全然好きじゃなかった
ホラー映画とキャラメル味のキス
全然好きになれなかった
それなのにね
今は悲鳴をあげながら
君の横顔を探している
空虚な心の落とし穴
暗すぎてなにも見えない
根拠なんて一つもないのにさ
身体が走り出してく
「空の青さを知る人よ」/あいみょん
さて、今日のうたコラムでは、タイトル曲「空の青さを知る人よ」をご紹介。この歌では<君>を喪失した<僕>の心模様が、過去と現在を行き来しながら、描かれております。冒頭は“あの頃”の回想シーン。デートの一幕でしょうか。きっと<君>は<ホラー映画>が好きで、観ながら<キャラメル味のキス>をするのも好きだったのでしょう。
一方の<僕>の記憶に残っているのは、そんな映画もキスも<全然好きじゃなかった>し、好きになろうとしてみても<全然好きになれなかった>という感情です。ただし“相手の趣味が好きじゃない=相手を好きじゃない”わけではありませんよね。あの頃の<僕>にとって<君>は、自分がわからないものを知っている、理解できないけど理解したい、そんな特別な存在だったのではないでしょうか。
でも今、もう隣に<君の横顔>はありません。湧き上がってくるのは、<ホラー映画>よりずっと恐ろしい現実に悲鳴をあげたくなる気持ち。喪失の虚しさと不安と哀しみ。自分が思っていたより<君>は<心>を埋めてくれていて、失ったことで真っ暗な<心の落とし穴>が出来上がって、どうすればいいかもわからず、やみくもに<身体が走り出してく>…。それが現在の<僕>の状態です。
赤く染まった空から
溢れ出すシャワーに打たれて
流れ出す 浮かび上がる
一番弱い自分の影
青く滲んだ思い出隠せないのは
もう一度同じ日々を
求めているから
「空の青さを知る人よ」/あいみょん
そしてサビでは、走り出したその<身体>に<赤く染まった空から 溢れ出すシャワー>が降り注ぎます。生命力を感じさせるような“太陽のシャワー”です。すると<暗すぎてなにも見えない>状態が変化し<一番弱い自分の影>が浮かび上がってきました。その影は<青く滲んだ思い出隠せない>自分。不可能だとわかっていながら<もう一度同じ日々を 求めている>自分。あの頃の<君>から卒業できない自分…。
いつも いつも いつも いつも
君が 君が 君が 君が
最初に いなくなってしまう
なんで なんで なんで なんで
僕に 僕に 僕に 僕に
さよならも言わずに
空になったの?
「空の青さを知る人よ」/あいみょん
さらに、歌の終盤に向けて<君>への想いはどんどん強まってゆきます。ここで<君>は<さよならも言わずに 空になった>ことが明らかに。<君>は、自分自身が<空になった>から「空の青さを知る人」なんですね。<僕>にはわからない「空の青さを知る人」なんですね。それは、あの頃<僕>にとって<君>が“自分がわからないものを知っている、理解できないけど理解したい”特別な存在だったことにリンクする気がします。
赤く染まった空から
溢れ出すシャワーに打たれて
流れ出す 浮かび上がる
一番弱い自分の影
青く滲んだ思い出隠せないのは
もう一度同じ日々を
求めているから
君が知っている
空の青さを知りたいから
追いかけている
追いかけている
届け
「空の青さを知る人よ」/あいみょん
こうして幕を閉じてゆく歌。あの頃は<ホラー映画とキャラメル味のキス>なんて、全然好きじゃなかったし、全然好きになれませんでした。他にもいろんなことを、全然わからない、と済ませてしまっていたかもしれません。しかし<君>を失った今、<僕>は<君が知っている 空の青さを知りたい>と、動き始めているのです。わかりたくて、知りたくて、前に進もうとしているのです。
悲しいけれど、切ないけれど、凛とした強さが伝わってくる。それが、あいみょんの「空の青さを知る人よ」です。空虚な心の落とし穴から抜け出せずにいるあなたへ。どうかこの歌が届きますように…!
◆紹介曲「空の青さを知る人よ」
作詞:あいみょん
作曲:あいみょん
◆9thシングル「空の青さを知る人よ」
2019年10月2日発売
WPCL-13107 ¥1,000+税
<収録曲>
M1.空の青さを知る人よ
M2.葵
M3.空の青さを知る人よ (Instrumental)
M4.葵(Instrumental)