最近、夜の街にはめっきり人がいなくて、寂しい。

 2021年2月3日に“Panorama Panama Town”が新曲「Rodeo」を配信リリースしました。今作はデモから曲を完成させる過程を公開する企画、YouTube PPT Online Studioで作り上げた“じゃじゃ馬サーフロック”です。前作「Sad Good Night」に続き、石毛輝(the telephones、Yap!!!)をサウンドプロデューサー迎えた1曲となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“パノラマパナマタウン”の岩渕想太(Vo.)による歌詞エッセイをお届けいたします。綴っていただいたのは、新曲「Rodeo」に通ずるお話。夜の街で賑やかに騒ぐことも、飲み歩くことも、難しくなっている今だからこそ、読んでいただきたいエッセイ、聴いていただきたい楽曲です…!

~歌詞エッセイ:「Rodeo」~

飲み歩くことが好きだ。

飲むことも、歩くこともいいけど、飲み歩くことが好きだと気づいたのは、コロナ禍、緊急事態宣言が発令されてからのことだ。街の様相はすっかり変わってしまい、20時という時間に冷たい意味が与えられる。店から店へと渡り歩く、以前のような飲み方はできなくなってしまった。

夜は膨大で、未確定で、謎に満ちている。知らない街に降り立って、あるいは仲間と駅で集合して、さあ飲み始めよう!という瞬間が好きだ。今からどこへでも行ける、という全能感。いつもの居酒屋に、知り合いがやってるバーに、常連客の声が漏れるあの扉の先に。できれば、同じところには留まりたくない。夜は長い。1時間後、自分がどこにいるのか、そんなことは自分しか分からない。

「Rodeo」という曲は、初めから終わりまで駆け回る曲だ。リフからリフに、展開から展開に、歌から歌に、目まぐるしく進行していく。歌詞にも、そのイメージを込めている。

どこまでも大きな夜にしがみつきながら、振り落とされないように、走っていく。夜に委ねたり、夜に抗ったりしながら、一瞬一瞬を積み重ねて朝を迎える。もう一杯、もう一軒。夜の街には、何千通りもの命がうごめいてるけど、そのどれもが夜に振り回されている。その光景だ。

最近、夜の街にはめっきり人がいなくて、寂しい。滅多にない静寂を味わうのもいいけど、やっぱり夜には力が溢れていて欲しい。際限なく、壮大に、そこにあってくれないと張り合いがない。

今となっては、夢のようになってしまった、あの街の姿を思い浮かべながらこの曲を聴いて欲しい。そこでは、スナックのネオンが四方八方光っていて、知らない同士がキスをする。BPM215を乗りこなしながら、どこまでも夜はつづき、いつの日か現実の街にも灯りがともる。そしたら、寿司詰めのライブハウスで会おう。

<パノラマパナマタウン・岩渕想太>

◆紹介曲「Rodeo
作詞:岩渕想太
作曲:岩渕想太