女の子には、ある呪いがかけられている。

 2022年3月2日に“杏沙子”が、mini Album『LIFE SHOES』をリリースしました。長所と短所、裏と表、理想と現実、生きていくうえで誰しもが抱えている矛盾を左足と右足に例えた今作。時に立ち止まり考えながらも、前に進み続ける全ての人に、毎日の一歩を助けてくれるお気に入りのシューズになるような作品でありたいという想いが込められております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、最新作を放った“杏沙子”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回が最終回です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「女の子にしてよ」のお話。いつも女の子の胸の内にあるとある呪い。時に、恋人がいるときのほうが強くなる呪い。「女の子として、もっと愛してほしい。」そんな想いを抱えているすべての方に、この歌詞とエッセイが届きますように。



女の子には、
ある呪いがかけられている。
 
そして、多くの女の子が
その呪いに苦しまされている。
 
わたしもその中の1人だ。
 
 
痩せなきゃ。
おしゃれしなきゃ。
メイクしなきゃ。
かわいくいなきゃ。
綺麗でいなきゃ。
 
誰かに指示されたわけでもないのに、
どこからか聞こえてくる声。
その声に従わないと、自分の価値が
なくなってしまうんじゃないかという恐怖。
自分のためだけにやっているつもりでも、
突き詰めてみれば、
誰かの目を意識したその声に
無意識のうちに支配されていたりする。
 
女の子として、愛されたい。
女の子として、求められたい。
女の子として、幸せになりたい。
 
本能に近い、願いであり、呪い。
解ける日は、いつか来るのだろうか。
 
恋人ができれば、
わたしのことを愛してくれる人がいれば、
そんな呪いは解けていくのかな、
なんて昔は思っていた。
でも、そんなことはなくて、
長く付き合えば付き合うほど、
いわゆるマンネリや倦怠期とか言うやつで
なくなっていく言葉や行動に、
どうしようもなく虚しくなった。
むしろ、恋人がいないときよりも、
その呪いは強くなった気がした。
 
別にそれがすべてじゃない。
冷めたとか、
愛がなくなったわけじゃない。
むしろパートナーとしての絆は
深まっていくし、
悪いことばかりじゃない。
 
でも、捨てられない。譲れない。
女の子として、愛されたい気持ちは。
呪いから逃れられないのだ。
そして、その呪いは
恋人にしか解けないのだ。
 
「女の子として、もっと愛してほしい。」
そんなことは言えるわけもなく、
例え言えたとしても、
お願いしてもらった愛ほど虚しいものはない。
 
だからまた、
かわいくいなきゃ。
綺麗でいなきゃ。
の声が大きくなっていく。
 
この呪いが完全に解ける日がいつか来るのなら、
そのとき女の子は幸せになれるのだろうか。
そんなことを考えながら、
「女の子にしてよ」を書いた。
 
その答えはまだわたしにもわからない。
 
けれど、
「女の子にしてよ」と
ただ1人に対して強く思ったことは、
そのただ1人を強く愛していた証拠なのだなと、
初めてこの呪いを少しだけ愛おしく思えた瞬間だった。
 
女の子には、
ある呪いがかけられている。
 
そして、多くの女の子が
その呪いに苦しまされている。
 
でも、もしかしたら、その呪いは
愛を知る鍵になるのかもしれない。

<杏沙子>



◆紹介曲「女の子にしてよ
作詞:杏沙子・石崎光
作曲:杏沙子・石崎光

◆mini Album『LIFE SHOES』
2022年3月2日発売
【初回限定盤】CD+DVD VIZL-2013 ¥4,180
【通常盤】CD VICL-65664 ¥2,750
 
<収録曲>
01.元カノ宣言
02.ピスタチオ
03.Mirror
04.ともだちに戻るよ
05.負けたんだ
06.好きって
07.眩しい
08.女の子にしてよ