LIVE REPORT

ビッケブランカ ライヴレポート

ビッケブランカ ライヴレポート

【ビッケブランカ ライヴレポート】『FEARLESS TOUR 2017』 2017年10月14日 at 赤坂BLITZ

2017年10月14日@赤坂BLITZ

撮影:星野健太/取材:山口智男

2017.10.21

観るたびにどんどんよくなっているんだから、ビッケブランカは音源のみならずライヴもいいという評判も頷けるが、噂になっているそのライヴはこの日、ライヴパフォーマーとして、ビッケブランカがさらに成長した姿を印象付けた。

そういうツアーになるという手応えが最初からあったのか、それとも、そういうツアーにしなきゃいけないと覚悟したうえで全国6カ所を回るツアーに臨んだのか。いずれにせよ、デビューした時、ビッケブランカという名に新米海賊の成長物語を重ねていたビッケブランカがこの夜、帆船(の甲板)をイメージしたステージで歌い踊りながら最初から最後まで被っていた帽子がキャプテンハットだったことが(つまり、新米海賊は船長に出世したってことだ)、デビューからこの3年の間の成長も含め、多くのことを物語っているように思え、感慨深かった。

ライヴはスタートダッシュを決めるようにアップテンポの「Take me Take out」でスタート。ビッケブランカの大きな武器であるファルセットも冴えわたる。「ココラムウ」「アシカダンス」といった、かつてはライヴの終盤でクライマックスを作っていた曲を、序盤から惜しげもなくやってしまうところに、リリースを重ねキラーチューンが増えたことに対する自信がうかがえた。印象的なイントロのピアノのフレーズをサンプリングで自在に鳴らしながら、演奏に雪崩れ込んだその「アシカダンス」では、ギター、ベース、ドラム、キーボードからなるビッケブランカバンドの演奏も白熱。観客もそれに応え、手拍子しながらジャンプ、ジャンプ。サビでは思いっ切り手を振った。

「Bad Boy Love」では、終盤のオペラパートをバンドメンバーたちが重ねたコーラスと掛け合いながら見事に再現。冒頭の“Oh!”“Oh!”のコール&レスポンスで客席を盛り上げた「追うBOY」。マイク片手に軽やかにステップを踏むビッケブランカとともに観客も“Tu tu tu tu tu tu tu...”と歌った。ライヴの中盤でしっとりと聴かせるバラードパートはもはやライヴの定番。しかし、今回は、「さよならに来ました」と「幸せのアーチ」をアコースティックバージョンで聴かせる心憎い演出でも楽しませた。

また、「Broken」「Want You Back」といった、リズムを強調したサウンドがヒップホップの影響を思わせる曲がライヴの流れの中でいいアクセントになっていたことも聴き逃せない。最後の“Booyakasha!”というシャウトを、観客ととともに何度もシンガロングするアレンジにした「Want You Back」が、ライヴでこんなに盛り上がる曲に化けるなんてちょっとびっくりだった。

そんなところにもライヴにおける成長がうかがえたが、ピアノバラードの「Echo」を、バンドとともに壮大に聴かせると、自らがマレットでパッドを叩き、マリンバ(?)の音色を奏でたシティポップス風の「Stary Cat」からライヴの流れは再びテンポアップ。雷鳴からの“1-2-3-4!”という掛け声で始まったアンセム「THUNDERBOLT」では、雷がステージの上に掲げられていた“FEAR”の文字を打ち砕いた。なるほど、ツアータイトルはアルバムと同じ“FERALESS”にもかかわらず、なぜ“FEAR”なんだろうと思ったら、そういうことだったわけだ。もちろん、それは視覚効果を狙った単なる演出に止まらず、ビッケブランカによるステートメントでもあったはずだ。

「Moon Ride」では2階席から投げ込まれた無数の風船がステージと客席を彩り、そこから畳み掛けるように演奏した「Slave of Love」「ファビュラス」の2曲では、大きなシンガロングとともにこの日一番の盛り上がりが生まれ、ツアーの成功を祝福した。

アンコールを求め、観客が歌う「THUNDERBOLT」に応え、休憩もそこそこにステージに戻ってきたビッケブランカは、かつてライヴが嫌いだった自分が今ではライブが生き甲斐になっていることと、曲を作る時に、みんなと一緒に何かしたいという気持ちになることを語ると、“人生で一番楽しいライヴができた”とこの日のライヴを振り返った。きっとその気持ちがまた、ビッケブランカをライヴパフォーマーとして成長させるに違いない。

アンコールに何をやるかいつも決めていない中で、この日に選んだのは、インディーズ時代のピアノナンバー「Wake up sweetheart」。やさしさと温もりに満ちたその曲を、ビッグマウスも魅力のひとつであるあのビッケブランカは、“人を救うなんて調子良いことは言えない。何かしら、ちょっとでもいいことが起きますようにという願いを込めて頑張っていきます。幸せになってください”と神妙な面持ちで語ってから最後に歌ったのだった。

撮影:星野健太/取材:山口智男

ビッケブランカ

ビッケブランカ:1987年11月30日愛知県生まれ。美麗なファルセットヴォイスと緻密なコーラスワークを独創性に富んだ楽曲に昇華させ、ポップとロックの間を自在に行き来する、新しいタイプのシンガーソングライター。人懐っこいキャラクターと爆発的な瞬発力でドラマチックに展開されるライヴも高く評価され、メジャーデビュー後の全国ツアーは全カ所ソールドアウトするなど、注目度が高まっている。“ビッケブランカ”とは“純真無垢な下っ端の海賊”という意味を持つ。

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