LIVE REPORT

吉澤嘉代子 ライブレポート

吉澤嘉代子

『吉澤嘉代子 箒星ツアー'15』

2015年05月16日@赤坂BLITZ

撮影:IDE/取材:宮本英夫

2015.05.22

信じられないほどキラキラして、とんでもなくドロドロもしていた“少女時代”という特別な季節に思いを込めて大傑作『箒星図鑑』の世界を再現する『箒星ツアー'15』のファイナル、赤坂BLITZのステージに登場したセーラー服の吉澤嘉代子が、《わたし あなたが す、す、す、》...と歌い出すと、気分はもう10代へとタイムワープ。「未成年の主張」「美少女」「恋愛倶楽部」は恋に恋焦がれる乙女心をピュアピュア度満点で歌い、くるくる踊り、「ブルーベリーシガレット」では黒サングラスをかけて不良のフリをしてみせる、彼女の一挙一動が可愛すぎて目が離せない。「チョベリグ」では勢い余って会場に駆け下り、客席の真ん中で歌いながら、“なまこ壁!”という謎のコール&レスポンスで大盛り上がり。演劇的なセリフや効果音、構成力の高さも、去年のライヴよりも格段に成長を遂げている。

と、ここまで目一杯強調してきた“キラキラ”の中に“ドロドロ”が少しずつ入り込み始めるのが、次の「なかよしグルーヴ」から。いじめの構造をさりげなく匂わせるこの曲や、自傷行為を描く「キルキルキルミ」など、シリアスなテーマをあくまでキャッチーなポップチューンに乗せて届ける、表現者・吉澤嘉代子の真骨頂がここにある。あどけない少女と成熟した女性と、どちらも内包した深みのある歌声が聴ける「ぶらんこ乗り」も素晴らしい。そして、何と言ってもハイライトは、ドラマチックなナレーション付きのバラード「泣き虫ジュゴン」。傷付きやすい心を抱え、海の中で静かに泣くやさしい生き物。あまりにも切なくて美しいイメージに、いつどこで聴いても心震える名曲は今日もやっぱり名曲だった。さらに「ストッキング」「雪」と、素顔の吉澤嘉代子に最も近いと思われる曲で本編を締め括る。自分を信じるという魔法を思い出して...力強い言葉がいつまでもリフレインする。

本編はセリフ以外のMCはほとんどなし。その代わりアンコールではグッズ紹介、メンバー紹介、質問コーナーと楽しいトークに花が咲く。伊澤一葉(Key)、弓木英梨乃(Gu)、ミゲル(Ba)、松田頌平(Dr)というメンバーは、吉澤嘉代子ワールドの大胆なポップさと精神的な繊細さの、どちらもしっかり表現する見事なバンドだ。初披露の未CD化曲「ひゅー」の、明るいアメリカン・オールディーズ風の曲なのに猛烈に激しいリズムには痺れた。そして最後の最後、ダブルアンコールで歌われたのはアルバム『箒星図鑑』の最後を飾った「23歳」だった。

“初めて自分を切り取った曲です。自分の曲だけど何度も救われました。あなたにとってもそうであったら嬉しいです”。美しい魔法にかけられた少女時代という季節に別れを告げて、大人の世界へと入ってゆく戸惑いとときめきを、これほど真っ直ぐに歌う曲がほかにいくつあるだろう。演劇性と物語性の強い吉澤嘉代子の世界は、突き詰めると全てが自伝だ。優れたノンフィクションノベルに触れたような鮮やかな印象は、彼女がステージを去った後もいつまでもそこにあった。
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