2025年9月3日に“松室政哉”が4th Album『Singin’in the Yellow』をリリースしました。今作は松室が2025年の音楽活動の指針としている「ハッピー・多幸感」をテーマに、編曲から演奏・歌唱に至るまでのほとんどの作業を自身で行う“DIYスタイル”で制作。荒々しさもありながら、松室のポップネスがこれまで以上に前面に押し出されたカラフルなアルバムとなっております。
さて、今日のうたではそんな“松室政哉”による歌詞エッセイをお届け。第2弾は収録曲「渚のメイキャップ」にまつわるお話です。自身にとって珍しい“夏の曲”であり、新たな挑戦となったこの歌。楽曲内の様々なこだわりは…。ぜひ楽曲とあわせて、エッセイをお楽しみください。
アルバムに先行して配信したこの楽曲は、松室にとっても少し珍しい“夏の曲”だ。
きっかけは今年の初めに打ち合わせをしていたときの、スタッフのふとしたひと言だった。「80年代のシティポップっぽい、キラキラした夏曲のサウンドって、松室にも絶対似合うと思うんだよね」。確かに自分の好きな枠の中にあったサウンド感ではあったが、あまりやってこなかった。これは一度挑戦してみる価値はあるな、と。
そこからすぐ制作に入った。当初の仮タイトルは「マリーナ」。どこか懐かしく、少し気取った響きが気に入っていた。そもそもマリーナって何なんだ!?
せっかく作るなら中途半端なオマージュにはしたくない。そう思って、あの時代の名曲たちを改めて聴き返しながら、サウンドの質感、構成、楽器の選び方など細かいところまで、できる限り丁寧に作り込んだ。例えば、明るいサビの雰囲気とは裏腹にイントロはマイナー調が多いとか…。頭の中を80年代で埋めていく時間はとても楽しかった。
ベースはかれこれ10年以上の付き合いになる佐藤慎之介(ZION)。的確かつ柔軟なグルーヴで、楽曲の芯を支えてくれた。録り終えた後に、「これ、むずかしかった~!」とコメントが来たのが印象的だったが、そんなことは感じさせない仕上がり。ギターはぞのさん(外園一馬)。潮風のような軽やかなフレーズで楽曲に透明感を添えてくれた。やっぱりこの二人には圧倒的信頼を置いている。
さらにミックスやマスタリングでは、80年代特有の空気感をどう現代に落とし込むか、非常に迷ったところだ。楽曲に漂う“懐かしさと新しさのあいだ”をどう表現できるか。それが今回一番こだわった部分かもしれない。ちなみに単曲配信用とアルバム用ではマスタリングを変えている。聞き比べてもらうと結構違うので面白いと思う。
この曲は、自分にとっても思い切った挑戦だったし、だからこそ愛着がある。背中を押してくれたスタッフ達には、改めて感謝を伝えたい。
<松室政哉>
◆紹介曲「渚のメイキャップ」
作詞:金木和也
作曲:松室政哉
◆4th Album『Singin’in the Yellow』
2025年9月3日発売
<収録曲>
1.未来ある馬鹿者からのセイハロー
2.渚のメイキャップ
3.ふたりよがり feat.金木和也
4.コンバート
5.うるう
6.人生はロマネスクさ
7.ゆとりましょう
8.Singin’ in the Yellow
9.世界中を敵に回しちゃうな
10.夢の跡