Hinaだったら、何十年先でも一緒に音楽活動をしていける気がした。

 2021年4月21日に“Kitri”がセカンドフルアルバム『Kitrist II』をリリース!今作には、新曲「未知階段」や3作連続配信シングル「Lily」「人間プログラム」「赤い月」ほか、新曲を含む全10曲が収録。さらに、2019年に行われた『キトリの音楽会#2』東京公演の全曲を収録したライブ映像と昨年末の“キトリのライブ上映会”で限定公開された新曲「君のアルバム」のMVを収録した豪華二枚組となっております。

 さて、今日のうたコラムではそんな“Kitri”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回はその最終回。綴っていただいたのは、今作の収録曲「君のアルバム」のお話です。姉妹二人でたくさんのアルバムの写真を眺め、生まれたというこの歌詞。Mona、Hina、それぞれの視点でこの曲に対する想いを明かしてくださいました。是非、歌詞と併せて受け取ってください。

~歌詞エッセイ最終回:「君のアルバム」~

<Mona>

アルバムをめくったのはいつぶりだろうか。写真のほとんどは、覚えていないような何気ない日常の一コマだ。妹のHinaと同じポーズを取って笑っていたり、二人で人形遊びに熱中していたり。少し大きくなって、それぞれ中学校と高校の制服を着て桜の下で撮っている写真もあった。

私たちにとって共に過ごし育ってきたことはあまりに自然なことで、これまでお互いの存在や関係性について、あえて意識したり言葉にしたりすることもなかった。二人でアルバムを眺めたあと、同じ気持ちになっていたと知ったのは、Hinaの歌詞を読んでからである。この曲「君のアルバム」は、生まれてからKitriとしてデビューするまでの写真を見て、Hinaが歌詞を書いてくれた。

私たちは3歳差の姉妹だ。子ども時代の3歳の差は思っているより大きい。Hinaが道路に飛び出さないよう手を繋いだり、Hinaにピアノの練習をするよう勧めたり、お母さんになったつもりで接していた。そんな中、成長するにつれてHinaが少しずつ頼もしい存在になっていった。先頭に立ってリーダーシップを発揮するような頼もしさとはまた違うが、いつもポジティブに物事を考えて、私の不安や心配事を取り除いてくれる。

そして私たちはKitriを結成した。この世界には、センスのある人や技術がある人は星の数ほどいる。そんな人たちと音楽ができたら、刺激をもらい、自分を高めていけることは間違いない。それでも、私の中ではHinaだけだった。Hinaには性格や趣味、家での気の抜けた姿まで何もかも知られている。お互いの考えそうなことは大体分かるし、顔を見れば体調の変化にも気づく。Hinaだったら、何十年先でも一緒に音楽活動をしていける気がした。

「二人で連弾しながら歌も歌うユニットをやってみん?」

私がそんな言葉を発した日から、姉妹の関係だった私たちは、音楽をする上で大切なパートナーにもなった。

私がHinaを音楽の道に誘ったことで、妹の人生も乗せて音楽活動をすることになった。楽しいことはもちろんたくさんあるが、結果がでない時や、上手くいかない時もある。Hinaが何かに傷ついてしまうのではないかと不安に感じることもあるが、当の本人はいつも楽観的で、気づけば私の方が考え事をしているから、Kitriはちょうど良いバランスで成り立っているのかもしれない。


幸せ 咲いている
描きつづけた道の上
いつまでも変わらないよ
そのままでいいシルエット
泣いたり 笑ったり
ありふれた日々さえも
いつかは懐かしくなる
二人でいる限り
咲く花



<Hina>

メジャーデビューすることが決定し、着々と準備を進めていた三年前の夏。「羅針鳥」や「矛盾律」といった大切な数曲のピアノレコーディングを終え、ほっと一息ついていた私たち。そんなところに、いつもお世話になっている事務所のスタッフさんから一通のメールが届いた。件名は「リクエスト」である。

当時の私たちは、Kitriとしてデビューするために作るべき曲、作りたい曲というものが分からず、デモ作りもまだまだ手探り状態だった。そんな時に助けてくれたのは周りの人だ。両親に聞いてみたり、スタッフさんからお題をもらったり、プロデューサーの大橋トリオさんからご意見を頂けることもあった。

その時のメールも、スタッフさんを通して大橋さんからのリクエストが送られてきたのだ。Kitriの「傘」のような曲をまた作れたら良いかもしれないということだった。少し不安定な弱さを持ちながらも、穏やかさと安らぎがあり、サビでは突然視界が開けて眩しい。「傘」はそんな曲だ。

それから数日後、Monaが新曲を作ってくれた。それが「君のアルバム」である。当時はまだそのタイトルではなかったが。

「傘」で降っていた雨は上がり、弱い心は強さと優しさに変わり、サビでは色鮮やかな花が咲き誇った。そんなイメージがすぐに湧いてきた。"感動"という日本語を音楽にするなら、こんな曲だと思えたほどだ。私はそこに歌詞を書いていき、何度もブラッシュアップを繰り返した。まだ私自身、歌詞を書くことに慣れていなかった頃の話だ。


それから二年の時が経ち、2ndアルバムでリリースしたい曲の話し合いを日々進めていた。そこで挙がってきたアイデアの一つとして、私たちの生まれた頃からKitriになるまでの写真でMVを作ろうという話が出た。曲は「君のアルバム」を使いたいと思い、私は歌詞をまたブラッシュアップした。

自宅には、私たちが生きてきた年月よりも多くのアルバムが並んであり、それを片っ端から見ていく作業。Monaと「懐かしいね!」「何でこんなに笑ってるんだろう?」などとワイワイ話しながら写真を選んでいった。Kitriはここから繋がっていたんだと思えるような写真、私たちにとって意味のある写真、大切なできごとのあった写真たちばかりで、何度選び直したことか。

伝えきれない過去も山ほどあるが、ひとまず写真が決定したところで、私は歌詞にする言葉を考えていった。揺れるブランコ。手と手繋いだこと。眠れない夜。背中合わせ…。歌詞を書いていると、色々な思い出が蘇ってくる。いつも自分の隣や前にいて、心強い味方でいくれたのはMonaであり、誰よりも長く同じ時間を共有しているんだと改めて気づいた。一つ一つがかけがえのない思い出だ。

そして私は、Mona以外の人の顔も浮かんでいた。私たちを育ててくれた両親や親戚。生まれた時からずっと仲良しの幼なじみ。滋賀、カナダ、大分、京都など住んだ場所で出会ってきた人たち。Kitriになって出会ったスタッフさんたち。そしてKitriを応援してくれるキトリストの皆さん。色々な人と出会い、色々なことがあった。過去を思い出すだけで目頭が熱くなるのは、私が少し大人になったせいなのだろうか。

今までに出会った人たちのことを思うと、私は歌詞を何度ブラッシュアップしても「幸せ」という言葉を外すことはできなかった。悲しいことや辛いこともあったかもしれないが、それを半分持ってくれる人たちがいる。そして喜びや楽しさを分け合える人たちがいる。目には見えないが、幸せとはそういう人たちの優しさが生み出しているのかもしれない。出会った人たちに感謝を伝えたい。そのお陰で今の私がいるのだから。


ちなみに、この歌詞の<二人>という言葉には「私とあなた」という意味を込めている。私とMona、私と友達、私とキトリストのあなた、といった具合に。

聴いてくれる人それぞれのストーリーと、重ね合わせてもらいたいと願いながら書いた歌詞だ。誰かのために歌ってもらえたり、スライドショーに使ってもらえたり…。そんな曲に育ってくれたなら、これほど嬉しいことはない。これからも曲の成長を見守りつつ、自分自身も成長していこうと思う。そしてまた色鮮やかなアルバムの一ページを作っていきたい。

<Kitri>

◆紹介曲「君のアルバム
作詞:Hina
作曲:Mona

◆セカンドフルアルバム『Kitrist II』
2021年4月21日発売
CD+Blu-ray COZB-1741-2 ¥5,000(税込)

<収録曲>
1.未知階段
2.人間プログラム
3.青い春
4.NEW ME
5.羅針鳥(S.A. Rework)
6.小さな決心
7.水とシンフォニア
8.赤い月
9.パルテノン銀座通り
10.Lily
11.君のアルバム