自分を守らず開いていくこと。

 2023年2月15日に“家入レオ”が4年ぶりのニューアルバム『Naked』をリリースしました。2022年に配信リリースされた「レモンソーダ」「Pain」「かわいい人」の他、新曲を含む全12曲が収録。全収録曲のソングライティングに家入本人が携わっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“家入レオ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第2弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「Pain」にまつわるお話。改めてデビュー曲「サブリナ」で学んだことに立ち返り、自分に真正面から挑んで作ったこの曲。ぜひ歌詞と併せてエッセイを受け取ってください。

 さらに、今回も第1弾に引き続き“音声版”がございます。家入レオの言葉を本人の朗読でもお楽しみください。


家入レオの朗読を聞く

小さい頃から歌うのが好きだった私が、曲を作り始めたのは13才の時。中高大まであるエスカレーター式の女子校に通っていた。そのシステムを理解した上で受験したはずなのに、入学したある日の朝、10年間同じ場所に通い続けること、人間関係に躓いてしまったら10年間友達がいないことに呆然とした。人とぶつかるのが怖くて表面的な会話しかできなくなり、本当の気持ちはノートに綴った。心を言葉にすることで自分を癒し、発見した。
 
デビュー曲の「サブリナ」も福岡で本当の愛が欲しい、と思って作った。なんでもないみたいに笑いながら1人に怯えて生きているのは自分だけだと思っていたけど、東京に来て貰った手紙やメールを読みながら、似たような気持ちを抱え生きている人がいることに驚いた。
 
その気持ちに、応援してくれている人に、応えたい。気負い過ぎもあって、少しずつ音楽が自分自身の心を発見する場所ではなくなっていった。苦しかった。だけど、それを口にしたら最後な気がして。でも無かったことにしようとすればするほど、その想いは赤く醜く膨らみ、冷静を奪った。
 
もう無理かもなーと思ったその時に、そうだ、だから私には音楽が必要なんじゃんと思った。起源を辿り出すと果てしない。忘れたい。忘れられない。誰も悪くないとか言わせない。自分だって悪い。そんな複雑に絡まり合う現実と感情のうねりのままに作った「Pain」。
 
確かに無理してた時期もあった。空回りしたことも、失敗したことも。でも届けたい、という気持ちに嘘はなかった。それに無理してでも応えたかった想いや人が人生の中にあることはとても幸せなことだと思う。そうやって人は強くなる。音楽活動は曲を作って、ツアーを回ることだけじゃない。生きることの矛盾や憤りの中で足掻き、それで諦めずに足を進めるってことが音楽なんだ、と気づいた。
 
「Pain」をリリースすることは正直怖かった。だけど「サブリナ」は、誰かの気持ちに寄り添いたい、なんて余裕はなくて、自分の心と真正面から向き合って書いた曲で。でもそれが結果的に、私と同じような気持ちで生きている人の心に確かに刺さった。誰かを大事にする。それは、まず自分を大事にすることなんだ、と私は学んだ。
 
自分に真正面から挑んで作った「Pain」。自分を守らず開いていくこと。それが最後には、会ったこともない誰かの心の叫びと本当の意味での繋がりを生み出してくれると思ったから。それに賭けてみようと思った。私は「Pain」をリリースした夜、ファンの人が「おかえり」と言ってくれたことを絶対に忘れないと思う。
 
大切なものに出会って、自分の弱さを知って、それを繰り返しながら強くなっていく。暗闇から見た一筋の光。私が裸の心で紡ぎ歌ったニューアルバム『Naked』。

<家入レオ>



◆紹介曲「Pain
作詞:家入レオ
作曲:新井弘毅

◆7th Album『Naked』
2023年2月15日発売
【初回限定盤A:CD +DVD】 VIZL-2146 ¥5,500(税込)
【初回限定盤B:CD+DVD】 VIZL-2147 ¥4,620(税込)
【通常盤:CD】 VICL-65773 ¥3,300(税込)
【ビクターオンラインストア限定盤:CD】 NZS-905 ¥4,180(税込) 
 
<収録曲>
1. Winter
2. 悩みたいだけ
3. レモンソーダ
4. I don't like you
5. 奇跡が足りない
6. 嘘つき
7. Pain
8. Hikari
9. 愛は鎖じゃない
10. 君に未練はないけど、恋に未練がある
11. かわいい人
12. Boyfriend

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