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  • Thinking Dogs
    運命はあるのか。
    運命はあるのか。

    Thinking Dogs

    運命はあるのか。

     2022年3月27日に“Thinking Dogs”が新曲「Collage」をリリースしました。本楽曲は、ひかりTVのオリジナルドラマ『ラブシェアリング』の主題歌にも起用されております。MVでは、見られる者と見る者を客観的な視点から、現代におけるソーシャルな監視社会を抽象的に表現。ぜひ、ドラマ、歌詞の世界観と合わせてお楽しみください。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Thinking Dogs”の大輝(Dr.) による歌詞エッセイを3回に渡りお届け!今回が最終回。綴っていただいたのは、楽曲「 はじまりのピリオド 」にまつわるお話です。みなさんは、運命はあると思いますか? その運命とは、神様に決められているものだと思いますか? 歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 人は生きてると沢山の疑問を抱く。   生きる意味とは何なのか。 心ってどこにあるのか。 宇宙人はいるのだろうか。 ピラミッドはどうやって作ったのか。   自分が産まれた意味や、宇宙のことなんかを夜な夜な考えては寝付けなくなる…なんて経験、皆さんにもありませんか?   人類がこの地球に産まれてから何万年という月日が経っているのに、それでもまだ分からないことが山のようにあるというのだから、本当に不思議だ。ロマンがある。     そんな、人が抱く疑問の1つ。 「運命はあるのか。」   誰しもが口にしたり、目にすることのあるこの言葉。 だけど、これ程にも曖昧で不確かな言葉はあるだろうか。   そもそも目には見えないし、触れることも出来ない。 唯一出来ることがあるとすれば、すでに起こった事象に運命という言葉を当てはめることくらい。   しかもそれは、良いことにも悪いことにも当てはめることが出来てしまう。ある意味使い勝手のよい言葉だからこそ、その言葉に翻弄されてしまうんだと思う。     仮に神様という存在がいたとして、その神様が1人1人の運命を決めているとしたら。 産まれてから死ぬまで、歩む人生で起こる事柄が決められているとしたら。   そう考えると、急に生きるのが嫌になりませんか? だって、必死にもがいて日々を生きてるのに、それら全てが無駄かもしれないから。 「運命なんて信じてたまるか!」って思いますよね。   その反面、僕の好きな話で「宇宙にある星の数は、地球上の砂粒の数より遥かに多い」というものがある。なんなら地球の表面全部が砂浜でも、星の数には届かない。とまで言われている。   そう考えると、この地球という星に産まれたことに運命を感じざるを得ないですよね。     つまり何が言いたいかというと、結局のところ、運命があるか無いかはその人の考え方次第ってこと。   すごく投げやりな答えに感じるかもしれない。 何を今更、そんな分かりきったことを言ってんだ。と思うかもしれない。 けど、それ以上でも以下でもない。   これが今のところの、僕の答え。     人生という物語。 僕は自分の手で、ペンを握って書き綴っていると信じたい。 じゃないと、きっと、神様を恨んでしまうから。   運命という言葉は、縛られるものではなく、信じるものだから。 <Thinking Dogs・大輝(Dr.)>  ◆紹介曲「 はじまりのピリオド 」 作詞:大輝 作曲:わちゅ~

    2022/05/04

  • Tani Yuuki
    この歌は僕が叶えられなかったもう1つの物語なのだ。
    この歌は僕が叶えられなかったもう1つの物語なのだ。

    Tani Yuuki

    この歌は僕が叶えられなかったもう1つの物語なのだ。

     2022年4月6日に“Tani Yuuki”の1stアルバム『Memories』が、全国のタワーレコードでCDリリースされました。昨年12月に配信のみでリリースとなったアルバムでしたが、LINE MUSIC アルバムチャート2位や、Apple Musicのトップアルバムチャート10位にランクイン等アルバムとしても話題に。ファンからの熱い要望もあり、全国のタワーレコード店頭、タワレコオンラインでも購入できることに…!    さて、今日はそんな“Tani Yuuki”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、アルバム収録曲「 愛言葉 」にまつわるお話です。「好き」や「愛してる」といった気持ちを、うまく伝えられないもどかしさを歌いながらも、普遍的なラブソングとして人気を集めているこの曲。その制作の背景にある、とある2人の物語を、そして本当の気持ちを、明かしてくださいました。歌詞と併せて受け取ってください。 今しばらく僕の独り言に付き合って欲しい。 高校生の頃、僕には好きな人がいた。 お洒落で、愛嬌があって、友達思いで人気者。 僕にはもったいないくらい高嶺の花だった。 対して僕は無頓着で口下手、友達はいるがお世辞にも人気者とは言えない。 男2女1の三角関係で言うならばヒロインに恋をするが実らず、結ばれた主人公とヒロインを一歩後ろで微笑みながら見守っている友人Bといったところか。 君の手に届いたときは信じられなかった、夢見心地というか 世界が輝き色づくとはよく言ったものだ。   何気ない日常も特別になった。 春は花見、夏は花火、秋はピクニック、冬はイルミネーション 水族館、遊園地、映画を見たり 人並みの、いやそれ以上の幸せな時間を過ごした。     いつまでも続けばいい。 時間が止まればいい。 そう思った。     しかし     時が経つと人は慣れてしまう。 当たり前になってしまう。 そこに甘えてしまう。   俗にいう倦怠期なのかはわからないが ある日、今まですんなり伝えられていた言葉が喉に引っかかって出てこないことに気がついた。 意地やプライドだ、口下手と相まって最悪だった。 無意識に合わせに行っていた部分が少しずつずれてきたのだ。 すれ違う事が増えた。 我慢しないで、無理はしないで、分かり合えることばかりじゃ無い。 2人並んで、足を揃えて、素直になれたら苦労しない。 そんなの僕もわかっている。 だが、できないのと、やろうとしないのは大きく違う。 大事なのは我慢したこと、無理をしたことをお互いが知っているかどうか、それを話し合える相手なのかどうかだと思うのだ。 当時の僕らはそれができなかった。 たった1回の人生、2人にとって代わりは効かない大事な物だった。 この歌は僕が叶えられなかったもう1つの物語なのだ。     夢追い人の宿命だろうか。 いや、至極当然だ。 夢ばかり追いかけて、ろくに働きもせず、先を見据えられなかっただけのよくある話だ。それでも諦めきれず、伝えきれなくなった思いを必死に綴った。 高価な物でも、希少な物でもなく、 僕から渡すことのできる最大限の気持ち、希望の歌。 それがこの「愛言葉」 あの時の君には皮肉になってしまっただろうか。     未来が見えず。 後戻りもできず。 たくさん迷惑をかけてしまった。 我慢させてしまった。 無理をさせてしまった。 最後に見た君は泣いていた。 辛い思いをさせてごめんね。 本当にありがとう。     思えば曲を作る最初のきっかけをくれたのも君だった。 君からもらった52文字を音に当てはめてできたのは悲しい歌。 君の中に蓄積され、抱えてきた物を僕が形にしたんだ。 それが僕の音楽人生において大きな意味になった。     残念ながら彼女とは別々の道を行き、2人揃って何十年後の未来から今を振り返るようなハッピーエンドは迎えられなかったが この世界のどこか、また違う誰かの「愛言葉」としてこの歌が生き続けてくれたらそれでいいと思うのだ。 そしてもし、仮に生まれ変わってまた巡り会うことがあったなら 今度は、今度こそは、迷わずその手をつかめるように。 花束の代わりにこの歌を送ろう。 これを2人の愛言葉にしよう。  なんてね。 <Tani Yuuki> ◆紹介曲「 愛言葉 」 作詞:Tani Yuuki 作曲:Tani Yuuki ◆1stアルバム『Memories』 2022年4月6日CDリリース VALLEY-009 ¥3,300(税込)   <収録曲> 01決別の唄 02.W/X/Y 03.おかえり 04.Myra 05.非lie心 06.Unreachable love song 07.Night Butterfly 08.油性マジック 09.百鬼夜行 10.曖昧ミーマイン 11.愛言葉 12.記憶 13.We are free 14.Life is beautiful  

    2022/05/02

  • THE BACK HORN
    君に何を伝えよう、生きる喜びそれ以外に。
    君に何を伝えよう、生きる喜びそれ以外に。

    THE BACK HORN

    君に何を伝えよう、生きる喜びそれ以外に。

     2022年4月13日に“THE BACK HORN”がニューアルバム『アントロギア』をリリース。アルバムタイトルの“アントロギア”は、古代ギリシャ語で<花を集めること>を意味し、今日では詩文を集めた詩集を表すことに由来。様々な花が持つ色彩のように4人の“今を生きる希望”が描かれた作品となっております。今作には、これまで通りメンバー全員が作詞作曲で参加し、様々な組み合わせにより制作された全12曲が収録。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“THE BACK HORN”による歌詞エッセイを4週連続でお届け。最終回は松田晋二が執筆。綴っていただいたのは、収録曲「 JOY 」にまつわるお話です。アルバムのなかで最後に歌詞が書かれたというこの曲。どのように物語の舞台が立ち上がり、広がっていったのか…。ぜひ、歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 「JOY」は今作『アントロギア』の中で1番最後に書いた歌詞です。   「瑠璃色のキャンバス」をクライマックスに置きながらも、最後にもう一曲その先を照らすような楽曲でアルバムを終えたいとメンバーに伝え、山田作曲、松田作詞のペアで制作に挑む事になりました。当初は歌詞を先に書いてそこに曲を付ける想定でしたが、イメージがなかなか具体的な言葉にならず、先に山田がこの曲を持ってきてくれました。まさに自分がイメージしていた以上の曲だったので、あとは何がなんでもこの曲にふさわしい歌詞にしようと、夜な夜なこの曲の事だけを考えていました。   作詞の進め方としては、まず何度も曲を聴いて、コードの持つムードやメロディーの温度を感じ取るところから始めていきました。そこからイメージを広げ、曲自体が向かおうとしている方向に寄り添っていく中で、自分の言いたい事も鮮明になっていったように思います。最近は“いかに曲と一体化した歌詞を書けるのか”というのを作詞のテーマにしているので、曲が歌いたがっているムードと、歌詞の言いたい事を合わせていく作業が大事だと思い、そこに時間を費やしました。   この「JOY」の冒頭は<世界の音が鳴り止んだ静かな夜>というフレーズから始まります。冒頭のシンセのフェードインを繰り返し聴きながら、歌詞を考えていた深夜の公園でふと出てきた言葉です。コロナ禍で、賑やかだった街がひっそりと静まり返って、まさに世界から音が消えてしまったような感覚を覚え、何気なく空を見上げた時にすっと浮んできました。そこからこの物語の舞台が出来上っていったと思います。   自分では、サビの<君に何を伝えよう 生きる喜びそれ以外に>というフレーズが気に入ってます。その公園から帰ろうと歩き出した時に気づいたら口ずさんでいました。“生きる喜び”を今伝えたい、という想いをこの歌詞に変換できたのは、まさに曲と一体になれたからなのかなと思います。歌詞は話し方にも似てる気がしていて、このサビにぴったりな言い回しが見つかったと、スマホに文字を打ち込みながらテンションが上がったのを覚えています。自然にすっと出てきた言葉達を最後まで信じられたのも、曲の持つ力のおかげなんだと思います。   「JOY」というタイトルは歌詞が出来上がる最後の方に付けました。歌詞のテーマにしようと考えていた“生きる喜び”をワンワードで収められるようなタイトルにしたくて、いろいろな角度から探していく中で「JOY」という言葉にたどり着きました。意味の収まりと曲に感じていたイメージがこのタイトルでビシッとハマった感じでした。   コロナ禍で、改めて感じた人と人の繋がりの大切さ、人に会いたいという気持ち、困難な状況だからこそ生きているという喜びを分かち合いたい。そんな想いを込めたこの「JOY」が、皆さんの心に少しでも染み渡ってくれたら嬉しいです。   <松田晋二(THE BACK HORN)> ◆紹介曲「 JOY 」 作詞:松田晋二 作曲:山田将司

    2022/04/28

  • 藤川千愛
    片っぽのピアス。
    片っぽのピアス。

    藤川千愛

    片っぽのピアス。

     2022年4月27日に“藤川千愛”がミニアルバム『ちょっとそこまで昨日を迎えに』をリリース。既に発表されているTVアニメ『盾の勇者の成り上がり Season2』エンディングテーマ「ゆずれない」、昨年放送されたテレビ東京系 ドラマParavi『にぶんのいち夫婦』オープニングテーマとなった「片っぽのピアス」の他、新曲5曲が収録されております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“藤川千愛”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 片っぽのピアス 」にまつわるお話。古道具屋で脳内に広がった、とある妄想から生まれたというこの曲…。ぜひ、歌詞と併せて、お楽しみください。 苦手というほどではないのですが、新しいものがどこかしっくりこないことも多く、休日はもっぱら古着屋や古本屋、中古家具の店なんかを冷やかしている。   ある時、いらなくなったものならば何でも売っていそうな古道具屋で、片っぽになったイヤリングを見つけた。片っぽというのは実に不思議なものです。深夜の路上に落ちている子供の靴にしろ、ガードレールのポールに被せられた手袋にしろ、片っぽになっただけで、対でいた時の何十倍もの悲しみを感じさせるのだから。それが身に着けるアクセサリーであれば尚更です。そこにはどんな物語があって、どうして片っぽになってしまったのか、妄想の世界は広がるばかりです。   もちろん片っぽが誘う妄想は悲しい物語だけではありません。ひょっとしたら、このイヤリングは瞬間移動装置で、これを付けて鏡を覗き込んだ瞬間に、この世界と対を成す異世界に引き込まれて、あれよあれよと私は勇者としてミッションを課せられるのかもしれない。勇者という響きはなんとも甘美ではあるが、『嗚呼、許してくれ』私にはまだこの世界で歌手としての役目が残っているのだ・・・などと壮大な妄想を掻き立ててくれもするのだから、片っぽというものはやはり侮れない。 そして私が勇者になるべきか躊躇していることなど意に返さず、ひたすらスマートフォンをいじっている店員も侮れない。ひょっとしたら彼は知られてはいけない、こちらの世界とあちらの世界を繋ぐ門番のような存在なのかもしれない。 まあ、ざっとこんな具合かは別にしても、古道具屋で売られていた片っぽになったイヤリングから妄想して書いたのがこの「 片っぽのピアス 」という曲です。   他の女とあなたが もめる理由になればいいな   歌詞にあるように、彼の部屋に残された片っぽのピアスが原因で、彼は他の女と修羅場を迎えたのかもしれないし、難を逃れてメルカリあたりでピアスをたばこ代にしたのかもしれない。 一方、女はいつまでピアスに男の面影を見るのでしょう。 埃かぶったピアスが今も 前に進めぬ私責めるよ『ハァ…』 前に進めぬ彼女の溜息に妙にシンパシーを感じるのは、あの日、私が勇者になり損ねたからかもしれない。 <藤川千愛> ◆紹介曲「 片っぽのピアス 」 作詞:藤川千愛 作曲:竹田祐介(Elements Garden) ◆ミニアルバム「ちょっとそこまで昨日を迎えに」 2022年4月27日発売 初回限定盤 COZP-1904/5 ¥4,000(税込) 通常盤 COCP-41759 ¥1,800(税込)    <収録曲> 1. たしかなことって 2. ゆずれない 3. 手のひらの中で 4. ゆびさきから 5. 片っぽのピアス 6. そんなんばかりループ 7. 覚醒前夜

    2022/04/27

  • 黒木渚
    予測不能な人生に常に翻弄されながら必死に生きている女。
    予測不能な人生に常に翻弄されながら必死に生きている女。

    黒木渚

    予測不能な人生に常に翻弄されながら必死に生きている女。

     2022年4月20日に“黒木渚”が、デビュー10周年を記念したベストアルバム『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』をリリースしました。「あたしの心臓あげる」「虎視眈々と淡々と」「ふざけんな世界、ふざけろよ」など、これまでにリリースされた作品の表題曲や人気曲、さらに「予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる」「ロマン」など新録3曲を含む全23曲が収録。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“黒木渚”による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は【後編】です。ベストアルバムのタイトルでもある、表題曲「 予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる 」に通ずるお話。周りからのイメージとはかけ離れている、自身の生き方、人生の進み方とは…。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 「あ、日本にいるの」   久しぶりに連絡を寄越した友人からよく言われる言葉。   私がいつ海外に行くと言っただろう? 海外に住んだ経験もなければ、旅行で数回行ったことがある程度なのに。   友人に言わせれば「渚が同じ場所にいる方がびっくり」なのだそうで、とにかく私の人生というのは予測不能らしい。   例えば私が電話越しに「今、エジプトのラクダの上にいるよ」とか「画家になって無人島で暮らしてるよ」と言ったってちっとも驚かないらしい。 いや、私が驚くわそんなもん。   このように、世間様が見る私のイメージと実像というのは結構かけ離れている。   周囲の人からすれば、私は人生の手綱を縦横無尽に操って行きたい場所へ旅を続けているような超元気な人間に見えているのかもしれない。   だが、正しくは「予測不能な人生に常に翻弄されながら必死に生きている女」だ。暴れ馬の背中にしがみついて、どうにか振り落とされないように頑張っているという感じ。   運命を自分でコントロールできた試しはなく(常に抗ってはいます)、いつもなされるがまま。予想通りの結果が出たこともない。   暴力的な振り幅の人生を諦めずにやってこられたのは、私に多少のカオス耐性があったことと、後はある種の「なんでもいいですよ」感。   濁流に飲まれて知らない場所へ流されていたとして、泳ぐこともままならないし水はいっぱい飲んじゃうしああやばいやばい、と思っていたところに一枚の板が浮かんでいたとする。   運良くそれに捕まってよじ登り、筏のように乗ることができたその瞬間「ふう~良かったあ」と安堵するタイプの人間なのだ。   ピンチなのは変わりないし、問題は何も解決していないくせに、その一瞬のほっこりをマジでほっこりできるというのが、私の特性なのだと思う。要するに少しアホなのだ。   そういう風にしか暮らせないし、そんな状態だから10年も音楽家や小説家をやってこられたのかもしれない。   私が面白いのではなく、世界が面白いのだ。めちゃくちゃじゃなかったことなんて一度もない。一瞬の凪のようなもの以外は全部混沌としている。私はそんな渦巻きをホゲーっと眺めては歌にしたり小説にしたりしてきた。   先のことはあまり考えたことがない。ただ漠然と「良い感じ」の印象を未来に抱いているだけだ。   恐怖心は人並み、いやそれ以上にあるかもしれない。結構臆病な性格だと思う。けれど、いつも余裕がないので深く考える前に運命に押し出されてしまうのだ。おっとっとっとと足を着いて、またおっとっとっと、と言う感じで前に進む。   危なっかしいけれど、前進していればそれで良いか。   明日には何が起こるかわからないけど、それでも私はありがたく黒木渚をやらせてもらおうと思う。またね。 <黒木渚> ◆紹介曲「 予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる 」 作詞:黒木渚 作曲:黒木渚 ◆ベストアルバム 『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』 2022年4月20日発売 <収録曲> DISC 1 1. 予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる 2. あたしの心臓あげる 3. カルデラ 4. 骨 5. はさみ 6. 革命 7. 虎視眈々と淡々と 8. 君が私をダメにする 9. 大予言 10. アーモンド 11. 原点怪奇 12. ふざけんな世界、ふざけろよ 13. 灯台   DISC 2 1. 解放区への旅 2. 火の鳥 3. 美しい滅びかた 4. 檸檬の棘 5. ダ・カーポ 6. 竹 7. 死に損ないのパレード 8. 心がイエスと言ったなら 9. ロマン 10. V.I.P.

    2022/04/26

  • erica
    どうかあなたが今日も笑って過ごせますように。
    どうかあなたが今日も笑って過ごせますように。

    erica

    どうかあなたが今日も笑って過ごせますように。

     2022年3月23日に“erica”がデジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』をリリースしました。今作には、春の訪れ×恋愛をメインに楽曲を収録。新曲「卒業ソング」を新たに書き下ろし。そして、ファンからの恋愛に関するお悩みへのアンサーを自身のYouTubeチャンネルにアップしていた『Mlogシリーズ』(Music×Blog)より「春は来ない」「桜フラペチーノ」「桜、輝け」「笑っていてよ」を収録しております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“erica”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 笑っていてよ 」にまつわるお話です。自身が初めて歌手という存在を知ったときのこと。そして、自身が歌手で在り続けている理由を明かしてくださいました。ぜひ、歌詞と併せて受け取ってください。 歌手とはなんだろう。とふと考える。 自分の心をさらけ出す手段なのか 誰かの何かになりたいのか 歌が上手いことなのか、、、   きっとどれも正解でどれも間違いなんてない。 なぜなら「好き」に理由なんてないからだ。   私がはじめて「歌手」という職業を知ったのは3歳の頃だった。   私は周りの大人に言わせるととても変わった子だったようで、私が静かにしている時は何かしでかしている時。とよく言われていた。静かにしているなら普通はお利巧だと褒められるものだが、私の場合は違ったようだ。   例えば、カセットテープのテープの部分をひたすら手で引っ張り出してしまったり、ふすまに絵を書いたり、家中のありとあらゆる物をハサミで切ってしまったり、、、一つのことに集中すると何時間でも同じことをやっているから大人が気づく頃には後の祭り。まだ騒いでいる方が安心だ。なんて言われていた。   そんな時、親は私にピアノを与えた。 もしかしたらこの子はピアノにハマったらそればかりしているのではないか。と思ったのかもしれない。 予想は的中。 私は毎日ピアノを弾くようになった。 それが3歳の時である。   もちろん譜面なんて読めないし、ただ音が鳴るその不思議な物を叩くだけなのだけど、テレビから流れる歌に合わせて一緒に歌いながらピアノを弾くことが私にとっては無性に楽しかったようだ。   取材などでよく「歌手になりたいと思ったきっかけは?」と聞かれることがある。今までどんな答え方をしてきたか、その時々でなんとなくその時思っていたことを言っていたりしたけど、実の所本当の理由はない。なぜならなりたいと思った理由を考えたことがなかったからだ。そのくらい物心ついた時から歌手になる。と思っていた。   そう、きっと3歳の時から。 小学生の時の将来の夢は確か整体師をしながら歌手。 (毎日祖母の肩たたきをしていて褒められたから) 中学生の時はマラソン選手をしながら歌手。 (学年でいつも1位だったから) 高校生の時は洋服のデザイナーをしながら歌手。 (着たい服を、祖母の服を使ってリメイクして作っていたから) と言ったように私のなりたい夢はその時々の好きな物がセットになっていた。 今も歌手を続けている一番の理由はたぶん3歳のあの時と変わらないと思う。 でも何か付け加えて言えることがあるとすれば それはあなたに笑っていてほしいから。 なのかもしれない。 そして、何より私も笑っていたいから。   この世界は無常だ。 こんなに世の中が便利になっても人を傷つけたり、いがみ合ったりしている。 決していいことばかりじゃないそんな生きにくい世界だけど、だからこそ私は思う。 恋も、夢も、人生も毎日も生きていればいろんなことがある。 そのほんの一瞬の中に誰かを想う時、自分に素直になりたい時、挫けそうになった時、そのそばに私の曲があったらいいなと願う。 どんなに苦しく辛いことがあっても最後は笑っていてほしい。 音楽を通じてできることなんてほんの些細なことかもしれない。 でも大切な人に願うように、聴いてくれてるあなたにも同じように願う。   どうかあなたが今日も笑って過ごせますように。 <erica> ◆紹介曲「 笑っていてよ 」 作詞:erica 作曲:erica ◆デジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』 2022年3月23日発売   <収録曲> M1 卒業ソング M2 春は来ない M3 桜フラペチーノ M4 桜、輝け M5 笑っていてよ

    2022/04/25

  • 春ねむり
    ここで歌われた「愛」があなたにとってどのような意味合いであるか。
    ここで歌われた「愛」があなたにとってどのような意味合いであるか。

    春ねむり

    ここで歌われた「愛」があなたにとってどのような意味合いであるか。

     2022年4月22日に“春ねむり”がニューアルバム『春火燎原』をリリースしました。今作には力強く壮大なスケール感を感じさせる「 D é construction 」をはじめ、映画『猿楽町で会いましょう』主題歌「セブンス・ヘブン」、すでにライブで披露されている「Kick in the World」の“脱構築”バージョン、など全21曲を収録。彼女のボーカルを存分に生かし、アルバム全体を通して和声の美しさを追求した作品となっております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“春ねむり”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、「歌詞とはどのように読むことができるのか」についてのお話。今作の収録曲「 D é construction 」を例に、自身を“作者”として扱い、フレーズごとに丁寧に読み解いていただきました。このエッセイを読んだ上で、あなたはこの歌のなかの「愛」をどのように受け取りますか…? 歌詞というものを、あなたはどのような観点から読むことが多いだろうか。それはあらゆる詩と同じように、いかようにも読むことができ、また、さまざまな感情や感触を受け手に与えることがある。言葉という容れ物によって手渡されたそれは、受け取った者が前提とする世界観や価値観というフィルターを通って、その者の中で変容し吸収されたり、拒絶されたりする。ここでは、継続して詩作というものに取り組んでいるけれども、詩というものを受け取る立場でもあるわたしが、普段どのような観点で歌詞と言うものを作ったり読み解いたりしているかについて書くことによって、「歌詞とはどのように読むことができるのか」についての一例を提示することを試みる。   今回例にとるのは、春ねむりの「 D é construction 」。自作曲であるからこそ、改めて丁寧に読み解いていきたい。読解する都合上、自分自身の作品ではあるが、ここでは春ねむりを「作者」として扱うこととする。   はじめに、イントロは15秒ほど、バックコーラスによるリフと、歪んだピアノのリフが、マーチングを思わせるドラムのリズムの上でそれぞれ踊っているような軽快さではじまる。歌い出しの1段落目を見てみよう。     はじめようぼくらのparadigm shift Like a project mayhem 数字の羅列を抜け出す0時 きみのきもちを教えてbaby     パラダイム・シフトとは「その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること」であり、プロジェクト・メイヘムとは、映画『ファイト・クラブ』の中で、資本主義社会に真っ向から反抗し、過激な破壊行動によって人類の技術的進歩に歯止めをかけることを試みたタイラー・ダーデンによって企てられた計画の名称である。以上を踏まえると、3行目の<数字の羅列>とは、資本主義とも読めるし、2進法で表現される現代社会とも読める。そして詞は4行目、主体性を聞き手に問うべくその距離をぐっと縮めてくる。     IDナンバーじゃわからない魂 Bitchesには触れられない気高いlilly     フロウが変化し、社会という外界から魂という内的な風景へ描写が転じる。そこにある本質は、割り振られた記号では判別不能なものであるという提示と、<Bithces――クソ野郎には触れることができない気高い百合の花>という描写が並ぶ。接続詞等が排除されているため解読に余白が生まれているところではあるが、描写が並列されていること、「魂(Ta-Ma-Shi-i)」と「リリー(Li-li)」という名詞で押韻されていることから、ここでは「魂」=「Lilly」と読むことにする。1段落目で提示された「変革」を試みる主体の気高さを誇ろうとする描写であるという解釈である。     餓鬼畜生が語るストレートエッジ New richesの腐ったロイヤリティ ロマンスのかけらもないユニティ ぜんぶ壊してスペースモンキーズ     フロウが再び変化し、矢継ぎ早に名詞句が並ぶ。それぞれの語句を詳しく紐解いて下に記述する。   ●餓鬼畜生:仏教における十界論という世界観における地獄の種類に由来していて、それぞれ、餓鬼界(欲望が満たされずに苦しむ境涯)と畜生界(目先の利害にとらわれ、理性が働かない愚かさ)を指すと思われる。   ●ストレート・エッジ:ハードコア・パンクにおける禁欲主義的な思想・概念・ライフスタイルであり、それまでの「セックス・ドラッグ・ロックンロール」という快楽主義的な人生観へのアンチテーゼと言える。   ●New riches:成金。新富裕層。   ●ロイヤリティ:Royalty(特権。王の座)とLoyalty(忠実。忠誠)いずれにも捉えることができる。   ●ロマンス:後に続く単語のことを考えると、単に恋愛感情的な要素として捉えるのではなく、広く情熱という意味合いで捉える方が適当であると思われる。   ●ユニティ:ひとまとまり。結束。   並列されたこの3行を語句の意味をはっきりとさせて読むとき、作者の主観を通して立ち上がる社会像は克明である。クソ野郎が理想ばかりを語り、資本主義社会における強者が特権の座に着き続けるために腐った忠誠を貫いていて、情熱や感情だけでは人々は団結することができない。そして作者はそれを否定的に思っているので、4行目<ぜんぶ壊してスペースモンキーズ>と続く。スペースモンキーズとは、1段落目に登場したプロジェクト・メイヘムを実行する部隊の名称である。つまり『ファイト・クラブ』の中で描かれたような資本主義社会に対するフラストレーションを抱き、それを破壊したいというテロルに至るかもしれない欲望をも持ち合わせているということが読み取れる。     爆音いますぐ叫んで Fucked Up, Got Ambushed, Zipped In! Uh stop!     再び頭2拍にアクセントを置くフロウに展開し、この3行でAメロが終了する。<爆音>が何を指し示すかについては解釈の余地があり、『ファイト・クラブ』の文脈を踏まえれば、テロ的破壊行為によって発生する爆発音とも読めるし、次に続く行の<Fucked Up, Got Ambushed, Zipped In!(待ち伏せされてジッパーに詰めこまれてるような状況でたまったもんじゃないぜ!)>が、ベトナム戦争時のアメリカ兵のスラングであることを踏まえれば、戦場で発生する大きな音とも読める。この語句は、3段落目で既出のストレート・エッジという思想を提唱したイアン・マッケイが組んだバンド「FUGAZI」の由来となったものでもある。     Where is my mind?     Bメロの<Where is my mind?>のリフレインと、それに突入する前の<Uh stop!>が、ここまで地続きに配置されてきた『ファイト・クラブ』の要素を鑑みれば、その映画の主題歌であるPixiesの「Where is my mind?」のオマージュであろうことはすぐにわかるだろう。     D é construct all Ratta wow wow wow     ここまで4つ打ちのキックによってぐんぐんと歩を進めてきたビートが、ブレイクを挟み、ビートがハーフタイム・フィール、つまりBPMが半分になったかのように感じさせる、大きなリズムに変化し、ホーンとチャントによるリフが登場する。   曲タイトルの「 D é construction 」は、ジャック・デリダによって用いられた哲学用語であり、和訳すれば「脱構築」。Wikipediaにおいては『「静止的な構造を前提とし、それを想起的に発見しうる」というプラトン以来の哲学の伝統的ドグマに対して、「我々自身の哲学の営みそのものが、つねに古い構造を破壊し、新たな構造を生成している」とする、20世紀哲学の全体に及ぶ大きな潮流』と、国語辞典においては『西洋哲学で伝統的に用いられる統一的な全体性や二項対立の枠組みを解体し、新たな構築を試みる思考法』と説明されている用語であるが、脱構築という概念がそもそも絶対的な定義づけを拒むようなものであり、それ自体が脱構築という営みの最中に常に在り続けるようなものでもある。   このサビはリフレインであり、2行目はスキャットのようなものと思われるので、<D é construct all>がこの曲の主旨であると考えることができる。「すべてを脱構築せしめよ」という一文に収束するにあたって、必要とされる情報や描写が、バース部分ということだ。既存の社会を構成している価値体系を解体し、新たな構造を生成する。その営みを必要とする動機としての破壊衝動と、ある種盲目的とも言える理想や信念。それらが、作者のルーツにある映画や音楽等のカルチャーが文脈を持って用いられることによって、描写されていると言える。それを念頭に、この後のバースでなにが書かれているのかについても考えていく。     優しい人から死んでいくnowadays ゴルゴダは亡骸で溢れている 悲しみの道は続く ひとはみなイエスとユダのハイブリッド     2番のバースでは新たにキリスト教のモチーフが登場している。ゴルゴダとはイエス・キリストが磔刑に処された丘であり、悲しみの道とは、イエスが判決を受け十字架を背負ってゴルゴダまで歩いたその道のことを指す。イエスは人間の罪を代わりに背負って死んだというのがキリスト教における教えであるが、ここでは<ひとはみなイエスとユダ(イエスを裏切って死刑に導いた者)のハイブリッド>であり、その亡骸が溢れているということは、ゴルゴダで死ぬのはイエスだけではなく、広く「ひと」であるということと読める。     聖人の列に並ばない魂 Bitchesには触れられない気高いlilly     1番と同じフロウで、1行目の歌詞だけが変化している。聖人の列とは、前段でキリスト教の要素が登場していることを踏まえると、列聖(おもにキリスト教のカトリックにおいて、信者がその死後、信仰の模範となり聖人名簿に列せられるにふさわしいと公式に認められること)について言及していると考えられる。1番と同様に読み解くとして、ここでいう魂の「気高さ」が特権的な立場を否定したところに宿るという表現であると受け取ることができる。     十字架切って痛がる ルサンチマンにまみれている そうやって自分を愛している マーラは今日もうたっている     十字架を切るとは信仰の告白や祈りのしるしであるが、続く2行目が<ルサンチマンにまみれている>であることを考えると、ニーチェが用いた言説に倣って、キリスト教的道徳を内面化することによって自己愛を保存している状態への批判であるように捉えられる。マーラとは『ファイト・クラブ』に登場する主要なキャラクターのひとりで、「死は目の前にある」というのが人生哲学で、「悲劇なのは、自分が死んでいないこと」と考えている女性。     爆発こわれてくビル Fucked Up, Got Ambushed, Zipped In! 愛を獲得してwarriors     映画『ファイト・クラブ』のラストシーンは、タイラーによって計画された爆破が始まって高層ビルが次々と崩れ去る場面で終わる。2行目は1番と同様、<Fucked Up, Got Ambushed, Zipped In!(待ち伏せされてジッパーに詰めこまれてるような状況でたまったもんじゃないぜ!)>と続き、3行目<愛を獲得してwarriors>と結ばれる。   ここで言われる「愛」とは、この曲の主旨と、ここまで描写されてきたものを踏まえるとき、何を指すだろうか。いままでわたしが書き連ねてきたことは、わたしが作者であるから読み解くことのできる要素ではほとんどなかったはずだ。受け手として、記述そのものから、自身の持つコンテクストやルーツ、バックグラウンドを用いて歌詞と対峙し、立ち上がってきた景色そのままである。その浮かび上がった景色を用いて初めて、わたしはここで書かれた「愛」を如何なるものか結論づけることができる。同時に、その結論をここで書くべきではないとも考えている。なぜなら、作者のわたしがそれを断じることによって、ここで曖昧に余白を持たされている「愛」が持ち得る表現の可能性を狭めるかもしれないからである。   あなたはこの歌詞をどのように読むか。それにはあなたの持つカルチャーの要素や人生観が確実に用いられる。つまり、ここで歌われた「愛」があなたにとってどのような意味合いであるかは、あなたが自分で読み解いてはじめてわかることだ。その時、いままで単なるPixiesの引用であった<Where is my mind?>というBメロのバースが、また違う意味を持って聞こえてくるだろう。     曲はそのあとサビへと続き、4分弱で終わる。ここまで歌詞を改めて読み解き、わたしはいまこの短い詩というものにこれだけの情報量があり、しかもそこに音楽的なコンテクストやギミックが追加された状態のものが、4分もかからずに再生され終わるということに単純に驚いているし、この量の情報をなるべく整理して書き起こすことによって少し疲弊もしている。なにか表現と呼べるものに対峙するときは、わたしはいつもそうだ。丘を登ったあとに息が切れるように、疲労しながら、時には傷つきながら、しかしそれでしか得ることのできない興奮や充足感を求めて、いつも音楽を聞いたり文章を読んだりしている。これが他人にとっても面白い類の営みなのかは正直なところわからないけれども、あなたがなにかの表現と向き合う際に有用なものを書き記すことができていれば、大変喜ばしい。 <春ねむり> ◆紹介曲「 D é construction 」 作詞:春ねむり 作曲:春ねむり ◆2ND FULL ALBUM『春火燎原』 2022年4月 22日(金)発売 / 全21曲収録 デジタル配信/12インチアナログ盤 <収録曲> 01.sanctum sanctorum 02.D é construction 03.あなたを離さないで 04.ゆめをみている (d é constructed) 05.zzz #sn1572 06.春火燎原 07.セブンス・ヘブン 08.パンドーラー 09.iconostasis 10.シスター with Sisters 11.そうぞうする 12.Bang 13.Heart of Gold 14.春雷 15.zzz #arabesque 16.Old Fashioned 17.森が燃えているのは 18.Kick in the World (d é constructed) 19.祈りだけがある 20.生きる 21.omega et alpha

    2022/04/22

  • THE BACK HORN
    1年前の5月にオスの愛猫が旅立ちました。
    1年前の5月にオスの愛猫が旅立ちました。

    THE BACK HORN

    1年前の5月にオスの愛猫が旅立ちました。

     2022年4月13日に“THE BACK HORN”がニューアルバム『アントロギア』をリリース。アルバムタイトルの“アントロギア”は、古代ギリシャ語で<花を集めること>を意味し、今日では詩文を集めた詩集を表すことに由来。様々な花が持つ色彩のように4人の“今を生きる希望”が描かれた作品となっております。今作には、これまで通りメンバー全員が作詞作曲で参加し、様々な組み合わせにより制作された全12曲が収録。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“THE BACK HORN”による歌詞エッセイを4週連続でお届け。第3弾は岡峰光舟が執筆。綴っていただいたのは、収録曲「 夢路 」にまつわるお話です。大切な家族との別れから生まれたこの曲。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 「 夢路 」 この曲は別れの曲です。 1年前の5月にオスの愛猫が旅立ちました。   俺がベースの練習や作業をしていると彼はいつも出窓からのんびり眺めてました。いや、半分以上は寝てました。   そして闘病。徐々に弱っていく4月位から「こいつの曲が作りたいな。」と傍で眠る彼を見ながらベースで曲を作り出しました。出てくる音楽は何故か悲壮感がなく、勇ましくて温かく、優しいものでした。   そして5月にお別れ。 俺にとって初めて一緒に暮らした家族との別れ。その瞬間の光景は何故か俯瞰で自分の脳裏に刻まれています。よく晴れた日なのに突然雷雨がきて、そしてまた光が差し込んできて、彼の名を、呼び続ける声を引き連れるように旅立っていきました。 外からは子供たちがはしゃいでいる声が響き、窓からは眩い光。   暫くしてゆっくりと詞を書き始めました。 この曲は時間の制限を設けずに、言葉や情景が思いつき、浮かんだ時に少しずつ紡いでいきました。   飛行機に乗っているときに広がる空と雲を眺めながら。 新幹線から見える自然や街や人々の営みを通過しながら。 雨の街を散歩しながら。 ライブで、フロアで音楽を聴いてくれてるお客さんを見ながら。 家族とご飯を食べながら。   色んな状況や季節を感じながら詩を書いていた11月に、14年間一緒に暮らしていたもう1匹の愛猫も旅立ちました。   もちろん深い哀しみと寂しさがありましたが、どこか「またこいつら仲良くケンカして、じゃれ合えれてよかった。いつもどっちか居ないと探してたもんなぁ。」とホッとしている自分もいました。   そして言葉がまだ見つかってなかった箇所の詞がピタっとはまり、夢路が完成しました。   そういった背景があるこの曲ですが、悲しいだけではなくて、力強くて優しい希望も描けたことが自分には誇らしく思えました。猫たちと泣いて笑って、生命の儚さを知り、生きる希望も教えてもらいました。   皆さんにも様々な別れがあると思います。 この曲が皆さんの心の傍に寄り添えれば嬉しいです。   <岡峰光舟(THE BACK HORN)> ◆紹介曲「 夢路 」 作詞:岡峰光舟 作曲:岡峰光舟

    2022/04/21

  • 黒木渚
    私は確かに今、ロマンを生きている。
    私は確かに今、ロマンを生きている。

    黒木渚

    私は確かに今、ロマンを生きている。

     2022年4月20日に“黒木渚”が、デビュー10周年を記念したベストアルバム『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』をリリースしました。「あたしの心臓あげる」「虎視眈々と淡々と」「ふざけんな世界、ふざけろよ」など、これまでにリリースされた作品の表題曲や人気曲、さらに「予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる」「ロマン」など新録3曲を含む全23曲が収録。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“黒木渚”による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は【前編】です。綴っていただいたのは、今作に収録される新曲「 ロマン 」にまつわるお話。5年の月日を経て、新しく生まれ変わった歌声で放たれるこの曲。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 五年前に一度レコーディングが終わっていたロマン。   当時、咽頭ジストニアの症状が激しく出ていたため、レコーディングには苦労した記憶がある。   ボーカルブースにヨガマットを持ち込み、一行歌い終えるたびに体を解し、またマイクに向かう。思い通りにならない喉の筋肉がもどかしく、力技で高音をひねり出していたあの日。出来上がったボーカルデータは、ツギハギだらけの粗末な仕上がりだった。これを完成と呼ぶことは出来ない。   演奏してくれたミュージシャン達やプロデューサーの本間さん、会社のスタッフに、どうかリリースを伸ばして欲しいとお願いした。こんなに苦しい歌声は「ロマン」とは対極にある。そう感じていた。   いつ戻るのかわからない声を待ちぼうけて五年。 私は待つのを辞めた。新しい声を自分から迎えにいこう。   カタツムリのような緩慢なスピードで回復する喉との付き合い方を模索し続けたこの五年間の答えが出そうな気がした。   自宅にボーカルマイクを立て、五年前の演奏データを開く。冷凍保存されていた音が、私の周りで再び息をしはじめた。   ロマン。 私は確かに今、ロマンを生きている。 音楽というロマン、創作というロマン、人生というロマン、黒木渚というロマンを。   新しく生まれ変わった私の声は、水彩画の平筆みたいに豊かな倍音でバラードを歌う。ロマンを歌うのにふさわしい声だと思った。   ロマンを抱えて生きている 叶え難いものへの恋のような ロマンを抱えて生きている 取りこぼしたものへの未練のような   ロマンには、いつも欠けた場所がある。だからこそ私たちはそれを追うのをやめられない。あとちょっと、あとちょっとと手を伸ばし、届いたと思ったらまた新しいロマンを見つけてしまう。   ロマンとは欠落のことを言うのかも知れない。 <黒木渚> ◆紹介曲「 ロマン 」 作詞:黒木渚 作曲:黒木渚 ◆ベストアルバム 『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』 2022年4月20日発売 <収録曲> DISC 1 1. 予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる 2. あたしの心臓あげる 3. カルデラ 4. 骨 5. はさみ 6. 革命 7. 虎視眈々と淡々と 8. 君が私をダメにする 9. 大予言 10. アーモンド 11. 原点怪奇 12. ふざけんな世界、ふざけろよ 13. 灯台   DISC 2 1. 解放区への旅 2. 火の鳥 3. 美しい滅びかた 4. 檸檬の棘 5. ダ・カーポ 6. 竹 7. 死に損ないのパレード 8. 心がイエスと言ったなら 9. ロマン 10. V.I.P.

    2022/04/20

  • Thinking Dogs
    恋愛においての「終電」という言葉。
    恋愛においての「終電」という言葉。

    Thinking Dogs

    恋愛においての「終電」という言葉。

     2022年3月27日に“Thinking Dogs”が新曲「Collage」をリリースしました。本楽曲は、ひかりTVのオリジナルドラマ『ラブシェアリング』の主題歌にも起用されております。MVでは、見られる者と見る者を客観的な視点から、現代におけるソーシャルな監視社会を抽象的に表現。ぜひ、ドラマ、歌詞の世界観と合わせてお楽しみください。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Thinking Dogs”の大輝(Dr.) による歌詞エッセイを3回に渡りお届け!今回は第2弾。綴っていただいたのは、楽曲「 24:55 」にまつわるお話です。彼の「歌詞・溜め」から生まれたこの歌。終電を目の前にした<わたし>は、一体どんな選択をしたと思いますか…? ぜひ、想像を膨らませながら、このエッセイと歌詞をお楽しみください。 僕のiPhoneのメモには「歌詞・溜め」というフォルダがある。   日々を過ごす中で自分が見て、聞いて、体験して感じたことをホイホイ投げ込んで溜めておく場所。言い換えれば、歌詞へと成長し得る種を溜めておく場所。   単語が1つ書いてあるだけの物もあれば、入った飲食店で隣の席のカップルがこんな話をしていてどう思った、とつらつら書いてある物もある。   その瞬間に感じたことをとりあえず殴り書きしているだけなので、見返すと何のこっちゃ分からない物も多々…。   色々な物があるけど、僕が書いてきたThinking Dogsの歌詞は、そんな数ある種の中から芽を出した物だということには変わりない。     そんな「歌詞・溜め」の中に、ずいぶん前からあった種の1つに「終電」という物があった。そこから芽を出したのが「 24:55 」という歌詞。     「終電」という言葉は、それを迎えた時のその人の境遇によって、受ける印象が変わる不思議な言葉だ。   仕事をして終電を迎えた人は 「今日もこんな時間になっちゃったよ。くそー。」 なんて、嫌な物だったり。   友達と遊んでついつい飲み過ぎた人は 「やべー、明日も朝早いのに。やっちまった…。」 なんて、悔いる物だったり。   基本的には煩わしい物、意識のどこかで越えてはいけない、越えたくないリミットとしての印象があると思います。   だけど、恋愛においての「終電」という言葉は、時に他とは少し違う印象を孕む場合がある。     歌詞の中に登場する主人公の女性。   この女性にとって「終電」は、意中の人との関係を進展させる可能性を持った、言わば「切り札」なんです。まあ「切り札」というよりは「諸刃の剣」かもしれませんが…。   どちらにせよ、誰かにとっては煩わしい物でも、違う誰かにとっては希望だったりもする。言葉にはそんな面白さがあると思います。     主人公の女性が最終的に「切り札」を使ったのか、そしてこの恋愛が成就したのかまでは歌詞中にはあえて書きませんでした。   その先は曲を聴いた方、歌詞を見た方の妄想で物語を紡いでもらう為の余白として残しました。   仲の良い友達のままでいるのか、やっぱりその1歩先の関係を望むのか。自分のことに当てはめたりして楽しんでもらえたら嬉しいです。 <Thinking Dogs 大輝(Dr.)>   ◆紹介曲「 24:55 」 作詞:大輝 作曲:わちゅ~

    2022/04/19

  • erica
    この瞬間がどうかいつまでも終わらないでほしいと願う。
    この瞬間がどうかいつまでも終わらないでほしいと願う。

    erica

    この瞬間がどうかいつまでも終わらないでほしいと願う。

     2022年3月23日に“erica”がデジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』をリリースしました。今作には、春の訪れ×恋愛をメインに楽曲を収録。新曲「卒業ソング」を新たに書き下ろし。そして、ファンからの恋愛に関するお悩みへのアンサーを自身のYouTubeチャンネルにアップしていた『Mlogシリーズ』(Music×Blog)より「春は来ない」「桜フラペチーノ」「桜、輝け」「笑っていてよ」を収録しております。    さて、今日のうたコラムでは、最新作を放った“erica”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 桜フラペチーノ 」に通ずるお話です。桜と花火、そして片思いの共通点とは…? あなたにとって大切な春の恋を思い浮かべながら、このエッセイを歌詞を受け取ってください。 桜は花火に似てる。 見るものの心を一瞬で奪ったかと思うとあっけなく消えていく。 美しさとは儚さなのかもしれないとさえ思う。 まるで夢を見ていたかのような、瞬きをすることさえ惜しいほど、できることならばずっとずっと見ていたいと願う。   そんな気持ちは片想いと似ている。 出会い、恋に落ちたその瞬間、まるで満開の桜を見上げた時のように心が弾み、空いっぱいに上がる花火を見た時のように胸が高鳴る。 毎日歩いている道なのに景色もすれ違う人も何かがいつもと違う。 普段なら気にならないような脇道に咲く花を見つけて嬉しくなったり、優しくなれたり、好きな人の何気ない一言に舞い上がったり、目と目が合う度にドキドキしたり、、、 この瞬間がどうかいつまでも終わらないでほしいと願う。   そうかと思えば突然、強い風が吹き不安が押し寄せたりもする。 昨日まであんなに穏やかだったのに、一枚また一枚と花が散るたび時間ばかりが過ぎていく。 早く伝えなくちゃと焦る気持ち。 でも想いが届かなかったら? 片想いはいつだって忙しい。 白でもない赤でもない。心の中を行ったり来たり。 そうやって混ざった色がこの世でたった一つの恋の色に育っていく。 自信も勇気も淡く、切なく、散りゆく涙もやがて強さに変わると信じて。   同じ恋などない。 どの恋にもそれぞれのストーリーがある。 例え実らなくてもその恋には意味があって沢山の気づきをくれたはずだ。 だからこそ、かけがえのない人に出会えた時、過去の自分にありがとうと感謝できる。   「今日はどこに行く?」   「どこでもいいよ」   「早く会いたいね」   そんななんてことのない会話さえ大切な人となら喜びに変わる。   今年も春がやってきた。 ゆらゆらゆれる雲。影法師が踊る。   いつものカフェで待ち合わせして、いつものフラペチーノを飲みながら、いつものように穏やかな時が流れる。 ふと、どこからかひとひらの桜の花びらが舞い落ちてきた。 その色もまた白でもない赤でもない色をしていた。   「きれいだね」   そう言って見上げた空にあの日流した花びらは優しくいつまでも舞っていた。 <erica> ◆紹介曲「 桜フラペチーノ 」 作詞:erica 作曲:nao   ◆デジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』 2022年3月23日発売   <収録曲> M1 卒業ソング M2 春は来ない M3 桜フラペチーノ M4 桜、輝け M5 笑っていてよ

    2022/04/18

  • ulma sound junction
    歌詞が降りてくる事なんてない。
    歌詞が降りてくる事なんてない。

    ulma sound junction

    歌詞が降りてくる事なんてない。

     沖縄県石垣島出身の4人組プログレッシヴ・ロック・バンド“ulma sound junction”が、2022年4月13日にメジャー1st EP『Reignition』をリリースしました。新曲「Modern Bleed」に加え、インディーズ時代の代表曲やライブ定番曲の再録バージョンが収録。タイトルには、「バンドを再認識してもらい、自分たちの音楽を“再着火”させる」という意味が込められております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“ulma sound junction”の田村ヒサオ(Ba.&Vo.)による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、歌詞への向き合い方についてのお話です。「歌詞が降りてくる事なんてない」という彼が、一体どのように歌詞を作り上げてゆくのか。そして、どんな音楽の在り方を目指しているのか。ぜひ、今作と併せて、エッセイをお楽しみください。 「歌詞が降りてくる事なんてない」   言葉という概念や知識の一部を一つの芸術としてアウトプットしようという瞬間において、それは外部から流れ込んで来るのではなく、どちらかと言えば蓄積された記憶の中から掘り起こす作業に近い、と常日頃思っているからです。   私は自身のバンドの楽曲を製作する上で、コンポーザーとして、ベーシストとしてヴォーカリストとして常に携わります。作曲編曲においては誰も気づかない精度のニュアンスやディティールにもこだわり、無駄かと思うほど長い時間をかける様な人間です。   “今日のうたコラム”初めて書かせて頂きますが、そんな私の様な人間の歌詞への向き合い方に、どうぞ少しだけお付き合い下さい。     作詞のプロセスは音楽家の数だけ存在すると思いますが、私の場合それはかなり終盤に訪れます。各楽器のレコーディングが済んでから、作詞をするなんて事も時折ある位です。   私は声で奏でる詞を「音響」の一部と捉える、作詞をする人の中でも恐らくマイノリティであろうプロセスを踏みます。発せられたその瞬間に言葉がもつ概念や思想、エネルギーなど一切を忘れ、音としての響きに重きを置きます。   ざらつき、濁り、艶やか、柔らかい、鋭い、等の様々なニュアンスでもって言葉はただ並べられ、メロディやリズムに乗るものをまずは選択していくのです。   子供がパズルのピースを薄い色から濃い順番に並べるかの様な作業。若しくはそのピース一つ一つが与えられている形や居場所を完全に無視して、そのピースをまるで切り絵の紙の様に並べ、重ね、本来出来るはずのない絵画を作る様なイメージに近いかもしれません。   このピース達はもっと自由であって良いものだと思うのです。   感覚的な表現ばかりで申し訳ありません。私が世に放つ歌詞はあくまで二次元的で、それが皆様に届いて初めて三次元に形成されるのですが、それは一人一人が言葉に持つ思い、深さ、印象により様々です。   例えば「赤」という言葉で誰が何を想像するかなんて分かるはずがないのと同じく、私達が作り上げた作品をどう理解してくれようと構わないのです。それくらい歌詞というものの解釈は自由であって欲しい。   なるべくなら私自身は言葉以外の楽曲の力だけで、どこまで表現出来るのかを追求しなければならないと思っています。歌詞はリスナー皆様との最後の、そしてほんの少しの答え合わせでいい。   今の所それが私の目指す音楽の在り方です。     数多くご活躍されてる音楽家、作詞家の皆様や、これから音楽を志す方々にとっては、些か邪道かもしれないと思いつつも、これも音楽の向き合い方の一つだと思って大目に見て頂ければ幸いでございます。   楽しく書かせていただきました。 最後まで読んでいただきありがとうございます。 <ulma sound junction・田村ヒサオ> ◆メジャー1st EP『Reignition』 2022年4月13日発売 https:// king-records.lnk.to/Reignition   <収録曲> 01. Modern Bleed 02. Rotten Apple 03. Utopia 04. Idea 05. Elem-5/6/7

    2022/04/15

  • THE BACK HORN
    「ロックとは何だと思いますか?」
    「ロックとは何だと思いますか?」

    THE BACK HORN

    「ロックとは何だと思いますか?」

     2022年4月13日に“THE BACK HORN”がニューアルバム『アントロギア』をリリース。アルバムタイトルの“アントロギア”は、古代ギリシャ語で<花を集めること>を意味し、今日では詩文を集めた詩集を表すことに由来。様々な花が持つ色彩のように4人の“今を生きる希望”が描かれた作品となっております。今作には、これまで通りメンバー全員が作詞作曲で参加し、様々な組み合わせにより制作された全12曲が収録。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“THE BACK HORN”による歌詞エッセイを4週連続でお届け。第2弾は山田将司が執筆。綴っていただいたのは、「ロックとは何だと思いますか?」という質問に対する気持ち。そしてメンバー全員が作詞作曲をするTHE BACK HORNが、どのように音楽に向き合ってきたかのお話です。今作の歌詞と併せて、受け取ってください。 「ロックとは何だと思いますか?」   インタビューなどでこの質問をされた時が1番困る。そんなデカい言葉を一言で表すことで見えてしまう自分の小ささ、それを感じさせないで欲しかった。   それは結成した頃から今まで、ずっとそうだ。THE BACK HORNが結成されて3年後、メジャーデビューしたばかりの頃の取材で、インタビュアーがしたその質問に対し、「俺たちは生と死をテーマに歌っていて別にロックとかどうでもよくないですか? じゃあ逆に何だと思ってるんすか?」とメンバー一同インタビュアーに食って掛かっていた。   と言っても俺は当時コミュ障中のコミュ障。インタビューでも他のメンバーに喋りは任せっぱなしで口を開くこともなく、威圧的な視線をインタビュアーに向けながら(無意識)黙々とタバコを吸うだけで終わる取材も多々。自分の発言に何の自信も持つ事ができず大人に片足を踏み入れることもできていないクソ生意気な青年だった。   そんな俺でも、「ロックとかそういうのマジでどうでもいいわ」と心の中で同意していた。   THE BACK HORNはメンバーそれぞれが作詞作曲をする。今回、4月13日にリリースされたアルバム『アントロギア』でも、それぞれの作詞作曲がさまざまな組み合わせのもと作られた作品となっている。メンバー全員で作詞作曲をするこのスタイルはもう15年以上続いていて、きっかけは菅波(Gt)の、「皆んなで作った方が面白い」という言葉からだった。   全員が[THE BACK HORN]という光も闇も混在させた得体の知れないモノに向かい曲を書く。もちろん作詞や作曲が得意なメンバーもいればそうでないメンバーもいる。それでも少しずつ歩み寄り擦り合わせ続け一曲一曲をカタチにし続けてこれたのは、他のどのバンドにもないTHE BACK HORNだけのオリジナルなスタイルを確立していけているという実感と共に、CDを出したりカタチにしていける喜びは勿論、「生きる」というこのバンドが発するエネルギーを自分が歌として表現していくことで、その曲からも自分自身も力を貰い、聴いてくれるお客さんからも力を貰い、どんな姿であれ生きていていいんだと実感できていたこと、そして根っこには「やっぱりこのバンドが好きだ」という気持ちからなのだと思う。   メンバーを代表したような言葉になってしまっているが、今は俺が思う気持ちだけを。誰が曲を書こうと詞を書こうと、この4人で演奏する曲達は自然と[THE BACK HORNらしさ]になっていく。その時々の時代に感じた事を結晶として残してゆける。こういう歌詞を書かなければいけないなんていう決まりは無い。この4人が今感じている事をカタチにする。それが事実でありTHE BACK HORNとしての正解だ。   「気持ちなんてものは変化していく」それもリアルな事で当たり前のこと。また、メンバーのそれが許されるくらい、想いの宿った軽はずみではない言葉をその時々で表現してきたからこそなのだと思っている。   心が折れかけ、もうダメだと限界を感じた事は何度もあるが、その度に自分達の曲に励まされ、奮い立たされるこの感覚は何にも変え難く、自分の人生の半分以上を捧げてきたこのバンドにいられる事がなによりも誇りだ。十何年前だったか、「最後は希望を感じられる音楽をやろう」それをメンバー間で共有しながら曲を作るようになった。   希望をリアルに描く事は容易では無い。人生で一度でも大きな悲しみを経験してしまうと、どれだけ自分の闇を理解してくれているのか? という疑いから感情移入できなくなる、気がする。だからこそリアルな希望を描くために「闇」というものの理解の深さが必要となる。   しかし、肌感覚で理解できる闇は自分が経験したまででしかない。自分の場合、結成当初に抱えていた闇は十代に経験した父の死が大きな原因だった。いつか人は死ぬ。どうせ死ぬ。今、どれだけ想いを燃やせるのか、この瞬間に命が燃え尽きてもいい覚悟で、これでもかこれでもかと叫び狂った。それで自分が生きている実感を得られた。気がしていた。叫べば叫ぶほど心にポッカリと空く穴。フィジカルの犠牲がメンタルを超えた時に大体思う。   「何で俺はこんなにムキになって歌ってるんだろう」   もう既に埋まっているはずの穴で満足できないのは、ただ自分が持ってしまう渇望感だった。闇は消えてはいない。自分自身が持つ闇。自分ではない人が感じている想像もできない程の大きな闇。答えばかり出して生きる事は失礼だぞ。逃げるな。答えを出した途端になにかを諦めたような気分になってしまうから。悲しみの重さ? 自分が経験した分しか分からねえ。幸せの形? 人それぞれあっていいじゃない。幸せを感じられることもまた必要だが、悲しみを感じてしまう事から逃げないのもまた必要な事なのだと思う。瞬間の話であって、引きずっていくと言う意味ではなく。   「何が起こるか分からない」と怯えて生きるなら「どんないい事が起こるか分からない」と同時に思う事ができるか? 「思う事ができるか」なんて「課題」みたいな言い方になってしまっているが、本来「思っていいはず」なんだ。「生きる」という誰にでもできそうな事が誰にとってもの超難関になっている。   おこがましくも、THE BACK HORNの音楽を聴いてくれている皆を通じて「生きる」を感じさせてもらっている。ファンの皆さんと共に「生きる」を感じていきたいと思っている。THE BACK HORNは主に日本語詞を大事にしているバンドだが、言葉だけではなくサウンドが作り上げる情感、各々のセンスの光るプレイは勿論、全身を刻みつけるほどの全てが合わさった「音楽」としてTHE BACK HORNから「生きる」を感じて貰えればと思う。   話はだいぶ逸れたが 「ロックとは何だと思いますか?」 この質問に対し 「執着だと思います」   なんて答えた事もあったが、なんかむむむ、、、という感じだ。「ロックとは何だと思いますか?」「分かりません」やっていけば何か言葉に変わる日が来るのか。言葉にならなくともロックは死なないし、無理矢理カタチにされた言葉ほど薄っぺらいものはない。本意や実態が分からなくても、好きなものは好きだということ。いつか分かるんじゃない? それでいいじゃねえか。 <THE BACK HORN・山田将司>

    2022/04/14

  • saji
    鞦韆と庭の薔薇。
    鞦韆と庭の薔薇。

    saji

    鞦韆と庭の薔薇。

     2022年4月13日に“saji”がNew Digital Single「灯日」を配信リリースしました。同曲は、4月より放送開始のTVアニメ『トモダチゲーム』エンディングテーマに起用。sajiが現在までにリリースしてきた歴代のアニメタイアップソングの中では珍しく、ベーススラップから始まる、深みあるギターサウンドが特徴的なオルタナティブロックサウンドに仕上がっております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“saji”のヨシダタクミ(Vo.)による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、新曲「灯日」に通ずるお話です。彼が子どもの頃に身につけたとある工程、覚えた感覚とは…? 今作のタイトルや歌詞にもつながっているエピソードを、ぜひ楽曲と併せて受け取ってください。 突然ですが皆さんこれを読めるでしょうか。 鞦韆 (※スマホの調べる機能使っちゃダメよ)   これは―しゅうせん―と読みます。 馴染みのある言い方にするとブランコ。 公園に必ずあるアレです。   ちなみに鞦韆は鞦でも韆でも、どちらもブランコという意味があります。ぶらさがって遊ぶ器具の事です。余談ですが、ブランコは本来、中国で夜のおもちゃ(大人の嗜み)として誕生したそうで、それがいつしか遊具として広く親しまれるようになったそう。   話が逸れましたが何故こんな言葉を持ち出したのかと言うと、この鞦韆という言葉が僕の人間性を創造(改造)したからです。   僕は昔から本、主に漫画を読むのが好きで、家の中にある本はジャンル世代問わず全て読みました。両親が漫画好きであった為、たぶん家の中に本棚が10個以上はあったと思います。   中には当然、子供向けの漫画ではないモノも数多く存在した為、当時では意味の分からない言葉やシチュエーション、それこそ漢字なんかが出てきて、知らない言葉を調べて覚えるという工程はこの時に身につけました。   <難しい言葉が出てくる→調べる→使ってみたい→頑張ってインプットする>を繰り返すうちに、勉強面でも国語が得意になったし、<イヤイヤさせられているという感覚がないから>授業も熱心に楽しく受けられた気がする。   そんなある日、本棚の奥から『蘊蓄事典』なる古い辞書が出てきまして、中を開くと脳がちぎれそうになる位難しい漢字が大量に載っていました。   そのたまたま開いたページに載っていた言葉こそが<鞦韆>で、書けるようになるまでひたすら書き取りを自らにノルマとして課し、来る日も来る日も書き続けました(ちなみに今はもう韆は書けません)。   この、誰も知らない言葉を自分だけが使えるという感覚がとても嬉しくて、単語だけではなく使用例なんかもずっと調べては誰かに実践してみたり。今考えると相当ウザい子どもですが、この時に憶えた言葉の引き出しが、今の仕事に繋がっているので、昔の自分にとても感謝しています。   その時の感覚が今回の新曲「灯日」というタイトルであったり、歌詞に投影されているので気になる方は聴いてみてね。   人間、何が将来を支える武器になるか分からないから、とりあえずは何でもやってみるべきだなあと、ふと思い出した昼下がりの電車内にて。 <saji・ヨシダタクミ(Vo.)>

    2022/04/13

  • Thinking Dogs
    本当の自分とは何なのか。
    本当の自分とは何なのか。

    Thinking Dogs

    本当の自分とは何なのか。

     2022年3月27日に“Thinking Dogs”が新曲「Collage」をリリースしました。本楽曲は、ひかりTVのオリジナルドラマ『ラブシェアリング』の主題歌にも起用されております。MVでは、見られる者と見る者を客観的な視点から、現代におけるソーシャルな監視社会を抽象的に表現。ぜひ、ドラマ、歌詞の世界観と合わせてお楽しみください。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Thinking Dogs”の 大輝 (Dr.)による歌詞エッセイを3回に渡りお届け!今回は第1弾。綴っていただいたのは、新曲 「 Collage 」にまつわるお話です。歌詞のテーマは「本当の自分とは何なのか」。好きなもの、好きなひと、好きな場所、自分にとっての“好き”を思い浮かべながら、このエッセイと歌詞を読んでみてください。 皆さんは「自分」という人間が本当はどんな人間なのか、じっくりと考えたことはありますか?   どんなモノが好きで、どんな人が好きで、どんな人間になりたいのか。   よくよく考えると、自分のことって分からないことだらけだったりしますよね。かくいう僕もその1人で。   今回の 「 Collage 」 という曲は「本当の自分とは何なのか。」をテーマに歌詞を書きました。     そもそものCollageという言葉。これはフランス語で「糊付け」という意味で、新聞や雑誌などから切り抜いた写真や絵、文字などを画用紙などの台紙に貼って1つの作品にする技法のこと。   所謂美術の表現技法ですが、実は人間も同じで「自分」という台紙に服やメイク、音楽や映画といった娯楽、食べ物、はたまた付き合う相手といったモノを自分の趣味趣向に合わせて切り取って貼り付ける、一種のCollageなのでは? と感じました。     そんな中で浮かんだ疑問が1つ。 自分が好きだと思って貼り付けているそれらのモノは、果たして本当に自分が好きなモノなのか。     「SNSで話題だから。」 「友達みんなが観てるから。」 「憧れのあの人が使ってるから。」 「映えるから。」     他にも沢山あると思うけど、そういった理由で買った物、食べた物、観た物、行った場所が皆さんにも1つはあると思います。もちろん僕もあります。   ただ、そうやって手を伸ばしたモノは本当に自分が欲しかったモノなのか。選んでいるようで選ばされているだけなんじゃないのか。   流行りのモノが悪い訳じゃない。ただ、流行りのモノばかりを追いかけていても、それは「いつになっても誰かのオマージュ」なんじゃないのか。     良くも悪くも、何も考えなくても、色々なところから色々な情報が入ってくる今の時代。そんな時代だからこそ、そこから何を選ぶのかがとても大事な気がしています。そしてまた、その選択が「自分」というモノを形成していくのかなと思います。     「本当の自分とは何なのか。」 僕もまだ探している途中です。そしてこれはきっと、生きている間ずっと付きまとうテーマだと思います。   最後の日にどんな答えが出せるのか。 そんなことを楽しみにしながら、人生という長い長い自分探しの旅をこれからも楽しみたいと思います。 <Thinking Dogs・ 大輝> ◆紹介曲「 Collage 」 作詞:大輝 作曲:わちゅ~

    2022/04/12

  • erica
    あなたの目に今年の「春」はどう映って見えるだろう。
    あなたの目に今年の「春」はどう映って見えるだろう。

    erica

    あなたの目に今年の「春」はどう映って見えるだろう。

     2022年3月23日に“erica”がデジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』をリリースしました。今作には、春の訪れ×恋愛をメインに楽曲を収録。新曲「卒業ソング」を新たに書き下ろし。そして、ファンからの恋愛に関するお悩みへのアンサーを自身のYouTubeチャンネルにアップしていた『Mlogシリーズ』(Music×Blog)より「春は来ない」「桜フラペチーノ」「桜、輝け」「笑っていてよ」を収録しております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“erica”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾。綴っていただいたのは、様々な春の歌が収録されている今作に通ずるお話です。みなさんには、忘れられない春の記憶はありますか? ericaの心に今も鮮明に残っている、ある春の出来事とは…。 春の歌はごまんとある。 同様に、季節にちなんだ歌も沢山あるがなぜだろう。 春の歌が少し特別に思えるのは私だけだろうか。   長い冬を越え、蕾は花を咲かせ、動物は冬眠から目覚め、人間は別れと出会いの時を迎える。街は桜が満開に咲き、パステル色に染まるショップの洋服たち。 これがおとぎ話だったら、きっと妖精が空を舞い花が歌っている。 それがこの地球の「春」だ。   あなたの目に今年の「春」はどう映って見えるだろう。 まだ暗いトンネルの中を歩き、光を探している人もいるだろう。 新しい出会いに期待している人もいるだろう。 私にもこれまでにいろんな「春」があった。   あれは小学校の卒業式。 もう随分昔の話になるが、今でも鮮明に覚えている出来事がある。 担任の先生に何かサプライズがしたくて考えていた時、たまたまテレビで見た番組がきっかけで、とある企画を思いつきクラスのみんなに提案をした所、みんなも心よく賛成してくれた。   その企画というのは、一人一輪ずつバラの花を机の中に隠して置いて卒業式が終わり、教室に戻った時「せーの」の合図でバラの花を掲げ、先生にお礼の言葉を全員で言う。といった内容だ。   今思えば大したことのない企画かもしれない。 でも当時の私たちにとってはとんでもなく大事だった。 強いて言うなら全国ツアー並みのプロジェクトだ。 まずは先生にバレないようにすることはもちろん、クラスの全員から花代のお金をもらわないといけない。 一人たった250円。ではない。250円も出さないといけないのだ。 小学生にとっては大金である。   私は発案者だったこともあり、集金係としてお金を集め、お花屋さんに電話し、卒業式の日にバラを取りに行き、みんなに配り、掛け声の練習もする。 そんな全てのことをやらなくてはいけなかった。 払えない人はどうすれば良いか。 お金をもらうということの責任を初めて考えた。 学級便りみたいにそれぞれの親に向け手紙を書いて渡してもらう。 それでも払えない人は払える人が20円ずつ多く払ってなんとか賄った。 全ては順調だった。あとは当日を迎えるだけだった。   そんな時事件が起こったのだ。   卒業式の3日前、集めたお金が無くなった。 どこを探してもない。 学校中みんなで探した。それでもなかった。 誰も疑いたくない。でも誰かが盗んだとしか思えなかった。 もうどうしようもなかった。   卒業式の前日、私はクラスのみんなに言った。 本当に申し訳なかった。全て私のせいだと謝った。 何度も何度も謝った。みんな泣いていた。 とっくにみんな許してくれていたけどやっぱりどうしてもちゃんともう一度言いたかった。   そしてこんなことも言った。 「最後にお願いがある。もしこの中に出来心で盗んでしまった人がいるなら決して怒らない。絶対に責めないし犯人も捜さない。だからどうかまだそのお金があるのなら何も言わず私のロッカーに返してほしい。」 そう言って私は泣きながら頭を下げてお願いをした。   当日の朝、私は誰より早く学校に行った。 恐る恐るロッカーを開ける。 あった。 巾着袋に入った見覚えのある集金袋が確かにそこにあった。 卒業式の当日、戻ってきた。 奇跡が起こったのだ。   そこからのことはもう何がなんだか、今思えば小学生の私によくできたなと感心する。 急いで学校の近くの花屋に行く。 開店を待っていたら卒業式に遅れる。 張り紙にある電話番号に公衆電話から電話をかける。 留守番電話にメッセージを残す。 時間と場所を指定する。 学校に戻り、時間になったらトイレに行くと嘘をついて教室を出る。 初めて今でいう“代引き”というやつを小学校の門でした。 花を受け取って隠す。 卒業式が終わったタイミングで先生にバレないように数名で机に花を入れる。 こうしてようやく私のミッションは終わった。   「せーの」 「先生今日までありがとう。」   教室にバラが咲いた瞬間だった。 泣きながら喜ぶ先生の顔を、みんなで泣きながら抱きしめ合ったあの日を私は今でも忘れない。   人は間違いを起こす。 完璧な人なんて一人もいない。 大切なのは信じる気持ち。 悔い改め反省できる心。 そして、支えてくれる仲間の大切さだと思う。 皆違くて皆それでいい。   今年もきっと数えきれない物語があっただろう。 あなたの心に咲く桜は今年もあの頃と変わらず咲いているだろうか。 出会えた友 出会えた夢 過ごした宝物の日々を この胸にずっといつまでもずっとお守りにして 私たちは今日もそれぞれの道を歩いていく。 <erica> ◆デジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』 2022年3月23日発売   <収録曲> M1 卒業ソング M2 春は来ない M3 桜フラペチーノ M4 桜、輝け M5 笑っていてよ

    2022/04/11

  • LM.C
    君に作り話を唄うウソつきな僕
    君に作り話を唄うウソつきな僕

    LM.C

    君に作り話を唄うウソつきな僕

     2022年4月6日に“LM.C”がニューアルバム『怪物園』をリリース!今作は、前作『FUTURE SENSATION』以来、約3年8カ月ぶりとなるオリジナルアルバムです。2020年にリリースされた「Campanella」「No Emotion」「Happy Zombies」の3曲を含む全11曲が収録。なお、LM.Cは現在アルバムリリースを記念した全国ツアーを開催中。ツアーファイナル公演は4月26日に東京・LIQUIDROOMにて行われます。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“LM.C”のmayaによる歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、作詞についてのお話です。作詞を始めたきっかけとは。歌詞に変化が生まれ始めた理由とは。そして、自身にとって大きな存在となった楽曲とは…。作詞作業真っ最中の方にも是非、読んでいただきたい歌詞エッセイ。今作と併せてお楽しみください。 今、正に作詞をしていて その作業の合間にこのサイトを訪れ このページにたどり着いてくれた そんな人がいるかもしれない   そう意識しながら書き始めました。何故なら私にその経験があるからです。普段は元より作詞の合間、休息のために歌ネットを訪れることがあります。   そこに作詞の直接的な答えは存在しないし、数多の歌詞があれど曲さえ知らないことがほとんどです。だけど、どこかの誰かが思いを乗せて完成させた沢山の詞を見て読んで感じることで、作詞という孤独な時間を肯定してもらえる気がするのです。非常にありがたいです。サイト内の『言葉の達人』や『言葉の魔法』にはかなり前からお世話になっております。   私が作詞を始めたきっかけは単純でした。   LM.Cを始める数年前、バンドがやりたくて作曲をし始めたものの、メンバーがおらず全パートを自分で担当するという選択肢しかなく、メロディーに対し言葉がないのは味気無いなと感じて書き始めました。そこから時を経て、作詞や作曲を積み重ね続け、気付けば100曲以上の歌に詞を乗せてきました。   LM.Cを始める前、そして活動を開始してからしばらくの作品の言葉は、日々感じていることや気持ちを反映させたものではありましたが、それは対外に向けたものではなく、多くが自分自身へ向いたものでした。   そこに変化が生まれ始めたのは、応援をしてくれる存在を認識するようになってから。そして、その存在を初めて強く意識して完成させたのが、活動開始から1年後にリリースした「 LIAR LIAR 」という曲です。当時は今より作詞も作曲も経験が浅く、どのように気持ちを形にすればいいかを沢山考えて曲に向き合いました。   広がるこの世界のどこにいたって すぐ逢いに行くから 君に作り話を唄う ウソつきな僕を許して   他の曲に通ずる、この“作り話”が何を意味するのかは、そのときの状況や受け止め方によって変わりますが、それが何であれ、それを伝えたいという気持ちがあり、そこに偽りはないことを歌っておきたかったのです。   当初は上記の箇所と最後のサビは同じ歌詞だったのですが、レコーディングスタジオで気持ちを声にして残していくなか、最後の言葉を書き替えました。   レコード会社のディレクターに、「言葉が強くてLM.Cっぽくないから変更しないほうがいいのでは?」と提案されました。その通りでした。当時の自分、当時のLM.Cにとってはそうでした。だけど、そこから積み重なってゆく未来を想像したときに必要な言葉だと直感したのです。   広がるこの世界のどこにいたって すぐ逢いに行くから 君に作り話を唄う 目の前の僕を信じて   どんなバンド、グループ、ミュージシャンにも、大切や特別を超越したような曲が存在すると思います。この曲は、我々にとってのそれなのです。それ故、ライヴのセットリストにほとんど並ばないという現象が起きている程であります。   そんなことを経て、今では全ての作品、全ての言葉は自分にだけ向けたものではなくなりました。新しく完成した『怪物園』というアルバムもしかりです。色々な状況やハードルを越えて今でも仲間でいてくれる存在、その期待に応える音楽が揃いました。これをきっかけに出会う人にとっても申し分のない作品となっております。   そして、冒頭で述べた作詞作業真っ最中の方。キャリアも状況もそれぞれであろうし、そもそもそのような方がこの文章を目にする機会があるのかも分かりませんが。どんなに楽しく臨めたとしても歌に言葉を乗せるという行為は簡単にはいきませんよね。作詞を担当する多くの方がそうだと思います。   もし現在、作詞が思うように進まず頭を抱えているのならば、勝手ながら応援させていただきます。テキトーに言葉を並べて形にすることはできるのに、そうしない、そうできないのは歌詞をぞんざいに扱っていない証拠です。向き合った分だけ大切なものになるのです。   書いていて気付きました。 これ、 未来の自分が読むやつです。 完全にそうなるやつです。 なのでもっと押しておきます。 大丈夫。やれるよ。 今までもそうしてきたじゃん。 これからもそうするんだ。 もう分かってるでしょ。   もっと自分と、その言葉を待っている存在、そしてこれを書いている私、あなたを信じている私を信じて突き進んでください。   ご高覧いただきありがとうございました。 <LM.C・maya> ◆紹介曲「 LIAR LIAR 」 作詞:LM.C 作曲:LM.C ◆ニューアルバム『怪物園』 2022年4月6日発売 収録曲歌詞一覧: https://www.uta-net.com/album/ WHR-3/ <収録曲> 01. 開園 02. Elephant in the Room 03. Valhalla 04. No Emotion 05. Panic Time 06. Campanella 07. Montage 08. Lost Summer 09. Happy Zombies 10. End of the End 11. 閉園

    2022/04/09

  • 日食なつこ
    クロソイド曲線
    クロソイド曲線

    日食なつこ

    クロソイド曲線

     2022年3月30日に“日食なつこ”がニューアルバム『ミメーシス』をリリース。今作は、多岐にわたるジャンルからさまざまな感性を吸い上げ、“擬態”をテーマに作り上げられました。「この世界たちをいま音と言葉で自分なりになぞったら絶対面白い曲が書ける!」という強いアウトプット欲が生んだ全13曲が収録されております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“日食なつこ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回が最終回。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 クロソイド曲線 」のお話です。 ずっとずっと強くなった今 もう二度と手には入らない光   ずいぶん昔の話です。私たちは夜明け前の下北沢にいました。   まだ夜の早いうちから始まった談合は、過去の話、未来の話、人の話、笑い話、愚痴、噂、さまざまな話題で盛り上がったり盛り下がったりして延々と続きました。決して豊かではない財布をひっくり返し、気分のままにお酒と肴を頼み続け、居酒屋の一席につっぷして居座り、ラストオーダーを取りに来た店員の声で気付けばあっという間に夜の終わりはやってきていました。   おもてに出ると空はうすぼんやりと明るんでいて、リセットされた清潔な空気で通りはしんと静まり返っていました。居酒屋から出てきた私たちだけが、アルコールの臭気と煮詰まった疲労感を纏わりつかせて異質に突っ立っていました。始発の電車はもうとっくに走り出していました。駅へ向かいましょうか。どちらともなく口にして歩き出しました。   東口改札まではまっすぐな坂道がだらだらと伸びています。鈍牛の如き重たい足取りを急勾配がじわじわ攻めつけます。私より幾分酷い酔い方をして君はもうほとんど地面を向いて歩いています。酩酊しながら何か口走っていますがそれを聴き取れないほど私の耳ももう半分眠りこけています。まっとうな朝を迎えたであろうスーツ姿の男性が颯爽と抜き去っていきました。彼の目に私たちはどれほどだらしない生物に映ったことでしょう。   こんなみっともない夜の終わり、よれよれで登る坂の先、そこにまともな続きがあるなんて信じられるような無鉄砲な時期はその頃もうとっくに通り過ぎていました。いい歳して夜通し酒を飲んで明け方路上に半ば転がりかけながらふらつくような生活が許されている惨めな猶予を、心のどこかで自覚しながら気づかないふりをして笑っていました。穴だらけの羽で飛び続ける日々にそれでもなお固執していました。選べる道などもうありませんでした。私たちは非力でした。   体感速度よりずっと早く、世界が回っていた頃の話です。   2021年春、私は初めてひとりで首都高速道路を走りました。急カーブに翻弄されつつ猛スピードでよその車を抜いたり抜かれたりしながら、なぜかふとよぎったのは、あの下北沢のどうしようもない夜明けでした。危機感溢るるドライブに駆け巡った走馬灯だったかもしれません。欠伸を噛み殺しながら少しだけ笑いました。   クロソイド曲線とは、道路のカーブなどに用いられるゆるやかに曲がりが強くなる曲線のことだそうです。徐々に急カーブを描き出す人生の難易度になんとか食らいつき続け、私はいつしかこんなスピードも複雑な道も乗りこなせる器用な大人になっていました。愚直にまっすぐ飛ぶしかなかったあの頃を笑うことだってもう出来るはずですが、一向にそんな気持ちにならないのはもう二度と戻らない穴だらけの日々にしか放てなかった光の価値を理解しているからなのです。   ここまで「√-1」「meridian」「クロソイド曲線」3曲分のバックボーンについて、3つの記事を綴らせていただきました。明るい話が1つもありませんでしたね。ごめんなさい。   全然楽しくもない納得もいかない日々を越えるために、私は歌を作り続ける人種ということなのでしょうね。   これを書いている翌日はまた首都高をひとり運転しなければいけません。厄介な走馬灯を見ないよう、荷造りを終えたら早めに休もうと思います。それではまた、どこかで。 <日食なつこ> ◆紹介曲「 クロソイド曲線 」 作詞:日食なつこ 作曲:日食なつこ   ◆4thフル・アルバム『ミメーシス』 2022年3月30日発売   <収録曲> 1. シリアル 2. √-1 3. クロソイド曲線 4. meridian 5. 必需品 (album ver.) 6. 夜間飛行便 7. vip? 8. un-gentleman 9. hunch_A (album ver.) 10. 小石のうた (Natsuko singing ver.) 11. 悪魔狩り 12. うつろぶね 13. 最下層で

    2022/04/08

  • THE BACK HORN
    ウロボロスを知ってますか。
    ウロボロスを知ってますか。

    THE BACK HORN

    ウロボロスを知ってますか。

     2022年4月13日に“THE BACK HORN”がニューアルバム『アントロギア』をリリース。アルバムタイトルの“アントロギア”は、古代ギリシャ語で<花を集めること>を意味し、今日では詩文を集めた詩集を表すことに由来。様々な花が持つ色彩のように4人の“今を生きる希望”が描かれた作品となっております。今作には、これまで通りメンバー全員が作詞作曲で参加し、様々な組み合わせにより制作された全12曲が収録。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“THE BACK HORN”による歌詞エッセイを4週連続でお届け。第1弾は菅波栄純が執筆。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 ウロボロス 」にまつわるお話です。併せて、歌詞も先行公開中! ぜひ、エッセイとともにお楽しみください。 この曲には、コロナ禍においてライブを含めた音楽活動がなかなかできず鬱屈とした時の気持ちや、いつ終わるともしれない絶望感が渦巻いてます。それをベースにしながらも、無限の絶望のループをこの手でぶっ壊して進んでいくんだ!と宣言する力強いロックミュージックでもあります。   ウロボロスを知ってますか。古代の「無限や永遠」の象徴で、蛇が自分の尾を噛んで輪っかになってる姿をしています。破壊と創造や生と死など色んなイメージが重なっていて、ちょっと不気味、ミステリアスな存在でもあります。そのイメージを使ってループする絶望感を表現しました。   歌詞で気に入ってる部分は、<先生、最近「夢を持て」って言わなくなりましたね>というところです。完全な妄想なんですけど先行き不透明な時代において、学校の先生も「不用意に夢を持て、なんて言えないなぁ」って思ってるんじゃないかな、と。演出的にも語りっぽく唐突に入ってくるので怖くて好きです。   あとは楽曲の中盤で神様が出てくるところも好きですね。この世の何もかもが記載されてるとされる「アカシックレコード」を、神様がブログを書くみたいに更新してる様子で、あんまり深い意味はないんですけど味があります。   ブログの更新通知的に「この世が終わりますよ~」って通知がスマホに来るっていう。その通知を信じた者だけが方舟に乗って生き延びる。以前「惑星メランコリー」という歌詞で似た内容を書いたので、セルフオマージュみたいな感じですね。ちょっとユーモラスな描写になってるのが「ウロボロス」バージョンの特徴です。   一応断っておきますが、そんなに神秘的な思想が強い方ではございませんのであしからず。ただこの世にある素材を様々組み合わせて歌詞を作るのが好きだっていうだけです。   そういう、どこからでも素材を持ってきて歌詞にするからか、自分の場合、歌詞を書くと自然に「この時代を生きていて今感じてること」が混じってきます。なので「メッセージの強い曲にしよう」とか「時代を反映しよう」っていうことはあまり考えていません。   考えてはいないんですが、逆に「普遍的なものにしよう」とも思っていないので、振り返ると「あぁ、あの頃の感じがするなぁ」と、自作の歌詞を読むと思ったりしますね。そこに唐突に時空を超えたような題材がミックスされたりするので、ウチの味はちょっとクセが強いかもしれません。   そんな感じでしょうか。いやぁ、しかしニューアルバムの歌詞はどれもとても良いのでぜひ聴いてみてくださいね!それではまた「アントロギア」の世界でお会いしましょう。   <菅波栄純(THE BACK HORN)> ◆紹介曲「 ウロボロス 」 作詞:菅波栄純 作曲:菅波栄純 ◆ニューアルバム『アントロギア』 2022年4月13日発売   <CD 収録内容> 01. ユートピア 02. ヒガンバナ 03. 深海魚 04. 戯言 05. 桜色の涙 06. ネバーエンディングストーリー 07. 夢路  08. 疾風怒濤 09. ウロボロス 10. 希望を鳴らせ 11. 瑠璃色のキャンバス 12. JOY  

    2022/04/07

  • 半崎美子
    過去から託された大切なメッセージを歌にして未来へと手渡していく。
    過去から託された大切なメッセージを歌にして未来へと手渡していく。

    半崎美子

    過去から託された大切なメッセージを歌にして未来へと手渡していく。

     メジャーデビュー5周年を迎える“半崎美子”が、2022年4月6日にニューシングル「蜉蝣のうた」をリリース。タイトル曲の作詞作曲を手がけたのは森山直太朗。儚くも力強いメロディーと、忘れ得ぬ思い出を慈しむような歌詞となっており、「言葉にできない思いを歌う、声なき声を聴く」半崎の音楽活動にもリンク。歌い手として新たな表現が生まれました。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“半崎美子”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 地球へ 」に通ずるお話です。歌手・本田美奈子.が自然との共生を願い書き記した散文からメッセージを受け取り、半崎が書き下ろしたハートフルなバラード。そこに込めた想いとは…。 影響を与える才能と影響を受ける才能。   私は間違いなく後者の才能があると薄々気づいていました。   アーティストであるならば、影響を与えてこそと思われるかもしれませんが、よくよく振り返ってみると、歌手という夢を強く意識した時も、北海道から上京を決意したときも、自分で曲を書き、歌い始めた頃もずっとあらゆる人に、事象に、音楽に、影響を受け続けてきました。   自分で楽曲を書いていても自分で書いているような気がしないのは、誰かの思いを歌にしているからであり、その人に書かせてもらっているような感覚があるからだと思います。   自分の思いを表現するのではなく、あなたの思いを歌にする。   託された言葉を歌にする。   自己を手放すことで表現する、それが私の自己表現であると。   私自身は器となって、出会った方達の大切な声を、声なき声を受けとっていきたい。   一昨年、そんな思いをまた一つ形にする機会に恵まれました。   歌手の本田美奈子.さんの思いを引き継ぐ活動「LIVE FOR LIFE」が、毎年開催している本田美奈子.さんのメモリアルコンサートで歌うテーマ曲の制作依頼です。   本田美奈子.さんが生前に遺されたいくかの散文の中にあった「地球へ」に触れた時、どこか予言的であり、祈りにも似たこのメッセージを歌にしたいと強く思いました。   地球という一つの星、地球という一つの命の声を聴く。   きっと本田美奈子.さんの受信力は万物に対して働いていたのだと思わずにはいられない。   森のささやき、海の祈り、山の便り、空の願い、鳥や虫たちの声を、聴くことができる人であったのだと。   多言語を聞き取れるというのは、なにも外国語だけに限らない。   親が赤ちゃんの言葉を理解できるのは、側にいて常に気にかけているからであり、何を求めているのかわかるようになっていく。   共に暮らすペットの言葉もきっと聞き取れる。観察し、気にかけることで変化に気づける。   言葉を介さずともみんな語っている。   そこに対話が生まれる。   亡き人の声も聞こえてくる。   耳を澄ますことで聞こえてくる小さな声を、私も受け取れる人でありたいと常々思う。   一人一人がそういう気持ちでいたならば、本田美奈子.さんの願う形の共生が、いつか叶う日がくるかもしない。   過去から託された大切なメッセージを歌にして未来へと手渡していく。   「地球へ」がまた何年後かの未来で誰かに受け取ってもらい、手渡されていくことを願いながら。 <半崎美子> ◆紹介曲「 地球へ 」 作詞:半崎美子 作曲:半崎美子 ◆ニューシングル「蜉蝣のうた」 2022年4月6日発売   <収録曲> 1.「蜉蝣のうた」 2.「地球へ」 3.「私に託して」 4.「地球へ 合唱ver.」  

    2022/04/06

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