コアラモード.

最終的に互いに「受け容れる」「許しあう」ことさえできたら。

 2021年2月17日に“コアラモード.”がニューシングル「ネモフィラ」をリリースしました。タイトル曲は、TVアニメ『俺だけ入れる隠しダンジョン』エンディングテーマとして書き下ろされた、人と人の絆歌ったミディアムナンバー。そして収録曲「わたしの願いごと」は、ごく普通の日常生活の様子をリズミカルなサウンドに乗せて、優しく歌ったポップソングとなっております。

 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“コアラモード.”による歌詞エッセイを2週連続でお届け!今回は小幡康裕が執筆。綴っていただいたのは、新曲「ネモフィラ」のお話です。この歌詞に込めたメッセージ。そして、彼らの軌跡を振り返りつつ、これまでの“コアラモード.らしさ”や曲の作り方とは異なるアプローチ法を明かしてくださいました…!是非、楽曲と併せてエッセイをお楽しみください。

~歌詞エッセイ:「ネモフィラ」~

コアラモード.8枚目のシングルにあたる「ネモフィラ」。このたびは、この楽曲にまつわる“歌詞エッセイ”を書く機会をいただいた。この歌詞エッセイ、知り合いのミュージシャンたちも多く寄稿しており、しかもそれぞれに大変センス溢れる記事をまとめ上げておられ、いささかプレッシャーを感じている。

この記事を書いている現在はまだ楽曲のリリース前なので、この楽曲が発表後にどのように皆様に受け取っていただけるか、今はまさに期待と不安の入り混じった気持ちで過ごしているところだが、せっかくの“歌詞エッセイ”ということで、どんなアプローチでこの曲の歌詞を作り上げたか、振り返りながら記していこうと思う。


この曲はTVアニメ『俺だけ入れる隠しダンジョン』のエンディング・テーマとしての書き下ろし曲なのだが、ネモフィラという花を題材に楽曲を書けたらいいな、という構想自体は、実際のところ以前からあった。

ネモフィラの花言葉の一つに「あなたを許す」というものがある。許すといっても、ここで触れたいのは、相手の罪を免ずる…みたいなニュアンスではなく、相手を「受け容れる」こと。「包容する」こと。この花言葉を知った時、 ネモフィラという花を通じてスケールの大きなラブソングが書けるかもしれない、という着想を得た。

恋人同士でも、友人同士でも、家族同士でも……かたちを問わず、人間というものは、一見打ち解けあっているように見えても、結局のところはそれぞれの人生で異なる歴史を重ねてきた上で、個人差のある価値観をおのおのに抱えて生きている。さらには、その違いが原因で衝突してしまうことが多々あったりする。

その違いを埋めるために、喧嘩したりぶつかり合うことも、それはそれで大切かもしれないけれど、最終的に互いに「受け容れる」「許しあう」ことさえできたら、人間関係はより円満であることができるよなぁ、そして僕らを結びつける“絆”はより強靭なものになるよなぁ…そんなことを、日頃考えていた。そして、そんなメッセージを「ネモフィラ」の花言葉を通じて楽曲にしてみたい、と思った。

 
振り返れば、コアラモード.としてメジャーデビューしたのが2015年。自分たちは“カラフルメロディーとピュアボイスが奏でるサウンド・ア・ラ・モード.”というキャッチコピーをプロフィールにひっさげてこれまで活動してきた。

カラフルメロディーと謳ってきただけあって、これまで生み出してきた楽曲のカラーバリエーションも多岐にわたる気がするけれど…どちらかというと、ラブソングであれば 主人公像が10代~20代前半くらいのイメージで、若々しく純粋で、心情描写にもあどけなさの残る詞世界が多かった。

また、詞の言葉の選び方においては、「歌詞カード」を見なくても、耳で聴いて瞬時に分かりやすい、速達力のあるストレートで具体的な言葉をあえて選んできた(近頃はもはや「歌詞カード」を見ながら音楽を聴く機会が減ってしまい、歌詞が知りたければ歌詞サイトを参照すればよいため)。

純粋さと分かりやすさ。あえて公言した事もないけれど、デビューしてからしばらくは“コアラモード.らしさ”を、自分の中で“ストレート・ピュア・ポップ”なイメージと位置付けていた。そして今回も、今まで多く作ってきたような、ストレートで、ピュアでポップな楽曲を目指すべきかどうか……。「うーん、なんか違うかもな」自分の胸に手を当てて考えるうちに、この「ネモフィラ」というテーマが、なんとなく今までとテイストの違う色合いを呼んでいるような気がした。

きっと、自分がこのテーマを通して描きたいものは、いろいろな過去を抱えて生きてきた人間同士が出逢い、お互いの違いを許し合いながら愛を育んでいく光景。だから、ピュアさというよりもむしろ「くすみ」のような質感も大切にしたかったし、できるだけ説明っぽい「具体的」な言葉も使わず、「抽象的」な表現に比重をおいて味わい深い楽曲にしたいな、という漠然としたイメージがあった。

こういう心境の変化は、きっと自分が年齢を重ねたから――という理由もあるかもしれないし、そもそもこの曲の主人公像が、今まで発表してきた楽曲に比べて、少し大人びているからなのかもしれない。しかし、「わかりやすい」「ビビッド」みたいなものとは一線を画して、歌詞作りに於いて「抽象性」を重視する、というのは、コアラモード.の曲作りにおいて、ひとつのチャレンジだった。


コアラモード.は結成当時、1週間にひとり7曲ストックを作る、なんてノルマを課しながら、ひたすら歌詞研究を続けていた。時にはキャッチコピーにまつわる書籍を参照したりして、コピーライティングの手法にヒントを得ながら「キラーフレーズをどう生むか」なんてことを当時のディレクターと一緒に勉強しつつ曲作りを進めていた。そこで学んでいたことは、いかに「誰も言ったことのない表現で説明しきれるか」だったり、もっと端的に言うと、いかに「上手いこと言うか」といった事だった。

たとえば、僕の作詞曲である4thシングル「雨のち晴れのちスマイリー」のサビの詞を引用すると

<いつか笑うためじゃなくて
いつも笑ってこその私>

<“辛”いという字に フタして
“幸”せだって うたいながら>


など、コピーライティングの手法を活かして、出来るだけ印象的なセンテンスを多用して書いた作品で、これはやはり「詞先」だ。パンチのある言葉の並びを用意したうえで、そのワードに相応しい乗り物=メロディをあとから作る手法だ。

ただ、今作「ネモフィラ」の完成形を今改めて聴くと、浮き出てくる極端な言葉でノックアウトを狙うとか、なにかを説明しきるとか、そう言った“掟”から解放された歌詞作りに終始した気がしている。


祈るように 仰ぐように
待ちわびたネモフィラの花が咲いた
冬の夜の長い闇も
その笑顔だけが 一縷の光で
過ぎた日々も 見えぬ明日も
二人で受け止めてゆけたらいいな
だから どうかそばにいて
あなたがいるなら 大丈夫



こちらがワンコーラスのサビの歌詞。「あなた」と巡り合えた歓びを謳歌し、様々な過去をお互いに背負いつつも、先行きの見えない未来を二人で受け止めていく覚悟を決めた現在…を描写している。でも、具体的にいつ、誰が、何を、どこで…といった説明的な描写もなしに、また、取り立てて意外性や異質感を押し出した言葉選びもなしに、楽曲の顔ともいえるサビが進行していくのは、自分の曲作りにおいてはチャレンジングなことだった。

ただし、これらの言葉たちは、必然性を持って「ネモフィラ」と言う楽曲のサビを構成するに至ったと思っている。どのフレーズも【メロディが呼んでいた】言葉たちなのだ。


今まで自分が書いてきた楽曲のほとんどは、「詞先」(まず歌詞を作り、そこに後からメロディをつける)で作り上げたものだった。

あれは小学6年生ごろだっただろうか…、なんとなくで作曲を始めたばかりの頃、自ずと作詞もやってみようかな…?という興味だけが沸きつつあったとき、テレビで槇原敬之さんが曲作りについて語っていらして、「自分は詞先。曲を先に作ると、歌詞で何が言いたいかわからなくなっちゃうから」という旨のことを仰っていて。「じゃあ自分もそうしよう!」と思い立ってから、ずっと詞先のスタイルを貫いてきた。それからずっと、自分の曲作りは あくまで“言葉だけ”で情報を成立させたうえで、その言葉が乗っかるにふさわしいメロディを捻り出す…そんな作業の連続だった。

だが、いつものように作業机の前で、取っ掛かりとなるアイディアを探していたときのこと。今回は「抽象性」「空気感」を重んじた曲作りがしたい―――そんな方向性が自分の中で定まりつつある中で、「ネモフィラ」の原型となるサビのメロディがふと浮かんできた。

もともと作曲を始めた当時から、メロディを生み出す作業は、歌詞を考える以上に大好きだ。ただ、言葉ありきで旋律を生み出したい、という自分の理念ゆえに、言葉を持たないメロディを僕の作品作りに積極的に活かすパターンは、今まであまり無かった。

ところが今回生まれてきたメロディ、そしてそのメロディが呼ぶコード進行が醸し出す雰囲気は、明るすぎず暗すぎず、どことなく爽やかで暖かな「風」を帯びているような空気感を持っていて、自分が描きたい「ネモフィラ」の完成イメージを想起させるのに十分な素材だった。そこで、ここに誕生したメロディという乗り物に乗っかるにふさわしい「言葉」を探す――すなわち「曲先」のアプローチで今回は作曲しよう、と決めた。


「詞先」が、ひらめいた言葉を優先してメロディに落とし込んでいくのに対して、「曲先」ならではの、メロディが呼んでいる言葉や感情はどんなものか、旋律が持つ感情の起伏に耳をすませ“言葉を聴く”イメージで、パズルをはめていくような作詞作業だった。

音符を何度も歌いながら、そこに乗せるにふさわしい言葉たちを探っては並べ、その言葉の羅列の中に意味を織りなしていく作業が、自分の中では非常に新感覚の行程だった。その結果として、抽象度が高くも、メロディと歌詞をまとった歌声がアレンジと軽やかに調和して風のように流れていくイメージの楽曲が出来上がったと思う。

決して言葉で1から10まで説明しきらずとも、行間の補足は、この曲のメロディライン、それを唄い上げる声のトーン、バックで鳴っている楽器たちのアンサンブル……それら全ての構成要素が担ってくれているような、そんなバランスの作品になった。

冒頭で示したような、「ネモフィラ」という楽曲テーマを通して描きたかったメッセージを、この楽曲がまとう抽象性の中に感じ取っていただけたら本望である。

<コアラモード. 小幡康裕>

◆紹介曲「ネモフィラ
作詞:小幡康裕
作曲:小幡康裕

◆ニューシングル「ネモフィラ」
2021年2月17日発売
完全生産限定盤(DVD付) ¥2,000(税込)  

<収録曲>
1.ネモフィラ 
2.ちゃんと手をつなごう 
3.わたしの願いごと 
4. ネモフィラ Instrumental

期間限定通常盤(アニメ盤) ¥1,100(税込)

<収録曲>
1.ネモフィラ
2.ちゃんと手をつなごう
3. ネモフィラ -TV Size-
4. ネモフィラ Instrumental
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