あなたが残ってる、からだの奥に残ってる。

 シンガーソングライター“吉澤嘉代子”が、2017年10月4日にニューシングル『残ってる』をリリースします。タイトル曲は、昨年にライブで初披露され、音源化を待望されていた人気楽曲。歌ネットでは、歌詞先行公開がスタートしており、注目度ランキングの1位も記録!描かれているのは、夏と秋がバトンタッチをした日に<朝帰り>をした女の子の心模様です。今日のうたコラムではそんなラブソングをご紹介!

改札はよそよそしい顔で
朝帰りを責められた気がした
私はゆうべの服のままで
浮かれたワンピースがまぶしい

風邪をひきそうな空
一夜にして 街は季節を越えたらしい
「残ってる」/吉澤嘉代子

 スーツ姿の会社員たちが、忙しなく通り抜けてゆく改札。そのなかでポツリと<ゆうべの服のまま>の女の子は<朝帰りを責められた>気がして、なんだか肩身が狭そうですね…。きっと<浮かれたワンピース>には、ゆうべ大切な人と過ごした時間の余韻だけではなく、その日を楽しみにしていた気持ち、その服を選んでいるときの気持ち、待ち合わせ場所に向かうときの気持ち、いろんなものがまだ“残ってる”のでしょう。そして彼女は、その<浮かれた>全てを<責められた気がした>のだと思います。

まだ あなたが残ってる からだの奥に残ってる
ここもここもどこかしこも あなただらけ
でも 忙しい朝が 連れて行っちゃうの
いかないで いかないで いかないで いかないで
私まだ 昨日を生きていたい
「残ってる」/吉澤嘉代子

 だけど、<浮かれたワンピース>に含まれている気持ちも、一緒にいた記憶も、<忙しい朝が 連れて行っちゃう>ことで、すべて夢のようになかったことになってしまいそう…。サビでは、そんな変わりゆくものに対する寂しさが、猛烈に伝わってきます。だからこそ、まだ<ここもここもどこかしこも あなただらけ>な自分のからだに“残ってる”感覚に<いかないで いかないで いかないで いかないで>とすがり、<私まだ 昨日を生きていたい>と、願っているのです。

駐輪場で鍵を探すとき
かき氷いろのネイルが剥げていた
造花の向日葵は私みたい
もう夏は寒々しい
「残ってる」/吉澤嘉代子

 続く2番に描かれている<かき氷いろのネイル>にも、冒頭の<浮かれたワンピース>と同じく様々な気持ちが含まれているのでしょう。丁寧に、丁寧に、一本ずつマニキュアを塗っていたときの気持ち。夏を象徴するかき氷のようにキラキラと輝くネイルを見つめていたときの気持ち。ただ、駐輪場で自転車の鍵を探しているとき、女の子は季節や街のよそおいだけではなく、自分の“からだ”からも時間の流れを思い知ってしまいました。ふと目にとまったネイルはもう<剥げていた>から。

誰かが煙草を消したけれど
私の火は のろしをあげて燃えつづく

まだ 耳に残ってる ざらざらした声
ずっとずっとちかくで 聞いてみたかったんだ
ああ 首筋につけた キスがじんわり
いかないで いかないで いかないで いかないで
秋風が街に 馴染んでゆくなかで
私まだ 昨日を生きていた
「残ってる」/吉澤嘉代子

 こうして幕を閉じてゆく歌。先ほどは<私まだ 昨日を生きていたい>と願っていた想いが、ラストでは<私まだ 昨日を生きていた>という過去の事実に変わっております。昨日を生きていたかった、でも、昨日を生きている、でも、ありません。つまり「残ってる」に描かれているのは“昨日を生きている”時間がちゃんと過去になるまでの物語なのではないでしょうか。一方で<私の火は のろしをあげて燃えつづく>と“これから”を想像させるフレーズも綴られております。そういえば、この二人の関係は恋人同士だと思いますか? だとしたら、幸せなはずの朝帰りからこんなにも切なさは伝わってこないような気もします。

 これはあくまで想像ですが、もしかしたら2番目のサビの<いかないで いかないで いかないで いかないで>というフレーズは“あなた”に対するダイレクトな想いなのかもしれません。もっと言ってしまえば<煙草を消した>誰かが“あなた”だとも考えられます。女の子が<朝帰りを責められた気がした>のは、二人がまだちゃんとした関係ではないから。どうしても<昨日を生きていたい>と思ったのは、次があるかもわからないから。でも、たとえそうだとしても、やっぱり<私の火は のろしをあげて燃えつづく>のです…。
 
 一夜にして、よりいっそう、火力を強めた恋の炎。「残ってる」の女の子の明日には、どんな物語が待っているのでしょうか…。続きへの想像も膨らむラブソングですね…!尚、歌ネットではインタビューも掲載予定ですので、公開をお楽しみに!まずは是非、歌詞をチェックしてみてください。

◆2nd Single「残ってる」
2017年10月4日発売
初回限定盤(CD+DVD) CRCP-10386 ¥2,778+税
通常盤(CD) CRCP-10387 ¥926+税

<収録曲>
01. 残ってる
02. 残ってる -ピアノと歌-
03. 怪盗メタモルフォーゼ