The Songbards

詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎると思っている

 神戸発4人組バンド“The Songbards”が、新たな挑戦として三部作を始動させることを発表しました。そして2020年9月23日、その第一章を飾る3rd Mini Album『SOLITUDE』(ヨミ:ソリチュード)をリリース。タイトルは“孤独”を意味する“SOLITUDE”です。誰しもが経験のある、他人と自分を比べた瞬間に訪れる“孤独”にぶつかった時、それを打ち破るキッカケを与えてくれるような内容となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“The Songbards”の歌詞エッセイをお届けいたします。第1弾を担当したのは、メンバー・上野皓平(Vo./Gt.)。綴っていただいたのは、歌詞にも通じている“詩”についてのお話です。みなさんは、歌詞や詩を読んだとき「難しい」「わからない」「理解できないから面白くない」と感じたことはありませんか。すぐに作品から背を向けるその前に、是非このエッセイを読んでみてください…!

~歌詞エッセイ第1弾:詩というものについて~

詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎると思っている。それでも書いてみようと思ったのは、これを書くことで少しでもまた詩に近づけたらいいなと思っているからだ。

詩というものは、とてもわかりにくいものだ。とずっと思っていた。今でも時々そう思う。もちろん親しみやすいポピュラーな詩が世間には溢れていて、谷川俊太郎、まどみちお、茨木のり子、長田弘、金子みすゞ、相田みつを、俵万智さんなど、国語の教科書で出会ったり、おばあちゃんの家の日めくりカレンダーで知ったりしながら、少しずつ親しんでいった。しかし詩をもっと好きになろうと、少しでも背伸びをしようものなら、突如としてどデカイ壁にぶち当たる。

初めてボードレールの『悪の華』(新潮文庫 訳 堀口大學)を読んだ時だった。当時高校生だった僕は、それなりに本を読むのも好きで少々難しい文章でも注釈があれば理解できるし、どちらかというと得意な方だとも思っていた。

しかし地元のインテリアショップで偶然出くわした『悪の華』は、単語自体そこまで難しいものがなかったにもかかわらず、本当に何一つ頭に入ってこない。それぞれの単語は理解できるのに、センテンスとして何一つ理解できないという初めての感覚に、だんだん吐き気を催してきて急いで本を閉じた。ボードレールという名前はなんとなく海外の有名な詩人の一人として認知はしていて、いつかは読んでみたいなと思っていた。ただ出会うのが早過ぎたんだと思う。

本が好きで得意意識を持っていたとしても、まったくもって井の中の蛙であったことは間違いない。高校生ながら僅かに感じていた得意意識はその時に根こそぎなくなった。これだけ有名な詩人の詩集が全くもって理解できないということは、自分には詩を読む資質がないんだと落ち込んだ記憶がある。それでもなお、詩の世界を彷徨いながら拙い詞を自ら書き始めたのは、ささやかな助言に出会ったからだと思う。

僕は中学生の頃から、ピースの又吉直樹さんが好きで、たまたまテレビで見かけたあの話し方と雰囲気になんとなくシンパシーを感じていた。そして高校生の頃にちょっとした興味から又吉さんのエッセイ集『第2図書係補佐』を読んですっかりファンになってしまい、『東京百景』『夜を超える』、せきしろさんとの『まさかジープで来るとは』『カキフライが無いなら来なかった』などすっかり又吉ワールドに引き込まれていった。

どの本の中にそのメッセージがあったのか定かでは無いが、「世の中に面白くない本なんかない、自分がそれを面白いと思えるレベルに達していないだけだ」という内容の文章だった。その言葉に出会ってからは、難しいとか、面白くないとか感じた本に出くわしても、気楽にそう思えるようになっていた。そして苦手、得意という意識の枠を飛び越えてより純粋に本を愉しめるようになったと思う。

詩に関してももちろん同じことが言えると今では思っている。リルケ、ヴェルレーヌ、ブレイクなど好きになった海外の詩人にも少なからず出会ったが、ボードレールに挫折してからも、中原中也、萩原朔太郎、北原白秋、高村光太郎、宮沢賢治など何度も挫折している。それでも理解できない有名な作家がいればいるほど、いつかそれらを愉しめる時が来るはずだと考えるとワクワクしてくる。そして自分で文章を書いたり、自分で詩を書いてみたりするとまた違った愉しみを見いだすことができる。

そんなこともあって、『SOLITUDE』というミニアルバムの完全限定生産版でも初めて短編詩というものを書いてみた。

「僕」と「詩というもの」についてのストーリーの途上にある作品だと思って手にとってもらえると嬉しい。ここで書いた詩は決してわかりやすい詩ではないと思うが、理解できるか、できないかの瀬戸際で読めた時が一番ワクワクするという僕の詩の愉しみを少しでもみなさんに味わっていただけたらなと思う。

冒頭で「詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎる」と言ったのは、どデカイ壁がこの先何枚も続いていていることを知っているからだ。背伸びし続けることでしかその壁の向こう側を見ることはできない。それでもそのことに希望を抱けたのは、一つの言葉の可能性であって、これからもその世界を音楽とともに彷徨い続けたいと思う。

<The Songbards・上野皓平>

◆3rd Mini Album『SOLITUDE』
2020年9月23日発売
完全限定生産盤CD+書籍 VIZL-1783 ¥2,300 +tax
通常盤CD VICL-65406 \1,500 +tax]

<収録曲>
1.孤独と海
2.リトル・ヴァンパイア
3.Dream Seller
4.夏の重力
5.窓に射す光のように
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