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水樹奈々 ライヴレポート

水樹奈々 ライヴレポート

【水樹奈々 ライヴレポート】 『NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023 -BLADE MODE-』 2023年1月22日 at さいたまスーパーアリーナ

2023年01月22日@

撮影:kamiiisaka/取材:榑林史章

2023.02.23

水樹奈々のライヴ『NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023』が1月21日と22日の二日間、さいたまスーパーアリーナで開催。22日のDAY2は“-BLADE MODE-”と題し、水樹が風鳴翼役で出演した、アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』の楽曲を中心に、剣にまつわる作品やMUSIC CLIP・ライヴなどで剣を使用した楽曲が集められた。

アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』は水樹の楽曲を数多く手がけている音楽プロデューサーの上松範康が原作に名を連ねた作品で、2012年に第1期の放送がスタートしてから2019年の第5期まで制作。水樹が演じた風鳴翼は日本刀のようなブレードを武器に戦うキャラクターで、イメージカラーが水樹と同じブルーであることから、水樹にとっては分身のような存在のひとりだ。また、“絶唱”というタイトルのとおり、歌うことで変身しパワーを得て戦うことから、アフレコ現場で歌を収録したというアフレコ現場のエピソードも有名だ。

水樹は5期全てでOPテーマを担当し、『シンフォギア』からは「Synchrogazer」や「Vitalization」など、ライヴの盛り上がりには欠かせない楽曲が多数生まれた。21日に開催された“-LIGHTNING MODE-”のテーマ『魔法少女リリカルなのは』の楽曲を表す言葉が“切なさ”だとしたら、『シンフォギア』は“激しさ”や“滾る”だろう。水樹のライヴ史上1〜2位を争う、アツい魂を滾らせた激しいライヴとなったことは言うまでもない。

「TESTAMENT」に始まり、「FINAL COMMANDER」「Exterminate」と『シンフォギア』楽曲を立て続けに連射したオープニング3曲は、のっけからクライマックスのような盛り上がりに。ハイトーンでスピーディーな楽曲を繰り出しながら、広大なステージを右へ左へと全力疾走し、それでも笑顔を絶やさず客席に手を振る水樹。観客は休むことなくペンライトや拳を振り上げ続け、早くも肩がパンパンになった人も多かったかもしれない。

““えらい日に来ちゃったな〜”と思っている人も多いと思います。今日は攻め攻めだよ!”と水樹。激しい曲ばかりのセットリストで、いつもはスパルタな三嶋章夫プロデューサーから“大丈夫か?”と声をかけられたほどだという。

どこか歌謡曲的なメランコリックさを携えたメロディーが特徴的な「METRO BAROQUE」や「嘆きの華」といった、『シンフォギア』以外の楽曲も披露された。「METRO BAROQUE」は『劇場版 BLOOD-C The Last Dark』主題歌で、水樹が演じた主人公・小夜は日本刀を武器に異形のものと戦う物語。この日のライヴでは終盤にTVアニメ『BLOOD-C』EDテーマ「純潔パラドックス」も歌ってライヴを盛り上げた。また、「嘆きの華」は2018年に放送されたアニメ『軒轅剣 蒼き曜』オープニングテーマで、水樹が演じた主人公・苻殷(ふいん)は、伝説の剣「軒轅剣(けんえんけん)」を手に戦うというキャラクターだ。こうして振り返ると、水樹は実に剣にまつわる作品と非常に縁が深い。それは声優とアーティストというふたつの道を、迷うことなく20年以上にわたってまっとうしてきた姿が、真っ直ぐ伸びる剣の刀身の潔さと重なるからかもしれない。

スクリーンに大きく映し出された、憂いを帯びた表情。まるで曲ごとの主人公になりきって、その心情を演じるかのようにエモーショナルなヴォーカル。激しく難易度の高い楽曲の数々でありながら、しっかりと演じて魅せるパフォーマンスの数々。キャラクターや歌に対する愛が、その歌声や表情の端々からあふれ出ていた。

21日と同様、「Mr.Bunny!」ではウサ耳姿でダンスパフォーマンスを繰り広げ、“いい汗かいていますか?”と客席に問いかけながら、ピョンピョンと飛び回る。「FEARLESS HERO」ではフライングを披露し、“いつか誰かとデュエットフライングをしてみたい”と新たな夢を掲げた。水樹が「HERO NANA」に変身して悪と戦うショートムービーには、『戦姫絶唱シンフォギア』でアダム・ヴァイスハウプト役を演じた三木眞一郎(21日は植田佳奈)がゲストで出演。まるで映画のような迫力ある映像は、横浜の埠頭と倉庫街の廃墟で2日間かけて撮影したとのこと。大物ゲストのユーモアたっぷりの演技に会場から笑いが漏れ聞こえ、三木が“奈々ちゃんだからやるんだからね”と言ってくれたというエピソードも披露した。

終盤は「Vitalization」に始まり、「METANOIA」、「Synchrogazer」といった『シンフォギア』OPテーマに、T.M.Revolutionとコラボした「革命デュアリズム」を加えた4曲を繰り出すという、ここに来てのスパルタ。「革命デュアリズム」は2013年末の『第64回NHK紅白歌合戦』で歌われたことや、水樹とT.M.Revolutionが中世の騎士となって剣を交えるMUSIC CLIPが有名だ。T.M.Revolutionのパートをファンが歌うことで人気の楽曲だが、コロナ禍で声出しができないことから控えられており、久しぶりの披露に会場にはどよめきが湧き起こる中、“心で熱唱して!”と水樹。そして、本編ラストは「Synchrogazer」。アッパーのテンポと畳みかけるようなメロディーに合わせ、ほぼノンストップで拳を振り上げ続け、ジャンプし続けたファン。同曲の《この身朽ち果てても 伝えたいものがある》という歌詞は、この日この時のためにあったようなもの。肩と膝はもうガクガクだが、それでも力を振り絞って心からの声援の気持ちをステージに送り続けたファン。それに応え、水樹も笑顔と熱い歌声を客席に届け続けた。

水樹は“このままあと2回くらいできます(笑)。みんなのパワーが、私を最強にしてくれるから”と話し、ファンに“まるで羽が生えたみたいで、自力で飛び回れそう。そんなスーパーパワーを生み出すみんなが、私にとってヒーローです。たくさんの愛にあふれた時間を、一緒に紡いでくれてありがとう”と感謝の気持ちを伝える。アンコールの最後は『戦姫絶唱シンフォギアGX』挿入歌「Glorious Break」。センターステージに立つ水樹の姿は威風堂々としていて、剣の代わりにマイクを手に、凜とした力強いヴォーカルを響かせた。ステージには火花が飛び散り、ここはさながら戦場。ファンは赤のペンライトを振りながらジャンプし、一滴も残さず最後の力を振り絞った。

撮影:kamiiisaka/取材:榑林史章

水樹奈々

ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。

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