コールは鳴らないけれど
呼んでいるって わかったの
私が架けても すぐに
優しい返事が 聞けた
お互いに受話器を 引き合って
ふたりを繋いでる
張りつめた糸は 赤く震えていた
君が話せば 私 耳あてて
私が話せば 君 耳あてて
長電話も おやすみ だけの夜も
耳元 囁く 声が 幸せ
もしもしもしもしもしもしもしもし
「糸電話」/結花乃
まずは、二人の甘いシチュエーションから幕を開ける歌。実際に受話器で<長電話>をしたり<おやすみ>と言い合ったりしている、幸せそうな様子が伝わってきますね。そして同時に、心と心も見えない【糸電話】で繋がり合っております。きっとこの頃の<君>と<私>はまだ“赤い糸”で結ばれたばかりだったのでしょう。それゆえに、付き合い始めの緊張やドキドキがピンと<張りつめた糸>に表れているかのよう。
また、お互いにいつだって自分の紙コップの糸の先にある、もう片方の紙コップのことを想っていた。だからちょっとした振動にも敏感に気づき<コールは鳴らないけれど>それぞれその声を必要としているときがわかったのだと思います。ここでの<もしもし>の繰り返しは<君>と<私>が“愛を確認する合言葉”のように感じられるのではないでしょうか。しかし、恋人同士はいつまでも付き合い始めの関係ではいられないものです。
他愛のない話ほど 数えきれない
だけど スキとか そばにいてとか
肝心な事は 言わなかった
近すぎて弛んでしまう 糸電話でした
「糸電話」/結花乃
君の話が 聞こえたフリして
私も話してた ちゃんと引っ張って欲しいと
チグハグな会話じゃ 伝わらなくて
それでも たぐる先の
笑顔 信じてた
「糸電話」/結花乃
しばらく経つと二人は<肝心な事>は言わなくなって、だんだん存在が当たり前になりすぎて、心と心を結ぶ糸は弛んでしまった。その結果、寂しい夜も以前のようには通じ合えなくなっていた模様。もう<君>の声も<私>の声も糸を振動させないから…。それでもお互い、自分の話したいときだけ【糸電話】を引っ張り、相手の声もよく聞こえないのに、ただただ<たぐる先の 笑顔 信じて>話し続けていたのです。
もしもしもしもしもしもしもしもし
「糸電話」/結花乃
そんな時期の<もしもし>の繰り返しは、歌の冒頭の“愛を確認する合言葉”とは別物でしょう。相手の愛がわからないから、自分の愛が届いているか不安だから、それぞれ“大丈夫?聞こえないよ…”と、一方的な<もしもし>を唱え続けているように思えます。だけどもちろん<弛んでしまう 糸電話>では、その声が届くことはありません。
離れすぎて切れちゃったのかな
手を離して しまったのかな
君が話せば 私 耳あてて
私が話せば 君 耳あてて
たぐり寄せた糸には
何の手応えもなかった
君の持っていたはずの 片方が
ほつれた糸の隣で
カランと 転がってた
「糸電話」/結花乃
そして歌の終盤、悲しいことに<君の持っていたはずの 片方>は自分の足元に、カラン…。ちゃんと<肝心な事>を言わなかったばかりに、心と心の【糸電話】はいつのまにか使われなくなってしまっていたのです。言葉で伝えなくたって【糸電話】があるから大丈夫。そんな“信頼”という名でごまかした思い込みが別れに繋がってしまったのです。
もしもしもしもしもしもしもしもし
もしもしもしもしもしもしもしもし
「糸電話」/結花乃
こうして最後の<もしもし>はついに、ただただ<私>ひとりの、どこにも繋がっていない声となりました。近すぎると糸が弛み、離れすぎると千切れてしまう、それが【糸電話】の難しいところなんですね。その距離をうまく保ち続けるためには大事なのは、やはり<肝心な事>を言うこと。また、話すだけではなく、相手の心を聞くこと。切ない楽曲ですが、そんなことを教えてくれるのが、結花乃の「糸電話」です。あなたと、あなたの大切な人の【糸電話】は今、ちゃんと響き合っていますか…?
◆2nd Single「糸電話」
2018年5月2日発売
Type-A PVE-0029 ¥1,500+tax
Type-B PVE-0030 ¥1,000+tax
<収録曲>
M1 糸電話
M2 ぼくらのサンセット
M3 ひだまりの詩-cover-