2023年7月12日に“吉澤嘉代子”がニューシングル「氷菓子」をリリースしました。タイトル曲は映画『アイスクリームフィーバー』主題歌として書き下ろされた新曲。ジャケット写真を手掛けるのは映画『アイスクリームフィーバー』監督の千原徹也で、ビジュアルには出演キャストの吉岡里帆・モトーラ世理奈が登場しております。
さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“吉澤嘉代子”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「氷菓子」と映画『アイスクリームフィーバー』にまつわるお話です。今作のジャケット写真やミュージックビデオも手掛けた監督・千原徹也との出会いとは…。
千原さんが初めて映画を撮った。
“これは映画ではない”というフレーズとともに。
千原さんとの出会いは10年ほど前。事務所で業界用の分厚いアートディレクター図鑑を広げていた時に「千原徹也」という名前が目に止まった。今も言葉にするのは難しいけれど「この人のつくるもの好きだなぁ」と思った。
初めてお会いする千原さんはアートディレクターという肩書きのイケイケなイメージとは裏腹に、おっとりはんなりとしていて緊張を解いてくれる人だった。
次作のジャケットの打ち合わせだったけれど、好きな映画の話をたくさんしてくれたことが印象に残った。以降、私のアートワークをたびたび手掛けていただくようになる。
ある日「僕が初めて撮る映画の主題歌を書いてほしい」と言ってくれた。それから出演者の候補や途中の脚本を見せてもらっていたけれど、時代の影響や大人の事情もあり何年か経った。
千原さんは絶対顔には出さないけれど苦しいことが一杯あったと思う。一人で資金集めをして各所に連絡を取っていた。
やっと映画製作が前進しクランクインを迎えたときの感動は忘れられない。ほんとうに私が歌っていいんだと思った。
制作期間中は毎日アイスを食べて、舌がひりひりする冷たさは熱さと似ているんだなと気づいた。冷たいものが熱いものになり、甘いものが苦いものになる矛盾を曲の中に封じ込めたかった。
でもなかなか形にならない。焦る。
千原さんの映画を自分事にしたかった。その熱を真正面から受けとめたかった。
私はなんのためにこの歌を書くのだろうと自分に問うた。
そのうちに、映画の主題歌として書くのではなく、個人的な贈りものとして書こうと思った。
千原さんがディレクションしている『キストーキョー』の"キス"や、ジャケットを手掛けた桑田佳祐さんの『がらくた』というアルバム。千原さんが書いた本にあった"僕は魔法使いなんかじゃない" というフレーズ。千原さんのお子さん三人のお名前も散らばせた。
れもんらいふの事務所で一人黙々と編集作業をしている千原さんを浮かべながら言葉をかき集めた。
歌を聴いた人がわからなくてもいい。気付いてもらいたいのは一人だけ。千原さんの言葉を借りるなら、これは歌ではない。千原さんに宛てて手紙をしたためるように書いた。
試写会0号。劇中の一番いいシーンで「氷菓子」が流れた。私も千原さんも泣いていた。
人生は優しく繋がっているって、今日のことだなと思った。
<吉澤嘉代子>
2023年7月12日発売
◆CD
VICTOR ONLINE STOR限定パッケージ:https://victor-store.jp/item/37127
(CD+DVD) NZS-926 ¥4,400(税抜¥4,000)
<収録曲>
M1.氷菓子 (詞曲:吉澤嘉代子 編曲:野村陽一郎)
[DVD]
出張・すなっく嘉代子(時短営業)
2021年8月14日 青山 月見ル君想フ
・月曜日戦争
・怪盗メタモルフォーゼ
・鬼
・らりるれりん
・ニュー香港
・ルシファー
・えらばれし子供たちの密話
・サービスエリア
・よるの向日葵
<出演>
ママ 吉澤嘉代子(Vo)
常連 君島大空(Gt)
◆映画情報
【7月14日(金)TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイント他にて全国ロードショー】
映画『アイスクリームフィーバー』
吉岡里帆
モトーラ世理奈 詩羽(水曜日のカンパネラ)/ 松本まりか
監督:千原徹也(SNSリンク:https://www.instagram.com/thechihara/)
原作:川上未映子「アイスクリーム熱」(『愛の夢とか』講談社文庫)
主題歌:吉澤嘉代子「氷菓子」
エグゼクティブプロデューサー:千原徹也、山本正典、木滝和幸
プロデューサー:勝俣円、塚原元彦 宣伝プロデューサー:小口心平
脚本:清水匡 音楽:田中知之 撮影:今城純
制作:れもんらいふ 制作協力:DASH、doors 配給:パルコ
c 2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
映画公式サイト:icecreamfever-movie.com
映画公式SNS:@icecreamfever_m