さよならの先で咲きそうな花

 2025年8月27日に“安田レイ”が両A面シングル「光のすみか / BROKEN GLASS」をリリース!今作には、TVアニメ『瑠璃の宝石』オープニングテーマである「光のすみか」と新曲「BROKEN GLASS」をタイトルトラックに、カップリングには安田レイ自身が作詞・作曲を手掛け、初の全英詞の楽曲となる「NOW」や、Charaの名曲「やさしい気持ち」のカバーも収録が収録されております。
 
 さて、今日のうたではそんな“安田レイ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。最終回は収録曲「NOW」にまつわるお話です。「今がいちばん幸せ」と思えるその理由は。そして、人生で大切だと思う感覚とは…。ぜひ今作とあわせて、エッセイを受け取ってください。



気がつけば、32年の時が流れていた。
 
その半分以上を、私は歌とともに生きてきた。
 
言葉にすると少し照れくさいけれど、
私はずっと歌ってきた。
 
 
小学6年生。
 
何の特別さもない、ランドセルを背負った歌好きな女の子だった。
 
あの日、突然、このきらびやかな世界の扉が開き、私は足を踏み入れた。
 
そこからは、数えきれないほどの人との出会い、音楽との出会い、そして奇跡と呼びたくなるようなことが起きた。
 
時には、痛みや涙もあった。
 
けれど、それらさえも、いつしか私を前へと進ませる道標になっていった。
 
そうして辿り着いたのが今、私が立っているこの場所だ。
 
 
 
手放すことで、手に入るものがある。
 
大人になってから、その事実をようやくはっきりと感じられるようになった。
 
けれど、私は人一倍、手放すのが苦手だ。
 
大切なものにさよならを告げるとき、
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
 
手放したあとの喪失感を想像して、
怖くなってしまうからだ。
 
この仕事に想像力は欠かせない。
 
けれど、その想像力が時に私を追い詰め、
自分で自分の首を絞めることもある。
 
「こんなことが起きたらどうしよう…」
 
そう不安に思うことは、たいてい現実には起こらないとわかっている。
 
それでも、頭と心は簡単には納得してくれないのだ。
 
 
 
時が経つと気づく。
 
あのさよならがあったから、私は今ここに立っているのだ、と。
 
この文章を、今、ジャカルタで書いている。
 
何年か前の私には想像もしなかったほど、
海外で歌う機会が増えた。
 
それもきっと、手放しては手に入れ、
また手に入れては手放す。
 
その繰り返しの先に辿り着いた場所なのだと思う。
 
 
 
そんな人生を振り返りながら生まれた曲が、「NOW」。
 
「今がいちばん幸せ」
 
そう思えるのは、過去の失敗が教えてくれたから。
 
10代、20代の頃に蒔いた小さな種が、
深く、強く根を張り、今まさに花を咲かせようとしている。
 
そんな気がする。
 
きっと、人生にはこの「気がする」という感覚が大切なのだ。
 
今があるのは、過去があったから。
 
だからこそ、すべての出来事に感謝できる大人でありたい。
 
<安田レイ>


 
◆両A面シングル「光のすみか / BROKEN GLASS」
2025年8月27日