edda

その子がひとり歩きしていって、あとを私が追っていく。

 2020年2月19日に“edda”がニューアルバム『いつかの夢のゆくところ』をリリース。アーティスト名に“物語を語り継ぐ”という意味を持つ彼女。今作の物語の舞台は、忘れられた夢を追いかけて辿りついた【夢の館】です。そこに集まった、様々な主人公の夢のお話が1枚のアルバムへと描き出されております。全11曲、じっくりとご堪能あれ…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“edda”のインタビューを【前編】【中編】【後編】に分けてお届けいたします。今回は【前編】【中編】に続く、ラスト【後編】です。とにかく物語を愛し、主人公ひとりひとりを「この子」として語るeddaの言葉を、是非、アルバムと併せて、受け取ってください。よりいっそう物語の世界を楽しめるはず…!

― 7曲目「ルンペル」は前編でもお話しいただいたように、既存の童話をもとに作られた曲ですが、童話の主人公の女の子ではなく、悪魔目線で描かれているのが面白いですね。

実際に絵本を読んだときにも思ったんですけど、すごく悪魔が可愛いんですよ。だからただの悪者にされているのがもったいないなって。でもかなり試験的ではあったんです。この曲を作ったのって、まだ初期で、「半魚人」を作ったあとぐらいだったかな。ファンタジーの世界にどっぷりハマった物語を書いたこともないし、そもそも歌詞を書くということもそんなにやったことがなかったんですね。なので試験的に、ナレーションを入れたり、既存の物語のアナザーカットのような、別視点から描いた歌詞にしてみたり。物語をより好きになれるように意識しました。結局、今はそれが自分のメインストリートになっているので、この「ルンペル」でいろいろひらけてきた気もします。

― eddaさんは本当にいろんな立場から物語を描かれますよね。

そういうのが好きですね。ちょっとひねくれているというか、へそ曲がりなところがあるので。ヒロイン目線はいつだって正義であることは、もう世の常じゃないですか。でも悪者にも物語はあって、悪者になりたくてなっているやつなんてそうそういないし、なりたくてなったならそれはそれでちょっと可愛らしいと思うんですよ。だから逆目線で、正義に対して「いや、でもさ、あなたもここは結構、悪くない?」って言ってみるのも好きですね。「ルンペル」もそういう要素が強かったと思います。

― 8曲目「戯曲」は、少し解釈が難しかったのですが、どんな物語なのでしょうか。

蒸気をうならせて 導き出すは理想郷
鉄まみれ心臓が軋む
信者が群がった 筆先を讃えしゃれこうべ
泣き方も記された戯曲
戯曲

これはまず“戯曲を作る機械”があるんです。何のために作られたかというと、理想郷を作るため。生まれてきたひと全員に一生分の戯曲(台本)を与える機械なんですね。そこに書かれているとおりに生きれば、みんな苦労せずに就職できて、結婚できて、幸せになって死にますと。犯罪も起こすことはない。だって戯曲には書かれてないから。ただ機械は潜在的に、自分の使命がわかっているので、それだけでは理想郷ができないことも知っていて。だから「救世主」という役割を与えるにふさわしい、説得力を持つ子が生まれるのを待っていたんです。

差し出された其れに 与える戯曲は「救世主」
待ちわびた心臓が軋む

全てを巻き込んで 何もかもを塗り替えてゆく
打ち壊せ 不覇なる言葉で
戯曲


そしてやっとそのひとりの子に「救世主」の戯曲を与えて、みんなに「これじゃ理想郷は作れないよ!与えられたものだけで生きるなんて馬鹿げてる!」って訴えさせて。そしてまんまとみんなは感化されて、戯曲を捨てて、はい!これで理想郷ができましたね!ってお話なんです。それぞれの意志を持って、自分の望むものを掴まないといけないんだって。ただ、この「救世主」って結局、戯曲のとおりに動いているんですよね。

― これもまた一見、正義に感じられるものに対する皮肉ですね。

そう。戯曲のとおりに動かされている「救世主」に動かされているみんなもやっぱりまた、戯曲のとおりに動いているっていう。じゃあ何が理想郷なのかしら?っていう面白みを表現しました。私自身、書きながら「あれ?これって良いことなんだっけ?どっちだっけ」とわからなくなりましたけど(笑)。結局、正解は私にもわからないんです。戯曲どおりに生きてしまって愚かだ、なのか。いや、ちゃんと道は開けている、まぁひとりの“犠牲者=「救世主」”は生まれているけど、なのか。それはもう聴いていただいた方に好きに解釈してもらえればと思います。

― ちなみにこの“戯曲を作る機械”を操作するのは、神様ですかね。

あー、そこも考えますよね。これを作ったひと、操作するひとはどうだったのかな? というところも今後、曲にできるかもと思っています。多分「このままじゃ世界がダメになっちゃう!」って思ったひとが「戯曲を作る機械を作って、みんなに役を与えればいいんだ!」と。まぁそれってAIに近いというか、人類全自動という感じの曲ですよね。

― 10曲目「リブート」は、ドラマ『忘却のサチコ』シリーズ主題歌として過去に書かれた「リピート」「ループ」に通ずるものを感じました。

まさにそのとおりです。まず「リピート」は、ひとりぼっちの世界にいるロボットの話なんですけど、この子は小説が好きでそれしか友達がいないんですね。でも本って、一回読み終わってしまうと、自分だけ疎外感があるというか。初めて読んだときには自分も入り込んで、仲間の一員のような気持ちで冒険していたのに、二回目はどこか客観視しちゃうところがあって。それが嫌だから、記憶を何度も消して冒険を楽しんでいるんですよ。

忘れちゃおう! あれもこれも全部
何度も何度も 君を知りたいの
新しい世界は要らない
繰り返そう またとない「初めまして」
錆び付いた背中を照らす夜明け
リピート


そして「ループ」は「リピート」のアンサーソングというか、ロボットによって何度も再生された小説のなかの子が主人公ですね。これは結構「戯曲」にも近いんですけど、物語の主人公なので本に書かれているとおりにしか動くことが出来なくて。そこから抜け出したいとも思うんですけど、そうすると自分ではなくなってしまうだろうから、きっとここにいるのがいちばん良いんだ、みたいなお話になっています。

綴られた声を響かせたら
転んだって きっと前を向いて進めるでしょ
それじゃあね ほら大きく手を振ったら
忘れよう、また笑えるように。
忘れよう、また今日が来るように。 なんて
ループ


で、今回の「リブート」は「リピート」に出てきたロボットのその後のお話なんです。結構、次元がすごいことになっていて…。まず、この子を作ったという文明があり、この子を残して文明だけが廃れてしまってひとりぼっちになった期間があって、それが「リピート」の頃なんですね。だけど「リピート」の曲の後でこの子は一回崩れちゃって。そこから、この子を修理できる文明がまた生まれたという世界が「リブート」になっています。そして修理してもらって、ここはどこだ?と物語が始まるわけです。

おつむに花こさえて
おはよう ここはどこ?
鮮やかな世界に スコープを回した
リブート

― しっかり三部作として作られていたんですね…!


そうなんですよ。そこからこの子は「そういえば自分は、本を大事に思っていて、記憶を何度も消して、そのせいで壊れちゃったんだ。それは良くないことだったんだ」って思うんですけど、やっぱりその本が好きだから「じゃあ続きを自分で書けばいいんだ!」と、続きを書いて物語を終わらせないという選択を取るんです。私のなかで「リピート」「ループ」「リブート」は完全にシリーズものになっていますね。

― そして、アルバムの最後に収録されている「バク」は、アルバムテーマでもある【夢の館】の主の物語だそうですが、この主はどんな気持ちなのでしょうか。

遠い昔に
「幸せな夢だけをどうか君に」と贈られた願いは
手折られた羽に影を落とした そんな化け物の話
バク

この曲はMVをアップする予定があったので、映像の方でこの子の物語や心情は表現してもらって、曲自体は言い伝えというか、わらべうたのようなニュアンスにしてみました。だから、聴いただけではなかなかすべてを掴むのは難しいんですけど、この子のもとに来るのは忘れられた夢ばかりなんですね。で、MVではこの子のところに男の子が遊びに来るんですけど、それはつまり男の子がこの子の夢を見ているということなんです。

そして、MVでは表現しなかったんですけど、この子は「もしかしたらいつか自分と一緒に遊んだ男の子の夢が流れ着いてくるかもしれないなぁ」と思っていて。そのときは「あぁ自分のことを忘れちゃったんだな」と思うし、なかなか流れてこなければ「あぁまだ覚えてくれているのかな」と思う。そういう“来ては去り”みたいなものに対して想いを馳せながら、ずっと【夢の館】で夢たちと暮らしているというようなイメージですね。

― 「バク」って夢を食べると言われていますけど、この子は取って置くんですね。

そうなんですよ。食べないんですか?って思うんですけど、この子は実際にはバクではないんです。じゃあなんで「バク」ってタイトルにしたかというと、客観的にそう言われているから。要は、そこに行った夢が返ってこないから、忘れちゃうから、食べられているんだって思われているだけで、本当はそうじゃない。言い伝え的に“夢を食べるバク”だと言われている子の真の物語をこの曲では書いてみました。

― では、eddaさんがこのアルバムのなかでとくに「良く書けたな」と思うフレーズはありますか?

フレーズというより「イマジナリーフレンド」は歌詞を書くのがすごく難しかったので、この曲ですかね。そもそもこういうわかりやすいコード進行で、次の展開がちゃんと見えてくるような曲を書くのが得意ではなくて。そこに、耳に触らない、優しく子どもに話すような、いじわるな言葉が存在しないような歌詞を乗せることって今までやってこなかったことなんです。だからよく頑張れたな、新しかったなと思います。

これから 1歩1歩 嘘になる
虫食いだらけの思い出でも それでも

小さな手が 痛みを覚えて
いつしか素敵な大人になる
懐かしく思うたびに そこにいるよ
白昼夢の続きにもそう 名前をつけて
イマジナリーフレンド

― 「イマジナリーフレンド」とは、本人の空想のなかに存在する友達のことだそうですが、eddaさんはイマジナリーフレンドっていたことありますか?


それがいなかったんですよー。今回この曲を書くときにも、イマジナリーフレンドがいたひとに話を聞いてみたいとすごく思っていて。でも周りにもいなかったので、また『Yahoo!知恵袋』で検索しました(笑)。そうしたらたくさん出てきて!それがめちゃくちゃ面白くって。たとえば「イマジナリーフレンドと喧嘩しました。どう言えば傷つけずに済んだのでしょうか」みたいな。

でも、すべての投稿に言えるのは、イマジナリーフレンドがいることに対して「こういうことっておかしいですか?」と書いているひとっていなくて。いるのは当たり前。いるのはいいんですけど、こうなんです、ああなんですっていう相談なんですよね。存在を認めているんですよ。ネットで検索しただけでもそれだけ面白かったので、今後なんとかイマジナリーフレンドがいるひとと話せないかなと思っています。

― eddaさんにとって、歌詞を書くってどんなことだと思いますか?

いちばん主人公と触れ合える時間。それこそ夢を見ているときに近いですね。一瞬、トリップすることなんかもよくあります。小説とか読んでいて、紙に書かれている文字を読んでいる感覚じゃなくなるときってあるじゃないですか。映像が浮かんで、そこに自分もいるような感覚というか。同じように歌詞も、パソコンの画面を見て文字を打っているんですけど、主人公の物語のなかに私もトリップしちゃうんですよ。

だから、ドアをひらいて交友して、話しているような感覚がすごく強くて。そこで、この子はこうだな、ああだなっていうキャラクター像がしっかりしてくると、もう主人公は自分で歩き出しますね。勝手に言っちゃうとか。私自身、書いていて「あーそれ言っちゃう!?」って思うことありますもん(笑)。その子がひとり歩きしていって、あとを私が追っていく。なぞり書きしていく。そういう感じです。歌詞を書くときがいちばんその子に触れることができるので、本当に楽しい時間ですね。

― 面白い感覚ですね…!

逆に自分の気持ちを日記のように書くとかは、私には無理ですね。だって、歌詞になれるような生活を送っていないから(笑)。ずーっと家にいるので、そもそも自分のことで書くことなんてないんですよ。でも他のアーティストさんは、実体験で素敵な歌詞を書かれたりしているから、すごいなぁと思います。充実した人生を過ごされているなぁと。

― ありがとうございました!最後に、これから書いてみたいと思うテイストの歌詞や物語はありますか?

ダークファンタジーはずっと好きなので、その世界がより色濃く出るような歌詞を書いていきたいですね。でも一方で、私はバッドエンドが嫌いなんですよ(笑)。だから結局は、希望の見えるものになるのかな。あと宇宙ものは書きたいですね。なかなか切り出し方が難しいんですけど、楽曲的に四つ打ちでスペースっぽいものがまだあまりないので、そういう曲を作ってみたいですね。

(取材・文/井出美緒)

◆2nd Album
『いつかの夢のゆくところ』
2020年2月19日発売
初回盤 VIZL-1709 ¥3,600
通常盤 VICL-65311 ¥3,000

<収録曲>
1. こもりうた
2. 夢日記
3. ポルターガイスト
4. 時をかけ飽きた少女
5. Alice in...
6. イマジナリーフレンド
7. ルンペル
8. 戯曲
9. 雨の街
10. リブート
11. バク
このトピックをシェアする
  • LINEで送る