「うたがいこぎつね」

 2022年6月29日に“The Songbards”が、フルアルバム『Grow Old With Us』をリリースしました。各作品が連動した三部作の最終章となる今作は、メジャーデビュー作品としてリリースした『CHOOSE LIFE』以来、約2年半ぶりとなるフルアルバム。“全曲リード楽曲”とも言える気合いの入った楽曲がふんだんに詰め込まれた1作となっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“The Songbards”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾です。昨年、ミニアルバム『AUGURIES』リリース時の歌詞エッセイでは、The Songbardsの作詞作曲を担当している上野皓平と松原有志が“連詩”に挑戦してくださいました。そして今回はなんと即興の“むかし話”づくりに挑戦。一体、どんな物語が生まれたのか…。タイトルは「うたがいこぎつね」、じっくりとお楽しみください!



 2022年6月29日にソングバーズは『Grow Old With Us』というフルアルバムをリリースしました。今回の作品は、いつかこの曲たちをもう一度聴いた時に懐かしめるといいな、そして聴き継がれてもらえたら嬉しいな、という想いも込めて完成したものです。
 
 このエッセイでは、今より昔、同じような想いを込めて作られたであろう「むかし話」をVo/Gtの上野とGt/Voの松原で、即興で作り出す挑戦をしたいと思います。
 
ルール
・「浦島太郎」「桃太郎」「一寸法師」等のようなテイストを目指す。
・「むかしむかしあるところに…」からはじめる。
・「~でしたとさ、めでたしめでたし。」で終わらせる
・テーマは今回のアルバムにもちなみ「暮らし」とする。
・2人は打ち合わせなく1人1文ずつ順番にストーリーを進めていく。
・タイトルは全て書き終わって最後に決める。
 
順番は松原からスタート!
 
 
「うたがいこぎつね」
 
 
松原 むかしむかしあるところに、お腹を空かせた小さなこぎつねがおりました。
 
上野 こぎつねは毎日、お母さんぎつねの帰りを待つ間、お母さんぎつねが帰ってこなくならないかとても心配してしまいます。
 
松原 時々こぎつねは木の下にある入り口の穴からひょい、ひょいと顔を出して外を見てみたりしていました。
 
上野 すると木の上の方で、コツコツコツと音が聞こえてきます。
 
松原 「おや、なんだなんだ?」
 
上野 「あんまり気にしないでくれ、俺は木をつつくのが仕事なんだ。」とキツツキのお父さんが言いました。
 
松原 「でもそんなに木屑を落とされたら、僕がお家の前を汚したとお母さんに思われちゃうじゃないか!」とこぎつねは言い返しました。
 
上野 「大丈夫さ、僕は君のお母さんからここの木をつつくように頼まれて来たんだよ。」とキツツキのお父さんは笑いながら答えました。
 
松原 「ここは僕のお家の上の木だ、そんなことお母さんが頼むわけないよ!」
 
上野 すると遠くの方からお腹を空かせた双子のオオカミが、こぎつねの家の方へと近づいて来ます。
 
松原 「なんかこっちの方から声がしたなあ、ジュルル…。」と双子の兄。
 
上野 「ちがうよ、こっちだよ!兄貴」と双子の弟
 
松原 ドキッとしたこぎつねはすぐに穴の中に隠れようとしました。
 
上野 しかし、さっきまでそこにあった木の下の穴が木屑に埋もれて見つかりません。
 
松原 困ったこぎつねはキツツキの方をみてこう言いました。
 
上野 「どうしてくれるんだ!」
 
松原 キツツキは「頼まれたからやっただけじゃないか、知らないよ。」と飛んでいってしまいました。
 
上野 しかしキツツキが飛び去ったその木にはこぎつね1匹がちょうど入れるくらい小さな穴が空いておりました。
 
松原 双子のオオカミがこぎつねに気がついて走ってきました!
 
上野 こぎつねはまだ木登りをしたことがありませんでしたが、そんなことを言っている場合ではありません。
 
松原 必死に爪を立てて一生懸命登るこぎつね。
 
上野 しかし、双子のオオカミは木登りもお手のもの、すぐこぎつねに追いつき足に噛みつこうとしました。
 
松原 その時!「ギャ!」と声をあげたのはなんとオオカミの方でした。
 
上野 こぎつねの足に沢山付いていた木屑がパラパラとオオカミの鼻の穴に入り、今にもくしゃみが出そうだったのです。
 
松原 「ハックシュン!」
 
上野 オオカミがした大きなくしゃみに吹き飛ばされて、こぎつねは木の下へみるみると落ちてゆきます。
 
松原 「パクリ!」なんとそこにいたもうひとりの弟オオカミがこぎつねを食べてしまいました!
 
上野 兄オオカミは弟オオカミにこぎつねを独り占めしてしまったことに驚き、そして吐き出すように怒りました。
 
松原 そして喧嘩になり、揉めはじめました。
 
上野 弟オオカミは、兄オオカミに取られまいと、口いっぱいに頬張ったこぎつねを飲み込もうとしました。
 
松原 すると弟オオカミの喉に木屑がグサグサと刺さり、痛くてこぎつねごと吐き出してしまいました。
 
上野 弟オオカミは泣きながら逃げ出して、兄オオカミもそれを追いかけて離れてゆきます。
 
松原 ちょうどその時お母さんぎつねがキツツキと一緒に帰ってきました。
 
上野 こぎつねは泣きそうになるのを堪えながら、お母さんに一部始終を話しました。
 
松原 「あらまあ、でもキツツキさんの言っていたことは本当だったのよ。」
 
上野 「キツツキさん、疑ってごめんなさい。」
 
松原 「キツツキさんのおかげで助かりました。」
 
上野 「もう大丈夫、疑うことも大切だけれど、信じることも大切なんだよ」とキツツキは優しい笑顔で言いました。
 
松原 そうしてこぎつねはお母さんぎつねの持って帰ってきたご飯を仲良く食べたのでしたとさ、めでたしめでたし。
 
 
終えての感想。
 
松原「結構長くなったな!笑」
上野「自分の思ってない展開が進んでいく面白さはあったけど、最後は終わらせ方わからんかった。」
松原「確かに。いい感じだと思ってても着地点はどんどん遠くなってた。」
上野「むかし話やから「教え」を入れなあかんしな…。」
松原「結果、登場人物の数とか、むかし話っぽさは出たけど、「うたがいこぎつね」は語り継がれることないやろな。笑」
上野「それはこれを見たみなさんにかかっています。笑」

<The Songbards・上野皓平&松原有志>


◆2nd Full Album『Grow Old With Us』
2022年6月29日発売
 
<収録曲>
1. 2076
2. アイオライト
3. ガーベラ
4. ダフネ
5. シティーコラージュ
6. 窓に射す光のように
7. 夏の重力
8. 夕景
9. ゼロからはじめよう
10. 銀杏並木
11. オルゴールの恋人
12. かざぐるま

◆各音楽ストリーミングサービスでも配信中!