これは僕だけの戦争だ。
Karin.
これは僕だけの戦争だ。
2024年1月31日に“Karin.”がデジタルシングル「僕だけの戦争」をリリースしました。独立後初の作品となり、MVはfujimura hiyoriが監督を務めております。 さて、今日のうたではそんな“Karin.”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「 僕だけの戦争 」にまつわるお話です。生きてゆくことの難しさや幸せに囚われ、自身の孤独と向き合い続けているあなたへ。歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。 多様性を認めるって、上から目線なのか? 多様性。みんなで認め合おう、受け入れ合おう、みたいな風潮が高まる中、僕のこの孤独は誰にも理解されないものだと感じた。 互いを受け入れ合う世の中になったはずなのに普通じゃないことは隠し通さなければならず、僕のこの孤独を誰かが知ったらきっと責められると思った。 貴方の言葉を信じて僕はとても大きい船に乗った。 様々な鎧を着せられ、社会の知りたくないことは全てシャットアウトすることができた。 僕が苦くて食べかけのまま残した期待は貴方が全部咀嚼し、真新しい気持ちのまま飲み込んでくれた。 見たい景色は貴方の隣で背伸びをして見ていた。僕一人じゃ見ることのできない景色。それはとても青くて、どこまでも夢が広がっているようだった。 だから僕にとって貴方は全てだった。 それなのに気付けば深い水底に沈められ、「目の前のことと向き合うしかない」と言われたけれど、僕の瞳にはもう何も映っていなかった。 暗い暗い夜道を、ただひたすら彷徨った。 貴方が与えてくれたたくさんの宝石を抱えて、越えることのできなかった昨日を何日もかけて、たった一人で登り続けた。 朝が憎いと思う日だって多々あった。 全てを託していたはずだったのに、貴方はもうこの世界には存在していなかったから、僕は負の感情を全部一人で抱えることとなった。 消えないこの気持ちはどこにしまおうか。 一人では生きることができないと言われていても ちゃんと一人にならないと始まらないことだってある。 深い孤独の底にいると思い込んでいた僕の心は今にも押し潰されそうで、 貴方の隣にいればいるほど、僕の心はどんどん蝕まれていった。 生きることが幸せだなんて嘘だ。 僕の人生は僕のものでしかないのに、気付けばいつも何かに囚われしまう。そして幸せの評価は全て他人の評価だ。 知的さや効率を重視することにより、みんな何か大切なものを置き去りにしているのではないか。 何重ものオブラートに包まれては吐き出される、建前で構成される会話。 本音を話し始めた途端、それは必然的に誰かを傷つけ自分も傷を負うこととなる。 疲れて眠ることで生きることを感じていた僕にはもう、昨日と今日、今日と明日の区別なんて見当もつかなくなってしまっていた。 周りが正しいのであれば僕の生き方は間違いだ。 いつも似たようなものを選ぶくせに、自分じゃなきゃ嫌だった。 傷つくことを恐れていた僕は、いつのまにか上手く生き方を覚えてしまったみたいだ。 転んで擦りむいた傷に貴方は丁寧に絆創膏を貼ってくれたけれど、僕一人じゃ自分がどこを怪我したのかなんてわからなかった。 ねえ、幸せって一体なんだったの? 籠の中の鳥みたいに、外の世界を知らなかったら幸せでいられたの? 生きてゆくことの難しさや幸せに囚われすぎた僕は、僕のことがわからなくなってしまった。 僕の全てを知っている気になっていた貴方は、自分が肯定できない何かを僕の中に反射させ、自分のことを認めようとしていたのではないか。 悔しいけれど、僕はもう何処にもいけない気がした。 この世界で生きていたいなら、誰かに与えられたこの役を一生こなし続けるしかない。 僕はずっとここにいるのに、誰も僕の本当の姿なんて興味すらないくせに、僕のことを勝手に都合よく理解しようだなんて思わないでくれ。 これは僕だけの戦争だ。 どんなものを持ち合わせて生まれてきたとしても、僕は僕として生きていきたい。 < Karin.> ◆紹介曲「 僕だけの戦争 」 作詞:Karin. 作曲:Karin.