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  • ゆいにしお
    「好き」と言う勇気
    「好き」と言う勇気

    ゆいにしお

    「好き」と言う勇気

     2023年6月21日に“ゆいにしお”がMajor 1st Single『ワークライフアイランド』をリリースしました。今作は新曲3曲を通して“社会人女子の夏”を描くコンセプチュアルな作品になっており、さらに「ゆいにしお presents summer 2man tour "DAILY ISLAND"」は今作のリリースをひっさげたツアーとなっております。    さて、今日のうたコラムではそんな“ゆいにしお”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 アイスコーヒー 」にまつわるお話。自分にとっての「好き」を、誰かに伝える一歩がなかなか踏み出せないあなたへ。このエッセイと歌詞を受け取ってください。また今回も音声版がございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください! 大学生の頃、映画館でバイトをしていた。そこで、「好き」と言う勇気を持ったことで、充実した日々を送ることができた。   なんだか、告白してバイト内で恋人ができたかのような書き方となってしまった。実際のところは、好きな音楽を打ち明けたことで、同志を見つけただけのことだ。   映画館での業務はおもに、お客さんが出た後のシアター内の清掃。映画を観た後、ポップコーンの空き容器を回収してくれる人を見かけたことがあるかもしれないが、あの役割だ。   お客さんが出てくるまで、私たちは劇場の扉の外で待機をする。その待機時間は、もっぱらバイト同士で雑談する時間だった。「大学どこですか?」「サークル入ってますか?」など、他愛のない世間話の中にも、私を苦しめる質問があった。   それが「音楽なに聞きますか?」だった。   「メインカルチャーばっかり通ってきてるわけじゃないんで…」というスタンスで生きてきたひねくれこじらせサブカル(死語)には答えづらい質問だ。前までは、その質問に出会うたびに、自分の好きなテイストに近い、メジャーシーンで活動するアーティストの名前を出していた。   だけど、ある時急にその質問をされて、勇気を持って「はっぴいえんど」が好きだということを言ってみたのだった。そうしたら、質問をしたその人ははっぴいえんどについて知っていた。それだけでなく、じゃあティン・パン・アレーは?とか、吉田美奈子は聞く?とか、たくさん話を広げてくれて、さらには私が好きであろうアーティストの音源を貸してくれた。勇気を持って「好き」と伝えたことで、思わぬ扉が開いた瞬間だった。   その後も、その人伝いに私が音楽好きなのを知り、映画館の中の音楽好きが話しかけてくれるようになった。Apple Musicのアカウントを教え合って聞いている音楽を知ったり、業務の合間に「森道市場行きますか?」「ミツメのエスパー聞きましたか?」とか雑談したり。そのうち、映画館の音楽好きたちは、私のライブにもきてくれるようになった。軽音サークルでもないのに、自分の好きな音楽を思うままに話せるコミュニティができるとは、思ってもみなかった。   6月21日にリリースした『ワークライフアイランド』に収録されている「アイスコーヒー」。夏に泣くぐらい印象に残る恋愛がしたいのなら一歩踏み込む勇気を持ってみては、という曲だ。   私が映画館で勇気を持って伝えた「好き」が思わぬ扉を開いたように、このままでは何にもならない関係に一区切りをつけられるのではないでしょうか。   <ゆいにしお> ◆紹介曲「 アイスコーヒー 」 作詞:ゆいにしお 作曲:ゆいにしお ◆Major 1st Single 『ワークライフアイランド』 2023年6月21日発売   <収録曲> 1.We Are Girls Forever! 2.SUMMER TUNE 3.アイスコーヒー

    2023/07/13

  • 吉澤嘉代子
    これは歌ではない
    これは歌ではない

    吉澤嘉代子

    これは歌ではない

     2023年7月12日に“吉澤嘉代子”がニューシングル「氷菓子」をリリースしました。タイトル曲は映画『アイスクリームフィーバー』主題歌として書き下ろされた新曲。ジャケット写真を手掛けるのは映画『アイスクリームフィーバー』監督の千原徹也で、ビジュアルには出演キャストの吉岡里帆・モトーラ世理奈が登場しております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“吉澤嘉代子”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「 氷菓子 」と映画『アイスクリームフィーバー』にまつわるお話です。今作のジャケット写真やミュージックビデオも手掛けた監督・千原徹也との出会いとは…。 千原さんが初めて映画を撮った。 “これは映画ではない”というフレーズとともに。   千原さんとの出会いは10年ほど前。事務所で業界用の分厚いアートディレクター図鑑を広げていた時に「千原徹也」という名前が目に止まった。今も言葉にするのは難しいけれど「この人のつくるもの好きだなぁ」と思った。   初めてお会いする千原さんはアートディレクターという肩書きのイケイケなイメージとは裏腹に、おっとりはんなりとしていて緊張を解いてくれる人だった。   次作のジャケットの打ち合わせだったけれど、好きな映画の話をたくさんしてくれたことが印象に残った。以降、私のアートワークをたびたび手掛けていただくようになる。   ある日「僕が初めて撮る映画の主題歌を書いてほしい」と言ってくれた。それから出演者の候補や途中の脚本を見せてもらっていたけれど、時代の影響や大人の事情もあり何年か経った。   千原さんは絶対顔には出さないけれど苦しいことが一杯あったと思う。一人で資金集めをして各所に連絡を取っていた。   やっと映画製作が前進しクランクインを迎えたときの感動は忘れられない。ほんとうに私が歌っていいんだと思った。   制作期間中は毎日アイスを食べて、舌がひりひりする冷たさは熱さと似ているんだなと気づいた。冷たいものが熱いものになり、甘いものが苦いものになる矛盾を曲の中に封じ込めたかった。   でもなかなか形にならない。焦る。   千原さんの映画を自分事にしたかった。その熱を真正面から受けとめたかった。 私はなんのためにこの歌を書くのだろうと自分に問うた。   そのうちに、映画の主題歌として書くのではなく、個人的な贈りものとして書こうと思った。   千原さんがディレクションしている『キストーキョー』の"キス"や、ジャケットを手掛けた桑田佳祐さんの『がらくた』というアルバム。千原さんが書いた本にあった"僕は魔法使いなんかじゃない" というフレーズ。千原さんのお子さん三人のお名前も散らばせた。 れもんらいふの事務所で一人黙々と編集作業をしている千原さんを浮かべながら言葉をかき集めた。   歌を聴いた人がわからなくてもいい。気付いてもらいたいのは一人だけ。千原さんの言葉を借りるなら、これは歌ではない。千原さんに宛てて手紙をしたためるように書いた。   試写会0号。劇中の一番いいシーンで「氷菓子」が流れた。私も千原さんも泣いていた。 人生は優しく繋がっているって、今日のことだなと思った。   <吉澤嘉代子> ◆紹介曲「 氷菓子 」 作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子 ◆New Single「氷菓子」 2023年7月12日発売      ◆配信サービス一覧: https://jvcmusic.lnk.to/yoshizawakayoko_korigashi   ◆CD VICTOR ONLINE STOR限定パッケージ: https://victor-store.jp/item/37127 (CD+DVD)  NZS-926 ¥4,400(税抜¥4,000)   <収録曲> M1.氷菓子 (詞曲:吉澤嘉代子 編曲:野村陽一郎)   [DVD] 出張・すなっく嘉代子(時短営業) 2021年8月14日 青山 月見ル君想フ   ・月曜日戦争 ・怪盗メタモルフォーゼ ・鬼 ・らりるれりん ・ニュー香港 ・ルシファー ・えらばれし子供たちの密話 ・サービスエリア ・よるの向日葵   <出演> ママ 吉澤嘉代子(Vo) 常連 君島大空(Gt) ◆映画情報 【7月14日(金)TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイント他にて全国ロードショー】    映画『アイスクリームフィーバー』 吉岡里帆 モトーラ世理奈 詩羽(水曜日のカンパネラ)/ 松本まりか   監督:千原徹也(SNSリンク: https://www.instagram.com/thechihara/ ) 原作:川上未映子「アイスクリーム熱」(『愛の夢とか』講談社文庫) 主題歌:吉澤嘉代子「氷菓子」   エグゼクティブプロデューサー:千原徹也、山本正典、木滝和幸 プロデューサー:勝俣円、塚原元彦 宣伝プロデューサー:小口心平 脚本:清水匡 音楽:田中知之 撮影:今城純   制作:れもんらいふ 制作協力:DASH、doors  配給:パルコ c 2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会 映画公式サイト: icecreamfever-movie.com 映画公式SNS:@icecreamfever_m  

    2023/07/12

  • THE BEAT GARDEN
    あー、歌詞ってどうやって
    あー、歌詞ってどうやって

    THE BEAT GARDEN

    あー、歌詞ってどうやって

     2023年6月14日に“THE BEAT GARDEN”がフルアルバム『Bell』をリリース! 前作『余光』から約2年ぶりとなる4枚目のオリジナルアルバムとなる今作。大ヒットを記録したドラマ『六本木クラス』挿入歌「Start Over」をはじめ、初CD化となるデジタルシングル曲(「ROMANCE」「それなのにねぇなんで?」「初めて恋をするように」)に加え、新曲5曲を含む全9曲が収録されております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“THE BEAT GARDEN”のUによる歌詞エッセイを3ヶ月連続でお届け! 第1弾は「歌詞を書く」ことにまつわるお話。第2弾は「恋愛」についてのお話。そして最終回の今回は、歌詞に対する今の素直な気持ちを明かしてくださいました。ぜひアルバムと併せて、エッセイをお楽しみください。 本当は歌詞の何かをちゃんと記せたら良いと思うのですが、やっぱりどれだけ考えても自分の書き方や法則も正直なくて、ごめんなさい。読んでいて面白くも発見もないかもしれないですが、思うことを素直に書かせてください。   僕は何かの天才ではないし、子供の頃は得意分野に明け暮れて極めた同級生が、全体発表で見せる笑顔が羨ましいなーってただただ見てたし   今では負けそうになると、そうだよな人それぞれ好きなものは違って最上も最高もダサいもかっこいいも自分で決めていいよな。ってかそういうの、人に堂々と平気で言えるセンスこそヤバいんじゃね? などとすぐに開き直ったり閉じこもったりしています。   ただ何十曲か書かせてもらって、言葉も洋服みたいに合わせ方で届き方が変わったりして、思い切り狙い過ぎても良くないし“白Tにデニム”みたいに飾らないものこそ届く場合だってあるんだなーとか。   発酵食品みたいに、あの時もらった言葉が長い時を経て納豆みたいに糸を引いて後々大きな栄養になったりする。みたいな経験をさせてもらいました。   でも、こんなわかった風に語る自分とか超気持ちわるかったりするので、中学のときムカついたらはぁ? と言い返せたように、幼い時もっと泣き喚くことができたみたいに、歌詞もわがままに何も知らない感じで思い切り書き殴っていきたいのが今の本音!   マックグリドルみたいな甘いとしょっぱいが譲り合わず殴り合うから起きる爆発みたいな。ああいうのがやりたい!目指せマクド!   きっとこれからもTHE BEAT GARDENの歌詞を書かせてもらうと思うしそうでありたいけど   なんか嫌だなーってなったときも まじ全然わかんねー!ってときも   私たち本当にうまくやっていけるのかな、、 ってお別れするんじゃなくて、 道明寺みたいに(急に花男)「うまくやっていく気があるかどうかだろ。」と言い放って歌詞さんと歩んでいきたいと思っています。   前回、前々回とコラム三部作にて虫やおっぱいのお話をさせてもらいましたが、歌詞について話せてないかもです。すみません。でもすごく楽しかったです。   歌ネットさん インタビュー やコラムもいつもありがとうございます。とっても嬉しいです。   読んでくださったみんなありがとうございます! またどこかで再会させてね!     あー歌詞ってどうやって書くんだろ!笑     わかりたいし、わからないままでもいたいなー     <THE BEAT GARDEN/U> ◆4th FULL ALBUM『BELL』 2023年6月14日発売   <収録曲> 1.Start Over 2.心音 3.あかり 4.初めて恋をするように 5.夏の三角関係 6.High Again 7.それなのにねぇなんで? 8.ROMANCE 9.ラブレター

    2023/07/11

  • 挫・人間
    夏と天使と私と
    夏と天使と私と

    挫・人間

    夏と天使と私と

     2023年7月5日に“挫・人間”が新曲「夏・天使」を配信リリースしました。同曲は渋谷CLUB QUATTROで開催されたワンマンLIVE「挫・人間(新)メンバー募集2023 -バンドやんない?-」で初披露された楽曲で、挫・人間史上初となるサマーソング。疾走感溢れるバンドサウンドとキャッチーなメロディが夏にフィットしており、引きこもりバンドとして夏と無縁の存在であった挫・人間にとっての新機軸となる楽曲に仕上がっています。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“挫・人間”の下川リヲ(Vo,Gt)による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、今作「 夏・天使 」にまつわるお話です。夏と天使という、下川リヲとっての憧れに繋がる、幼い頃の夏の記憶とは…。 バンドマンが夏の歌を制作している時、日本中が冬であることをご存知だろうか。   アレンジやレコーディング、ジャケット制作あれこれ、あらゆる行程を経てリリースされる夏の歌は、夏に作ったんじゃ夏のリリースに間に合わないのだ。   つまり、夏に猛威を奮う人気アーティスト達も、コタツに入ってミカンを剥きながら「真夏のジャンボリー」だとか綴っていたのかもしれないのだ。   事実はどうであれ、少なくとも僕は『夏・天使』という曲を2023年の1月頃に書いた。   なんとなく作ったデモに、これまたなんとなく『夏・天使』と名付けた。   夏と天使は、僕にとって憧れの二大巨頭だ。夏と天使と阪神タイガースの歌しか歌いたくない僕は「これは良い歌詞にせねば」と思う。   ところで、僕は人生の後悔ばかりを歌詞にしてしまうような人間なのだ。それでも出来るだけうつくしい歌詞を書きたいと思った時、いつも手に入らなかったものを書いている。   制作当時、バンドは2人体制になったばかりだったのもあり、リスタートの気分で自分の原点がよく分かるものを作りたかった(そのうち一曲が、前回コラムに書いた『下川くんにであえてよかった』なのだが)。   となると、やはり! 夏である。我々は皆、夏休みにときめくようなメモリアルがなかったせいで読み返す小説や擦り切れたヴィデオに焼かれた物語の夏を生きてしまっている。   そうしていつからか夏の記憶は、憧れの夏と幼い夏の記憶が時間とともに混ざりあい、僕の中で現実と妄想の区別がつかない「何か」になっていた。   例えると、皆さんがインターネットで見たことがある「夏の美しい画像スレ」に貼られる神絵師の夏イラスト、あれは実は皆さんひとりひとりの集合的無意識が作り出した幻想であり、僕の記憶そのものだ。   そしてこれは間違いなく経験したことだが、幼い頃近所に住んでいた幼馴染の女の子と毎日遊んでいた。夏休みは毎日夕暮れまで冒険の連続だった。   オレンジ色の屋根の家を探して町内を歩き回ったり、映画館で貰えるブラックウォーグレイモンのカードを自慢したりした。マクドナルドの油でベタベタな64のコントローラーは「しんだら交代」の誓いで交わされ続けた。   蚊柱たつ下り道を突き抜けたところに廃ビルがあり、ある日ドキドキしながら忍び込んだ。「元の生活に帰れなくなったらどうしよう」と不安になった。だだっ広い空間に立ち止まったきみ、差し込む夕陽が影を伸ばしていく、不意にきみが振り返る。   そのとき何かを言ったような言ってないような、しかしなんとなくこの瞬間を忘れないでいるような直感があり、それはある意味呪いのような形で脳内に残り続けた。   そしてあの日隣にいたきみは、妄想にすりきれて、いつのまにか天使になってしまった。 おれの、夏の天使。   二十歳の頃、彼女と再会した。ふたりで今度は夜のプールに忍び込んだ。水面に月がゆらゆら光っていた。 好きな人の話を聞く。随分と普通な恋をしていた。それでいいのだよ、と僕は思う。   ……ということを作っている最中に考えていたのかは謎だが、『夏・天使』はそういう歌である。つまりは青春である。   そして確かなことは、現実と妄想の区別が完全に付かなくなっていることは、作詞にリアリティが出て便利だということである。   ただ、ひとつの真実として、思い出したりもしないのに心の奥底から浮かんでくるような景色や記憶が誰かにとっての天使なのだ。   生きてて良かった思い出は天使になって僕を守ってくれた。この曲を聴いてみんなも心の中の天使と、この夏、再会しよう!   え? 結局全部お前の妄想で共感出来ないって? バカ野郎!!!!!!!   みんなちがって みんないい   Diversity   <挫・人間・下川リヲーヌ> ◆紹介曲「 夏・天使 」 作詞:下川リヲ 作曲:下川リヲ・マジル声児  

    2023/07/10

  • 空白ごっこ
    めちゃくちゃ逃げたいタイミングランキング1位。
    めちゃくちゃ逃げたいタイミングランキング1位。

    空白ごっこ

    めちゃくちゃ逃げたいタイミングランキング1位。

     2023年6月28日に“空白ごっこ”が新曲「ファジー」を配信リリースしました。同曲はドラマ『スイートモラトリアム』の台本を読んで書き下ろされた楽曲。恋愛や生き方に不器用な主人公たちの心情が揺れ動く様子やその曖昧さを、浮遊感のあるサウンドで表現したエモーショナルなミディアムナンバー。ドラマに寄り添って書かれたセツコの歌詞は、人間関係や選択に迷う多くの人にも共感できる仕上がりとなっているので注目を…!    さて、今日のうたコラムでは“空白ごっこ”のセツコによる歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「 ファジー 」にまつわるお話です。決断を迫られたとき、どうしても優柔不断になってしまう。大事なものの前で怯えてしまう。そんなあなたへ。この歌詞とエッセイを受け取ってください。 めちゃくちゃ逃げたいタイミングランキング1位って「決断を迫られたとき」ではないでしょうか…。   私は強気にものを言うことが多く、決断もテンポ良くスパスパできると思われがちです。間違いではないのですが冷静かと問われるとそれは別で。人生において大事な何かを決めた後は決まって胃痛で立てなくなりますし、トチ狂って全てを間違えます。思い出したくないことがたくさんある。   時間はよく「過去・現在・未来」で三等分されて順に並べられますが、タイムトラベルができない私たちにはどう頑張っても輪切りの断面しか見えなくて、その現在が延々と連続されているとすらも認識できません。   そんな体なのに、世は目の前に対する一つ一つの選択で何手か先の景色が勝手に構築されていく仕組みで、理不尽だなーとよく思います。将棋じゃないんだからさぁ…。   待って、ってしてる間に決断すらさせてもらえなくなるなんてざらにあるし、時間はタイムトラベルさせてくれないくせにケツを蹴り続けてくる。あたふたしてる間に周りの人の顔がどんどん曇ってきて、その度にもっと焦る。   誰しもそうだと思うのですが、折角なら最善を選択したいしなんなら全てを得たい。スーパーマリオでいうと行き道に転がってるアイテムとコインを全部ゲットしたくなるし、その上で優雅にピーチ姫を助けるスマートな結末でいてほしくて、取りこぼすものはなくあって欲しい。   そうやって一瞬一瞬の全てを何度も抱き抱えようとして気づいたのは、私はそこまで器用じゃないということでした。   容量オーバーのものは必ずあぶれてしまう。腕から溢れてしまった瞬間のモヤっとした痛みは何を溢しても感じてしまいますし、悲しそうな顔を向けられた時には耐え難い激痛が走ります。   もうこんな思いしたくないからと全部の行動が不安定になって、余計に選択も絞れなくなって、取りこぼしては激痛を食らって。 器用ではないのに鈍感でもないというこの曖昧さに縛られては、また苦い思いをすることになるという最悪ループを何度やったことか。   ちょっとダラダラ書きすぎなので無理やり締めますが、「ファジー」の歌詞にはこういう自分の優柔不断な部分を素直に言語として残すことで、同じような苦しみを繰り返さないようにという自戒を込めています。   といっても否定するようなものではありません。 ここまでくるとこういう痛みはもう付き物なんでしょうし、自分の弱さや甘さを生真面目に責めてきたからこそ、正直な言い訳に目を背け続けて自分を過信したって意味がないと気づきました。   また大事なものの前で同じように怯えてしまった時、この羅列された言い訳の歌を「分かる~」と気休めに使ったあと、ちゃんと「ダサ~」と思えるようになりたいのです。 歌詞の最後の<分かりきった最後>というのは、私にとっては何度も繰り返している心底嫌な結末のことで、意思表示で詞を終わらせています。   作詞者の特権を使って拙い長文をめちゃくちゃ書きましたが、歌詞とかはそういうものなので、皆さんも都合良いように乗っかってください。   <空白ごっこ・セツコ> ◆紹介曲「 ファジー 」 作詞:セツコ 作曲:空白ごっこ  

    2023/07/07

  • ゆいにしお
    INFPらしいINFP
    INFPらしいINFP

    ゆいにしお

    INFPらしいINFP

     2023年6月21日に“ゆいにしお”がMajor 1st Single『ワークライフアイランド』をリリースしました。今作は新曲3曲を通して“社会人女子の夏”を描くコンセプチュアルな作品になっており、さらに「ゆいにしお presents summer 2man tour "DAILY ISLAND"」は今作のリリースをひっさげたツアーとなっております。    さて、今日のうたコラムではそんな“ゆいにしお”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 SUMMER TUNE 」にまつわるお話です。最近よく目にする「MBTI」というワード。ゆいにしおが自身の性格診断の結果に基づく“あるある”を読んでいくうちに、気づいたこと、感じたことは…。 また今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをご堪能あれ…! 最近ネットを騒がせている性格診断がある。 いくつかの質問に答えることで、16種類の性格に分類される、というものだ。   「16Personalities」という無料で受けられる診断がネットにあり、ネット上では「MBTI」とよばれている。正確には「MBTI」という名称ではないので、診断の際は留意していただきたい。詳しいことは調べていただき、ご自身の判断で診断を受けてください。   そんな診断、友人が突然ハマって、私にも半ば強制的に受けさせた。 結果は「仲介者(INFP)」だった。16種類の性格は、4文字のアルファベットで表記される。アルファベットそれぞれにも意味があるのだけど今回は割愛。   「16Personalities」によると、「仲介者型気質の人は、真の理想主義者で、極悪人や最悪の出来事の中にさえも、常にわずかな善を見い出し、物事をより良くするための方法を模索しています。落ち着きがあり控えめで、内気にさえも見られますが、内には激情と情熱があり、まさに光を放つ可能性を秘めています。」とある。   共感や調和を大切にしながらコミュニケーションを取り、自分の妄想の世界に引きこもる、といったところだろうか。創作をする人にはぴったりな性格じゃないか、と診断結果が出た時は誇りに思ったものだ。   そこから診断にハマって、SNSにも診断についての話題をよく目にするようになった。「◯◯(診断結果)あるある」と、それぞれの結果に当てはまる性質を簡単にまとめたものも多い。   私の診断結果である「INFP」は、「生産性のないことしか考えていない」とか「提出物の期限がいつのまにか過ぎている」とか(今もギリギリで原稿を書いている)、内向的で直感型の性格を表すからか、わりと散々な言われ方をしている。   時間を食い潰して見ているうちに、「本音を言おうとすると泣きそうになる」とか「親しい人にすら考えていることを話せない」といったあるあるにふと目が止まる。 自分だけが特別苦手なことだと今まで思っていて、社会で生きづらい原因となっていることだったからだ。 あるあるとしてまとめられていたのは衝撃的だった。   正直、診断はかなり簡易的なので、こういう「あるあるネタ」は、昔流行った「A型は真面目☆」みたいなのとなんら変わらない。信憑性は0といっていい。   だけど、今まで社会と馴染めずモヤモヤしていた部分が言語化され、さらに同じ仲間がいることがわかっただけで気持ちが楽になった面はある。   そんなふうに、「◯◯らしい」はときどき何かを救う瞬間がある。   6月21日にリリースされた『SUMMER TUNE』も、忙しい毎日の中の休息を、海なんか行ったりすることで夏らしさを取り戻す、という曲だ。 誰かの勝手に決めた枠組みがしんどければそこから離れて、それがふと寂しくなれば枠組みにおさまればいい。そうやって切り抜けていこうじゃないか。   ただし、人に「あなたは◯◯だから◯◯だよね」と押し付けるのは、この性格診断に限らずよろしくないことなので控えましょうね。   <ゆいにしお> ◆紹介曲「 SUMMER TUNE 」 作詞:ゆいにしお 作曲:ゆいにしお ◆Major 1st Single 『ワークライフアイランド』 2023年6月21日発売   <収録曲> 1.We Are Girls Forever! 2.SUMMER TUNE 3.アイスコーヒー

    2023/07/06

  • ENVii GABRIELLA
    私はその魔法が使いたくて、音楽家になりました。
    私はその魔法が使いたくて、音楽家になりました。

    ENVii GABRIELLA

    私はその魔法が使いたくて、音楽家になりました。

     2023年6月28日に“ENVii GABRIELLA”がメジャー1stフル・アルバム『ENGABASIC』をリリース。本今作には既発シングルの「BL」「Symphony」「あなたが私を綺麗にする訳じゃないの」「オリビアを聴きながらを聴きながら」「APHRODITE」に新曲5曲を加えた計10曲が収録されております。    さて、今日のうたコラムではそんな“ENVii GABRIELLA”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回、執筆はTakassyが担当。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 90's 」にまつわるお話です。歌詞内に90年代の様々な名曲が登場するこの曲。Takassyはどんな思いで「 90's 」を作ったのでしょうか。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 私が音楽に対して「自分の好み」を意識し出したのは、小学2~3年生の頃だったと思います。   両親が音楽好きだったので、家では「TOTO」「JOURNEY」「マイケルジャクソン」「山下達郎」「サザンオールスターズ」「中島みゆき」「松任谷由実」邦楽洋楽問わずあらゆる曲が三軒先まで聴こえる大音量で流れていました。   CDを自分で買い始めたのは、もちろんお小遣いをもらえるようになってからだけど、レンタルショップやレコードショップに行っては、視聴機で何度も同じ曲を聴いたり、テレビの音楽番組を録画して聴き続けたり。   深夜には親が起きないように「CDTV」を欠かさず観たりしていました。   私の子供時代は90年代も後半に差し掛かっていたけど、その頃はネットもなかったから、ヒットソングは年をまたいで流行っていたし、おいそれと何十曲も新曲を家で聴けなかったから、一曲ごとの聴き込み方が半端なかった。   90年代の音楽チャートは、「おもちゃ箱をひっくり返した様な」というよくある例えがピッタリ。   1位から10位までのジャンルは全くバラバラで、11位以下になれば、もう聴いたこともない様なジャンルがひしめき合ってた。 そして、友達はみんなそんな雑多な曲を一緒にソラで歌うことが出来た。   カラオケに行けば、新曲を上から我先に歌おうとリモコンの奪い合い。 店員さんに「新曲リストのページください」って言いに行ったりしてた(その当時は新曲ページはシールになっていて、「新曲」と言うページに貼り付けられてた)。     私は、そんな子供時代に、歌手になろうと思った。 そして歌詞を書き始めて、曲を作り始めた。 空想の中では、あらゆる音楽番組に出たし、インタビューも受けた。   そして、今でもその頃の音楽を聴くと、自分の夢の始まりや、語り合った仲間たちを思い出して初心に戻ります。   子供の頃に持っていた、未来へのモチベーションとかって、今では忙しさに追われて忘れちゃったりする時もあります。   私たちと同世代の人たちは(もちろんそれよりも上でも下でも同じように)、ちょうど下と上の間にいたり、登り出したキャリアの坂道で目的地を見失っていたりする人が多い気がしました。   私たちもそういう話よくするしね。   だから私はとりあえず、家のCDラックみたいに、思い出の曲を並べ立てて、いつでも好きな時に取り出せるような曲を作りたいなって思ったので作りました。   どうして私は音楽が好きなのかっていう原点を思い出すように。   そう、こうやって懐かしい音楽を思い出せば、その頃の自分に戻ることができるから。だからこの曲は私にとって一際パーソナルで大事な曲です。   歌はそういう力を持っているんだって信じてるから。 だから私はその魔法が使いたくて、音楽家になりました。   これは頑張りたい時のお守りみたいな曲。 疲れた時に軽く口づさめる簡単なメロディと、なんてことないキーの曲で。   私もこの曲ではエンガブには珍しいキーでラフに歌ってるから、新鮮なんじゃないかなと思いますよ。   そして一緒に昔の友達との話のネタにしてくれてもいいし、一緒に歌ってノスタルジックになってくれてもいいしね。   この曲で出てくる曲を知らない子たちは、ぜひ探して聴いてみてほしいとも思う。素敵な曲が沢山だから。 それでその頃の曲を沢山掘り出してみたら、絶対に楽しいと思うよ。   この曲で、ちょっと一休みしてもらえたら嬉しいです。   <ENVii GABRIELLA・Takassy> ◆紹介曲「 90's 」 作詞:souljuice 作曲:souljuice ◆メジャー1stフル・アルバム『ENGABASIC』 2023年6月28日発売   <収録曲> 01.APHRODITE 02.オワッテンネ 03.Toxygen 04.PAY ME 05.90's 06.BL 07.オリビアを聴きながらを聴きながら 08.The Crown -No necesito, No queiro- 09.あなたが私を綺麗にする訳じゃないの 10.Symphony  

    2023/07/05

  • 佐藤千亜妃
    「線香花火しようよ。」
    「線香花火しようよ。」

    佐藤千亜妃

    「線香花火しようよ。」

     2023年6月28日に“佐藤千亜妃”が3rdアルバム『BUTTERFLY EFFECT』をリリースしました。様々な音楽ジャンルの要素をちりばめながら、ポップスに昇華させるメロディと、心の機微や情景描写を見事に表現する中毒性もある言葉選びは健在。新たなフェーズへ突入した彼女が次なるスタンダードを目指す大切な1枚に仕上がっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“佐藤千亜妃”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 線香花火 feat.幾田りら 」にまつわるお話です。“線香花火”というタイトルの歌詞を書く上でのこだわりや、表現の仕組みを明かしてくださいました。ぜひ、歌詞と併せてエッセイをお楽しみください…! 正直、好きな人と線香花火なんて、したことがない。今まで書いた曲の中で言えば、「金木犀の夜」だって、金木犀の香りすら知らなかった。それでもイメージして、曲にできた。不思議なもので、本物を知らないからこそ膨らむ想像があるということだ。   そう、だから、好きな人と線香花火をしたことがないからこそ、細かいディティールを記憶しているかのように描けるのかもしれない。現実はきっと、そんなに細かいことは覚えていなかったりするかもしれないし、自分にとって都合のいい記憶しか残らないということもあるだろう。   状況は創作で、感情は本物を描く、というのはよく聞く話だし、自分もそういうふうに作ることが多い。時折、創作に見せかけて、実体験も忍ばせながら。だからたまに、「これは実体験ですか?」と聞かれると、どう答えるか凄く迷う。少し悩んで、「半々ですかね」とかなんとか、はぐらかしてしまう、大抵。だって、どの部分が実体験かなんて、教えたくないでしょう。自己開示が苦手だからこそ、音楽表現をしているみたいなところが自分にはあるし、それを紐解かれるというのは、どうも苦手だ。   何の話だっけ? となっている頃かと思うので本題に戻ろうと思う。そう、「線香花火」。この曲は、タイトルから決まっていて、シチュエーションと、そこにまつわる感情をどのように接続して、線香花火を浮かび上がらせるか、ということを考えながら作っていった。   歌詞をよく読むとわかると思うが、歌詞の中には“線香花火”というワードが一切出てこない。これは私のこだわりだ。線香花火というタイトルが決まっていて、それについて音楽にするなら、線香花火をそのまま線香花火という言葉で説明したら負けだと思ったのだ。“線香花火とは、線香花火のことです”。そんな国語辞典、あったら嫌でしょう。まあ、国語辞典ではなく、あくまで歌詞なのだけれど。   私は大学時代、室生犀星という詩人にハマり、卒業論文のテーマにしたりもしていた。なので、作詞に影響を受けていると言っても過言ではない。室生犀星は、情景描写のみを連ねながらそこに湧き立つ感情を想起させるのが、とても魅力的な作家だと思う。   今回の「線香花火」もそういう部分を意識している。“線香花火”を描いているのか、今この瞬間始まりそうな“恋”についての描写なのか、どちらともとれるように余白を持たせた歌詞になっている。線香花火の火花をイメージさせつつ、感情の盛り上がりをそこに重ねて読める仕組みだ。   そして、もしかしたらもっとアダルトに読むとするならば、ワンナイトラブ的な大人の夜の駆け引きにも思えるかもしれない。色んな人の感じ方がある中で、どんなふうに捉えられるのか楽しみな歌詞だ。ちなみに昔から親交のある音楽仲間からわざわざ、「線香花火」の歌詞めちゃくちゃ良いね、と連絡が来たのはとても嬉しい出来事だった。   余談だが、ディレクションさせていただいた、デジタル配信用のジャケット撮影は本当に大変だった。そもそも海辺で、潮風の中、線香花火を撮ろうなんていう企画に無茶があったのだ。様々な線香花火を五十本も用意していただき、風のせいで消えたり落ちたりする線香花火と悪戦苦闘しながら何度もトライして、なんとか撮影できた奇跡のショットがジャケットになっている。   風から線香花火を守るために何人ものスタッフが必死に囲ったり、線香花火をカスタムしたりと、本当に沢山の人の努力の結晶でできあがったジャケットなので、思い入れもひとしおだ。いいショットが撮れたあと、みんなと打ち上げで飲んだレモンサワーとお刺身の美味しさは、忘れられない。達成感もありつつ、なんだかちょっと夏を先取りしたような気分だった。   「線香花火」が、聴いてくれる人の中で、今年の夏を彩るアンセムのような楽曲になっていってくれたら嬉しいなと思う。   「線香花火しようよ。」が、令和版「月が綺麗ですね。」になったらいいな。   < 佐藤千亜妃> ◆紹介曲「 線香花火 feat.幾田りら 」 作詞:佐藤千亜妃 作曲:佐藤千亜妃 ◆3rdアルバム『BUTTERFLY EFFECT』 2023年6月28日発売   <収録曲> 01.ECLOSE 02.線香花火 feat.幾田りら 03.夜をループ 04.S.S.S. 05.タイムマシーン 06.花曇り 07.真夏の蝶番 08.PAPER MOON 09.1DK 10.EYES WIDE SHUT 11.Cheers!Cheers!

    2023/07/04

  • saji
    忘れようとする度、僕らはそれらの過去と出会わなくてはいけない。
    忘れようとする度、僕らはそれらの過去と出会わなくてはいけない。

    saji

    忘れようとする度、僕らはそれらの過去と出会わなくてはいけない。

     2023年6月16日に“saji”がNew Digital Single「スターチス」をリリースしました。タイトル曲は、TVアニメ『Helck』第1クール エンディングテーマです。誰かにとって永遠であることを誓ったミディアムバラード。さらに7月1日には「フラッシュバック」をリリース。こちらはTVアニメ『AYAKA - あやか -』エンディングテーマであり、己の弱さや過去と対峙し、前に進む決意を込めたダンサンブルな1曲となっております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“saji”のヨシダタクミによる歌詞エッセイを2ヶ月連続でお届け!今回は第2弾です。綴っていただいたのは、新曲「フラッシュバック」にまつわるお話。どうして人間は厭なことほど思い出してしまうのでしょうか。それを思い出すことにどんな意味があるのでしょうか…。また、今回も音声版がございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。 人間は厭なことほど思い出してしまうという。 これは古くから云われてきていることであり、化学的にもある程度裏付けがされているそう。   そもそも人間の脳というのは、目にした耳にした情報をすべて一時保存する性質があり、 その上で留めておく必要があるもの、削除しても良いものを無意識のうちに選別している。 これは何故かと言うと、脳の仕組みとして古い情報よりも新しい情報を常に収集することに特化しているからだ。   新しくて有益な情報を得ることで人間は生存競争で勝ち抜いてきた。 トライ&エラーの果てに僕たちは 言葉を得、武器を得、文明を得たのだ。 ちなみに人間以外の生き物でほぼ唯一、 音の組み合わせを持つのは鳥だけだそう。   鳥の場合、求愛のためだけにさまざまな鳴き声やジェスチャーを組み合わせて発信する。 目的以上のことに何故特化したのかというと、過剰なエネルギーの表現をすることで 他の鳥よりも子孫を残せますよ。生命力が高いですよ。という事をメスに伝えようとしているのだ。   この“伝える”という言葉。 僕は昔からとても深く、そして難しい言葉だなと思っている。 人に心を届ける と書いて 伝心 心というものは自分ですら見えないものなのに、それを誰かに届けようとするのだから、 理解を求めること自体がそもそも間違いである気もする。   だが僕ら人間は、思いを共有することで今日まで生きてこられた。 人が人と過ごすには理由が要る。 家族、恋人、友人、仕事仲間 それが例えか細い糸だとしても、 自らと誰かを結ぶものによって僕らは生き合っている。   その結ぶ糸こそが言葉であり、心なのだと僕は思う。 すなわち伝えるとは、糸を紡ぐ行為なのだ。   話が大分横道に入ってしまったが、 今回の主題であるフラッシュバックとは 心の傷跡、心に刻まれた傷であり、 記憶である。   冒頭でも書いた通り 人間は厭なことほど忘れ難い。 これは何度も何度も思い出してしまうことにより、大切な記憶として脳がより深くより堅牢な引き出しにバンクしてしまうから。   忘れようとする度、僕らはそれらの過去と 出会わなくてはいけない。 人間は新しいものを手に入れることで 困難を乗り越えてきた生き物であるから、 昨日を越える為に僕らは過去を背負わなくてはいけないのかもしれない。   傷は消えずとも癒えぬことはない。 明日へ期待して生きることもまた 人間という生物としての正しき本能であると僕は思っている。   <saji・ヨシダタクミ> New Digital Single「スターチス」 2023年6月16日発売   New Digital Single「フラッシュバック」 2023年7月1日発売

    2023/07/03

  • 新山詩織
    約束
    約束

    新山詩織

    約束

     聞くひとの心を捉えて離さない、染み入る歌声と歌詞が多くのリスナーを惹きつけるシンガーソングライター・新山詩織。そんな彼女が2023年4月17日にメジャーデビュー10周年を迎えました! そして来たる7月5日には10周年記念アルバム『何者 ~十年十色~』のリリースが決定!    さて、今日のうたコラムでは、メモリアルイヤーを記念して“新山詩織”による歌詞エッセイを1年を通じ、12ヶ月連続でお届け!その第7弾です。なぜかよく置き忘れてきてしまう傘…。みなさんもどうしても守ることができない「約束」ってありませんか…? 今回も音声版がございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。 私は傘をよく忘れる。   行く先々でお手洗いに入った時 傘掛け用のでっぱりにかけていたものの 扉を開ける時にはもう忘れたまま   電車に乗った数分後に 「あっ....」ため息。   これを呆れるほど 何度も繰り返していたので 絶対になくさないようにと念を込めて   当時、大好きだった ドット柄とネイビーの組み合わせの 少し細く綺麗めな傘を一本、買った。   もう、絶対に手放さない。絶対…。   そう心に決めて雨の日は過ごしていた 大切に大切に肌身離さず...なのに   ある日、お手洗いに入った日に、また なんとその傘を置き去りにしてしまった。   本当に大事にしていたし 大袈裟でなく、それまでのなかで 一番お気に入りの傘だったのもあり かなりショックだった。   それからというもの 傘という傘は持たず、確実に鞄に入る 折りたたみ傘を持ち歩くようにしている。   安易な約束はしてはいけない そんな事を思う6月であった。   傘といえば...       両親が新婚旅行で訪れたイギリスにて 父が母にバーバリーの傘を 買ってあげたものの   日本に帰ってすぐ 母はそれを無くしてしまった。   父はその事をずっと覚えていて 何かにつけて   父は母にそれを言い続けている。       <詩織> ◆10周年記念アルバム『何者 ~十年十色~』 2023年7月5日リリース <収録曲> 1.何者 2.Spotlight 3.夜の魔法 4.あなたに 5.Hate you 6.Keep me by your side 7.約束 8.Free (feat. 山崎あおい) 9.I canʼt tell you (feat. 和久井沙良)  

    2023/06/30

  • 小林私
    言葉選びの必然性について
    言葉選びの必然性について

    小林私

    言葉選びの必然性について

     2023年6月28日に“小林私”がメジャー第1弾となる3rd ALBUM『象形に裁つ』をリリース!今作には4月に先行配信された「杮落し(よみ:こけらおとし)」をはじめ、既にライブやYouTubeなどで披露され、以前から音源化希望の声が大きかった「繁茂」「目下Ⅱ」「biscuit」などの全8曲が収録。アレンジャーとしてSAKURAmoti 、白神真志朗、シンリズム、トオミヨウら、豪華な顔ぶれが参加しております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“小林私”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。歌詞エッセイを書くにあたり、小林私が事前にSNSでアンケートを実施。いくつかの質問への答え、そして、韻を踏んでいる楽曲を例に“言葉選びの必然性について”を綴っていただきました。今作と併せてエッセイをお楽しみください…! ◆ひとくち?Q&A◆   Q. 「火星ソーダ」は小林の書く歌詞の中では比較的ひらがなと口語が多いように感じる。なにか狙いがあってそうしたのか聞いてみたい。   A. 2019年くらいに書いた曲ですね。ダジャレからスタートして書き始めて、ダジャレ以上の何かにならなかった記憶があります。この時点ではまだ狙いとか意図とかを含める余裕はなく、とにかく曲らしきものを書き上げてみる、という時期でした。今見るとかなりおぼこさがあります。全然良い曲だとは思うんですけどね。   Q. 歌詞を書くのにどれほどの言葉を調べていますか? もしかして全部頭の引き出しに入っている…?   A. 作詞をする人は結構やってる気もしますが、初めに浮かんだ言葉からより適当な言葉を探したい時には「〇〇 類語」で調べることが多いです。知っている言葉でも忘れていたり意味が曖昧だったりするので、疑問に思ったら都度ネットで調べて、それから改めて辞書で引き直すこともよくあります。自分の心身に伴っていない言葉を使うのは控えるようにはしつつ、反面、使わないと身に付かないものでもあるので、知らなかった言葉を使いたいときは一層気を付けています。     さて、今回で小林私の歌詞についてのエッセイは最終回。 前回、前々回で加えていた「ひとくちQ&A」をなんとなく最初に持ってきてみた。こうすると、なんとなく最終話感がある。 「花も咲かない束の間に」「四角」は書いた当時のことを結構覚えていたので、比較的すんなり書けはしたが、最終である今回のテーマにはとんと困ってしまった。   エッセイとして書きやすい曲は他にも幾つかある。   怪作「アニメ漫画研究部の姫は俺のことが好きなんじゃないか」は面影ラッキーホールをどうにかオタクナイズ出来ないか、と思案した結果の曲で割と書きやすい。 「生活」「悲しみのレモンサワー」辺りも人に贈るという名目があって書き上げたものだから、これも理由を含めて書きやすい。   とはいえ、これらは自分の中の外れ値のような曲ゆえ他の作品に活きていることがあまりない。せっかくなら全体を通して言えることを書いておきたいという欲も捨て難い。 前回「いい加減あの曲について言葉にすべきか否か…」と思わせぶりに書いていたのは「サラダとタコメーター」という楽曲のことなのだが、これがどうにも上手い文章が思いつかない。 一文一文を説明していくというのはあまりに野暮の極みであるし、じゃあ最初っからそう言えと自分でも思ってしまう。     そんな中でこんな質問が送られてきた。     Q. 小林は楽曲の中で韻を踏みながら「今私は韻を踏んでいます」と曲の中でメタ的な視点を取ることがあると思います(具体例を挙げるなら「冬、頬の綻び、浮遊する祈り」、「スープが冷めても」など)。 そうかと思えば思いっきり韻を踏んでいる曲もあるわけで(「サラダとタコメーター」など) 小林にとって曲の中で韻を踏むという行為はどういう行為なのか気になりました。     ひとくちで答えようと思っていたが、やたら長くなりそうだったので、今回はこの質問を取っ掛かりに書いていこうと思う。 まず「メタ的な視点で韻を踏んでいる」例に挙げていただいた曲の該当箇所を見てもらおう。     「冬、頬の綻び、浮遊する祈り」(以下「冬」)   やけに浮遊感があるのは勘違いじゃないな 言葉にすれば凡庸で貴方に云うのもこれきりにしたいよ 寄せては返す波のように訪れる あてどないこの暮らしに流せないのはクラシック 洒落じゃないんだ     「スープが冷めても」(以下「スープ」)   悩んでも部屋はまた狭くなる 時間の止まったカレンダー 嗚呼、君は可憐だ 駄洒落た台詞も詩も歩調も 愛せてしまうんだ、熱を帯びる間は     「冬」では<あてどないこの暮らしに流せないのはクラシック 洒落じゃないんだ>の箇所。   言うまでもなく<暮らし>と<クラシック>を掛けたダジャレ。そこに<洒落じゃないんだ>と続けている。文字通りジョークではないという意味と、「洒落にならん!」みたく“笑えない”という意味が掛かっている。まあ、結果的にどちらも洒落ではあるが…。   クラシックと聞くとクラシック音楽が真っ先に頭に浮かぶかもしれないが、ここではどちらかと言うと“古典”だとか“広く認められているもの”みたいな意味が強い。つまり「俺の日々はこんなんなのに、ふざけんじゃないよ!」みたいなことを言いたそうだ。   「スープ」では<時間の止まったカレンダー 嗚呼、君は可憐だ 駄洒落た~>の箇所。   <カレンダー>と<可憐だ>のダジャレ。こちらは「冬」とは打って変わって<駄洒落た台詞も詩も歩調も愛せてしまうんだ>と続けて、曲中でもダジャレであることを認めている。   この曲は、ざっくり言うと“熱をもって取り組んでいたこと・ものに対する執着”を歌っている(ラブソングだと時々聞かれるが、そのつもりは全くなかった)。 つまり「くだらない感情あるいはその発露の持つくだらなさは情熱によってあやふやになっている(それも含めて好ましい)」と、そういうことを言いたいのだろう。     もう一つ例がある。     「biscuit」   こんな建碑に無我夢中だと言うそのニュアンスの五里霧中感の ヘイトスピーチ程度の不一致蹴っ飛ばしてなんて大抵酩酊性から 成る酌量、かっから鳴る錫杖、月並みな方々の言うがらんどう また腹減るならベル並べるのべつ幕なしのマクベス斯くあるべし   とか遊んで結んで開いたって誰にも伝わらぬカタストロフィ たった一人の実績解除に誰も彼も興味ない     これも「メタ的な視点」で<とか遊んで結んで開いたって>が当てはまる。 (余談だが、YouTubeにこの曲を載せた際、<カタストロフィ→トロフィー→実績解除>の遊びに対する言及があり、よく気が付くなあと思った。)     さて、長々と例を見せたがここからが本題。 「曲の中で韻を踏むという行為はどういう行為と認識しているか」について。 言い換えると「言葉選びの必然性」であろう。   これは本当にひとくちでは言い難い。言うなれば音楽上の宗派の問題だからだ。 その上で現在の私個人の意見を述べるとすれば「韻を踏むこと自体に大した必然性はない」だ。 その宗派を仮に、乱暴に二分するとメロディ重視かリリック重視か。 ジャンルにもよるが、耳が気持ちが良く音楽的に格好いいのであれば意味は大した問題ではない、というのは正当だ。 でも、せっかくなら意味を通して必然性も持たせたい…持たせたくない? というのが作り手としての私の美学である。   「冬」におけるダジャレの必然性は、大きくは雰囲気の維持と考えている。この詞は割と変えようがあるので、メロディを少し無視して適当に改変してみる。     “あてどないこの日々を彩れないビビッドの色 洒落じゃないんだ”     “ あてどないこの生活が入り交じり暗い清濁に 洒落じゃないんだ ”     一応こういうのでも成立する。 ではどう取捨するのかというと <暮らし・クラシック><日々・ビビッド><生活・清濁> と並べて見た時の空気感が曲に合っているかどうか。 ビビッドと聞いたときに思い浮かぶ色は楽曲全体のバルールに合ってない感じがする、清濁も相反する意味が気になって流れが悪くなるような…といった消去法による必然性。はじめからベストな言葉が見つかることもなかなかない。   「スープ」におけるダジャレの必然性は分かりやすい。 くだらないことも喜びと思える感覚を歌うなら、とびきりくだらないことを言っておきたいからだ。   「biscuit」も近しい。遊びを入れる必然性への疑問に対して一度遊びまくる(あくまで理想的な伝わり方をしている前提だが)。これによって説得力を持たせたい意識。 「こんなに苦しいのに報われない」みたいな曲に「どう苦しい・なぜ苦しい」が抜けてると、なんだかなあと思うからだ。     ここまで作中の言葉選び(特にダジャレ・韻)の必然性について書いたわけだが、これはタイトルにも勿論言える。 タイトルについて綴られた文章では『題名の社会史 : 芸術作品と題名の機能/村田千尋』や『タイトルの魔力 作品・人名・商品のなまえ学/佐々木健一』がメチャ面白いので読んでほしい。   現代のタイトルはその曲の何を標榜しているのかを明快にするシステムが多く取られている。 小林私の楽曲で見てみると、「悲しみのレモンサワー」は分かりやすい。作中にも散りばめられている大きい軸をそのままタイトルにしている。 「アニメ漫画研究部の姫は俺のことが好きなんじゃないか」も同様。描かれている物語に対する題名だ。 「目下」は作中にも含まれているが、テーマ、その状態を表す。また「目下Ⅱ」は「目下」というが曲をベースに、そのシリーズであるような印象をつける。   「冬、頬の綻び、浮遊する祈り」は少しややこしい。このままのセンテンスは作中には一切登場せず、明快にテーマを表しているわけでもない。当然「雪、無音、窓辺にて。」のオマージュでもあり、風景に対して風景と付けるような、記号化に対する逃避である(「雪、無音、窓辺にて。」の意図は分からないが)。「冬、頬の綻び、浮遊する祈り」は就活生に向けたタイアップの曲だったので、そのような意味を込めた。   このように歌詞であれ題名であれ、言葉一つとっても色々なことを考えるしろがあって楽しい。 こういうことを思索するのも言うなれば私の趣味であり、同じ趣味の人が増えてくれるともっと楽しくなる。     と、普段考えていることをつらつらと起こしてみたが、いかがだったろうか。 三回にわたってだらだらと理論立ててみたり、それらしいことを書いてみたりもしたが、最終的な判断は己の思う「なんとなく良い方」に従うべきだとは思う。私は音楽理論も大して分からないし、勘で曲を作って、感情に論理を追わせる、ある種無粋なことをしてしまう人間だ。 それに自分で作ったルールに縛られて何も書けないようじゃ意味がない。幸いなことにその国の王は自分自身であり、立法も司法も行政も思うがまま。モンテスキューもびっくりだ。   どの言葉をどのように扱うかというのは、はじめっから上手く出来る人もなかにはいるが、少なくとも私は現在も含めてそうじゃない。よく「語彙は小説からですか」と聞かれるが、そんなことはない。小説、俳句、漫画、アニメ、お笑い、あるいはゆっくり実況とか、友達が話してたことだとか、立て看板、辞書の序文、言葉にまつわるものは無限に広がりを見せている。その一端に触れ続けながら、その領域を少しでも広げられるようになれればいいなと思っている。究極は、それが楽しいからだけれども。   ということで最終回終わり。回を追うごとに長くなってるのはご愛敬。 読んでいただき、アンケートのご協力もありがとうございました。ここで取り扱わなかったものも有り難く拝見しました。 そしてこのような機会はなかなか自分では作れません。俺ってこんなこと考えてたんだ、と文章にしてみて初めて気付いたことも山ほどありました。ご依頼くださった歌ネットさんもありがとうございました。   それではまたインターネットで会いましょう、小林私でした。   <小林私>  ◆3rd ALBUM『象形に裁つ』 2023年6月28日発売   <収録曲> 収録曲: 1.杮落とし 2.可塑  3.線・辺・点 4.四角 5.繁茂 6.biscuit 7.目下Ⅱ 8.花も咲かない束の間に

    2023/06/29

  • ENVii GABRIELLA
    タダじゃないの。
    タダじゃないの。

    ENVii GABRIELLA

    タダじゃないの。

     2023年6月28日に“ENVii GABRIELLA”がメジャー1stフル・アルバム『ENGABASIC』をリリース。本今作には既発シングルの「BL」「Symphony」「あなたが私を綺麗にする訳じゃないの」「オリビアを聴きながらを聴きながら」「APHRODITE」に新曲5曲を加えた計10曲が収録されております。    さて、今日のうたコラムではそんな“ENVii GABRIELLA”による歌詞エッセイを3週連続でお届け! 今回は第2弾、執筆はTakassyが担当。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 PAY ME 」にまつわるお話です。Takassyが音楽を作る上で大切にしているマインドとは。みなさんは自分の価値をお金に換算してみたことはありますか…? 私、音楽を作るって仕事してる。 仕事っていうくらいだから、お金もらってる。   でも、スーパーに並んでいる商品のように目に見えるものじゃないものを作って売ってるから、その価値が正当に評価されなかったり、蔑ろにされたりする時もある。   「ちょっと歌ってよ」 「ちょっと曲作ってよ」 「ちょっと動画作ってよ」 「ちょっとやってよ」   幾らくれるの? 市場価格をご存知? 私の価値をあなたが考えてお金に換算した時に幾ら?   タダっていうことは私の才能は無価値だって笑って言ってるってことなの。   軽く頼んでくるけど、その仕事をするのに 私が何日、何時間費やしてるか考えたことある?   タダじゃないの。   私の時間はあなたと同じように消費されてるの。     私が今の作品を生み出すために、自分の価値を高めるために、どのくらいの月日とお金を掛けたか、考えてみてよ。   どんなに馬鹿にされても、蔑ろにされても、無視されても、歯を食いしばって、涙を堪えて自分を磨いてきた。   何度もやり直しては、行き詰まってやっとの思いで絞り出してる。   そんなことわざわざ言わせないでよ。     毎月美容代に幾ら掛けてるかわかる? 身につけるものを自分で稼いだ金で揃えてる。     何十年と修行した料理人のお店には大金を注ぎ込んで食べに行く人が、私には「高くない?」って言うの。   馬鹿にしてる。     私は私のために無償で作品を生み出すこともある。それが一見誰かの依頼だったとしてもね。 最終的に自分の利益になるなら。   でもそれを決めるのは私でしかない。 私は覚えてるよ。ちゃんと。     ねえみんな。   自分の価値を 誰かのために犠牲にした自分の作業工数を 悪意なく無礼に使われる自分の存在意義を 過去の自分の苦悩を、努力を、涙を   その全てをお金に換算したことある?   ないよね。 賤しい意地汚い話だと思う?   そんなことない。 評価は正当に受けるべき。 認められる価値は主張すべき。   あなたの優しさが消費されてゆく前に、あなた自身があなたを救うの。 あなたがあなたの価値を信じるの。   「私なんか」「私の技術なんか」「私の存在なんか」 そんなこと思わないでいい。だって世界はあなたが何もしなかったら、全く違う形になってしまう。 私がこんな好感度ダダ下がりな文章を書くこともない世界になっていたかも。 (それはそれでいいかも)   あなたが砕いた優しさで誰かが、得をしてる。 感謝もなくね。   悔しいじゃない?   だからこのマインドよ。   「金出しな。」     そうそう。 世の中には適正価格ってもんがあるから、そこんところは上手くやりなさいね。 <ENVii GABRIELLA・Takassy> ◆紹介曲「 PAY ME 」 作詞:souljuice 作曲:souljuice ◆メジャー1stフル・アルバム『ENGABASIC』 2023年6月28日発売   <収録曲> 01.APHRODITE 02.オワッテンネ 03.Toxygen 04.PAY ME 05.90's 06.BL 07.オリビアを聴きながらを聴きながら 08.The Crown -No necesito, No queiro- 09.あなたが私を綺麗にする訳じゃないの 10.Symphony  

    2023/06/28

  • Panorama Panama Town
    音に揺られる。会話は要らない。
    音に揺られる。会話は要らない。

    Panorama Panama Town

    音に揺られる。会話は要らない。

     2023年7月5日に“Panorama Panama Town”が2ndフルアルバム『Dance for Sorrow』をリリース!今作は約4年ぶりのフルアルバム。EP『Rolling』以降の作品からセレクトした楽曲と新曲含む全12曲を収録したフルアルバムとなっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Panorama Panama Town”の岩渕想太による歌詞エッセイをお届け。今回は【前編】です。綴っていただいたのは、今作の『Dance for Sorrow』というアルバムタイトルにも通ずるお話。なぜひとはダンスをするのでしょうか。たとえそれが気味の悪い場所だとしても、なぜそこに惹かれてしまうのでしょうか…。 雑踏、夜のパブ。 まばらだが、それなりに多くの人が音に乗って揺れている。 タバコの煙に満ちた店内は奥まで見渡すことができず、奥の方では何か怪しげな男女がくっついている。   カウンターでお金を払い、ウイスキーソーダ割りを頼む。 安いウイスキー特有の頭蓋骨に響く味だ。 「どこから来たの?」とは尋ねられなかった。 そんなこと尋ねたくなる連中が、他にもゴロゴロいるからだ。   流れている音楽は、ハウスミュージックのようだが、ローが強調されすぎている。 軋む窓。揺れるウォッカのボトル。 四方八方、トイレの個室に至るまでキックの4つが支配して、会話を挟む隙がない。 趣味の合わない女と乗るレンタカーみたいだ。   「初めまして」とか「いい天気ですね」といった会話の修飾部は、音に飲み込まれ、「おい!」とか「やあ!」と言った本質だけが残る。 ここにいる人々は皆その二語を使って会話をしているようだ。   「やあ!」と刺青の入った大男に背中をどつかれる。 「誰ですか?」とか「何してる人ですか?」とか聞ける訳もないので、私も精一杯の「やあ!」を返す。 ニコッと笑いながら、ビール瓶を渡される。 ありがたく受け取り、ウイスキーを持ってない方の手に瓶を握る。 何やってるかは知らないが、悪い奴じゃなさそうだ。   両手が埋まり、タバコが吸えないので適当なテーブルを探す。 店内に4つだけある樽でできたテーブルはどれもグラスの水で濡れていて、こんなところで確定申告をしたくはないなと思う。   椅子に腰掛け、グラスを置いて、アメリカン・スピリットに火をつける。 アメリカの精神、という名前のタバコを強く吸い込む。 吐き出した煙はどぶ色のため息だ。   ウイスキーの角張った酸味とキックのローが頭の中で混ざり合っていくのを感じる。 新しいカクテルみたいだ。 鈍痛に支配された脳内が、少しずつ気持ち良くなる。   流れている音楽の、シンセサイザーが、丸っこいベース音が、安っぽい注射針に刺されたように、徐々に体の中に入ってきて、ビートを奏でる。 ダンスの時間だ。 俺は今日これをやりに、こんな気味の悪いところにやって来たんだ。   音に揺られる。会話は要らない。 皆、今日これをやりに、こんな気味の悪いところにやって来ている。 そう思うと、途端に周りの奴が愛おしく見える。   音に揺られる。会話は要らない。 皆、それぞれの虚しさと闘争し、逃走しながらここまでやってきた。 俺もそういったところだ。愛おしく見えるだろうか。   朝まで踊る約束をした。 誰にしたわけでもない。帰りたくなったら勝手に帰る。 流れている音楽は最悪だ。ローが強調されすぎてるところが特に悪い。   こんなことは決して美しくはない。 再現性がない。なのに人を惹きつける。 蛾のように集まり、光が消えれば解散する。   そしてそれは、安いウイスキーを飲みたくなることと似ている。 <Panorama Panama Town・岩渕想太> ◆2ndフルアルバム『Dance for Sorrow』 2023年7月5日発売   <収録曲> 01.Run 02.King's Eyes 03.Rodeo 04.Black Chocolate 05.SO YOUNG 06.Cranberry, 1984 07.Melody Lane 08.Bad Night 09.Faceless 10.Sad Good Night 11.Strange Days 12.Knock!!!  

    2023/06/27

  • ゆいにしお
    3kg
    3kg

    ゆいにしお

    3kg

     2023年6月21日に“ゆいにしお”がMajor 1st Single『ワークライフアイランド』をリリースしました。今作は新曲3曲を通して“社会人女子の夏”を描くコンセプチュアルな作品になっており、さらに「ゆいにしお presents summer 2man tour "DAILY ISLAND"」は今作のリリースをひっさげたツアーとなっております。    さて、今日のうたコラムではそんな“ゆいにしお”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 We Are Girls Forever! 」にまつわるお話。<ヘソ出しの服を着て あと少しだけ痩せなきゃなって 思いこんで>いるあなたへ。この歌詞とエッセイを受け取ってください。 また今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをご堪能あれ…! 去年の夏、5kg減量した。 人によっては大したことのない数値だが、私にとっては急に年収が3億になったのと同じぐらい大きな出来事である。本当に褒められたい。   そこから1年、3kgリバウンドした。ざまあみろ。 人によっては大したことのない数値だが、私にとっては急に年収が5億になったのと同じくらい大きな出来事である。本当に誰にも見た目について言及しないでほしい。   26年生きているからわかる。 なんだか体が重たいな、温泉のガラスに映ったシルエットがなんだか太いな、そう感じた時点でたいてい3kgは太っていることが。   3kg太ると、明らかに顔の余白が広くなる。 かがんだときにお腹の肉がほんの少し邪魔をする。 加工しないとインスタにおいそれと写真をあげられなくなる。 そこからようやく重い腰を上げるまでに1~2kgほど太り、合計5kgほど蓄えたところでダイエットをはじめるのだ!   そもそも3kg太ったのは、毎日やっていた有酸素運動を辞めたうえ、食べ物に救われる生活をしていたからだ。   新譜リリースのタイミングでラジオ出演などのために地方へ行く機会が多くなってきて、地方の地酒や地のものをカオナシのように喰らい尽くした(特に北海道はずるい。北海道に行けば誰だって太る)。   深夜に帰宅して飲むビールに、生きている実感を得た。明日への気力が残ってないと、松屋のカレギュウやビッグマックを摂取した。レコーディングの合間にはチョコを食べて自分を甘やかした。毎日どんな美味しいものを食べようかと考えながら、楽しく暮らしていた。   そうして、増量した3kgのなかにもたくさんの思い出がある。 そう思えば、3kgの脂肪の塊も愛おしく思えてくるというものだ。   太ったからといって痩せる必要はどこにもないのです。ちまたではローライズのパンツも流行りつつあるけど、ぷよんとしたお腹を出すのだってきっとかわいい。スタイル神・爆美女の隣だって全然笑顔でいられる。   しかしツアーを控えている身としては、ライブでは身軽な姿でみんなに会いたい。 だから、ジムでこの曲を流しながらトレッドミルの上をハムスターのように駆けたいと思います。   聴いてください、ゆいにしおで「We Are Girls Forever!」   <ゆいにしお> ◆紹介曲「 We Are Girls Forever! 」 作詞:ゆいにしお 作曲:ゆいにしお ◆Major 1st Single 『ワークライフアイランド』 2023年6月21日発売   <収録曲> 1.We Are Girls Forever! 2.SUMMER TUNE 3.アイスコーヒー

    2023/06/26

  • ENVii GABRIELLA
    どんな人が「オワッテル」のか。
    どんな人が「オワッテル」のか。

    ENVii GABRIELLA

    どんな人が「オワッテル」のか。

     2023年6月28日に“ENVii GABRIELLA”がメジャー1stフル・アルバム『ENGABASIC』をリリース。本今作には既発シングルの「BL」「Symphony」「あなたが私を綺麗にする訳じゃないの」「オリビアを聴きながらを聴きながら」「APHRODITE」に新曲5曲を加えた計10曲が収録されております。    さて、今日のうたコラムではそんな“ENVii GABRIELLA”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾です。執筆はHIDEKiSMが担当。綴っていただいたのは、アルバム収録曲「 オワッテンネ 」にまつわるお話です。たわいもない会話から生まれたこのタイトル。では”オワッテル”とはどんなひとなのでしょうか…。歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。 豪華ネェサン・ハッピーハッピーウェイウェイドンチー。 たわいもない会話から生まれたパワーワードがCDのリード曲と化した第三弾がこの「オワッテンネ」。   ENVii GABRIELLA(以下:エンガブ)がポップアップストアを開催する際、キャッチコピーは何がいいかというミーティングで、まだまだエンガブのことを知らない人にも印象に残るような何かパンチあるワードを!という時に上がったのが   「エンガブ知らないの? オワッテンネ」   そこからTakassyの構想が始まり、「オワッテンネ」の楽曲制作が始まりました。   エンガブはリーダーのTakassy(souljuice)が歌詞を作っており、私はそれに対して絶大なる信頼をおいているのですが、そんなTakassyから珍しく電話がかかってきました。   どんな人が「オワッテル」のか。について。   「今回初めてLGBTQにフォーカスを当てた曲にしたいんだけど、歌詞を作るにあたって2人の意見が聞きたい」と。   ゲイ・オネエであることを武器に音楽・ラジオ・YouTubeなど発信の活動をしてるエンガブですが、決してLGBTQの代表として。 なんてそんな大それた表現ではなく、ただ1人のアーティストとして表現する曲にしたいという思いは3人の共通部分でした。   ではそんな私達が、現在世間でも話題になっているLGBTに対する関心について、どんな人が「オワッテル」と思うのか。   「多様性」という言葉が今日本ではまるで流行り言葉のように飛び交っていますが、それはなんでも言いたいこと言っていい、好きなように生きていいということではない。   なりたい自分になる為に、人様に迷惑をかけたり、傷つけたりしていいわけではない。 全てを「個性」で片付けて、私利私欲の為に自己実現をしたところで、嬉しいなんて思えないし、幸せになんてなれない。   年齢も性別も色も関係性も。 そんな事語る前に、まず誰もが「人間」であるということ。   最終的にそこを伝えたいと考えました。   目には目を。歯には歯を。   そうじゃなくて 優しい言葉には優しい言葉を。 思いやりには思いやりを。   きつい言い方する人いるじゃない。 そんなに人は馬鹿じゃないんだから、強く傷つけるような言葉で表現しなくたってわかりますよ。って言いたくなる瞬間。   あなたの思っている事を語るのは結構だけど、自分だけじゃなく周りも幸せにする表現で語りましょうよ。って。     昔とある先輩にこんなことを言われたのを思い出しました。 「有言実行と無言実行と有言無実行と無言無実行だったらどれが良いと思う?」と。   若かりし私は「無言実行」と答えました。 叶わなくても誰も傷つかないし、叶った時にかっこいいから。って。   そしたら先輩に言われました。 「それは違うよ。1番良いのは有言実行だよ」と。 「夢を叶えた時に周りと一緒に喜び合うんだよ。だから有言実行がいいんだよ」と。   目から鱗でした。   幸せにしたい。 ハッピーをあげたい。 笑顔を与えたい。 楽しませたい。   1人で叶えるのではなく、みんなで良いものを作っていきましょうよ!って。   そんなただ前向きなだけの話なのに、突然重装備のブルドーザーなんかで攻め込まれちゃったら、誰も幸せになんてなれない。   100人中100人が納得して満足する選択をすることなんてできない。 けどそんな中でも1人でも多くの人が理解して納得できる選択をすることはできるはず。   そこは同じ人間なのだから「思いやり」の心を持って発言・選択を心掛けていきたい。   マジョリティがマイノリティを攻撃しても マイノリティがマジョリティを攻撃しても   生まれるのは悲しみだけ。   あなたの子供がゲイかもしれない。 あなたの子供がレズビアンかもしれない。   そんな強い表現せず、まずは寄り添ってあげてよ。   そんな人様に思いやりを持てない人間が 「オワッテンネ」という結論に至りました。   古い考えは捨てて。 新しく元気で明るいモノを取り入れて、 前に進んでいきましょうよ。   そんな歌です。   なに? クソババアって? 気持ちいい!もっと頂戴!   < ENVii GABRIELLA・ HIDEKiSM> ◆紹介曲「 オワッテンネ 」 作詞:souljuice 作曲:souljuice・Carlos K.  ◆メジャー1stフル・アルバム『ENGABASIC』 2023年6月28日発売 https://engab.lnk.to/owattenne <収録曲> 01.APHRODITE 02.オワッテンネ 03.Toxygen 04.PAY ME 05.90's 06.BL 07.オリビアを聴きながらを聴きながら 08.The Crown -No necesito, No queiro- 09.あなたが私を綺麗にする訳じゃないの 10.Symphony  

    2023/06/23

  • 小林私
    「四角」について
    「四角」について

    小林私

    「四角」について

     2023年6月28日に“小林私”がメジャー第1弾となる3rd ALBUM『象形に裁つ』をリリース!今作には4月に先行配信された「杮落し(よみ:こけらおとし)」をはじめ、既にライブやYouTubeなどで披露され、以前から音源化希望の声が大きかった「繁茂」「目下Ⅱ」「biscuit」などの全8曲が収録。アレンジャーとしてSAKURAmoti 、白神真志朗、シンリズム、トオミヨウら、豪華な顔ぶれが参加しております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“小林私”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「四角」にまつわるお話です。この曲のタイトル・テーマが生まれたきっかけ。作詞の際のルール。歌詞に込めた思い。そして事前にSNSで募集した質問への答えを明かしてくださいました。今作と併せてお楽しみください。 前回の「花も咲かない束の間に」では主に質問に答える形式で筆をとった。その方が書きやすい、という理由に他ならない。しかしそれは、質問しやすい曲であるから、ということも有り得るだろう。前回にも添えたことだが、本来解説どうこうで楽しむものではない。あくまで少し、野暮なことだ。   「『花も咲かない束の間に』について」では、何故この言葉なのか? どういう構造なのか? といった比較的ロジカルな説明をした。脈絡があり意味があり必然性に満ちた歌詞というのは魅力的だが、それは時としてクイズのような正誤判断をさせ、作品の本質からはむしろ遠ざかる。そもそも共感だけが感動ではない。未知で不快で理解不能な驚きもまた感動である。   音楽を、引いては作品制作において、あるいは暮らしの中で、我々は自身の行為についてどれほどのことを説明出来るだろうか。   ジャンクフードを食べるときに今日はよく頑張ったし、たまには…なんて言い訳をしてみるが、本当はただ食べたいだけで、気付けば「たまには…」ばかりの日々になってしまうこともある。   今のは単なる軽い一例だが、どれだけ言葉を尽くしてみても基盤にあった感情の近似値でしかない。限りなく近いが故に無意識に言葉を軸に感情が象られていたり、あるいは言い訳や正当性を携えて本来の感情から逸脱してしまうことも有る。その先で歪み、肥大化していく恐れもある。   つまり言いたいのは、前回はコラム調に解説の色を濃くしてみたが、今回はエッセー調に叙情的に書いていく。ぐだぐだ書いてみたが最大の理由は後述する。   今回のテーマは「四角」   勢いと手癖で書き切る曲もあれば、途中で主題が決まることもあり、また軸を初めから設けて書くことも有る。どれがより良いということはないがこの曲は三つ目の手法で書かれている。きっかけを元に、そこから大きく逸れないように書いた。   このやり方の欠点として、思い浮かんだ理想に近付きこそすれ、思ってもみないことは起きにくいことが挙げられる(とはいえ勢いや手癖で書く曲も中々想定外のことは起きないものだが)。しかしこの曲の主題は「部屋」。小さく、浅ましく、どこへも飛び出せないような曲。だからこの手法がきっと合っていると信じて書いた。   この曲のタイトル、またテーマを思い付いたきっかけは明確に覚えている。 ある時、ふと見渡した自室が奇妙に思えた。 四角い部屋の中に四角い無機物ばかり。 四角い本棚の中にきっしりと四角い本が詰められ、四角い机の上に四角いモニター、床には四角い段ボールやCD、ティッシュの空き箱、ゲーム、エトセトラ。   第一に思ったのは「キモすぎる」   その次に思ったのは「この部屋は死んでいる」だ。   きっかけからしてこのようだから、解説するタイプの曲ではない。ただまあ、せっかく三本も書かせていただけるのだからパターンを設けたいという下心だ。これが最大の理由である。   閑話休題。   そういったきっかけからこの歌詞に辿り着くのは早かった。     四角い部屋のなかに小さい四角がある ひたむきに集めたような気がして捨てられない     私は作詞におけるルールをいくつか設けていて、例えば「励まさない」「応援しない」「背中を押さない」といったものがあり、この歌詞もルールに則って書き出した。 ルールを明文化しているわけではないのでざっくりとした言い方になってしまうが敢えて言うのであれば「落ち込みすぎない」というもの。「悲観的になりすぎない」と言ってもいい。 この「過ぎない」というのが重要で、もちろん落ち込んだり悲しみに暮れたりするのは問題ない。日々に悲しみというものは悲しいかな、ある。   きっかけを元に分かりやすく改悪してみる。     四角い部屋のなかに小さい四角がある いますぐに捨てるべきもので溢れて死にかけてる     暗すぎ。ここまで絶望していると「さっさと捨てろよ」としか思わない。 しかし実際には捨てていない現実がそこにはある。それはただの怠惰かもしれないが、一定の愛着が存在すると思った。 使う予定のないクッキー缶だとか買ってから数年読んでいない本だとか、意味のない無機質なものへの愛着。それは拡げてみれば物でなくたって言える。 その愛着を無視して全て絶望するのはドラマティックかもしれない、が無理があると思った。   このルールは他の箇所にも適用されている。ラストサビは分かりやすい。     もうじき 息をするだけで意味のない苦しみを繰る日々の続く理由を 求めて 近く遠くない未来をあくまでも明るい希望に満ちたものだと 秘密裏に見なし遠退く日射しのその切っ先に体が刺さり、 飾り付けて、肌身透けて、ただ見つめて、ただ見つめて、 まだ見つけてない残り火が余りあれ、余りあれ...     時折、私の楽曲の仄暗さを褒めていただくことがあるが、実際に歌詞を読むと案外そうでもない。マイナー調で声が低くて私自身が根暗なだけで、最終的な眼差しは意外と明るいことが分かるだろう。   足元ばかり見て落ち込む日々の続く先は訳もなくきっと良くなっているという希望。希望という言葉が明るすぎるのであれば妄信と言い換えてもいいが。   結局のところ、どんなに落ち込んで塞ぎ込んでいたとしても、それを歌詞に起こし、メロディにし、パッケージに包み、世界に提出している。なんらかの形で社会との接続を試みている。 その限り我々はどこか前向きで冷静だ。 だからこそ愛着を捨てきれない。本当に変わろうと思っていない。甘えた考えのまま労せずに認められたい。その過程で何かが変わらなければいけないとしたら、それは世界の方だ。     四角い部屋のなかに小さい四角がある     そういった傲慢と希望と愛着の歌、なんじゃないかな。   ということで第二弾はここまで。 前回より抽象度が多少上がりましたが、こういう書き方もあります。 早くも次回でラストになります。いい加減あの曲について言葉にすべきか否か…という考えは巡らせつつも、何も思いつかなかったらあの曲か、この曲か…せっかくなら最新アルバム以外からも持ってきたいところです。   今回もアンケートご協力ありがとうございました。思っていたより膨大な量が来てしまったので、ひとくちQ&Aも何点かお答えしておきます。質問内容は誤字脱字を含めて多少省略、改変しておりますのでご留意ください(支離滅裂な文章がぼんぼん送られてくるの、個別で紹介したいくらい怖いぞ!)。 第三弾に向けて引き続き募集しておりますのでよろしくお願いします。     ◆ひとくちQ&A◆     無展開の乱反射 ヘッドライト切り裂き魔 誰の指図も受けない 北から 不気味な夜の開拓者     Q. 『飛日』の冒頭はBUDDHA BRANDの『人間発電所』からサンプリングしてるだろ!そうなんだろ!そうって言え!!   A.ヒィッ!そうです。   Q. 『繁茂』の<然しも露払いを恐れていたのに浮動に鳴いて撃たれた鳥>の部分に元ネタ(?)はありますか?   A.後半は『雉も鳴かずば撃たれまい』です。   Q. 『biscuit』 <暖かな日が溜まり二酸化炭素混ざるあの居間の居心地の悪さを貴方にどう伝えようか> のところが好きすぎるので作詞の経緯を聞きたい。   A. 家族と実家が嫌いだからです。   Q. 『光を投げていた』というセンテンスについて Q. これから売れていくような方が<光を投げる>という行為に関して、過去形を使うことにどうしても違和感を感じてしまいました Q. 『光を投げれば』の歌詞も読んだけど『光を投げていた』何?    A. 大雑把に話すと人の目は物ではなく物に反射した光を見ています。曲中では鏡を取っ掛かりに自分を見つめています。 アルバムのタイトルにするにあたって、知覚することは光を投げかけること、という解釈を進めます。 それは物でなくとも、パラレルワールドの自分であっても、そこに光を投げる・投げ返される営みが存在すると。大いなる飛躍です。   アルバムタイトルに大きな意味を持たせる予定はなく、その時期の自分ないし制作を包括する言葉を付けています。その時期の自分のメインテーマとも言えます。 つまり『健康を患う』も『光を投げていた』も『象形に裁つ』も、「暮らし」の言い換えでしかないのです(時々インタビューで言ってる気もします)。   何故過去形なのか?という質問に関しては二点。 まず「光を投げる」を希望的な意味では使っていませんでした。同様に「光」という単語に前向きさや活力的なイメージをあまり持っていません。光があることは、文字通り光があることでしかないのです。 「投げていた」は元より過去形に限定する意図はありませんでした。敢えて言えば状態のつもりです。これを「投げている」にしなかった理由としては、死ぬまで意識せずとも行い続けることにわざわざ…?という思いがあって真っ先に外したような記憶があります。 <小林私> ◆3rd ALBUM『象形に裁つ』 2023年6月28日発売 配信: https://kobawata.lnk.to/hanaTW   <収録曲> 収録曲: 1.杮落とし 2.可塑  3.線・辺・点 4.四角 5.繁茂 6.biscuit 7.目下Ⅱ 8.花も咲かない束の間に

    2023/06/22

  • 杉山清貴
    満更でもないなって思える人生が良いなあ。
    満更でもないなって思える人生が良いなあ。

    杉山清貴

    満更でもないなって思える人生が良いなあ。

     2023年5月10日に“杉山清貴”がデビュー40周年を記念した、杉山清貴&オメガトライブ時代の楽曲も含む初の『オールタイムベスト』と、約3年ぶりのオリジナルアルバム『FREEDOM』を同時リリースしました。ぜひ、両作チェックして杉山清貴の40年の軌跡をご体感ください…!    今日のうたコラムではそんな最新作を放った“杉山清貴”による歌詞エッセイをお届け。とにかく音楽が大好きだった学生時代。影響を受けたアーティスト。そして自身の生き方…。最新作と併せて、エッセイでも杉山清貴の40年の軌跡をお楽しみください。 小学四年生でビートルズ、そして洋楽にハマっていった。聴くだけじゃ飽き足らずギターを抱えた。一日中音楽していたくて、学校から帰ると遊びに行くこと、ご飯を食べること以外は部屋から出なかった。中学一年から高校三年の卒業まで、そんな生活。   深夜放送にもハマった。 だから授業中よく寝た。 学校にもラジカセ持って行ってた。 もちろんフォークも聴きまくった。 古井戸、吉田拓郎、井上陽水が清貴少年の心を掴んでた。   時代は70年代。 平和が謳われメッセージ性も強くなっていく。 そんな時に沖縄のフォークシンガー、佐渡山豊に衝撃を受けた。 当時は知らなかった沖縄言葉(うちなぐち)。 沖縄という島のこと、暮らす人のことを佐渡山豊のレコードから教わった。   ジョージ・ハリスンがインド哲学に興味を持ったから、僕も興味を持ってみた。そうなるとジョージ・ハリスンの生き方考え方に同調して行く。ミュージシャンとしての僕の礎はジョージ・ハリスン。だから、そこに則って生きてこられたかというと、、、。まあ、そうでもないけど満更でもないかなっていうか。   オレはこうなんだーー!とか出来ない性格なもんで、満更でもないなって思える人生が良いなあ。この世界に入って、いろんな理不尽な事に出会ってきたとは思うけど、まあそれもなんとか乗りこなしてこれたしね。 大して痛い目にも遭ってないしね!   じぶんが心から楽しめる時間を大切にする。 そこは我慢してこなかったしな。 おかしい事はおかしいと言う性格なので、我慢はしてきてないな。   最近は作曲よりも作詞に気持ちが引っ張られる。歌詞を考えてると、何処からか手助けが入る。その手助けが誰のものなのか何処からのものなのか知りたい!知りたい!知りたい!と駄々をこねたいくらいだ。   経験は日々増えていくわけで、だけど死ぬまでわからない事ばかり。そんな悟った風な事を文字にできるようになった自分に驚きを隠せない、杉山清貴でした。   <杉山清貴>  ◆『オールタイムベスト』 2023年5月10日発売 プレイリスト: https://lnk.to/KT_ATB <収録曲> ●DISC 1 ※オリジナル音源 1.SUMMER SUSPICION 2.君のハートはマリンブルー 3.ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER 4.DEAR BREEZE 5.ガラスのPALM TREE 6.さよならのオーシャン 7.最後のHoly Night 8.水の中のAnswer 9. SHADE -夏の翳り- (スペシャルリミックスバージョン) 10.風のLONELY WAY 11.僕の腕の中で 12.プリズム・レインに包まれて 13.青空が目にしみる 14.夏服 最後の日 15.僕のシャツを着てなさい 16.Glory Love   ●DISC 2 ※オリジナル音源 1.夢をみたのさ 2.Another Wave 3.波がサイコーだし 4.好きなことを! 5.あの夏の君と 6.風の記憶(with 菊池桃子) 7.Lost Love 8.雨粒にKissをして 9.眠れぬ夜に ~I miss you ~ 10.月に口づけ 11.My sweet lady 12.そして...夏の雨に 13.Omotesando'83 14.Rainbow Planet 15.Other Views 16.Hand made 17.海辺の楽園 (トベタ・バジュン feat.杉山清貴)   ●BONUS DISC 1.さよならのオーシャン (2023 Acoustic ver.) 2.僕の腕の中で (2023 Acoustic ver.) 3.あの夏の君と (2023 Acoustic ver.) 4.月に口づけ (2023 Acoustic ver.)   ◆オリジナルアルバム『FREEDOM』 2023年5月10日発売 各配信サイト: https://lnk.to/KT_FREEDOM <収録曲> 1. Too good to be true 2. Nightmare 3. I am here 4. Flow of Time 5. Goodbye day 6. Steppin' in the Rain  7. 楽園PASSENGER 8. オレたちのナイトフィーバー 9. 祈り 杉山清貴 - Nightmare (Official Music Video)  杉山清貴 - Too good to be true (Official Music Video) 

    2023/06/21

  • ドレスコーズ
    別れについて。
    別れについて。

    ドレスコーズ

    別れについて。

     2023年5月11日に“ドレスコーズ”が新曲「最低なともだち」を配信リリースしました。リフレインするシンセサイザーに彩られた、どことなく懐かしさを感じるサイケデリック・ポップな雰囲気が印象的な楽曲。ジャケットは、「エロイーズ」よりドレスコーズ作品を手掛ける漫画家・イラストレーターの不吉霊二 描き下ろしイラストを用いたデザインとなっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ドレスコーズ”の志磨遼平による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「 最低なともだち 」にまつわるお話。今回のコラムを執筆するにあたり、志磨遼平が事前にSNSで質問を募集。集まった多くの質問を踏まえた上で、この曲への想いを明かしてくださいました。歌詞と併せて、受け取ってください。 今年の春、ぼくが恩師のように慕ってきた人がこの世を去った。   彼の訃報はある日、真偽不明のままSNSで拡散され、それを受けてぼくと同じように彼を慕う人々が哀悼のメッセージを次々とポストしはじめた。   ぼくはそれを、憎々しい気持ちでただながめることしかできなかった。   だって、まだ死んだと決まったわけじゃないじゃないか。それをなんだ、みんなきっぱりと、ありがとうだとか、さようならだとか。   しだいに、ぼくのSNSのタイムラインは、彼が生前に遺した作品で埋めつくされていった。さながら、突然の回顧展がはじまったかのようだった。   そして作品のひとつずつには、彼にまつわる、ぼくの知らない彼のエピソードや思い出が丁寧に添えられていた。   彼はぼく以外の人とも思い出があり、彼はぼく以外の人にも愛されていた。   あたりまえのことだ。しあわせなことだ。それが可視化されただけのことだ。   一昼夜たって、ようやく彼の逝去がただしく報じられ、それをもって彼の不在はゆるがない事実となった。   それなのにおさまらないぼくの憎々しい気持ちは、つまり《彼はぼく以外の人とも思い出があり、彼はぼく以外の人にも愛されていた》ことが許せないのだった。   なんていやしいこころだ、まだありがとうもさようならも言えないで、ぼくはただ彼をひとりじめしたいだけだった。   彼がぼくに与えてくれたものを数える。真っ白な花畑、バルタン星人の爪、血にそまったシーツ、見下ろしたパリの街。アーウィン・ブルーメンフェルド、ジャンルー・シーフ、ピナ・バウシュ。   いつもぼくをうつくしいと言っては、そのたびに写真におさめてくれた。   誰よりも彼の寵愛をうけたのはこのぼくなのだと、別れの哀しみよりも憎しみにくらむ自分のいやしさがなによりもこたえて、その晩は寝つけぬままに朝を迎えた。   思えば、ぼくが親しい人を亡くすのはこれがはじめてだった。自分の歳を考えれば、実にしあわせなことだ。   そのうちぼくはこうした別れに慣れてゆくだろうか。この春はいやに訃報が続いた春でもあった。   幼い頃は、かつてのスターの訃報をどこか遠い世界の出来事のようにながめていたものだ。   それがいつしか、自分すらよく知る著名人のものとなり、自分の思春期をいろどった人となり、やがては自分と親しい人をも侵食してゆくのだろう。   死はまるで灯台のサーチライトのように、長く生きた者から順に、まんべんなく我々を照射する。   やがてこちら側にも向かって、ぐるりと巡ってきた光とついに目が合ってしまうときが自分にも訪れる、そんなことを思い知る。   ぼくは、こうした別れに慣れてゆくだろうか。   別れにも慣れたころを《晩年》と呼ぶならば、この春の別れこそがぼくの晩年初日、ということになる。   晩年初日に書いた歌。この歌を、そんなふうに呼ぶこともできる。     2023年 6月 ドレスコーズ 志磨遼平 ◆紹介曲「 最低なともだち 」 配信: http://dress.lnk.to/saitei 作詞:志磨遼平 作曲:志磨遼平   

    2023/06/20

  • 松本千夏
    恋は人を可笑しくして、可愛くさせてしまうんだと思う。
    恋は人を可笑しくして、可愛くさせてしまうんだと思う。

    松本千夏

    恋は人を可笑しくして、可愛くさせてしまうんだと思う。

     2023年4月26日に“松本千夏”がニューシングル『となりあわせ』をリリースしました。タイトル曲はTVアニメ『おとなりに銀河』のオープニング主題歌で、松本千夏初のアニメ主題歌、初の書き下ろし楽曲に挑戦した、記念すべき楽曲。ふたりの恋模様が浮かぶような、キュンとする恋心を書いたリリックと、ハートフルなアニメ作品のスタートを飾る、爽やかなメロディーが合わさった1曲となっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“松本千夏”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。第2弾は今作の収録曲「 となりあわせ 」にまつわるお話です。今、恋をしているあなたへ。隣に大切なひとがいるあなたへ。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 無駄にキッチンに立って、今月もう3度目のオムライスを作っている。 ケチャップでハートを書いて、恥ずかしくなってスプーンで伸ばす。これも3度目。   靴屋に行けば自分より3センチ大きい靴を見てしまうし、花屋に行けばあの人が好きなオレンジ色の花をまた一輪買ってしまう。   早く見せたい私は、いつもの街並みを小走りで駆け抜けて、近所のおばさんに浮かれた声で挨拶をする。 家に帰ると、まだ寝癖だらけのあの人を起こしてそれをプレゼントする。 「ありがとう」という寝ぼけた声で、私の機嫌はもっと良くなる。   恋は人を可笑しくして、可愛くさせてしまうんだと思う。   デートは週末にするのがお決まりになってきた。 一緒に料理をして、映画を観て、近くのスーパーまで手を繋いで散歩して、並んで歯磨きをして、くっついて眠りにつく。   今まで1人で当たり前にしていた生活が、2人になるとこんなにも楽しくて愛おしい時間になるなんて私は知らなかった。   どれだけ平日忙しくても、仕事でミスをして怒られても、この幸せすぎる週末でネガティブな気持ちが綺麗さっぱり、どこかへ飛んでいく。   2人で過ごす時間はいつもあっという間で、「明日も今日みたいがいい」なんて、子供みたいに純粋な気持ちでそう感じてしまう。   まるで魔法にかかったみたいだ。   優しい人でありたいし、機嫌がいい人でありたい。 愛情をたくさん貰いたいし、同じくらい愛情を与えたい。   誰かを大切に思う気持ちは、人を大きく、強く、優しくすると思う。   そんなふうに大切な人を想いながら、楽しんで、笑いあって、愛し愛されながら、過ごしていきたい。   <松本千夏> ◆紹介曲「 となりあわせ 」 作詞:松本千夏 作曲:松本千夏  ◆ニューシングル『となりあわせ』 2023年4月26日発売 配信: https://chinatsu-matsumoto.lnk.to/tonariawase <収録曲> 1.「となりあわせ」 2.「ガソスタ」 3.「めんどくさい」 ◆ワンマンライブ「歌って」 2023年8月13日(日) 池袋 Club Mixa OPEN 17:30 / START 18:00 \3,900(税込)/オールスタンディング Lコード:71745 チケット発売中 https://l-tike.com/search/?lcd=71745

    2023/06/19

  • saji
    自分を見つめ直した時、僕を取り巻く色々な物の見方が変わった。
    自分を見つめ直した時、僕を取り巻く色々な物の見方が変わった。

    saji

    自分を見つめ直した時、僕を取り巻く色々な物の見方が変わった。

     2023年6月16日に“saji”がNew Digital Single「スターチス」をリリースしました。タイトル曲は、TVアニメ『Helck』第1クール エンディングテーマです。誰かにとって永遠であることを誓ったミディアムバラード。さらに7月1日には「フラッシュバック」をリリース。こちらはTVアニメ『AYAKA - あやか -』エンディングテーマであり、己の弱さや過去と対峙し、前に進む決意を込めたダンサンブルな1曲となっております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“saji”のヨシダタクミによる歌詞エッセイを2ヶ月連続でお届け!今回は第1弾です。綴っていただいたのは、新曲「スターチス」にまつわるお話。今の人生に影響を与えた思春期の経験。そして、大人になって変わった“物の見方”について明かしてくださいました。また、今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。 大人になって変わったことの一つとして、 世の中に在る色々な物への興味関心が増えた。 正確には興味の方向性が変わった。   子供の頃というのは目に映るそれら総てが未知で、これはなんだろう? という好奇心が世の中を支配していた。   知らないものを知りたいというのは人間の性であるが、小さな頃にどれだけの知的好奇心を満たせたかで のち人生を大きく左右するように思う。   6歳までの教育が天才と凡人を分かつと、イタリアの教育者が言っていた気がするが 僕が音楽の道を志したのも、元は小学生の時に出会った蘊蓄(うんちく)辞典(難読漢字ばかり網羅した辞典)から 大人でも知らない言葉を覚えようと家中の書籍(主に漫画と小説)を読み漁り、 国語というものが好きになったのが源流である気がする。   特に国語の授業中は、学んでいる箇所の要点だけ押さえて あとは別のページ(授業で学ばない部分)を読み進めるのが密かな楽しみであった。 授業態度でバレていた気もするが、当時の教科担任が、 当てられた時にさえしっかり応えていればある程度黙認してくれる人だったので それも授業を好きになれた要因の一つかもしれない。   書いていてもう一つ思い出した。 中学の時、英語の授業がとても苦手だったのだが、苦手な分、どれだけ考えても答えは出てこないだろうと テストの際に穴埋めを進めるのも早くて時間の半分以上を持て余していた。   その時間の余白を埋める為に、答案用紙の隅に歌詞の真似事というか詩みたいなものを書いていたのだが、 当時の先生がテストを返却する際に毎回赤文字でこっそりそれの感想を書いてくれていた。   最初は気恥ずかしかったけれど、それより自分の書いた拙い創作物に感想をくれるというのが嬉しくて、 毎回テストの度にそれを楽しみにしていた。   こんなことをやっている場合じゃないでしょ! といつか怒られる気がしたので、 それから多少英語だけはテスト対策に真面目に取り組んだ結果、ある程度上位の点数を取れるようになった。   あれが先生の深謀遠慮だとしたら、今もまだ僕は先生の手のひらで転がされているのかもしれない。   そう考えると、思春期までに影響を受けたものが大人になった今の僕の人生を形成している。 大人になってから人生を変える出来事というのには中々出会えない。   大人になってから興味の方向性がどのように変わったのかと云うと 子どもの頃はなぜこれらは生まれてきたのだろう? というのが疑問の全てだった。   しかし大人になった今は、 これらはなんのために存在するのか? 生まれてきた事ではなく、存在意義を問うようになった。 それは即ち、自分という存在の理由というものに疑問を持ち始めたことに他ならない。   小さな頃は自分が生まれてきたことや生きていくことに何ら疑問を抱かなかった。 それは当たり前のことで、世界は当たり前だと思っていたから。   然(しか)し、人生の歩を進めていくうちに、自分には何ができるのか。 自分は何のために生きているのかという事を考えるようになった。 これは決して病んでいる訳でも厭なことがあった訳でもない。   自分の人生が今ちょうど全体の半分だとして ここから先の人生は運命の余韻なのか、はたまたまだスタートラインに過ぎないのか。   そういったことを考えるフェーズに入ったのだと思う。これが30の壁か。   自分を見つめ直した時、僕を取り巻く色々な物の見方が変わった。 これまではまるで興味のなかった造形物や花など、目につく物の在るべき意味を考えるようになったのだ。   今仕事場の玄関にはいつも一輪挿しの花が置いてある。 近所のお花屋さんでその日見つけたものを定期的に買っているのだが、 日を経過するごとに咲き、枯れてゆくのを何度も見届ける度に、 まるで人生のようだなと隠遁(いんとん)した老人のような事を考えている。   咲かせるまでにどれだけの苦労があったとしても、人前で花開く期間はとても短い。 然(しか)してそれはそう在るべきために生まれてきたのだとしたら、 僕らの人生もまた一瞬の輝きのために長く耐え忍ぶ時間が必要なのではないか。 今がその時なのではないかと自答している。   スターチスという花は、時を経ても色褪せないことから永遠の花と呼ばれている。 永遠なんてものはないと知っているからこそ僕らはそれに憧憬するのだ。   僕らの花もいつか咲くように、今は未だ韓信匍匐(かんしんほふく)の時を過ごそう。   <saji・ヨシダタクミ> ◆New Digital Single「スターチス」 2023年6月16日発売   ◆New Digital Single「フラッシュバック」 2023年7月1日発売

    2023/06/16

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