2022年10月5日に“ゆいにしお”がメジャー1stフルアルバム『tasty city』をリリース!今作は、ゆいにしおの持ち味である「独特な言葉遊びを交えた歌詞」や「あたたかみのあるポップさ」が発揮された楽曲が12曲収録されております。また、アルバムリリースに伴い、10月26日からは、全国3箇所でワンマンライブを開催。こちらも是非チェックを!
さて、今日のうたコラムではそんな“ゆいにしお”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第2弾。みなさんは絶対に好きにはならないと思う、苦手な味ってありますか? ゆいにしおにとってそれは「ししとう」だったそうですが…。フルアルバム『tasty city』に込めたメッセージにも通ずるエピソードをお楽しみください。
昔嫌いだったゴーヤチャンプルーが今では大好物になった。辛いものは食べられなかったけれど、今や豚キムチなんて週1で作る。
こうして苦い・辛い食べ物を、大人になってから好きになることは珍しいことではない。
でも、ぜったいにししとうだけは好きにならないと思ってた。
10月5日に発売された『tasty city』を作っているとき、こんなメッセージを伝えようとしていた。
「苦い思い出」なんてよく言うけど、食べ物の味観点で考えたら、苦いって美味しいなんだよな~。苦い思い出もおいしい思い出だったとして後々考えられたらいいよね、と。
それでもやっぱりぜったいにししとうだけは好きにならないと思ってた。『tasty city』製作中ですら、ししとうだけは本当に、全く良さがわからなかった。
ししとうは絶対「ハズレ」のものがある。あいつのなかには、数本に1本はめちゃくちゃに辛い、「俺って唐辛子なんだぜ」とアピールしたがる奴がいる。
母はよく、実家で大量のししとうをグリルで焼いて、砂糖醤油で味付けしたものを出してくれたのだった。4人家族で、10本くらいのししとうを分け合う。私は極端に運が悪く、そのなかのハズレししとうをいつも引き当てていた。無敵の甘辛砂糖醤油味でも、ハズレししとうの辛さにはどうしても太刀打ちできない。ししとう自体のシンプルなおいしさを楽しむ家族を横目に、私は唇を腫らし、辛いししとうをかじっていた(余談だが、アサリの砂を噛んでしまうのも実家では私の役目だった)。
先日、祖母を訪ねに地元へ帰った。祖母は「東京では野菜をもらうことなんてない」と愚痴る私にどっさりとししとうをくれた。「また砂糖醤油でロシアンルーレットを楽しむとするか…」と半ば乗り気ではなかったのだが、祖母より「味噌とお砂糖で炒めてもおいしい」という耳寄り情報をもらった。
これだ。
東京に戻ってすぐ、のぞみ新幹線で運ばれたししとうを調理しはじめた。ししとうのヘタをとって、輪切りにする。みじん切りにした生姜と、輪切りの鷹の爪を、ごま油と一緒に炒めてみる。香りが出たら輪切りのししとうを入れ、サッと炒め味噌・醤油・砂糖・みりんを入れる。砂糖は「ちょっと多いかな」と思うくらい入れた方が、ハズレししとうに勝てる気がした。調味料の汁気がとんだら完成。10本ほどあったししとうはしなしなになって、タッパーに半分もいかないほどのボリュームに収まった。味噌でしっかり和えられたししとうは、緑色ですらなくなっていた。
とりあえずご飯の上にのせて食べてみる。
うまい!!
味噌味のものがご飯と合わないはずはない。ハズレししとうの存在をわずかに認識したものの、その辛さが味噌とマッチングしておいしい!むしろハズレししとうの辛みがなければ物足りなかったかもしれない。
ハズレししとうを食べた悲しみというのは、具体的に言うと無数のししとうから一本ハズレを引いてしまった悔しさのことだ。辛さもさることながら「なぜわたしだけ…」と思う。でも、細かく刻んでしまえば他のスタンダードししとうを一緒くたになってしまう。悲しみが分散されるのだ。
その後、冷奴にのせたり、そのまま食べたりして、すぐにタッパーが空になった。
こうして、あんなに嫌いだったししとうもすっかり大好物になった。きっと今なら、ハズレししとうをうっかり引いてしまっても、貧乏くじを引いた気分にはならないかもしれない。
『tasty city』を聴いて、苦手な味にも違う方法でアプローチして、日常に革命を起こしてみるのはいかが?
<ゆいにしお>
◆Major 1st Full Album『tasty city』
2022年10月5日発売
COCP-41838 ¥3,000 (tax in)
<収録曲>
1.CITY LIFE
2.mid-20s
3.スパイスガール
4.sun shade
5.チートデイ
6.suitcase
7. Rough Driver
8.パレード
9.息を吸う ここで吸う 生きてく
10.スポットライト
11.タッチミー(2022 Ver.)
12.ワンダーランドはすぐそばに