さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った緑黄色社会のボーカル・長屋晴子さんによる歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾に続く、第2弾。収録曲「愛のかたち」に通ずるお話を綴っていただきました。あなたは<誰かが語る法則や 尾ひれのついた噂>が気になるあまりに、自分や相手の愛の形に対する自信がなくなってしまうこと、ありませんか…?
~歌詞エッセイ第2弾~
さて、何を書こうかしら
という感情が再び。
ぼんやりした頭の中をぐるぐると探検しながらゆるりと書き綴っていきますので、今回もゆるりとお付き合いくださいませ。
前回、0を1にするのが難しい。そもそも作曲においてのテーマである0が普段の生活で常日頃発生するわけではなく、じっくりと時間をかけて現れるんだという話をしたのだけれど。
じゃあ一体どんなときに空っぽではない0が生まれるのか。1にしてみたい0が現れるのか。そんなことを今回綴ってみようと思います。
前回と重複してしまうのですが、これまでに作ってきた楽曲の中には、うーんと頭を捻って作り出した0から制作した楽曲ももちろんあります。だけど、日常で起こる疑問や違和感、モヤモヤが溜まりに溜まって自然発生した0を私はいつも大切にしています。
そんな自然発生した0から制作した楽曲を、 曲名をあげて例に出すとすれば、今回のニューアルバム『SINGALONG』でいうと「愛のかたち」という楽曲。
小学校高学年の頃から(早い人は幼稚園くらいからなのだろうか)、人の恋愛事情が気になって仕方がなかった。というより、誰が誰を好きなのかクラス中が把握していて、情報を共有することが当たり前という小さな世界で過ごしていたので、人の恋愛事情を気にすることは当たり前のことだと思っていた。
中学校、高校、そして大学と進んでいくと、今度はみんなが当たり前のようにスマートフォンを持っていて、当たり前のようにSNSを使っている時代。そして当たり前のように、SNS上にみんなの恋愛事情が散らばっている時代。別にそれが悪いことだなんて言っているわけではないし、思ってもいない。
ただ、そんな当たり前の中にいると、それが原因で上手くいかないことがあったり、余計なことを考えてしまったりもする。
「あそこのカップルお似合いだよね~」
「あのふたり○○に旅行に行ってきたらしいね、羨ましい~」
「今喧嘩してるらしいよ」
「別れたらしいよ」
こんな会話が飛び交うのも当たり前だった。私も当たり前のように参加して、当たり前のように周りの日常をチェックしていた。
すると、人の恋愛事情が気になって仕方がないのと同時に、周りからの視線も気になって仕方がなくなってきた。
自分も同じように噂されているのだろうか。似合わないと笑われているのだろうか。それって自分がこんな容姿でこんな性格だからなのかな。だんだん失われていく自信。募っていく不安。
「ねえ、私のこと好き?」
「どんなところが好き?」
「私たちってお似合いかな」
「皆から羨ましがられるような所に行ってみたいな」
ううん。違うよ、そうじゃない。
向き合うべきは、手の中にあるスマートフォンなんかではなく、今目の前にいる大切な人、ただひとりなんだ。
人と人が運命的に巡り会って一緒になることに、正解なんてものは絶対にないし、間違いなんてものもない。人と比べる必要なんてないし、誰かからとやかく言われる筋合いもない。
いつだってふたりだけの話。
よそ見なんかしなくていい。
愛のかたちは、人それぞれ。
そんな想いを衝動的に書き上げた楽曲が、
そう、「愛のかたち」でしたとさ。
おしまい。
それではまた。
<緑黄色社会・長屋晴子>
◆紹介曲「愛のかたち」
作詞:長屋晴子
作曲:長屋晴子
◆ニューアルバム『SINGALONG』
2020年4月22日配信リリース
<収録曲>
01. SINGALONG
02. sabotage
03. Mela!
04. 想い人
05. inori
06. Shout Baby
07. スカーレット
08. 一歩
09. 愛のかたち
10. 幸せ
11. Brand New World
12. あのころ見た光
13. 冬の朝