5. 好き好き大好き
M6. グレープフルーツ
M7. 鳥人間になりたい
M8. おばけ
M9. それでも
M10. 愛された記憶
M11. てと手
BONUS TRACK. イ~ハ~