書き出しは唐突で二枚目から読んでしまったのかと少しだけ焦ったよ!

 5月23日は、5(こ)2(ふ)3(み)で【こいぶみ(恋文)】の語呂合わせから【ラブレターの日】と言われております。また、浅田次郎原作の映画『ラブ・レター』公開初日がこの日だったことも由来しているんだとか。みなさんは、手紙で告白したことはありますか? 最近、大切な人に手紙を書いていますか? ちなみに、コピーライターの“長谷川哲士”さんという方のツイートに以前、次のような言葉が綴られておりました。

書けることは、賭けること。
何かをひとに届けるということは、
馬券を賭けることに似ている気がする。
この言葉の、この単語に
目を止めてくれることに賭ける。
ここのネタにクスっとしてくれることに賭ける。
そんな感じ。
賭けに勝ったときには歓喜が待ってる。
(コピーライター/長谷川哲士)

 長谷川さんは、広告コピーを“書ける”ことを意味していたのだと思われますが、ラブレターにもまた、同じことが言えそうですね。つまり、恋文を書くということは、この想いが届いてくれることに“賭ける”ということなのです。今日のうたコラムでは、そんなラブレターにどのような気持ちが賭けられているのかが伝わってくる、様々な楽曲をご紹介いたします!まずは“aiko”のこの曲です。

書き出しは唐突で二枚目から読んでしまったのかと
少しだけ焦ったよ だけど合ってた
話しかけてくれる様に始まった文章は
あたしの耳の辺りを熱くさせたよ

嬉しくて右手で口を塞いだ
恥ずかしくて何度も笑ってしまった
感情はあたしの意志を超えて揺れる

何度も何度も何度も読み返そうか
だけどそんなに読んだらあなたは嫌かな
何度も体に入ってくる言葉が苦しい
「Loveletter」/aiko

 まさに恋の「賭けに勝った」場合の物語が描かれているラブソング♪ 主人公の女の子は<あなた>から、告白の言葉がしたためられた手紙を受け取ったのでしょう。そしてお相手の彼は、思い切った“賭け”をした模様。<書き出しは唐突で二枚目から読んでしまったのかと 少しだけ焦ったよ>とあるように、おそらく冒頭から「好きだ!」と、ドストレートな本題を届けたのです。そして彼の賭けは見事、勝利!この恋文に書けた想いが、どれだけ彼女に刺さったかは、嬉し恥ずかしな気持ちがあふれて仕方ない歌詞から十分にわかりますね!

素直になれない私だから 手紙を書こうと決めたの
特別な意味は何も無いけど とにかく必ず読んでね

出会いから3年経ったね あの頃ホント若かったね
顔を見ると恥ずかしくなって お互いまた言葉に詰まって
初めて好きだと伝えた日 お互い好きだと分かった日
嬉しくて泣いた私 ずっと変わらないよ

アナタに伝えたいの 愛してるよ
ワガママな日もあるけれど 嫌いにならないで
アナタに届けたいの 大好きだよ
たまにケンカもしちゃうけど 私の気持ち分かっていてね
「love letter」/E-girls

 E-girlsのこの曲の場合は、付き合う前の告白ソングではなく、恋人に気持ちを届けるタイプの恋文ソング。カップルにはよく【3年目のジンクス】があると言いますよね。恋愛ホルモンが分泌されなくなり、ドキドキ感が無くなることから、別れやすい倦怠期に突入してしまうのです。しかしそんな恋愛の最難関を突破するためにも、彼女は<手紙を書こう>という“賭け”に出たのでしょう。いつもは素直になれない女の子から<ずっと変わらないよ>、<愛してるよ>、<嫌いにならないで>、<大好きだよ>なんて真っ直ぐな言葉をもらったら、改めて愛おしさが増すこと間違いなし…!きっとこの賭けにも、歓喜が待っているハズ。

言わずにいられない程 あなたを見る度に 苦しかった
困った顔しないでくれて 謝ってくれて ありがとう

言わずにいられない程 あなたを見る度に 苦しかった
言えば あなたを見る度もっと 苦しいと気づかずに

今度あなたと すれ違う時 どんな顔していたらいい?
何もなかった ふりはできない 出せない手紙 持ったまま
言えない言葉 すり切れるまで どんな顔して会えばいい?
「ラヴレター」/DREAMS COME TRUE

ホームに見送りに来た
友達に混ざって
きっと僕のことは見えない

大好きだ 大好きだって
とうとう言えないまま
君は遠くの街に行ってしまう
何回も 何回も
書き直した手紙は
まだ僕のポケットの中
「LOVE LETTER」/槇原敬之

 もちろん人生、勝ち戦ばかりではありません。ドリカム「ラヴレター」の主人公は、会って思いを伝えた上で、手紙を渡そうとしていたようです。しかし決戦日、彼女はその場で失恋してしまったため、ありったけの気持ちを賭けたラヴレターを渡すことは叶いませんでした。槇原敬之「LOVE LETTER」の主人公は、就職で<遠くの街に行ってしまう>相手に思いを伝えるため手紙をポケットに忍ばせてきましたが、彼の場合、直接告白することも、その恋文を渡すこともできずに、さよなら…。どちらも残念ながら、賭けた想いは敗れてしまったんですね…。
 
 このように、一言でラブレターと言っても、様々な物語が見えてくることがわかります。他にも、付き合っている相手に別れを告げるための恋文、付き合っているけど思っていることを言えずに心の中だけに綴っている恋文、ただただ恋人に日頃の大感謝を伝える恋文、などがテーマになっている楽曲もございます。現代では、ほとんどの連絡手段がLINEですが、時には、思いを文字に賭けて、大切な人に手紙を渡してみてはいかがでしょうか…!