ねえ、話半分のあなたに一生をあげるよ。

 2019年10月16日に“ポルカドットスティングレイ”が3rdミニアルバム『ハイパークラクション』をリリースしました。今日のうたコラムでは今作に収録されている新曲「おやすみ」をご紹介いたします。ボーカル・雫が自身のTwitterで『「おやすみ」は話半分の続編の大人のラブソング』と綴っていたこの歌。まず「話半分」の歌詞はこちらです。

暗くて真面目な私が
こんな選択をすることを
初めて知りました
私の中身が透けていく様だな

これは愛だと思うので
あなたと話すのは少し怖い
冗談ばかり言って
それで、時が経てばいいのに
話半分」/ポルカドットスティングレイ


 暗くて真面目な性格だから、恋に対してもネガティブになりがちで、軽率に深い関係にはなれない主人公。でも“<こんな選択>=愛すること”ができるほどの<あなた>に出逢えてしまった。そんな初めての<愛>を知った幸せと<少し怖い>気持ちが描かれているのが「話半分」という楽曲。では、その先にはどんな風景が続いているのでしょう。

鏡を拭いて綺麗にしたの
鮮明だった景色を知った
コンビニでケーキ買う私は
その大きな黒目に映るコーヒーに
溺れたい
「おやすみ」/ポルカドットスティングレイ


 こうして幕を開ける歌。最初の<鏡を拭いて綺麗にしたの>というワンフレーズは、どこか「話半分」の<暗くて真面目>だった自分の薄暗い部分を拭い去っている印象を受けます。誰かを愛する前の<私>は、自分自身にも他者にも世界にも無関心で、それらを映し出す象徴である<鏡>が汚れていても気に留めなかったのかもしれません。
 
 でも<あなた>に出逢ったことで、あらゆるものに対して心が“ひらけた”のではないでしょうか。それが<鏡を拭いて綺麗>にするという行為に表れ、新たに<鮮明だった景色を知った>のです。人生の新章のスタートです。そして<コンビニでケーキ買う>甘い幸せのなかにいる<私>は今、もっと<その大きな黒目に映るコーヒー>のように黒く苦い部分までも知りたいと、もっと<あなた>に溺れたいと、想いを深めております。

知り合いの少ない私にとって
何が始まって、なくなったとか
全然興味ないんだけど
今あなたが居なくなったら、
なんてことを考えてしまう
朝言ったことを私はまだ気にしている

今日も愛していたよ
まだあなたのこと、何も知らない気がする
さっき終わった話が
不思議になるくらい頭の中を回るのは
真面目なあなたの顔が
知らないものに見えたから

あなたのおかえりとおやすみが
聞けない夜は眠れないや
一人では一人になれないと
気づいてしまって
あなたが愛おしい
「おやすみ」/ポルカドットスティングレイ


 続く歌詞から伝わってくるのは、さらなる“知りたい気持ち”です。また、愛するひとを知ってゆくことに伴う愛しさと怖さも。こんなに好きなのに<まだあなたのこと、何も知らない気がする>から<朝言ったこと>も<さっき終わった話>も<あなた>がどう感じているのか知りたい。わからないのは不安で寂しい。でも本音を知るのも少し怖い。

 だって、もう<あなたのおかえりとおやすみが 聞けない夜は眠れない>くらい、当たり前に日常に<あなた>がいるし、いつも“二人”だからこその<一人>も知ってしまった。だからこそ、深入りし過ぎたせいで関係がこじれて<あなたが居なくなったら、なんてことを考えて>しまって、怖くもなるのではないでしょうか。好きで仕方ないからこその、愛しさと不安と寂しさと怖さと、いろんな気持ちが胸の内で揺れているのです。

あなたはいつでも誰にでも愛されているから
たとえば私がいなかったとしても
きっとそれはそれで幸せになれるんだろうな
孤独な私は嬉しくて悲しくて

今日も愛していたよ
ねえ、この涙はさ、
愛に戸惑ってしまうから
どんなおまじないを
100回繰り返すより、
あなたの顔が一度見たい
「おやすみ」/ポルカドットスティングレイ


 もともとは<暗くて真面目な私>なので、やっぱり<たとえば私がいなかったとしても>…というネガティブな想像もしてしまいがち。でも「話半分」よりたしかなのは、揺るぎのない<愛>が<私>にあることです。相手の気持ちはどう移ろうかわかりません。それに対する不安も自信のなさも拭えないことでしょう。それでも、ただただ<私>は毎日<今日も愛していたよ>と噛みしめて生きております。

ねえ、もう離さないで
明日も明後日も、
ずっとここに置いてくれる?
ねえ、話半分のあなたに
一生をあげるよ
要らなくなったら言ってよ
私の隣で笑って
なんでもない日もずっと
「おやすみ」/ポルカドットスティングレイ


 そして<ねえ、話半分のあなたに 一生をあげるよ>と、そっと誓いの言葉を捧げているのです。悲しみに先回りして<要らなくなったら言ってよ>なんて、予防線も張ってはいますが、本当は要らなくなんてなりたくない。心から<私の隣で笑って なんでもない日もずっと>と願い、生涯「おやすみ」と言い続けられる関係を信じているのだと思います。
 
 手放しで幸せに浸りきることはできない<私>ならではの、静かなプロポーズソングとも言える、ポルカドットスティングレイ「おやすみ」。是非、あなたにとっての大切なひとを思い浮かべながら、聴いてみてください。

◆紹介曲「話半分
作詞:雫
作曲:雫

◆紹介曲「おやすみ
作詞:雫
作曲:雫

◆3rd mini ALBUM『ハイパークラクション』
2019年10月16日発売

<収録曲>(CD3形態共通)
1.バケノカワ
2.オトシマエ
3.おやすみ
4.阿吽
5.リスミー (かかってこいよ武道館 ver.)
6.おはよう(あっさり)
7.おはよう(塩多め)
※M6,7:CDのみボーナストラック