無理やり奪い取った唇が耳元で言う「別にいいけど友達だよ」って。

お前は今、病気だ。
お前には腐るほど道があるのに
勝手に自分を追い込んでいる。
周りが見えなくなって
一番ヤバそうな道を自ら選んでる。
(映画「ヒミズ」より)

 園子温監督、染谷将太×二階堂ふみ出演の映画『ヒミズ』でのセリフです。人生にはいろんな“道”=選択がありますよね。でも、たとえば恋愛において<幸せになる>ために自分が選んだ道が、はたから見ると明らかに幸せには繋がっていない『一番ヤバそうな道』だということも多々。禁断の恋に足を踏み入れてしまった人も、本当は腐るほど道があったハズなのに、周りが見えなくなって、勝手に自分を追い込んで、気付いたときにはもうどうしようもないところまで来てしまっているのかもしれませんね…。
 
 今日のうたコラムでは、そんな『ヤバそうな』恋を描いたラブソングをご紹介いたします。4人組バンド“Goodbye holiday”が12月7日にリリースしたミニアルバム『KNOCK』に収録されている「十ヶ条」という楽曲です。これまで、心地よい歌声と日常に寄り添った共感を生む歌詞で数々のタイアップ楽曲を書き下ろしてきた“グッホリ”ですが、この歌は、彼ら史上最強とも言えるほど妖艶でロックな1曲となっております。では、タイトルの「十ヶ条」とは一体、何を成立させるための約束なのでしょうか。

がらくたなモーテルで
昔話手土産にして
ついにあなたと僕はゼロ距離
無理やり奪い取った唇が耳元で言う
「別にいいけど友達だよ」って

いつかあなたと幸せになる
そのために課した秘密の十ヶ条
「十ヶ条」/Goodbye holiday

 <モーテル>とは、自動車旅行者用のホテル、ラブホテルを意味する言葉でもあります。その場所で<ゼロ距離>…つまり“そういう関係”になった二人ですが、彼女が彼に放ったのは友達のままの関係を保ったままで、という条件。好きではないし、恋人にもならないということですね。彼女がそんなことを言ったのは、本命の相手がいるからでしょうか、他にもたくさんの遊び相手がいるからでしょうか…。しかし、<いつかあなたと幸せになる>という希望を抱いている<僕>はその夢を叶えるため、彼女に「十ヶ条」を契るのです。

【翌る日も僕等は友達同士】
【あなたと一緒のときは絶対に笑うこと】
現実と愛との停戦協定は
二の次三の次で 四苦八苦当然だ

愛と呼ばれるほど
形を成してないからこそ
ジュクジュク手招きする沼地
【深入りは厳禁】で【防衛線は正しく設置】
【引かず】【惹かれず】で【耐え抜くこと】

今何ヶ条誓ったんだっけな
指折る僕を遮る着信音

【会いたいと言わない どんな時でも】
【会いに来て欲しいと言われれば飛んで行く】
曇りのち曇りの停滞前線は
七転八倒の末 三々五々散っていく
「十ヶ条」/Goodbye holiday

 ここまでで【九ヶ条】ですが、どれを読んでも<僕>が彼女にとって“都合の良い男”でしかないことは伝わってきます(泣)。途中の<指折る僕を遮る着信音>とは、彼女の本命彼氏からの電話なのか…。しかし、その着信音を聴きながらも、<ジュクジュク手招きする沼地>にどんどん足を進めていく彼。やっぱり、一番ヤバそうな道を自ら選んでる、ような気がしますねぇ。そして歌は次のように幕を閉じてゆきます。

翌る日も僕等は友達同士
あなたと一緒のときは絶対に笑うこと
【十ヶ条を破れば僕等さよなら】
こんなに近いのに永遠にさよなら
現実と愛との停戦協定は
二の次三の次で 四苦八苦当然だ
「十ヶ条」/Goodbye holiday

 最後の条件は【十ヶ条を破れば僕等さよなら】…。歌詞の冒頭で彼は<いつかあなたと幸せになる そのために課した秘密の十ヶ条>だと歌っていましたが、この恋が愛になる日は来るのでしょうか。一時の甘い関係だけの幸せを、末永く続く幸せに変えることはできるのでしょうか。その可能性は限りなく低いように感じますが…、それでもどうしても諦めきれない恋だと言うのなら、なんとか彼の切々とした想いと努力が実ることを祈るしかありませんね…!MVも公開されておりますので是非、歌詞と併せてチェックしてみてください。

◆MINI ALBUM「KNOCK」
2016年12月7日発売
初回生産限定盤 AVCD-93542/B ¥2,700+税
通常盤 AVCD-93543 ¥1,700+税

<収録曲>
1 十ヶ条
2 パラダイムシフター
3 純白のドレスを君に
4 灰色の指輪
5 人間到る処、青山あり
6 KNOCK