都内某所の地下スタジオで行われたマスタリングについての連詩。

 2021年6月2日に“The Songbards”がミニアルバム『AUGURIES』をリリースしました。今作は各作品が連動した三部作の第二章。人々の“孤独”をテーマにした、三部作の第一章『SOLITUDE』のリリースから約8ヶ月。第二章となる今作は、その“孤独”から、もう一度助け合いの精神を見つめ直す全5曲が収録された内容となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“The Songbards”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!The Songbardsの作詞作曲を担当している上野皓平と松原有志が、計3回に渡り、各テーマで“連詩”に挑戦してくださいました。連詩を終えての二人のやり取りも是非、お楽しみください。今回はその最終回。今作のマスタリングを終えた後、制作された連詩です…!

~歌詞エッセイ最終回~

ソングバーズの4thミニアルバム『AIUGURIES』はコロナの影響を受けながら、長期間での制作となりました。CDやサブスクを介して聴いてくれるみなさんのもとに届くまで。曲作りからマスタリングなど大まかに幾つかの過程がありましたが、今回も楽しみながら作業をさせていただいたことは間違いありません。

その最終作業となるマスタリングを終えた後、一息ついた上野と松原が今回最後の連詩に挑もうと思います。都内某所の地下スタジオで行われたマスタリングについての連詩。今回も前回に続き、一行ずつを八回でひとつの詩の完成を目指します!先行は上野。

上野:秘密基地
松原:お邪魔します
上野:わくわく隠してすまし顔
松原:耳を澄まして短く済ます
上野:お尋ねしますメカニズム
松原:刻むリズム沈むイズムフォーマニズム
上野:踏み散らかした足跡消して
松原:できた!


― この八行を終えての補足 ―

上野:まずは一行目やけど、マスタリングスタジオのイメージを割とそのまま書いたかな。

松原:いろんなスタジオがあるけど、秘密基地っていう言葉が確かにあってるスタジオやなと思うな。特に行ったことある人には伝わりやすいんじゃないかなと思ったし、完成に向けて、ワクワクしている雰囲気もあって。それをみて今回の詩を子供っぽく進めてみようかなって思ったけど、実際まあそんな楽ではなかったし、大変なこともあったから、まずはお邪魔しますって、ちょっとよそよそしく行こうかなって。

上野:なるほどな、それはそう(笑)。

松原:その後に、すまし顔ってきてるけど、お邪魔しますの「します」を並び替えて使ってきてるやんとか思って、俺もその語呂感に合わせて「耳を澄まして~」の行を書いたな。あとマスタリングって短く済ました方がなんかかっこよかったりするやん。時間かければいいっていう作業でもないというか。

上野:そうやな、ファーストインプレッションが大事な作業やもんな。

松原:次の「お尋ねしますメカニズム」ってなんなん?

上野:これはマスタリングを早く済ませてから、だいたいいつもマスタリングエンジニアさんにどういう機材使ってるんかとか、この曲はどこをどうしたんですか?とか聞く流れになるやん、それを表現してる(笑)。

松原:なるほど、たしかに聞いてるな(笑)。マスタリングエンジニアさんはそれを嫌がることはないけど、聞いたところでマスタリングエンジニアさんのレベルに簡単に辿り着けるわけもないのにな(笑)。でも恥を忍んでも聞きたくなるくらいやっぱりすごいなって毎回思えるし、そういうところは後の「踏み散らかした~」の行にも通ずるところやな。

上野:たしかに、次の「刻むリズム」行はどういうことなん(笑)?

松原:この行はまずメカニズムっていいなって思って、ここは韻で行こうと思って(笑)。今回のマスタリングはちょっとした調整でテンポが遅く聞こえたり、早く聞こえたりっていうのを気にしたし、そうやって何か一つのことを気にすることで何かを失わないといけないやん。音楽として気持ちよくのれるっていうのを重視した分、思想を消さないとあかんことになるっていうことで「沈む」って表現したのと、「フォーマニズム」は形式的になりすぎることはよくないって意味で使ったかな。

上野:なるほどな(笑)。

松原:で、7行目で「足跡消して」って書いてるけど、本当に消せたんかなって思ったな。マスタリングを終えて、それぞれのメンバーがやりたいこととか、エンジニアの人がやりたいこととか、いろんな人の痕跡が残ってるイメージやったから、「足跡慣らして」とか「足跡残して」とかの方が、物語感はあったんちゃうかなって思ったんやけどどう?

上野:なるほどな。そこを「消して」にした理由として、色々エンジニアさんに土足で踏み込んでる部分と、「刻むリズム」の行の韻を踏み散らかしてるところをかけてて、で結局マスタリング終えたら何事もなかった様に「ありがとうございました!」って出ていく様を書いたかな(笑)。

松原:なるほど、でも助かったといえば助かったかもな(笑)。このマスタリングの難しさと、文章のごちゃごちゃしだした感じっていうのは、マスタリング中とかレコーディング中のわけわかんなくなる瞬間を表そうとしてたし。もう文章としてちゃんと伝わる様なレベルじゃないというか。本当はそこまでぐちゃぐちゃにしたかったんだけど、それをするとさすがにおかしくなったんかな?って思われるかもやし、みんなに見てもらうやつだしと思って(笑)。

だからそこまでぐちゃぐちゃになってたら、「踏み散らかした」の行もより響いたのかもな。で、最後は綺麗にまとめようとしてるんかな?って思って、ちょっと投げやりで「できた!」で終わらせたな(笑)。

上野:なるほど、俺の勝手なイメージでは最後もう一回「すまし顔」ってきたらおもろいんちゃうかなって思っててん(笑)。

松原:でもたしかに近いのでいうと「お邪魔しました」で終わろかなとかも考えたりしたな(笑)。なんかそういうのってアニメっぽいよな。急に来て、ごちゃごちゃワーってして、シュッて冷静になってバイバーイみたいな感じ(笑)。

上野:そうそう。まさに最後はそんな感じ(笑)。

松原:でもやっぱり今回は時間をかけて作ったアルバムではあるし、嬉しさを共有したいなっていう面でも「できた!」ってなってミニアルバム聞いてもらう方がいいかなと思ってそうしたかな。

上野:確かに、それはほんまにそうやな。

松原:連詩3回やってみてどうやった?

上野:1回目から2回目のお互いの成長率を勝手に感じてたな(笑)。

松原:でももっと、未知の領域というか、互いに驚かされたり、納得させられたりするにはまだまだ時間かかりそうやな(笑)。

上野:それはそうかもな(笑)。

<The Songbards>

◆4th Mini Album『AUGURIES』
2021年6月2日発売
完全限定生産盤 VIZL-1897 \2,300 +tax
通常盤 VICL-65502 \1,500 +tax