パノラマパナマタウン

言いたいこと言うだけなら、冷蔵庫のメモ書きでいいんやから。

 先日、メンバーSNSより12月16日に新曲配信のアナウンスが発表されたパノラマパナマタウン。12月12日にはバンドのホーム地、神戸太陽と虎にて、PANORAMA PANAMA TOWN ONE-MAN LIVE“from KOBE”が開催され、約1年ぶりとなる有観客ワンマンライブにはライブハウスキャパ50%以下から当選した70人が集まりました。ポリープ手術にメンバー脱退と様々な関門があった1年、今回のワンマンライブで完全復活を遂げたアクセル全開のライブパフォーマンスとなりました。

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“パノラマパナマタウン”の岩渕想太(Vo.)による歌詞エッセイをお届けいたします。綴っていただいたのは、コロナ禍での様々な想い、そして、その経験を得たからこそ自身のなかで変化した歌詞に対する向き合い方です。一体どうして詩は生まれるのか…。その答えを、彼のエッセイとともにみなさんも探してみてください。

~歌詞エッセイ~

昨日は神戸太陽と虎でライブだった。止まっていた時計が進み出したようなそんな感じ。殆ど、一年ぶりの有観客ワンマンライブ。汗をかき、音が弾む。やっぱりライブの代替物はどこにもないと痛感した。

大体の人はそう思っているだろうけど、自分たちにとっても、今年は思うようにいかない一年だった。6年一緒にやってきたメンバーが脱退し、喉のポリープ切除手術をし、再始動を掲げるはずだった日比谷野外音楽堂でのライブがコロナでキャンセルになり。まるで、「踏んだり蹴ったり」を辞書で引いた時の挿絵のように、思うようにいかない日々の中で、個人的にも悲しいことが沢山あった。

「やるせない」とよく言うけど、今年を経て、その言葉の解像度が少し上がった気がする。これが「やるせない」ってことか。どこにもやり場のない感情だけが、体の中に蓄積していく。そこには、怒りのような感情や、悲しみのような感情や、いろんな思いがあり、沸沸と湧き上がっては、名づけられるのを待っていた。

酔っ払った父親はよく俺に詩の話をする。あとは、納豆はよく混ぜろという話と、深夜の高速の運転は危ないという話。父親は若い頃、詩集一冊だけを持って上京したらしい。嘘か本当か知らんけど。

「言いたいこと言うだけなら、冷蔵庫のメモ書きにでも書いとけばいいやろ。」父親はよく俺に言う。初めて言われたときは、よく意味が分からなかった。歌詞ってのは言いたいことを言うもんやろうよ父さん。違うよ想太、よく聞け。言いたいこと言うだけなら、冷蔵庫のメモ書きでいいんやから。はあ。

そんな言葉が、身をもって理解できるようになったのは今年のことだ。どうしようもないほど、やるせなくて、未分類の感情が体の中に渦巻いている。それは間違いなく、そこにあって、どんな言葉にしても、何か違うような気がする。

ライブもできず、鬱屈としていた夏頃、部屋に閉じこもって曲を作っていた。すると、そのモヤモヤが、ちょっとだけ形になった気がする。勢いのまま歌詞を書く。歌った拍子に出てきた言葉をメモしたり、言葉と言葉の順序を入れ替えたりしながら歌詞ができていく。それはもはや、最初にあった「言いたいこと」からはかけ離れたものかもしれない。でも、それをエネルギーに産まれたものだ。

「言いたいことを言う」のが詩じゃないんなら、どうして詩は生まれ得るのか。そう思っていたけど、「言いたいことがそこにある」と信じるから詩が生まれる、ような、そんな気がする。間違いなく、そこにある、と信じて、そこに向けて近づいていく。どんなものでも代替できない、そこに向けて。それが表現かも。

こないだ朝、玄関を開けると、目の前で緑色の鳥が3羽、大きな声で鳴いていた。灰色の日常からはみ出て、圧倒的に美しい。何だか嬉しくなって、スマホで調べると、50年前に三軒茶屋で逃げ出した数百羽のインコが野生化しているらしい。鳴き声もうるさいし、感染症を広げるかもしれないし、何だかとても嫌われてるようだ。

見方によって、物は変わる。やるせない毎日だけど、50年を経て、うちの玄関まで辿り着いたインコのようなそんな詩を書きたい。「この曲で言いたいことは何ですか?」ってインタビュアーの質問を置き去りにして、飛んでいけ、誰かのもとへ。

<パノラマパナマタウン・岩渕想太>
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