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吉澤嘉代子 ライヴレポート

吉澤嘉代子 ライヴレポート

【吉澤嘉代子 ライヴレポート】 『吉澤嘉代子の発表会 ~大人編~』2018年6月17日 at 東京国際フォーラム ホールC

2018年06月17日@東京国際フォーラム ホールC

撮影:山川哲矢/取材:帆苅智之

2018.07.06

吉澤嘉代子が“吉澤嘉代子の発表会”と題し、自身の楽曲をそれぞれ“~子供編~”“~大人編~”と分けて披露するライヴを2日に渡って開催。両日とも早々にソールドアウトと注目を集めていた本公演、2日目の“~大人編~”をレポートする。

ライヴエンターテインメントとしての完成度があまりにも高くて見惚れてしまった。いや、ミュージカルや演劇、スポーツと区別する意味で、正確には“ライヴコンサートの完成度が高かった”と言い換えよう。煌びやかな衣装を何度も着替えたり、映像に凝ったり、あるいはアドリブ的なハプニングを楽しんだりすることなく(決してそれらが悪いということではなく)、その中身はあくまでも歌と演奏が中心。愛犬“ウィンディ”とやりとりするという場面はあったが、MCもさほど長くはなく、まさに“発表会”の名前に相応しい、音楽公演として真っ当過ぎる形態であったことが何よりも素晴らしかった。その直球勝負する姿勢を間近にして、正直言ってかなり感動した。

昭和歌謡風のメロディーを持つ「ケケケ」。リズムカルリズミカルなポップチューン「手品」。アコギを抱えたロックチューン「化粧落とし」。サイケデリックな匂いを漂わせる「がらんどう」。エレキギターに持ち替えてソリッドなサウンドを披露した「ユートピア」。ビッグバンドジャズ風の「ちょっとちょうだい」。ファンキーでヴォーカルがラップ調の「麻婆」。アコギと弦楽四重奏による「人魚」。そして、アコースティック基調の三拍子「ぶらんこ乗り」。メロディーはもちろんのこと、楽曲毎に目まぐるしくサウンドが変化していく。彼女を支えていたのは、ギター、ベース、ドラムスにキーボードというバンドに加えて、トランペットとサックスの管楽器隊、さらにバイオリン×2、ビオラ、チェロの弦楽器隊。管楽器や弦楽器が入るコンサートは別に珍しくはないものの、いずれかがずっとステージにいたり、逆に例えば中盤にアコースティックコーナーを設けて弦楽器隊が登場したりするようなことが多い気がするが、この日はそうした段取りめいた印象は薄く、あくまでも楽曲に合わせてメンバーが入れ替わる感じであった。その雑然とした規則性があるようでない曲の並びが、むしろ彼女が描く“妄想の世界”を際立たせていたように思う。ウィンディとの会話で“私ってめちゃくちゃなの”と彼女は言っていたが、だからこそ、いいんだと思う。

そのサウンドがそれぞれのメロディーと歌詞にとって最適なのは言うまでもなく(これは音源でもそうなのだが)、吉澤嘉代子の世界観をクリアーに描き出す。ホーンやストリングスが入ったゴージャスなサウンドもあれば、アコースティック基調のシンプルなものもあるが、いずれも吉澤嘉代子なのだ。言わば、本マグロの最高の部分を惜し気もなくドッと使ってみせるかと思えば、菜っ葉と油揚げだけで素晴らしい一皿を作ってみせよる(by 京極はん)といった感じである。もちろん吉澤嘉代子のコンサートは美食倶楽部のように敷居の高いものではないが、彼女の音楽は良い素材をその素材に合った方法で丁寧に仕上げる逸品である。一切の混ぜ物を必要とせず、純粋な音楽として他のエンタメと真っ向勝負できるものだと思う。それを確信した『吉澤嘉代子の発表会 ~大人編~』であった。

撮影:山川哲矢/取材:帆苅智之

吉澤嘉代子

ヨシザワカヨコ:1990年6月4日、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街育ち。父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。ヤマハ主催『The 4th Music Revolution』JAPAN FINALにてグランプリとオーディエンス賞をダブル受賞したのをきっかけに、2014年にメジャーデビュー。国内の大型フェスヘ出演し、全国ホールツアーも成功。私立恵比寿中学や松本 隆との共作によりシンガークミコへ楽曲提供も行なう。

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