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  • 見田村千晴
    自分と似た誰かの孤独を溶かすような歌詞を書きたい。
    自分と似た誰かの孤独を溶かすような歌詞を書きたい。

    見田村千晴

    自分と似た誰かの孤独を溶かすような歌詞を書きたい。

     2019年10月9日に“見田村千晴”がニューアルバム『歪だって抱きしめて』リリースします。その発売に先駆け、3ヶ月連続配信リリース企画がスタート。第1弾「 禁煙席 」、第2弾「 あの日雨が降ったから 」、第3弾「 独白 」が配信中です。そして今日のうたコラムでは、ニューアルバムリリースに向けて、3ヵ月連続“ご本人歌詞エッセイ”をお届けしております。  まず 第1弾 では、見田村千晴さんと【言葉】の関係を。続く 第2弾 では、新曲「独白」についての想いを。そして今回、ラスト・第三弾では、アルバム収録曲の歌詞のなかからを「書けて良かったと心から思うワンフレーズ」について綴っていただきました。尚 、 ミニインタビュー も掲載中!是非、歌詞と併せて、ご堪能ください…! アルバム『歪だって抱きしめて』歌詞エッセイ最終回 新しいアルバム『歪だって抱きしめて』がもうすぐ発売になる。本音を言えば、ゆっくり、じっくり、届けていきたいと思っている。こんなに時間をかけて、身を捧げて完成させたアルバムなのだから。それでも現実はなかなかそうはいかず、日々新しい音楽は生み出されているし、消費のサイクルだって早い。 このアルバムにとっては、まさに発売前後の今が「旬」らしい。何かできることはないか。やり残していることはないか。そんなふうに(自らに)急き立てられるここ最近だが、この文章を書いている間は、健康的に今作と向き合えている気がする。そんな機会を頂けた感謝も込めながら、最終回の今回は、アルバム収録曲の歌詞のなかから「書けて良かったと心から思うワンフレーズ」を紹介していきたいと思う。 “あの頃が あの頃の二人が 狂ってただけだろう” “今だけが 今こそが正義だと 言えなくて 迷いの中” (『禁煙席』より) ワンフレーズと言っておきながら早速ツーフレーズなのだが、これは対になった歌詞なので仕方がない。1番のサビの終わりと、2番のサビの終わりのこのフレーズ。「あの頃」の私が、いかに盲目的な恋をしていたか。幼さも残る、人生の中の限られた時間しか許されないものだと分かっているのに、どうしても思い出してしまう。それは、「今」の私が思うように前に進めていないからだ。「今」の私が一番好きだと、胸を張れないからだ。煙草をやめて父親になる「あんた」よりも、そんな自分自身が嫌なのだ。 “全方向へ配慮の末 優しいあの子潰れちゃって 今も孤独な 孤独なまんま” (『ユーモアが足りない』より) あっけらかんとした楽しいサウンドという隠れ蓑に、ピリッとした言葉を忍ばせているこの曲。この部分で、何人かの友人やお世話になった方が思い浮かぶのだ。優しくて繊細な人ほど、生き抜くのが難しい世界なんて理不尽だ。そして一度離脱すれば、戻って来ることはもっと難しいのかもしれない。私自身は利己的で鈍感な、いわゆる図太い人間だと自認しているので、そうではない人への想像力をいつも忘れないように、こうやって楽曲に刻んでいるのだ。 “ざらつく心の理由を 全部言葉にしてみたい” (『ex. friend』より) 私が歌詞を書く理由が、まさにこれなんだと思う。幼少期から感じていた、周囲とうまく馴染めていないような違和感や、生きづらさ。「私は他人と違うんだ、特別なんだ」という思春期特有の“それ”にすり替え、この上なく“イタい”奴だった時期もあったが、基本的には、常に一定の孤独感を持っていたように思う。 もしその違和感をちゃんと言葉にできていたら、と想像することがある。自分自身も安心できただろうし、同じような人間と出会って分かり合えたかもしれないし、周りの人との付き合い方も随分と違っただろう(そんな達者な子どもはそれはそれで苦労しそうだけれど)。 私を救ってくれたのは、音楽とラジオだ。10代の頃、ヴァイオリンを弾いたり歌ったりして音楽に没頭している時間は、音楽という共通言語で繋がれたし、ここが自分の居場所だと安心することができた。そして20代、ラジオから聞こえる言葉に、孤独感がみるみる溶けていくのが分かった。 私は、自分と似た誰かの孤独を溶かすような歌詞を書きたい。音楽には、言葉の飛距離を何倍、何十倍、何百倍にも伸ばすパワーがある。そのパワーに、言葉を乗せて。 <見田村千晴> ◆配信シングル第1弾 「 禁煙席 」 2019年6月19日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第2弾 「 あの日雨が降ったから 」 2019年7月24日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第3弾 「 独白 」 2019年8月28日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆ニューアルバム『歪だって抱きしめて』 2019年10月9日発売 KCJT-0001 ¥2,800(tax out) <収録曲> 1. 禁煙席 2. 独白 3. ex. friend 4. 東京模様 5. あの日雨が降ったから 6. Woman 7. ユーモアが足りない 8. 銀河鉄道の夜 (※不可思議/wonderboy カバー) 9. 手のひらのラブソング

    2019/10/07

  • 見田村千晴
    苦しくても、納得できるまで自分と向き合って書きたい。
    苦しくても、納得できるまで自分と向き合って書きたい。

    見田村千晴

    苦しくても、納得できるまで自分と向き合って書きたい。

     2019年10月9日に“見田村千晴”がニューアルバム『歪だって抱きしめて』リリースします。その発売を記念して、歌ネットでは【今日のうたコラム】にて、3ヵ月連続“ご本人歌詞エッセイ”をお届け中。現在 第1弾 と 第2弾 が公開されております。最終回はリリース直前の10月7日を予定しておりますのでお楽しみに…!  さて、さらに今回のうたコラムでは、リリースまでついに1ヵ月を切ったこのタイミングで、見田村千晴さんへのミニインタビューを公開いたします!人間味とリアリティに溢れた歌詞に定評のある彼女の作詞論。グッと来たあのフレーズ。そしてアルバムを聴くみなさんへのメッセージ。リリース前に是非、歌詞エッセイと併せてご堪能ください ― 千晴さんが歌詞を書くときに大切にしていることを教えてください。 思ってないことを書かない。 埋めるだけの歌詞を書かない。 耳なじみの良い言葉に逃げない。 ― 歌詞を書くときの必須アイテムや場所、環境はありますか? まず環境としては“ひとりである”こと。別にカフェとかでも書けますけど、あまり大きな音楽が流れているところは嫌ですね。パソコンと手書きする用のノートは必需品です。iPhoneに書いてあるメモも大切。あとこれは環境ではないんですけど、私は1番のAメロから書き始めるということも必須かもしれない。頭から最後まで順番に書く方法じゃないと難しいんですよね。 ― 作詞の際、好きでよく使う言葉。逆に使わないように意識している言葉はありますか? 言われて気づいたのは<距離>ですね。あと<憧れ>とか<弱さ>とか<知りたい>とか<抱きしめたい>とかもよく使っている気がします。多分、作詞をするとき頭のなかにずっとあるワードだからでしょうね。使わないというか、扱い方に気を付けているのは<夢>だと思います。しらじらしくなりがちだから。<好き>とかも同じです。 ― 歌詞が良いと思うアーティストを教えてください。 自分自身が一番影響を受けているのは、小谷美紗子さん。あとは、ポエトリーリーディングの狐火さん。MOROHAさん、Creepy Nutsさん、RHYMESTERさんとかも好きですね。 ― 彼らの歌詞のどのようなところに惹かれますか? 言葉の強さ。私は我が強い人間なので、自分の音楽をBGMにされたくないという想いが結構あるんですよ。そうじゃない音楽を否定しているわけではないし、そういうものも必要だし、素敵だと感じるものもたくさんあるんですけど。私は「見田村千晴を聴いていると他の仕事ができない。手が止まっちゃう」って言われたいし、そういう力のある歌詞に惹かれますね。 ― とくにグッときたフレーズはありますか? RHYMESTER「 ONCE AGAIN 」の<「夢」別名「呪い」>ですね。この歌は好きなフレーズいっぱいあるんですけど、とくにここは、うわー、たしかに!って。夢ってどうしてもキラキラしたイメージだし「夢を持つことは良いことだよ」とか「夢を追っていて良いわね」とか言われがちだけど、そんな綺麗なもんじゃないよって思います。どれだけそれで苦しいかって。本当に「呪い」みたいなものですね。 ― 千晴さんはいろんなところから言葉のインスパイアを受けることがあるかと思いますが、とくに心に残っている言葉というと何でしょうか。 あー…。なんかね、私の歌詞に対して「病んでる」とか言われることですね。それは違うんだよなーって思います。最近はそんなに言われなくなりましたけど、メジャーデビューしたばかりの「 悲しくなることばかりだ 」のときとか、多かったですね。 ― なるほど。たしかに人間味のある歌詞って、ときに「メンヘラ」なんて言葉で片付けられちゃったりもしますしね。 そうそう。「メンヘラ」とかありえないな。それもやっぱりデビュー当時に言われて、ググりましたもん。「メンヘラ」という言葉の正確な意味があまりわからなかったから。その検索結果を読んで「絶対違う!」と思いました。なんか…そういう「違うのになぁ」って思うような嫌な言葉のほうがいろいろ残っていますね(笑)。 あ、でも「違うのになぁ」で言えば、私は結構、名前の漢字を間違えられることが多いんですね。たとえば「三田村」とか「千春」とか。そういうのが増えると、逆に嬉しくなるんですよ。そんなに私のことを知らないひとが聴いてくれているんだって、嬉しい。やっぱりせっかくリリースしたからには新しい方々にも届けたいので。 ただそれをリツイートすると、その書いてくれたひとに「名前間違えてんじゃん!」とか誰かからリプが飛んでしまう可能性もあるので、拡散できないという葛藤(笑)。だけど私は、名前を間違えられたって全然良くて、曲を聴いてくれているということへの嬉しさのほうがずっと大きいですね。 ― 千晴さんにとって、歌詞を書くこととはどんなことですか? うーん、拷問とまではいかないけど(笑)、でも苦しいですね。苦行です。ずっと鏡を見つめて、自画像を描いているような。今回のアルバム収録曲でとくに歌詞が難しかったのは「手のひらのラブソング」かなぁ。あんまり私っぽくないんじゃないかなとか思ったんですよね。嘘はつきたくないし。本当に歌詞は自分の鏡と思います。だからこそ苦しくても、納得できるまで自分と向き合って書きたいんです。 ― ありがとうございました!では最後に、今秋リリースされるニューアルバム『歪だって抱きしめて』を聴くみなさまにメッセージをお願いいたします。 自分の臆病さとか、醜さとか、嫌な部分って普段はあまり表面に出さずに生きているじゃないですか。私もそうですし。でも、それをずっと続けていると、本当の自分自身を見なくなっちゃうから。ときには、そういう自分を真正面に持ってきてあげて、認めてあげたほうが強くなれるんじゃないかなと思います。そんな気持ちで今回のアルバムを作りました。私は自分のために曲を書いているけど、聴いてくれたひとが「あ、この感覚、一緒だ」と思ってもらえる歌詞だったりワンフレーズだったりがあったら嬉しいです。そういう出逢いがこのアルバムのなかであればいいなと思います。 (取材・文 / 井出美緒) ◆配信シングル第1弾 「 禁煙席 」 2019年6月19日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第2弾 「 あの日雨が降ったから 」 2019年7月24日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第3弾 「 独白 」 2019年8月28日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆ニューアルバム『歪だって抱きしめて』 2019年10月9日発売 KCJT-0001 ¥2,800(tax out) <収録曲> 1. 禁煙席 2. 独白 3. ex. friend 4. 東京模様 5. あの日雨が降ったから 6. Woman 7. ユーモアが足りない 8. 銀河鉄道の夜 (※不可思議/wonderboy カバー) 9. 手のひらのラブソング

    2019/09/12

  • 見田村千晴
    日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。
    日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。

    見田村千晴

    日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。

     2019年10月9日に“見田村千晴”がニューアルバム『歪だって抱きしめて』リリースします。その発売に先駆け、3ヶ月連続配信リリース企画がスタート。第1弾「 禁煙席 」、第2弾「 あの日雨が降ったから 」、第3弾「 独白 」が配信中です。そして今日のうたコラムでは、ニューアルバムリリースに向けて、3ヵ月連続“ご本人歌詞エッセイ”をお届けしております。  まず 第1弾 では、見田村千晴さんと【言葉】の関係を綴ってくださいました。そして続く第2弾のタイトルは『「独白」するということ』です。ニューアルバムを放つ前に、配信された新曲「独白」はどのように生まれたのか。何故、生まれたのか。あなたの人生にはどのように響くのか。是非、歌詞と併せて、歌詞エッセイをご堪能ください…! 【第2回:「独白」するということ】 どちらか一方に過剰に感情移入することが、とにかく怖い。例えば女友達の、彼氏との喧嘩の話を聞いているとして(思い返せばそんな経験がほとんど無いけれど)、いかに彼氏がひどいことをしたのか、や、自分の正当性を話す友達を前に、「きっと相手側から話を聞けば、違う見え方なんだろうな」「一方からしか聞いていない話を鵜呑みにしちゃいけないよな」と私は思っている。口には出さず、ヘラヘラと頷きながら(そりゃ誰からも恋愛相談されないのも当然か)。昼のワイドショーも、誰かの炎上騒ぎも、これと同じスタンスで眺めている。“物事を俯瞰して見る癖がついている”と賢そうな言い方もできるが、極端に言えば“他人や社会に興味がない”んだと思う。だから、“敢えて距離を取っている”というポーズを取っているのだろう。 お酒に酔っているとき、ライブを見た帰りや、嫉妬に狂いそうになるとき。iPhoneのメモに、言葉を書き殴る(ような気持ちでフリック入力をする)。一語だけのこともあれば、Aメロ丸々くらいの量が一気に書けたりもする。でも、書いた次の瞬間に、フッともう一人の自分が警告音とともに登場するのだ。「この言葉は誤解を生むかもよ?」「これを親が見たら悲しむのでは?」「30代にもなってこんな青臭いこと書くなんて、ハズカシー」こうして、たくさんの言葉が葬られていく。 歌詞を書くには、ときに、主観的思い込み、暴走、空気の読めなさ、が必要なのかもしれないと私は思う。今回『独白』という曲を書くには、スピード感が必要だった。上記の理由で、日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。経験上それが分かっているから、急いで完成させた。 どうして歌を歌っているのか? どうしてやめないで続けているのか? どうして苦しみながら曲を作るのか? どうして卑屈になるのか? どうして人付き合いが難しいのか? 自分のことを知りたい。知ることでしか、ここからまだ数十年、自分という乗り物を乗りこなしていく自信を持てない。『独白』はその一心で書いた。なかなか直視してこなかった自分自身の一部を、麻酔をかけてから一気にえぐり出すように。 だから、言い訳する余地が全くないほどに、自分のための曲だ。過去でもなく未来でもなく、今、自分を知りたいと思ったし、知って欲しいと思った。一方で、私自身の性質や境遇は、おそらくそんなに特殊なものでもない。得体の知れない生きづらさは、きっとそこらじゅうにある。外側からは見えない場合も、本人の自覚すらない場合もある。 それらを「救う」ことはできないけれど、「掬(すく)う」ことならできる。大事に掬って目の前に持ってきて、理解して、整理する。とても大切なことだ。私が見聞きしてきた様々な言葉にそうしてもらってきたように、私は私の言葉で、できるだけ丁寧に、私やあなたの得体の知れない淀みを掬っていきたいと思っている。 <見田村千晴> 【最終回に続く!】 ◆配信シングル第1弾 「 禁煙席 」 2019年6月19日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第2弾 「 あの日雨が降ったから 」 2019年7月24日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第3弾 「 独白 」 2019年8月28日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆ニューアルバム『歪だって抱きしめて』 2019年10月9日発売 KCJT-0001 ¥2,800(tax out) <収録曲> 1. 禁煙席 2. 独白 3. ex. friend 4. 東京模様 5. あの日雨が降ったから 6. Woman 7. ユーモアが足りない 8. 銀河鉄道の夜 (※不可思議/wonderboy カバー) 9. 手のひらのラブソング

    2019/09/04

  • 見田村千晴
    私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。
    私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。

    見田村千晴

    私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。

     今秋に“見田村千晴”がニューアルバムのリリースを発表しました。その発売に先駆け、6月19日を皮切りに3ヶ月連続配信リリース企画がスタート。すでに、第1弾「 禁煙席 」と第2弾「 あの日雨が降ったから 」が配信中です。そして今日のうたコラムでは、ニューアルバムリリースに向けて、3ヵ月連続“ご本人歌詞エッセイ”をお届けいたします!    まず第1弾では、見田村千晴さんと【言葉】の関係を綴ってくださいました。タイトルは『言葉は思考だ』です。彼女が、どうやって歌詞を生み出しているのか。彼女にとっての曲作りとは、言葉とは。そして、どんなところからインスピレーションを得ているのか。是非、歌詞と併せて、歌詞エッセイをご堪能ください…! 【第1回:言葉は思考だ】 歌って、どうやってつくるんだっけ。歌詞って、何を書けばいいんだろう。アコギを持って、ライブハウスで歌を歌うようになってからもう12年ほどが経つというのに、今でも途方に暮れる。どうしてなんだろう。自分には向いていないのか。正直、それはなんとなく感じている。それでも、もう少し足掻いてみたい。 何百回、何千回としてきた自問自答はそれすら形骸化して、最近は“諦め”に近い。こんなに苦手意識のあることを12年も続けて、偉いじゃないか! ここまでずっと分からなかったことは、おそらくこれからも分からないままなんだから仕方がない! 一旦、今夜は友達と飲みにでも行こう! …という具合である。 それでもいざ取り掛かった私を救ってくれるのは、いつも言葉だ。私は、書いた歌詞にメロディーをつけていく、いわゆる「詞先」で曲をつくる。しかも、Aメロから順番にでないとうまくいかない。例えばサビだけ先に作って、あとからさかのぼって辻褄を合わせる、ということが苦手なのだ。 言葉にはリズムがあって、リズムがぴったりとしっくりとくる歌詞(この段階ではメロディーも無いので、散文のようなものだけれど)が書けると、もうそれだけで「もらった!」という気分になる。そして勝利に酔いしれながら寝たものの、翌日見返してみると全然良くなくて落ち込む、ということもよくある。そんな繰り返しだ。私にとって、曲作りとは「言葉探し」なのだ。 言葉とは思考である。では、その思考はどこからくるのか。友人との会話、日々のニュース、映画、本、テレビ。過去の記憶や、電車内で聞こえてきた会話だってそうだ。そして私にとって一番大きな拠り所が、「ラジオ」だ。 私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。高校生の頃、「オールナイトニッポン」を家族に気付かれないよう枕元で小さな音で聞いていたのをきっかけとし、大学で上京し夜型生活の一人暮らしになったことで、それ以降その沼にどっぷりと浸かっていったのだ。最近はradikoのタイムフリーや、Podcast、ラジオクラウド等も使いながら、言葉の海を縦横無尽に渡り歩いている。 ラジオは、物事の多面性に気付かせてくれる。自覚すら上手にできていなかった、漠然とした「違和感」に、言葉と論理を与えてくれる。生きづらさを抱えて密かに苦しんでいることについて、肯定し、決して孤独ではないんだと教えてくれる。 ラジオの若者離れ、というのはよく耳にする話だが、私に言わせてみれば、こんなに最高なパラレルワールドがすぐそばにあるのに知らないだなんて、どうかしている。可哀想だとすら思ってしまう。私はラジオに助けてもらったことが本当にたくさんあるし、ラジオで作られた思考が私の言葉を作り、その言葉が私の楽曲を作っている。断言する。 …と、まるでラジオ普及コラムのような文章になってきてしまったが、これが私と「言葉」との関係性である。その自分の言葉を、自分の歌で表現するだなんて、なんて幸せなことなんだろう。全力で、守りたいと思う。これはただのエゴかもしれない。けれど、私と似た誰かのことも、きっと守る力があると信じている。 <見田村千晴> ◆配信シングル第1弾 「 禁煙席 」 2019年6月19日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第2弾 「 あの日雨が降ったから 」 2019年7月24日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第3弾 2019年8月28日配信 ◆今秋フルアルバムリリース決定! 近日情報公開!

    2019/08/09

  • 見田村千晴
    「見田村千晴を知っていてよかった」と思ってもらえる一年にする。
    「見田村千晴を知っていてよかった」と思ってもらえる一年にする。

    見田村千晴

    「見田村千晴を知っていてよかった」と思ってもらえる一年にする。

     2月16日に“見田村千晴”のワンマンライブツアー2019「迎春」ファイナルが代官山LOOPにて行われました。今日のうたコラムでは、本人にいただいたコメントと併せ、その模様をご紹介いたします。今回は、リリース関係なしのツアーであるため新旧楽曲が自由に織り交ぜられた、彼女曰く 『過去の私と現在の私のハイブリッド』 なセットリストに。 今度、君に会うときは 胸張って笑ってたい この街で生きていく 僕を見ていて 「今度、君に会うまでに」/見田村千晴 「いいね!」の数だけ疑え 疑った数だけ向き合え 丁寧に生きていたいな 「はなむけ」/見田村千晴 ねぇ できるよ って誰か言ってくれないかな って誰も言ってくれないよな そう 自分でしか言えないよな 「愛だろうが 恋だろうが」/見田村千晴  こちらは冒頭からノンストップで披露されたエネルギッシュな3曲。MC中 『この仕事は自分が辞めようと思えばいつでも辞めることができてしまう。だけど、もっと続けたいと思わせてくれるひとたちがいて。もっと続けるために支えてくれるひとたちもいて…』 と語っていた彼女。だからこそ、そんな必要不可欠な存在に歌で意思表明をするのです。  ひとりの音楽家として、ひとりの人間として、胸を張って笑って、疑って向き合って信じて、丁寧に生きてゆくという宣言です。そうやって進化してゆく自分をずっと<見ていて>と、過去と現在の生きざまを証明しながら、見田村千晴はステージ上で輝いておりました。また、彼女に今回のライブについての感想を訊いてみると、次のような答えが。 見田村:今回のツアーは、Solo Set(弾き語り)とBand Setの2パターンを初めてやりました。Solo Setは、その場の空気感も味わいながら柔軟に変化できる自由度の高さと、そこに共存する剥き出しの緊張感がたまらなく、Band Setはとにかくエモくて強くてかっこよくて最高。どちらのスタイルも私にとってとても大切で、これからも研ぎ澄ませていきたいと再確認しました。  代官山LOOPでのファイナルは、Band Set編であり、まさに“とにかくエモくて強くてかっこよくて最高”の極み。SNS上にも、ライブへ足を運んだ方々からの「凄いライブを観て放心状態」「圧倒的なパワーでライブを支配していく。スゴい!」「まぶしくてまぶしくてでも目が離せなくて」といった声が多数。彼女の“生きる”意思表明は眩しく力強く放たれ、そしてしっかりと観客たちへ届いたことがわかりますね。  さて、前述しましたが今回は 『過去の私と現在の私のハイブリッド』 なセットリスト。活動初期に発表された「寄り道」「ラプソディ」といった楽曲から、まだリリースもされてない新曲「東京模様」「手のひらのラブソング」といった楽曲まで、幅広く披露されました。なかでも次の楽曲たちが、彼女にとって印象的だったと語ります。 見田村:これまでほとんどライブで弾いたことがなかったバイオリンをフィーチャーさせるところ(「青」という曲のインストバージョンをバイオリンで演奏してから歌に入る)があったのですが、そこでのお客さんの驚いた反応が嬉しかったです。 また、全ての曲が、その時の自分にしか書けなかったと思っているのですが、特に「寄り道」はとても甘く切ない恋心を歌っていて、気恥ずかしさはあるものの、良い歌詞だなと思いました。「普通」はいつもはあまりライブでやっていないのですが、そういう曲のときに一緒に口ずさんでいるお客さんを見つけると、驚きとともにとても嬉しいです。 「寒いね」と私が言って 「寒いね」と君が答える いつも通り穏やかな君に 背伸びをしないこの街は似合う 分かりきったことなら口に出して確かめるのに 肝心なことほど 後回しにしてしまうね 「寄り道」/見田村千晴 あなたらしく生きればいいって 言われるたびに むずがゆくなって 自分のことが 一番分からないや 普通って何だろう? 君らしく生きてみせてよ 「普通」/見田村千晴  ファンのみなさんも、改めて「良い歌詞だな」と噛み締めた楽曲、久しぶりに披露されて「驚きとともにとても嬉しい」と感じた楽曲、それぞれ何曲もあったことでしょう。そして、ライブで本編ラストを飾ったのは、リリース前の新曲「禁煙席」です。歌詞も未掲載。聴いていて、思わず涙が込み上げてきてしまうくらい“現在の見田村千晴”の魂がグッと詰まった1曲となっております。是非、リリースされるその日を楽しみにしていてください。  最後に、本人に「2019年の夢・目標」を尋ねると、彼女は 『新しい作品をつくって、それを拡げること。今回のツアーに来てくれた人たちに「見田村千晴を知っていてよかった」と思ってもらえる一年にすること』 と回答。活動から目が離せない一年になりそうで、ますます期待が高まりますね…!まだ見田村千晴の楽曲を知らないという方は、まず、彼女が<丁寧に生きて>いる証である歌詞を、じっくりとご堪能ください…! <セットリスト> 1 今度、君に会うまでに 2 はなむけ 3 愛だろうが 恋だろうが 4 普通 5 寄り道 6 ラプソディ 7 ガール 8 センチメンタル 9 青 10 東京模様 11 手のひらのラブソング 12 わたくしどもが夢の跡 13 いっせーのーで 14 シラフで夢を語れ 15 悲しくなることばかりだ 16 禁煙席 en1 夕立よ、このまま en2 ラブソング ◆紹介曲 「 今度、君に会うまでに 」 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 「 はなむけ 」 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 「 愛だろうが 恋だろうが 」 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 「 寄り道 」 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 「 普通 」 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴

    2019/02/25

  • 見田村千晴
    あなたがいないとダメみたいと、なんとか言えた。
    あなたがいないとダメみたいと、なんとか言えた。

    見田村千晴

    あなたがいないとダメみたいと、なんとか言えた。

    この一行、このワンフレーズ 一撃で明日を変えてみせる 浮かぶ顔ならたくさんある でも一番はあの日の自分だ あと一行、あとワンフレーズ 泣き出しそうな背中に 未来のあんたはすごいよって 逃げ出さなかったって シラフで夢を語れ ごまかさないで向かえ シラフで夢を語れ ごまかさないで向かえ 「シラフで夢を語れ」/見田村千晴  シンガーソングライター“見田村千晴”が3月15日に約2年ぶりとなる新作をリリース。人間味の溢れた歌詞とストレートな歌声で聴く者の心を揺さぶり、弾き語りライブにこだわり続けてきた彼女が、初のセルフプロデュースに挑んだミニアルバムのタイトルは『きっといつか消えてしまう、』です。収録されているのは全5曲。歌ネットでは2月8日から3月8日にかけて週に1曲ずつ歌詞を先行解禁しました。そのなかでもとくに人気なのが、注目度ランキングの上位に度々ランクインしている2曲目の「シラフで夢を語れ」です。 午前3時ファミレス 訳アリたちがドリンクバーで粘る 真っ白なノートにコーラこぼした かれこれ1時間筆は止まったまま 思考回路はショート寸前 いやむしろショートすれば楽になれるか? 焦りと諦めが交互に なんとか振り払って力に 「シラフで夢を語れ」/見田村千晴  <「夢」って言葉口にしなくなって もうどれくらい経つだろう>と、幕を開ける歌の舞台は、深夜のファミレス。いろんな訳アリたちがドリンクバーで粘っており、主人公もその一人。果てしない“夢”を抱えた訳アリです。そして、歌詞からは“見田村千晴”自身の日常が見えてくるようでもあります。<焦りと諦め>を<なんとか振り払って力に>変え、<一撃で明日を変えてみせる>歌詞を生み出そうと粘っている姿です。「夢」を口にしなくなったって、その情熱は決して消えたわけではなく、心で燃え続けているのでしょう。ちなみに、彼女の代表曲「悲しくなることばかりだ」(2013年発売)にはこのようなフレーズがあります。 居酒屋では饒舌に面白くもない自慢話が続く 「俺にはすごい計画がある」って君は言ったけど 君のタバコ さっきから灰が料理に散らばって 気になって話なんて聞いてられない 「悲しくなることばかりだ」/見田村千晴  居酒屋で酔っ払った男の自慢話や“すごい計画”…。しかし、酒で気が大きくなって語るそんなものは<面白くもない>。だからこそ「シラフで夢を語れ」なのです。<居酒屋>ではなく<ファミレス>、アルコールではなく<ドリンクバー>、というところでも相反するものを感じます。また、“語る”とは他者に向けて…とは限らないはず。己に語りかけるのです。彼女は、自分が一人きり粘って向き合って、音楽を作るように、みんなも夢に<ごまかさないで向かえ>と歌っているのではないでしょうか。夢へ奮起するすべての人に、前へ進むための“一撃”をくれる、「シラフで夢を語れ」はそんな楽曲です。 あなたがいないとダメみたいと なんとか言えた 下向いたまま 冗談めかすと決めていたのに 声は震えて 涙も出た 面倒な女を嫌いなことは 私が一番 知っているのに 我慢しようとすればするほど 壊れたみたいに 止まらなかった テーブルクロスの幾何学模様を 私 ずっと数えてた いつか人生が終わるとき この痛みをどれくらい 覚えているのかしら私 怖い 夕立ちが窓を濁らせて あなたをまだ帰さない 言わなくちゃ 言わなくちゃ 言わなくちゃ 「夕立よ、このまま」/見田村千晴  そして、今日のうたコラムでは、もう1曲ニューアルバム収録曲からイチオシの楽曲をご紹介。見田村千晴の歌う“夢追う”楽曲は、不安や焦燥を抱えながらも、それを上回る力強いエネルギーに溢れております。しかし“恋愛”を描く楽曲は、深い愛情のなかに<怖い>という感情が震えているものが多い気がするんです。この「夕立よ、このまま」もそうですね。<あなたがいないとダメみたい>と零した本音は、夢追う強さとは真逆の“脆さ”を感じます。他にも、たとえば過去に発表された「秘密」という楽曲。 臆病なのも 自信が無いことも 知られたくないだなんて 愛じゃないのかな だから 一緒に暮らそう、なんて言わないでよ 平凡な私に きっとすぐに飽きてしまうよ 嬉しいのに怖くて 泣いてまた困らせた すぐそばを春がすり抜けた 「秘密」/見田村千晴  本当は嬉しくてたまらないはずの<一緒に暮らそう>という言葉にさえ、彼女には同時に<怖い>という気持ちが生まれています。でも、きっとその怖さの正体こそ<愛>なのかもしれませんね。だから好きになればなるほど、<怖い>は増えていくのです。怖くなればなるほど、<愛>は大きくなっているとも言えます。その感覚はみなさんもよくわかるのではないでしょうか。好きだからこそ、それを失ってしまうかもしれないことを考えると、怖くてたまらないのです。    また、まだまだ手の届かない夢を追う人にはきっと、いつも“強くあり続けたい”という想いがあることでしょう。でも、たとえそんな人でも、大切なただ一人のそばにいるときだけは、やっと“弱く”なれるのではないでしょうか。そして、自分の弱さをも愛してくれる人がいるということが、夢を追うための強さに繋がっているのだと思います。今作のミニアルバムもそんな“強さ”と“弱さ”が揺れる名作となっておりますので、是非、歌詞を読みながらじっくり聴いてみてください。そして『きっといつか消えてしまう、』というタイトル。この“、”のあとに、あなたならどんな言葉を続けますか…? ◆ミニアルバム『きっといつか消えてしまう、』 2017年3月15日発売 REP-048 ¥1,500+税 <収録曲> 1.今度、君に会うまでに 2.シラフで夢を語れ 3.最後の告白 4.いっせーのーで 5.夕立よ、このまま

    2017/03/11

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