イチオシ!

久しぶりにこの楽曲を聴いた、意外なきっかけをお話させてください。

 今日のうたコラムでは、人気コーナー『言葉の達人』にもご登場いただいた作詞家・鈴木まなかさんによる歌詞エッセイを第1弾~第3弾に分けてお届けいたします。2011年、17歳にして作曲家としてメジャーデビュー。わーすた、こんどうようぢのサウンドプロデューサーを担当し、SUPER☆GiRLS、私立恵比寿中学などの作詞も手がけている彼女。
 
 そんな鈴木まなかさんが、歌詞エッセイの第1弾に続く第2弾で綴ってくださったのは、女性アイドルグループ“わーすた”に提供した楽曲「いまはむかし」にまつわる、彼女の実体験のお話。是非、このエッセイを読み終えたあと、改めて歌詞を読みながら、曲を聴いてみてください。

~歌詞エッセイ第2弾「いまはむかし」10年後のもう1つの物語。~

以前プロデュースしていたアイドル“わーすた”に提供した「いまはむかし」という楽曲は、大好きなお祖父ちゃんが亡くなってしまう物語。歌詞は淡々と書いて、仮歌は泣きながら録音したのを今でも覚えています。実はこの曲はノンフィクションです。

幼少期、祖父と祖母に育てられた私にとって、とても思い入れの強い楽曲となりました。そして、リリース後しばらくの間、自らこの曲を聞くことはありませんでした。私が久しぶりにこの楽曲を聴いた、意外なきっかけをお話させてください。

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おばあちゃんは古くなった家で一人暮らし。孫の私も、おばあちゃん家からすぐ近くのマンションで一人暮らし。仕事を初めてからもずっと祖母離れができず、週に2日ぐらいは夕ご飯を一緒に食べて、休日は大体おばあちゃんの家で過ごしていた。

おばあちゃんは、朝7時に起きて、仏壇に手を合わせる事から一日が始まる。朝ごはんを食べる時も、お昼ごはんを食べる時も、夜ご飯を食べる時も、「あなたのおかげでこんなに美味しいご飯が食べれているよ!いつもありがとう!いただきます!」と、元気に独り言を言い、夜寝る前も、手を合わせて一日が終わる。

そういえばお風呂に入っている時も、「あなたのおかげで今日も幸せな1日でした、ありがとう!」って独り言がよく聞こえてきてたなぁ。

いつも健康だけが取り柄だと、喜んだ時にジャンプをしたり、前屈で勝負を挑んできたり、そんな少女のような可愛らしいおばあちゃんから着信があった。

-Trrrru Trrrru-
「もしもし、どうしたの??」
「それがねぇ、、、、、」

おばあちゃんは、腰を痛めて動けないらしい。なんとそのきっかけは、スキップ。私は呆れながらも、クスッとしてしまった。その日をきっかけにおばあちゃんの家に行く頻度は増えたものの、おばあちゃんの腰痛は一向に治らず、それどころかどんどん悪化していった。

-Trrrru Trrrru-
「もしもし、どうしたの??」
「まなかちゃん、、、、、」

腰痛が急に悪化して動けなくなってしまったらしい。急いで駆けつけ、救急車で病院に向かった。検査を終えて、その日からおばあちゃんは入院することになった。その後、先生から私だけ呼び出しがあり、診察室のドアを開けると、思いのほか深刻な顔をした先生を見て、嫌な予感がした。一通り話を聞いたが、ハッキリと記憶に残っているのは一言だった。

「ガンです。余命3ヶ月です。」

変わりなく思えていた毎日は、すでにカウントダウンが始まっていたのだ。

その後すぐに家族会議をした。話し合いの結果、おばあちゃんには最後まで秘密にすることに決定したが、それで良いのか私一人モヤモヤが募っていた。翌日、複雑な心境の中病室に入ると、おばあちゃんは元気そうに笑っている。

「病院で安静にしていたら、もう治ったみたい!すぐ退院できそうだから、そうしたら一緒にステーキ食べに行こうね!」

その日を境に私は毎日病院へ行くようになった。何も知らないおばあちゃんは、痛み止めが聞いてる間は希望に満ち溢れていた。痛み止めが日に日に増えていることを悟られないように、おばあちゃんに薬を飲ませていたが、それでも、ガンの進行は抑えきれないようだった。

自分が癌だとは知らずとも、痛みが無くなっては薬が切れて激しい痛みが来るのを繰り返すことにより、いつまで続くかわからない闘病生活と共に、だんだんと希望が小さくなっていった。

「退院したら、また自転車に乗れるようになるといいなぁ。」

「退院したら、せめてお散歩はできるようになるといいなぁ。」

「退院できたとしても、車椅子になっちゃうかもしれないから、大きい車をまなかちゃんに買ってあげるね。また一緒にお出かけしたいねぇ。」

おばあちゃんは痛み止めが切れる度に、「なんでだろう?あんなに良くなっていたのに、またぶり返しちゃった、、、」と繰り返し、先の見えない不安に怯えていた。そんな姿を見ていて、私の中でおばあちゃんに伝えたほうが良いんじゃないかというモヤモヤは確信に変わった。

「ねぇ、おばあちゃんは知りたい?」

つづく。

<鈴木まなか>

◆紹介曲「いまはむかし
作詞:鈴木まなか
作曲:鈴木まなか・宇佐美宏

★鈴木まなか
『言葉の達人』登場回
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