この瞬間がどうかいつまでも終わらないでほしいと願う。

 2022年3月23日に“erica”がデジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』をリリースしました。今作には、春の訪れ×恋愛をメインに楽曲を収録。新曲「卒業ソング」を新たに書き下ろし。そして、ファンからの恋愛に関するお悩みへのアンサーを自身のYouTubeチャンネルにアップしていた『Mlogシリーズ』(Music×Blog)より「春は来ない」「桜フラペチーノ」「桜、輝け」「笑っていてよ」を収録しております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、最新作を放った“erica”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「桜フラペチーノ」に通ずるお話です。桜と花火、そして片思いの共通点とは…? あなたにとって大切な春の恋を思い浮かべながら、このエッセイを歌詞を受け取ってください。



桜は花火に似てる。
見るものの心を一瞬で奪ったかと思うとあっけなく消えていく。
美しさとは儚さなのかもしれないとさえ思う。
まるで夢を見ていたかのような、瞬きをすることさえ惜しいほど、できることならばずっとずっと見ていたいと願う。
 
そんな気持ちは片想いと似ている。
出会い、恋に落ちたその瞬間、まるで満開の桜を見上げた時のように心が弾み、空いっぱいに上がる花火を見た時のように胸が高鳴る。
毎日歩いている道なのに景色もすれ違う人も何かがいつもと違う。
普段なら気にならないような脇道に咲く花を見つけて嬉しくなったり、優しくなれたり、好きな人の何気ない一言に舞い上がったり、目と目が合う度にドキドキしたり、、、
この瞬間がどうかいつまでも終わらないでほしいと願う。
 
そうかと思えば突然、強い風が吹き不安が押し寄せたりもする。
昨日まであんなに穏やかだったのに、一枚また一枚と花が散るたび時間ばかりが過ぎていく。
早く伝えなくちゃと焦る気持ち。
でも想いが届かなかったら?
片想いはいつだって忙しい。
白でもない赤でもない。心の中を行ったり来たり。
そうやって混ざった色がこの世でたった一つの恋の色に育っていく。
自信も勇気も淡く、切なく、散りゆく涙もやがて強さに変わると信じて。
 
同じ恋などない。
どの恋にもそれぞれのストーリーがある。
例え実らなくてもその恋には意味があって沢山の気づきをくれたはずだ。
だからこそ、かけがえのない人に出会えた時、過去の自分にありがとうと感謝できる。
 
「今日はどこに行く?」
 
「どこでもいいよ」
 
「早く会いたいね」
 
そんななんてことのない会話さえ大切な人となら喜びに変わる。
 
今年も春がやってきた。
ゆらゆらゆれる雲。影法師が踊る。
 
いつものカフェで待ち合わせして、いつものフラペチーノを飲みながら、いつものように穏やかな時が流れる。
ふと、どこからかひとひらの桜の花びらが舞い落ちてきた。
その色もまた白でもない赤でもない色をしていた。
 
「きれいだね」
 
そう言って見上げた空にあの日流した花びらは優しくいつまでも舞っていた。

<erica>



◆紹介曲「桜フラペチーノ
作詞:erica
作曲:nao
 
◆デジタルEP『告白日和~白と赤の真ん中~』
2022年3月23日発売
 
<収録曲>
M1 卒業ソング
M2 春は来ない
M3 桜フラペチーノ
M4 桜、輝け
M5 笑っていてよ