こんなふうに道の真ン中で泣いてるのも 迷惑だよね
だけどあたしは もう行くところがない
何をしても 叱ってくれる人も もう いない
タクシー・ドライバー 苦労人とみえて
あたしの泣き顔 見て見ぬふり
天気予報が 今夜もはずれた話と
野球の話ばかり 何度も何度も 繰り返す
「タクシードライバー」/中島みゆき
日本に初めて“タクシー”が登場したのは8月5日だそうです。そのためこの日は<タクシーの日>と呼ばれております。そこで、歌詞にタクシーが登場する楽曲にはどんなものがあるだろうかと、タイトルやフレーズ検索で調べてみたところ、何故か明るい楽曲はほとんどございませんでした。冒頭でご紹介した中島みゆき「タクシードライバー」をはじめ、悲しみ・淋しさ・孤独・疲労・涙が滲んだ曲ばかり。“車”が登場するドライブソングはアッパーチューンが多いのに、一体何故なのでしょうか…。
ねぇタクシー止まってよ ねぇタクシー飛ばしてよ
このラジオの女の息継ぎなんかイヤらしいから消してよ
ねぇタクシー拾っては ねぇタクシー捨てるなんて
あんたも結局アイツとなんにも変わらないんだね
「NE-TAXI」/クリープハイプ
緑のタクシーの中に
乗り込むうしろ姿に
“もう二度と会うことはないだろう”
これが最後
「カラフルタクシー」/柴咲コウ
どうして私一人きり?
悪いこともしてみたいの
明日も放っておくのなら
さらわれちゃってサヨナラよ
TSUTAYA前の交差点
タクシー止まってちょうだい
ワザと逃した終電が
虚しいからお家まで
「shibuya cynic」/山崎あおい
他、GO!GO!7188「タクシー 」、クラムボン「Y・S・G・R」、嵐「復活LOVE」、コレサワ「最終電車」、片平里菜「そんなふうに愛することができる?」などの歌詞にもタクシーが登場しますがやっぱりどこか切ない。ところで、みなさんはどんなときに“タクシー”を利用しますか? 電車が止まってしまったとき、雨や雪がひどいとき、急いでいるとき、いろんな状況がありますが、最も多いのは“終電を逃してしまったとき”ではありませんか?
もしかしたら“タクシー”が登場する楽曲は、終電だけでなく、“何かを逃してしまった”主人公の心情が描かれているものが多いのではないでしょうか。大切だった恋、「帰りたくない」という言葉、仕事のチャンス、自分自身が変わるチャンス…。そういうものを逃してしまったショックを紛らわすために深夜まで飲みすぎてタクシー…ということもあるハズ。そんな感情を拾って乗せてゆくものが“タクシー”であるからこそ、歌にも切なさが滲んでいるような気がします。
あなたを乗せてやってくる夜行バス
ピンク色に見えました
あなたを連れて走っていく夜行バス
灰色に見えました
離れて過ごした三年間
あなたが来る日
子どもみたいに 指折り数えた
あなたを好きでいてよかったな
あなたを待っていてよかったな
新しいスタートラインから 今
走り出すよ二人だけを乗せて
「バスロマンス」/チャットモンチー
ちなみに、同じく夜を走る乗り物である“夜行バス”が歌詞に登場する楽曲には、また違った特徴があるんです。たとえばチャットモンチー「バスロマンス」で綴られているのは、遠距離恋愛だった彼とついに結婚というスタートラインに立つ時の心情。夜行バスは、“始まり”や“終わり”といった変化を描く乗り物なんです。そんな夜行バスソングについてはまたいつかの今日のうたコラムで…!