必要なのは、少しの勇気と優しさだけだ。

2021年11月17日に“Kitri”が初のシングルCD「ヒカレイノチ」をリリース!今作は、10月6日より毎週水曜日24:00~テレビ東京ほかにて放送開始予定のTVアニメ『古見さんは、コミュ症です。』のアニメ化に伴い、主人公の気持ち共感したKitriが書き下ろした2曲になっており、エンディング主題歌の「ヒカレイノチ」と第1話のエンディングのために特別に制作した「シンパシー」が収録されます。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Kitri”による歌詞エッセイを2ヶ月連続でお届け!第2弾を執筆してくださったのは、Hinaです。新曲タイトルの「シンパシー」は“思いやり”や“共感”を意味する言葉。シンパシーとは、わたしたちにとってどんな力を持つものなのでしょうか。是非、歌詞と併せて、Hinaの想いを受け取ってください。



夏目漱石はこう言った。
「呑気と見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする。」
 
人の心の内というのは、見かけだけでは分からないものだなとつくづく思う。世の中には優しさによって生まれた嘘もあれば、親切を装った悪もある。悲しみを押し込んだ笑顔があれば、苦しみの中に思わぬ幸福が隠れていることもある。
 
自分のことであれば容易に説明がつく感情も、他人のこととなると途端に難しくなる。それはみんな違う人間だからである。顔や身体といった見た目から、生まれ育った環境や出会ってきた人、性格や考え方、生き方まで人それぞれだ。
 
それでも多くの人は相手の気持ちを推し量る努力をする。コミュニケーションを取って解決することもあれば、その過程でぶつかったり悩んだりすることもあるが、どちらにしても気持ちを分かり共感したいという気持ちによるものである。
 
誰かの心の中に悲しみや怒りといった負の感情を垣間見た時、自分の中に思いやりというものが誕生する。これがシンパシーと呼ばれるものだろう。たとえ相手と同じ気持ちにはなれなくても、寄り添いたいという気持ちはある。たとえ想像した気持ちに間違いや勘違いがあったとしても、相手に対する思いやりの気持ちは本物である。そしてその人のことが大切であればあるほど、シンパシーは確かなものになるのだと思う。
 
自分の気持ちを曝け出すのは勇気のいることだが、お互いに本音を伝え合うことができた時、その人の意外な一面や知らなかった部分を知ることになる。
 
Kitriとしてデビューしたての頃、自分のやるべきことに精一杯で周りが見えていなかった時期がある。Monaとも上手に連携が取れず、お互いに声をかけあったり話し合ったりする余裕すら、十分に持つことができなかった。しかし後になって話してみると、案外同じような気持ちでいたことが分かったりする。思いを伝えることは大事なんだということをKitriになって改めて実感しているところである。
 
相手の考えていることが分かるかどうかは問題ではない。自分がその人にどんな言葉をかけたいのか、どんなことをしてあげたいのか、それさえ分かっていれば良いのではないだろうか。自分の行動によって相手がどう思うかまで考えて疲れてしまうこともあるかもしれないが、それでも良いと思う。シンパシーという名の優しさは、遠回りをしながらも必ず相手に伝わるものだからだ。そして伝わった先で、また新たな優しい気持ちが生まれるのだ。
 
「やらない後悔よりやる後悔!」というのは最近の私の口癖であるが、一度きりの人生、思い立ったら迷うよりやってみることにしている。自分の気持ちを素直に伝えるということも、他人を思いやるということも、やってみて初めて見える世界があるのだろう。そこに必要なのは、少しの勇気と優しさだけだ。
 
ようやく初めてのシングルCD『ヒカレイノチ』のリリース日を迎え、期待と感謝の気持ちでいっぱいだ。テレビアニメ『古見さんは、コミュ症です。』の第一話放送後、第一話特別エンディングの「シンパシー」に対して、世界中の方々から嬉しいコメントを沢山頂いた。その言葉一つ一つを胸に、音楽をもってお返ししていきたいと思う。悲しい音も幸せな音も鳴らしながら。
 
<Kitri・Hina>

◆紹介曲「シンパシー
作詞:Mona・Hina
作曲:Mona