あの頃の君にあって、今の君にないものなんてないさ。

若いということだけに
最も値打ちがあるというなら
あんたらみんな このあたしもみんな
逆さまに生きていくのが
正しいということになる。
(中島みゆき『夜会 VOL.3』より引用)
 
 これは、中島みゆきさんが1989年から行っている舞台“夜会シリーズ”の『夜会VOL.3 KAN(邯鄲)TAN』書き下ろしシナリオ完全版に登場するセリフです。尚、物語は、1人の女性が夢の中で見た“少女”から“老婆”になるまでに至る自己の一生を描いたもの。ここで言う<若い>とは年齢のこと。どうしても(とくに女性は)、<若さ>というものに価値を置きがち、置かれがちですよね…。それこそ<逆さまに生きていくのが 正しい>なんてめちゃくちゃな理論になりかねません。
 
 そういえば昨年ヒットしたドラマ“逃げ恥”でも、石田ゆり子さん演じる女性が、若さばかりに価値を見出す女性に「あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもある」「そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」と言い放つセリフがあり、とてもかっこよかったことを覚えています。人間に大切なのは年齢=見た目の若さではないのです。歳を重ねたからこそ血肉となった“知恵”と“知識”と“経験”、そしてそれを生かす<心の若さ>なのではないでしょうか。

何をどうしても
眠れない夜は
何が何でも
眠っちゃいけない夜さ

雨宿りするくらいなら
晴れている街に駆けて行くさ

Forever Young
あの頃の君にあって
Forever Young
今の君にないものなんてないさ
「Forever Young」/竹原ピストル

 今日のうたコラムでは、ドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』エンディングテーマとして流れている“竹原ピストル”の新曲「Forever Young」をご紹介いたします。この曲もまさに、精神の若さの永遠性を歌った楽曲。<あの頃の君にあって 今の君にないものなんてないさ>…決して上っ面の見た目のことを綴った歌詞ではありませんよね。<何をどうしても眠れない>ほどに<何が何でも眠っちゃいけない>ほどに、その人を突き動かす“若い”=“新しい”エネルギーは、いくつになっても生まれる、ということなのです。

くたびれた言葉で
新しい約束を交わし
萎れた声で
新しい歌をうたおう

満ち満ちた若葉はいつだって
色褪せた枯葉の上にひらくのさ

Forever Young
あの頃の君にあって
Forever Young
今の君にないものなんてないさ
「Forever Young」/竹原ピストル

 くたびれた言葉だからこそ約束は強い。枯れた声だからこそ歌に説得力がある。そんな気がしませんか? そしてシワやシミの数だけ経験地はパワーアップする、新しい自分にどんどん更新されてゆく、そんな大人でありたいと思わせてくれるアツい1曲です。今、年齢の<若さ>という呪いに縛られている女性も、男性も、是非、聴いてみてください…!

<竹原ピストル 本人メッセージ>
ある種、癖のように、とかくひっくり返した発想、言葉選びをしてしまいがちなのですが、この『Forever Young』は、ある日ふと浮かんだ、“若くあろうとするな。若くあろうとするから老けるんだよ。”というフレーズから膨らませて書いた曲です。若さへの執着がないという若さ、でしょうか。

遠藤憲一さん、大杉漣さん、田口トモロヲさん、寺島進さん、松重豊さん、光石研さん。膨大な、莫大なキャリアの上に、しかし、常に潔く、常に今(=若さ)を咲かせ続けてきた、日本が誇る役者の皆様方がご活躍する物語には、きっとしっくりくるのではないだろうか、と、おこがましくもそう思っています。上記、皆様方のお名前を綴るだけでも目が眩むような思いでした笑。関わらせていただけて、光栄です。(竹原ピストル こと 竹原和生)