歌詞が体感に変わる時。

 神戸発4人組バンド“The Songbards”が、新たな挑戦として三部作を始動させることを発表しました。そして2020年9月23日、その第一章を飾る3rd Mini Album『SOLITUDE』(ヨミ:ソリチュード)をリリース。タイトルは“孤独”を意味する“SOLITUDE”です。誰しもが経験のある、他人と自分を比べた瞬間に訪れる“孤独”にぶつかった時、それを打ち破るキッカケを与えてくれるような内容となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“The Songbards”の歌詞エッセイをお届けいたします。第1弾に続く、第2弾を担当したのは、メンバー・松原有志。綴っていただいたのは“歌詞のある音楽”と“歌詞のない音楽”についてのお話。一体“歌詞のある音楽”とは、どんな力を持つものなのでしょうか…。是非、エッセイを読んだ上で、彼らの『SOLITUDE』の歌詞もじっくりお楽しみください。

~歌詞エッセイ第2弾:歌詞が体感に変わる時~

この世の中には、“歌詞のある音楽”と“歌詞のない音楽”しかありません。

これはとても意外なことです。なんとなく、音楽にはたくさんのジャンルがあって複雑なものだという認識はありませんか。ロックやポップス、ファンクやヒップホップ、さらには雅楽やクラシックなど…様々に細かく説明できます。しかし、もっと広く見ていけば必ずその二つのどちらかに当てはまるという見方もできるはずです。

このことについて考えるきっかけとなったエピソードがあります。

音楽を始めるかなり前、僕は一人の音楽好きとして洋楽ばかりを聴いていました。友達との会話の中で“好きなバンド”の話に。その友達はとある日本のロックバンドが好きらしく、そしてそのバンドの歌詞が好きだということを熱く語り始めました。そんな友達を見て僕は羨ましく思ったのと同時に意地悪な気持ちにもなり、こんなことを聞いてみました。

「メロディーなしで歌詞を読むだけでも好きなん?」

その友達の反応は、

「いや、それやと別になんとも思わんな」

なるほど。この答えは意外でした。意地でもその歌詞の良さを説明してくると思っていたからです。つまり“詩”が“歌詞”になるにはメロディーがないといけない。細かく言えば、サウンドや歌声のキャラクターまでもが関わっているということです。よく考えれば、僕が洋楽を好きな理由には歌詞の良さは入っていませんでした。英語を話せないという単純な理由で。

それ以来僕は、どんなに当たり前のことを歌詞にしていても音楽に乗って心まで届くなら。その逆に、素晴らしい詩であっても歌にするせいでその良さが届かないなら。“言葉”の持つ能力を、音楽が生かすことも殺すこともできることを知りました。

“ただの音”と“ただの言葉”が人に届くということは、“記号としての言葉”が音楽と組み合わさることによって、“体感”する次元に引き上がることなのではないでしょうか。

<The Songbards・松原有志>

◆3rd Mini Album『SOLITUDE』
2020年9月23日発売
完全限定生産盤CD+書籍 VIZL-1783 ¥2,300 +tax
通常盤CD VICL-65406 \1,500 +tax]

<収録曲>
1.孤独と海
2.リトル・ヴァンパイア
3.Dream Seller
4.夏の重力
5.窓に射す光のように