もう2度と囲むことのない食卓。

 2022年10月5日に“ゆいにしお”がメジャー1stフルアルバム『tasty city』をリリース!今作は、ゆいにしおの持ち味である「独特な言葉遊びを交えた歌詞」や「あたたかみのあるポップさ」が発揮された楽曲が12曲収録されております。また、アルバムリリースに伴い、10月26日からは、全国3箇所でワンマンライブを開催。こちらも是非チェックを!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“ゆいにしお”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回が最終回。綴っていただいたのは、今作『tasty city』に込めた想いにも通ずるお話です。かつての職場での“tastyな思い出”とは…。みなさんには、もう2度と囲むことはないけれど、忘れられない食卓の記憶はありますか?



上京したてのころ、変わったバイトをしていた。まだコロナ前だった。仕事内容自体はライターで、ものすごく変わっているということはない。変わっていたのは、お昼ご飯当番があったことだ。
 
バイト先では、ご飯当番が全員分のお昼を作ることになっていた。ありがたいことに、お昼を作る時間も時給が発生し、なんとインセンティブもある。オフィスはごく普通のマンションの一室にあったので、まるで自分の家のような雰囲気のキッチンだった。
 
お昼ご飯当番は、だいたい2人ペア。お昼休憩の30分前くらいから、いそいそと作りはじめる。メニューは、社員からのリクエストか、冷蔵庫に入っている材料で作れそうなもの。10人近くいたので、大体はパスタかカレーか炒め物だった。
 
バックグラウンドが全然違う人の家庭料理は面白い。マニュアル通りに作るわけじゃないので、その人に染みついた方法で料理を作る。パスタを湯切りせず、鍋から直接トングで持ち上げてソースにぶち込む、という技にびっくりしたことがある。湯切りしないパスタ……!? と思ったけど、湯切りしなかったとわからないくらい美味しかった。tastyに持ち込む方法はいろいろあるんだなあ、と思った。
 
思い描く「家庭料理」も全然違う。
 
一番衝撃を受けた料理は、「鯖と納豆のパスタ」。茹でたパスタの上に、納豆とサバ缶、マヨネーズと納豆のタレを混ぜたものをのっけるという、超簡単で栄養もある最強メニュー。実はこの時まで納豆パスタを食べたことがなくて、おそるおそる食べた。よく混ぜた納豆はマヨネーズとよく絡み、ホイップのようにクリーミーだった。鯖の脂は濃厚さを与えて、ボリュームも抜群だった。見た目は映えないけど、「ちゃんと食事した感」もあるレシピで、今ではひとりごはんの定番である。
 
ほかにも、ガパオライスを作ったら喜ばれたり、お昼から唐揚げを作ってもらったことが嬉しかったり、仕事よりもお昼ご飯の思い出がほとんどを占める。
 
そんなtastyな思い出溢れる職場だが、同僚に聞いたところ、コロナ禍の業績不振で会社がなくなってしまったそうだ。
 
tastyな職場は今となっては幻。もう2度と囲むことのない食卓に、思いを馳せてしまいました。
 
2度と囲まない食卓がある人は、度々思い出しながら『tasty city』を聞いてほしいなあと思います。

<ゆいにしお>


◆Major 1st Full Album『tasty city』
2022年10月5日発売
COCP-41838 ¥3,000 (tax in)
 
<収録曲>
1.CITY LIFE
2.mid-20s
3.スパイスガール
4.sun shade
5.チートデイ
6.suitcase
7. Rough Driver
8.パレード
9.息を吸う ここで吸う 生きてく
10.スポットライト
11.タッチミー(2022 Ver.)
12.ワンダーランドはすぐそばに