Kitri

もう会えない人に夢の中で逢えることができたなら。

 姉のMonaと妹のHinaによる、ピアノ連弾ボーカルユニット“Kitri”が、3作連続配信シングルをリリース!6月には第1弾、初のバラードシングル「Lily」を配信リリース。8月には第2弾、シャッフルビートでロックな味わいのシングル「人間プログラム」をリリース。10月にはどのような楽曲がリリースされるのが、お楽しみに…!是非、彼女たちの心の奥底に刺さるリリックと癒しの歌声をご堪能あれ…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“Kitri”による歌詞エッセイを第1弾~第3弾でお届けいたします。今回はその第1弾!3作連続配信リリースが決定してからの想い、そして第1弾シングル「Lily」にまつわるお話を、Mona目線、Hina目線、それぞれで綴っていただきました。是非、楽曲と併せて彼女たちの言葉を受け取ってください。

~歌詞エッセイ第1弾:「Lily」~

<Mona>

一度で終わらない楽しさが好きだ。映画のエンドロールの後におまけの映像があると期待が膨らむし、初めて行くお店でランチをしたらデザートも味わってみたい。スタンプラリーで未完成のカードを眺めて次はどこへ行こうかと考えるのもやってみたい。

6月、Kitriにとって初めての配信シングル3作連続リリース企画がスタートした。この企画を考えていた寒い冬の頃は軽やかな気持ちだったことを覚えている。「面白そうですね。早く発表したいなぁ」なんて言ってスケジュール帳にリリース日を書き込んでいた。

そんな中、今まで当たり前にあった日常は少しずつ形を変えていき、花の香りがしないまま春が過ぎた。自然とこの連続配信企画の持つ意味合いと私の気持ちは変化していた。辛い思いをしている人や音楽で癒しを求めている人に、ほんの少しでも楽しい時間を届けたい。3度味わってもらえるこの企画が誰かの小さな希望になればと願いながらリリースを迎えた。

第一弾の「Lily」
百合の花をイメージしたこの曲は、百合の開花時期に合わせて6月のリリースとなった。ストリングスアレンジを担当して下さった網守将平氏、演奏で参加していただいた吉田篤貴カルテットの皆さんの手によって美しく幻想的な音楽へと昇華し、初めて完成した曲を聴いたときは鳥肌が止まらなかった。

人生は、出会いがあれば別れがある。これまで色々な歌の中で聴いてきたし、どこかで誰かに教わったこともある。節目節目で自分自身も体験してきたはずだ。それなのに、これまで別れを知らなかったかのように、自分ではどうすることもできないようなやりきれない気持ちになる時がある。

そんな時、誰かに思いを打ち明けると言うよりは黙々と時間が過ぎるのを待つ。それでもどうしようもない時はピアノに触れてみる。ピアノは聞き上手だ。作曲で上手くいかない時は無言で待っていてくれるし、ちょっとデタラメな即興ソングも許してくれる。それでいて話し上手でもあって、私の気持ちを驚くほど素直に音で表現してくれる。素敵な友達だ。

確かあれは暑い夏の日だった。私は無性にピアノに話しかけたくなって、心のおもむくままに音を鳴らしてみた。言葉は発さなかったけれど、なんだか痛みを感じる音だった。思うままに続けて弾いた。後に「Lily」のイントロ部分となるそのメロディーは、その時の私にとって、悲しみを掬い上げるような音だった。

ふいに生まれたこのメロディーを音楽として形にしたいと思った。その日のうちにワンコーラスを仕上げて、すぐにHinaに聞いてもらった。この曲において私は全てをメロディーに落とし込んでいて、歌詞が浮かばなかった。というより、普段から自分の思いを静かに秘めているHinaなら、このメロディーにぴったりな歌詞を書いてくれるだろうと思っていた。曲を渡した翌日には歌詞を書き上げてくれた。

「もう会えない人に夢の中で逢えることができたなら」
私はこんなことが言いたかったんだなと、Hinaの歌詞が教えてくれた。普段、私たちは滅多にお互いの感情を伝え合うことをしないけれど、音楽の中で思いを共有でき、繋がりあっていることを感じた。

小さな部屋で生まれた曲を、遠くにいる誰かが受け取ってくれる。もしかしたら、たった今誰かが聴いてくれているかもしれない。私にとって、すごく特別なことだ。私も改めてこの曲を聴いてみよう。もしまたやりきれない気持ちになった時、今度はそばにピアノとこの歌がある。

<Hina>

「メロディはまさに音楽の花である。」どこかの作曲家がそう言ったらしい。それを実感する出来事が私にも訪れた。

ある夏の昼下がり、季節の変わり目で風邪を引き、ぼんやりしていた私の寝床に新しいメロディが舞い込んできた。柔らかく流れるピアノと透き通った歌の旋律。「綺麗」という言葉だけでは飽き足らず、「優しい」と形容するには物足りない。まさに、ひとひらずつ舞う花のようで、その儚さに私は一瞬で魅了された。あの日のことは、未だに強く記憶に残っている。

それはそうと、いつもMonaから新曲を聴かせてもらう時は、どうしようもなく胸が高鳴る。どんな音だろう、どんな言葉を書こう、どんな気持ちを込めようか、と様々な想像を巡らす楽しいひと時である。

中でも「Lily」は、私の琴線に直接触れてきた曲であり、その空気感や雰囲気を掴むのは容易いことだった。

揺れるカーテン。隙間から溢れる光。もう会えない誰か。会えるのではないかという期待。温かい思い出。そうした一つ一つを、生命の美しさとともに表現するべく、丁寧に慎重に言葉をのせていった。あくまでも情景とそこにある愛のみを描いてみよう。心情は聴いてくれる人それぞれに任せることにしようか。そんな風にして、この曲の歌詞が完成していった。まるで一枚の絵画を見ているようだ…そんな感覚に陥ってもらえれば、こちらの思う壺である。

時が過ぎ、いよいよ本番レコーディングの日。ただひたすら祈りを込め、歌を重ねた。聴いてくれる人の心に響いてほしい、今はいない誰かにも届いてほしい、と考え目を閉じる。そこから先は何も思い出せないほどに集中していたようだ。ありったけの精神を歌に注ぎ込んだことだけは確かである。

出来上がった音を聴きながらリリースを待ち望み、新しい春を迎えた私たち。新型コロナウイルスの影響に伴い、世界中のあちこちで不安が募る日々が始まった。人に会うことはおろか、外に出ることさえ大きな緊張を強いられる状況。ツアーも延期となり、少しばかりの空白ができてしまった。

そんな今、自分にできることは何かと考えてみたが、何のことはない。答えはとてもシンプルに、音楽を届けることだった。待ってくれている人に楽しんでほしいという思いは、より強まっていた。そうして二か月に一度、新しい曲を配信することとなった。嬉しかった。音楽を届けられるということが。それまで当たり前だったことも、全てが有難いことだったんだと分かり、思わず手を合わせた。また楽しみがひとつ増えた。

3作のうちの第一弾が「Lily」。百合の花にちなんだタイトルから、初夏に聴いてほしい曲だと感じていたため、ちょうど良い時期にリリースできたと思っている。

近頃は大切な人と会うのが少し難しくなった。それでも大切に思う気持ちがあれば、心の中でいつでも会えるということ。その人と過ごした時間や思い出が空白の時間をも彩ってくれるということ。今だからこそ届けたい想いを沢山閉じ込めたこの曲が、誰かの元で、その人なりの愛を感じてもらえる音楽になっていればいいなと願う。

リリース後、色んな人から貰った嬉しい言葉たちを何度も思い返し、噛み締めている。胸が一杯になりつつ、今日もこの曲を聴いてみようと思う。

<Kitri>

◆紹介曲「Lily
作詞:Hina
作曲:Mona

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