さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った緑黄色社会のボーカル・長屋晴子さんによる歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾、第2弾に続く最終回。綴っていただいたのは「詞先?曲先?同時?」という話題について。彼女が“曲作りのとき=0を1にするとき”に大事にしていることとは…? 連載ラスト、是非、最後までご堪能ください!
~歌詞エッセイ最終回~
3回目になるこのコラムも今回で最終回。
さて、何を書こうかしら。
最終回も相変わらずゆるりと綴っていきますので、今回もゆるりとお付き合い下さいませ。
前々回に、0を1にするのが難しいというお話を。前回に、じゃあどんな気持ちを1にしてみたくなるのかというお話をさせていただきました。最終回の今回は、0を1にする段階で大事にしていることについてお話をしようかなと思います。
インタビューや、ミュージシャン同士の会話でよく登場するのが、「この曲は詞先?曲先?もしくは同時?」という話題。分かりやすくお伝えすると、「この曲を作ったとき、歌詞が先に浮かんだの?それともメロディ?もしくは歌詞とメロディが同時に浮かんだの?」というお話です。
曲作りに正解なんてものはなくて、作り方は本当に様々だし、人それぞれだし、その瞬間次第でももちろん変わる。もっといえば楽器なんてなくても、鼻歌だけでも作曲はできる。現に私も楽器を一切使わずに鼻歌で曲作りをすることがよくあります。
先ほどの、詞先、曲先、同時という話に戻ると、私は詞先、もしくは同時のパターンがほとんど。曲先でも曲を作ろうとしてみたことはあるのだけれど、どうも私にはしっくりこなかった。今のところ。
私ではない人(メンバー)が作曲した曲に歌詞を書くこともあって、それはある意味、曲先の作り方になるのだけれど、今回はいったんそれは置いておきます。
私自身、考えてみました。どうして詞先、もしくは同時進行の楽曲制作になるのだろう。むむむと考えてみた結果、なんとなく共通点が見つかってきました。その曲を作る上で何を大事にしたいか。それによって曲の作り方が変わっているなと思います。
詞先の場合は、やっぱり伝えたいメッセージ、歌詞を大事にしています。そんなときは、“この気持ちを曲にしたいんだ!”というテーマが見つかって、色々と先走ってしまうくらい書きたいことが溢れていることが多いです。
想いがばーっと溢れてしまって、それを一つ一つこぼさないようにメモしているといつの間にかメロディをつけるよりも先に詞が出来上がっている、なんてことがよくあります。
だからそんなときは途中で無理やりメロディをつけることはせず、その衝動的な気持ちを優先して、まずは歌詞を大事にしながら曲作りを進めていきます。ニューアルバム『SINGALONG』でいうと「sabotage」なんかがそう。
そして歌詞とメロディが同時進行の場合は、いわゆる“降りてくる”アイデアであることが多いので、その直感的なアイデアを大事にしています。
私はよくお風呂や寝る直前にすっとアイデアが“降りてくる”ことが多くて、すぐさまボイスメモに残したり、コードをつけてみたり、睡魔に負けてそのまま夢に溶かしたりしています。笑
“降りてくる”ようなアイデアってきっと、授かりものであるのと同時に、自分でも気付かないうちに心の中で蓄積していて、「ここから出してよ」と放出されたがっていた気持ちのような気がしていて。
そんなときはその気持ちを育むように、すっと“降りてきた”アイデアを大事にして、なるべくそのまま活かして、こねて、ひろげて、またこねて、、、、ニューアルバム『SINGALONG』でいうと、「Shout Baby」、「愛のかたち」、「幸せ」、「冬の朝」なんかがそう。
というように、その曲にとって大事なものを見極めて、その曲に合った作り方で曲を作るようにしています。
自分の曲って、子供のようなもの。自分の分身のようだし、とても愛おしいし、守りたい存在。
そんな曲たちが、リリースされて世に出て、私以外の人たちに知られていくことは今でも不思議な感覚です。
そんな我が子についてのお話をこうしてさせてもらえること、本当に有難い機会だと思っています。
3回にわたってコラムを書かせていただきましたが、それらを読んで、今まで聴いていた曲たちもまた違った見方で聴き方で、感じてもらえたら嬉しいです。
我が子が、そして『SINGALONG』が、多くの人から愛される作品でありますように。
というわけで皆さま、ゆるいコラムに長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは。
<緑黄色社会・長屋晴子>
◆ニューアルバム『SINGALONG』
2020年4月22日配信リリース
<収録曲>
01. SINGALONG
02. sabotage
03. Mela!
04. 想い人
05. inori
06. Shout Baby
07. スカーレット
08. 一歩
09. 愛のかたち
10. 幸せ
11. Brand New World
12. あのころ見た光
13. 冬の朝