歌詞の主人公をどう作る?

ポルカドットスティングレイ
歌詞の主人公をどう作る?
2024年4月17日に“ポルカドットスティングレイ”がNew Digital Single「ブラックボックス」をリリースしました。同曲は月刊コロコロコミックで人気連載中『ブラックチャンネル』YouTubeアニメのテーマソングとして書き下ろした作品。うねるベースとタイトなドラムに攻撃力抜群のギターが重なり合った緊張感の高いアレンジで、ダークヒーローであるブラックを。歌詞では、どんなことがあっても友だちのブラックを信じる主人公・さとしの気持ちを表現した炎上上等なアグレッシブな楽曲となっております。 さて、今日のうたではそんな“ポルカドットスティングレイ”の雫による歌詞エッセイを3回に渡りお届け!綴っていただいたのは自身の作詞論。最終回のテーマは<歌詞の主人公をどう作る?>というお話です。曲ごとに設定する主人公。リスナーがその主人公により“没入”できるよう、意識していることは…。ぜひ、ポルカドットスティングレイ楽曲の歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください! 記事、涙の第3回です。名残惜しいネ。 私は歌詞を書く上で、自分のことは書きません。 その歌における主人公を設定しています。 曲におけるターゲットを設定し、それに基づいたペルソナを作って歌詞を書いていきます。 私は歌詞の意味よりも音を大事にしているので、ここも曲先行です。言いたいことが先に来てない(ここは作詞者ごとに流派があります)。 例えば「 リドー 」なら… ボカロっぽい曲を作りたい →オタクにウケたい(自身もオタク) →ファンタジーにしちゃお →舞台は、世界を作った神・リドーが気まぐれに姿をくらましてから100年後の蒸気都市。 均衡を失ったこの星の大気には、有害物質が増加していた。 人類の抵抗も虚しく、街は衰退し、力尽きた人や職を失った人で溢れている。灰色と金属の街に横たわる半人半怪の山。 万策尽きて、人々が願うのをやめた頃、革命のために立ち上がったレジスタンスたちが居た。 そのレジスタンスのリーダーが主人公で、神・リドーに会いに行く話にしよう! は? こんな感じです。 主人公は元戦士の女性なので、一人称は「私」。この「私」に、リスナーを没入させる歌詞を書いていきます。 とにかく没入感が大事。聴いてるとき、リスナーに主人公になってもらわなきゃいけないからネ。 経験上、設定の説明に尺を使わない方がいいです。だって、実際自分がその状況に置かれてたら設定の説明なんてしないから。 聴いてる人にとっては、ダラダラ説明なんてされてもだるいだけです。チュートリアルは最低限がよい。 設定の説明をしない代わりに、その主人公の目線で、今見たものとか、今思ってることを書いていくのが吉です。 さらに、没入してもらう工夫として、言いたいことは絞った方がいいです。 曲尺って大体3~4分とかやん。中途半端にいろいろ設定とかシーンを詰め込むと、理解にコストがかかって心地よくないです。 「 ブラックボックス 」の歌詞を見てみましょう。 悪魔でありYouTuberのブラックと、相棒の小学生さとしくんが主人公のアニメ『ブラックチャンネル』のテーマソングです。 この曲は主人公のさとしくん目線の歌詞なので、リスナーのみなさんには、さとしくんになってもらいます。 ―― 振り回して! 完膚なきまで 大問題だけど信じてる 絶体絶命 それでも結構! 怪物に堕ちた天使 正直悪くない だからGimme! BLACK BOX ―― 3分間いろいろ言ってるけど結局、「振り回されてもなんだかんだ君と居るの楽しい」の一点張りです。 作詞にあたってもちろんブラックチャンネル全部見てクソ長オタクノート作ったけど、結局『5億年ボタンを押すとどうなるのか?』の回にシチュエーションを絞って書いています。 ここに他の回のエピソード何個も入れようとか、ブラックの堕天エピソード入れようとか、欲張りすぎると「なんかいっぱい要素出てきて没入できないな…」ってなります。 少なからずブラックチャンネルを知らない人も聴きます。なんならうちのファンじゃない人も聴く。 「全部理解してやるぞ!!」という熱量があるリスナーはほんの一握りなので、情報量が多くなりすぎるとキモいだけなんですネ。 主人公の軸を作ってあげるの大事。 結局そいつの一番言いたいことはなに? 一番やりたいことは? もっと言うと、リスナーにどこに共感してほしいの? 誰に向けて書いてる曲なのか。聴いてどういう気持ちになってほしいのか。 主人公はリスナーです。 あなたを一番主人公にしてくれる曲、たくさん探してみてネ。 <ポルカドットスティングレイ・雫> ◆New Digital Single「 ブラックボックス 」 2024年4月17日リリース 作詞:雫 作曲:雫