休みから得られるヒントはたくさんある。

 2022年8月24日に“安田レイ”がニューシングル「風の中」をリリースしました。タイトル曲は、TVアニメ『ラブオールプレー』の第2クールエンディングテーマに起用。今作の青空をバックに撮影されたアートワークは、疾走感溢れる楽曲のイメージやTVアニメ『ラブオールプレー』の新キービジュアルともリンクする、夏を感じる爽やかなポートレートとなっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“安田レイ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第2弾。綴っていただいたのは、「夏休み」にまつわるお話です。安田レイがアメリカで過ごした夏休みと日本で過ごした夏休みの違いとは…。みなさんはこの夏、どのように”休み”ましたか? 



夏休み。
 
夏に休むと書いて夏休み。
 
勉強や仕事を頑張る私達の、心も体も休める大切な時間。
 
だと思っていた。。。
 
 
これは私がまだアメリカンスクールに通っていた頃の話だ。
 
アメリカは夏休みがとにかく長い。
 
日本でこの話をするとみんなに驚かれてしまうが、約3ヶ月もある。
 
クラスメイトも、私も、きっと先生も、みんな夏休みが近づいて来るとソワソワしていた。
 
約3ヶ月間まるまる学校に行かなくてもいいという、小学生の私にとってはパラダイスのような時間だったからだ。
 
 
たっぷりとある夏休みは家族とよくキャンプをしに行った。
 
その頃は西東京に住んでいたので、車で1時間くらいで着く奥多摩へ。
 
私が川派なのは、完全にこれが理由だ。
 
バーベキュー場、キャンプ場、川遊びができるエリア、釣りができるエリアと、とにかく遊べる場所が沢山あって、大人になった今でも大好きな場所だ。
 
お父さんがアメリカ人ということもあり、私は小さい頃から庭でBBQをしていた。
 
なので、BBQをするという事はそこまでスペシャルな事に感じていなかったけど、やっぱり川の近くや、緑の中でやるBBQは別格だった。
 
そして、まだ私は小学生だったので、準備や片付けなど、1番アウトドアアクティビティでパワーを使う部分を、全部お母さんとお父さんに任せられたのも最高だった。
 
これがこんなにも大変な作業だという事に、私は大人になってから気付いた。
 
その間、私は弟と石を拾ったり、珍しい虫を探したり、遊んでいた。
 
 
大人4人が入れるサイズのテントは、秘密基地みたいで大好きだった。
 
小さい頃から夜ふかしが大好きだった私は、キャンプの時だけは早くテントの中で眠りたくて、いつもより早く眠りについた。
 
そして、鳥や虫の天然のアラームで目を覚ます朝が大好きだった。
 
音、光、匂い、全てがいつもと違う朝は、子供ながらに感動した。
 
 
夏休みはこんな風に、自然の中で沢山の時間を過ごした。
 
早起き、勉強、宿題、という沢山の面倒臭いルールから解放された私は、ご褒美の夏休みを目一杯満喫した。
 
小学5年生までは。。。
 
 
そう、私は小学6年生からお父さんの仕事の都合で日本の学校に転校した。
 
学校のシステムの何もかもが違いすぎてかなり戸惑ったが、1番衝撃的だったのは夏休みの短さ。
 
いや、短さだけではない。
 
短い上に、宿題が信じられない程出るのだ。
 
絵日記に、各科目のドリルに、自由研究に、読書感想文?
 
この学校は生徒を休ませる気はあるのか?
 
なんだか詐欺にでもあったような気持ちになった。
 
アメリカの場合、長い夏休みが明けると、学年が変わるシステムなので、何一つ宿題が出なかった。
 
カルチャーショックとはこの事だ、と思った。
 
勉強が苦手な私にとって、自由で楽しい「夏休み」というイメージが、やる事が多すぎて「夏休めない」に一気に変わった。
 
6年生になるまで1度も経験したことのない大量の夏休みの宿題に、私はかなり戸惑った。
 
正直に言えば、夏休みが明けてからも宿題をやっていた。
 
お母さんに何度も図書館に引き摺り込まれて頑張ってみたものの、提出日に間に合わなかった。
 
「日本の学校は宿題が出るんだから、やるのが当たり前なの! ママも毎年やってたんだから、あんたも頑張りなさい!」とお母さんに何度怒られたことか。
 
だから、日本の小学校に転校してからの夏休みの記憶はほとんどが宿題だ。
 
8月の最後の週は毎日泣いていた気がする。
 
 
これはアメリカンスクールに通っていた時、先生が言っていて、印象に残っている言葉。
 
「アメリカの夏休みが長いのには理由がある。
 
親が学費を出せなくて進学を諦めざる終えない子達が、自分でバイトなどをして、学校へ行って、夢を叶えるためなんだ。」
 
何気ない会話の中で言っていた言葉。
 
これが正式な理由かは未だにわからないけど、素晴らしい理由に感じた。
 
日本もいつかこうなるのではないかと思う時がある。
 
 
もし3ヶ月間、締切のある勉強や仕事がなく、何をしてもいい自由な時間を与えられたらあなたは何をしますか?
 
持て余してしまいそうな時間ですが、私はのんびり都心から離れて、川の近くで過ごしたいです。
 
ミニ畑で野菜を育てたり、緑の中を散歩したり、そんな事をしてみたい。
 
休む時間も仕事の一つとよく聞くけど、本当にその通りだと思う。
 
休みから得られるヒントはたくさんある。
 
 
あなたも、「夏休めない」じゃなく、素敵な「夏休み」を過ごせてますように。

<安田レイ>


◆ニューシングル「風の中」
2022年8月24日発売
 
<収録曲>
1. 「風の中」
2. 「each day each night」
3. 「風の中」 -Instrumental-
4. 「 each day each night 」 -Instrumental-